銀魂パロ
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完結記念特別編 鍋は世界の縮図である
「いやあ、遂に「世界を救ったサイヤ人が幻想入り」も完結ね!」
ふと、蓮子が口を開く。
「そんなわけで今回は、次の小説の準備の為に、寄せ集めの総集編と後日談でお茶を濁すのよ!」
「どんなわけよ……」
蓮子の発言に、すかさずメリーが突っ込む。
「新作シーンの一部でも入れとけば読者の方は騙されるわよ。」
今度は霊夢が発言する。
「いや、騙されないですよ!」
メリーは慌てて突っ込む。
「それにしても、去年の7月から始めたこの作品も完結とは……、短かったような、長かったような……、人間、1年近くありゃあ変わるのねぇ。」
蓮子は頬杖をついて思いを馳せる。
「そうよ。1年以上あれば、こわ〜い妖怪の彼女も、今ではピチピチの紫髪の美少女よ。」
霊夢も蓮子に合わせる。
「うーん、偉い人に怒られないかな……」
メリーはため息を吐く。
「そういや、鬼◯郎ももうすぐ60歳よ。早いわねぇ。少女と大人の女性との分かれ目は鬼◯郎ねぇ。」
蓮子はしみじみと目を瞑って何度も頷く。
「微妙な分かれ目ね……」
今度は霊夢が突っ込む。
「今じゃ鬼◯郎も霊丸撃てたりするもんねー…」
蓮子はうーん、と唸りながら呟く。
「蓮子、何で今日はそんなに鬼◯郎推しなのよ…?」
「いいじゃないメリー、鬼◯郎を笑う者は、鬼◯郎に泣くよ!」
「泣かないわよ!」
「……ってくらいで、1000文字くらい稼げた?」
蓮子は会話を中断して2人に尋ねる。
「まだまだね。今550文字くらい。」
霊夢が蓮子に教える。
「うーん、そろそろ本当に怒られそうな気がするわ……」
ふと、メリーが口を開く。
「え?誰に?」
蓮子がメリーに尋ねる。
「いや、今これを見てるっていうか、見せられてるっていうか、読まされてる人……」
メリーの発言に、2人は首を傾げる。
「ま、とりあえず始めますか!「世界を救ったサイヤ人が幻想入り」完結記念!」
「あんなことやそんなことやどんなこともありましたね総集編、スタート!」
「……………」
蓮子と霊夢が叫んだ瞬間、三人は全く同じ体勢で何かを凝視する。
「いや、振り返ろうって言ったじゃん。総集編って言ったじゃん。誰か振り返ってよ。メリー、あんた振り返りなさいよ。」
蓮子はメリーを見つめる。
「いや、私火加減調節しないといけないから……、蓮子、貴女でいいから振り返りましょうよ。」
「いやいや、鍋は私が見てるからいいわよ。ねえ霊夢さん、当事者の霊夢さんが振り返ってみたらどうですか?」
そう。彼女たちは蓮子のアパート、蓮子の部屋で鍋を囲んでいたのだ。
「嫌よ!だって目を離したスキに肉盗られるもん!」
「………」
霊夢の発言で、蓮子とメリーはジト目になる。
そして、蓮子がはあっ、とため息をついて、
「そんなことするわけないじゃないですか。だいたい、完結したからお祝いで買ってきたのに……。どうしてそんなおめでたい雰囲気を壊すようなこと言うんですか?」
蓮子に続いて、メリーもうんうん、と首を縦に振る。
「〜〜っ……」
顔を赤くした霊夢はため息をついて箸を置き、
「むぅ、悪かったわよ、貧乏くさいこと言っt」
「今だーーっ!!」
「はーーーっ!!」
霊夢が言い終わる前に蓮子とメリーが鍋に箸を思いっきり突っ込む。
そのせいで、鍋の中の3割が四散してしまった。
「………」
辺りに一時の静寂が訪れる。
「あーあ、具が飛び散っちゃった……」
メリーが残念そうに口を開く。
「畜生、騙しやがって!あんたらのせいで、私のピュアな心はどんどん薄汚くなっていくわ!」
霊夢は2人に罵声を浴びせる。
「薄汚くなって、人は大人になっていくんですよ。よかったじゃないですか、また一歩大人になれて。」
蓮子は霊夢を嘲るように笑う。
「うるさい!もうあんたらの言葉なんて信じないわ!もう何も信じない、みんな敵よ!」
「そうそう。もっと私を憎み、蔑みなさい!そうしてこの腐った世の中を生き抜いていくんですよ。」
「腐ってんのはあんたの頭よ。」
霊夢と蓮子は徐々にヒートアップしていく。
そして、最終的に口論に発展してしまった。
「………」
そんな中、メリーは黙りこくって何かを思案していた。
(……まずいな…今の宇佐見家ですき焼きをやるなんて、トラの檻に⑨を放り込むようなもの……、今は人より肉を食すことより、野獣たちから一刻も早く肉を保護せねば……。2人ともプライドだけは一級品……、そこをつけば……、賭けに近いが、これしかない!)
すると、メリーは箸を置く。
「もういい。」
「「へっ?」」
霊夢と蓮子からそんな抜けた声が出る。
「ケンカしてまで食べたくないよ。私はもういいから、どうぞ2人で取り合っててください。実はこの前お肉は食べたのよ。もう慣れてるっていうか、飽きたっていうか……」
そうしてメリーはムスッとする。
(こい……こい……!乗ってこいっ!!)
「あー、じゃあやめよーっと。私も別に肉が食べたかったわけじゃないしぃ?たまたまバイトでお金入ったからすき焼きにしただけだすぃ?私はどーでもいいけど、やめていいの?」
メリーに乗っかり蓮子も箸を置く。
「ふんっ!上等だよ!私もすき焼きとかいらないし!ベジタリアンだし!サイヤ人愛好家だし!」
霊夢も箸を置き、最終的に全員が箸を置いてしまった。
「やめやめ!すき焼きなんて…」
蓮子はぶすくれて頬杖をつく。
「やってらんないわチキショー……」
霊夢もぶすっとして横になる。
(来たっ!……けれど思った以上に振りが効きすぎてしまったみたい……。まずい、もうこのままお開きになってしまい勢いだ……、くそっ、自分からあんなことを言い出したくせに今更鍋を再開しようだなんて言えないし……。何よりあれよ……、そうその……恥ずかしい……)
メリーは心の中で静かにそう思案するが、徐々に焦りの色がにじみ出て来た。
(……まずいな。事態の沈静化を図るため、敢えてメリーの案に乗ったけれど、まさか霊夢さんまで乗ってくるとは……。この状況で鍋再開は至難の業……。しかし、このまま現状が何も変わらなかったら、確実に鍋は終わる。始まってすらいないのに!駄目だ!それだけは阻止しないと!誰か切り出して!私は肉が食べたいんだ!もうめっちゃ食べたいんだ!死ぬほど食べたいんだ!!察してメリー!あんたが言うのよ!お願い!今度ケーキ奢ってあげるから!)
(誰か察して!私は肉が食べたいんだ!本当はお肉なんて数年間食していないんだ!みんな、みんな心は1つのはずなのよ!)
すると、ぐぅ〜、という間抜けな音が辺りに響く。
「!!」
「あ、あれ〜?れ、霊夢さん何ですか?お腹空いてるんですか?」
蓮子は薄目で霊夢に問う。
「空いてないわ。屁よ。」
霊夢はぶすくれたまま答える。
「いやいや、今のは屁じゃなくてお腹の音でしたよ。霊夢さん、そんなにお腹空いてるんですか?」
今度はメリーが霊夢に問う。
「空いてないし。満腹だし。」
「ま、まぁ、そんなに言うなら鍋やりましょうか?私はどっちでもいいですけどどうします?」
「霊夢さん、無理しないほうがいいですよ。私もどっちでもいいけど。」
蓮子とメリーは徐々に口裏を合わせ始める。
「まぁね。せっかく目の前にあるんだから、食べたほうがいいよね。どっちでもいいけど。」
「そうね。勿体ないからね。どっちでもいいけど。」
「空いてるけどいいし。水飴あるもん。」
水飴を舐め始める霊夢を、蓮子とメリーはテーブルに片足を置いて、
「「バッキャロー!!」」
と怒鳴りつける。
「育ち盛りがそんなもん食ってていいと思ってんのかーーっ!!」
「農家さんや牛さんに失礼だと思わないのかーーっ!!」
「……ほら、私がよそいますから。」
そう言ってメリーは霊夢の器を持ち上げる。
「………いいの?」
霊夢はきょとんとした顔で二人に問う。
「いいですって。みんなのために買ってきたって言ったじゃないですか。」
蓮子はやれやれといった感じで霊夢に言う。
「はい。どうぞ。」
直後、メリーが霊夢に器を返す。
しかし、霊夢に渡されたのは、肉など一切れも無く、白菜、白滝、ネギがふんだんに使われたヘルシーな皿であった。
霊夢はもくもくと具材を口に運びしゃくしゃくと咀嚼する。
それを見た蓮子は軽く咳払いをして、
「しょうがないなぁ、じゃあ食べますか……別に私は食べたくないけど、めんどくさいわね……。でも私だけ食べないってのも雰囲気悪いしね。メリー、あんたも食べなさいよ。」
「ああ、うん。私も別に肉は食べたくないんだけどね。けど、残すのももったいないからね。そこくらいはちゃんとしないとね。」
(くっ、なんとか切り抜けたが……依然として肉に手が出しづらい状況にあるのは間違いない……。すき焼きを一度否定したことにより、鍋に手をつけることさえ躊躇われる空気が出来てしまっている……。何か……事態打破のきっかけはないか……!?)
メリーは焦りの色を隠しながらそう思案する。
((何か……無いか………!?))
蓮子とメリー、2人が同時に事態打破について考えたその時、
何者かが蓮子のアパートの窓から侵入してきた。
「ふうっ、危ないところだった………」
「ようやく撒いたようね。」
それは頭に天使の輪をつけた2人組、霊奈とユカリだった。
(つーかなんなのよあんたら!!)
メリーは表情一つ変えずにそう思案する。
ここまで卓越したポーカーフェイスの持ち主はそうそういないだろう。
「ああ、これは失礼したわね。」
「不測の事態が起きてね……」
ユカリ、霊奈の順にそう言って、それぞれ蓮子の両隣に座る。
「そ、そうなんですか……」
(嘘をつけ嘘を!!)
蓮子は表情を変えずに霊奈にそう言うが、内心に煮えたぎるものを感じていた。
「悪いが匿ってもらい卵……世話に、なるネギ、悪いとこんにゃく、感謝すき焼き………」
(何言ってんのこの人?!)
メリーも同じように腹わたを煮えたぎらせていた。
「まあ私たちに構わずに食事を続けてもらって構わないわ。」
ユカリも一点を凝視しながら淡々と述べる。
(……やりますね霊奈さん。)
(くくく……無限地獄は退屈だからな……それに完結記念特別回なのに主要なキャラの私が参加しないわけあるまい?)
蓮子と霊奈はアイコンタクトだけでそう会話する。
(それはさておき、ミエミエの嘘だね……。登場のインパクトが全てを吹き飛ばした……!万一突っ込まれても、「てへっ、バレちゃった☆」で切り抜ける最終奥義まで考えてるに違いない!)
「どうぞどうぞ、せっかくなのでみんなで食べましょうよ!」
「!?」
直後、メリーがいきなりそう発言し、蓮子の度肝をぬく。
(なっ、なにーーっ?!なにしとんじゃこの八方美人がっ!!そんなことで人気とろうなんて甘いのよ!ジャンボパフェに蜂蜜かけるくらい甘いわっ!!……あれっ、なんか美味しそうじゃん……今度こっそりやってみよ……。じゃなくてさ!!)
蓮子は顔を顰めてそう思案する。
「そ、そう?じゃあちょっとだけ……」
「そこまで言うなら……」
ユカリと霊奈は割り箸を割って鍋を見つめる。
(……言い争いによる鍋に手を出しづらい状況は彼女らの乱入によっていくらか払拭された……。であれば……今この静寂の中で、誰が先端を開き、1番に肉を掴むか……これが問題ね……)
メリーは俯いてそう思案する。
(あえて意地汚い、食い意地が張っている、等の汚名を引き受ける覚悟を持ち、周囲を牽制しつつ、先手を切った者にこそ、鍋を支配する権利が与えられる……つまりそれこそが……!)
蓮子も鋭い目つきでそう思案し、キッとさらに目つきを鋭くして、
((鍋女王!!))
蓮子とメリーは同時に心の中でそう発言する。
ってかそもそもなんだよ鍋女王って……
(あんたは黙ってろナレーター!……この勝負、第1手を……)
(制した者が勝つ!)
蓮子さん辛辣やなぁ……(´・ω・`)
(今現在、最も鍋女王に近いのは霊夢さんだ……、まだ鍋そのものに手をつけてないとはいえ、あれを食べ終わったあとに、流れで鍋に手をつける権利を有している……)
メリーはキッと霊夢を見つめる。
(だが……あれを気にする必要はない。何故なら……あの
顔から察するに霊夢さんは白滝の新食感に囚われている……。あの年頃の女の子には、肉などというカロリーの高いものより、白滝食ってる方がなんかカッコいい、だとか思ってるバカが多い……!)
蓮子もメリーの思考を察しているかのようにそう思案する。
(あとはこの2人だが、危険性は極めて低い。何故ならこの2人は、所詮お客さん。いきなり先陣を切って鍋に手を出す可能性はゼロ。2度3度と勧められ、ようやく遠慮がちに白菜白滝ネギあたりに手を出し始めるハズ!)
メリーは視線を移し、霊奈とユカリの方を見る。
(いいや違うね。この2人は侮れない!)
(よくわかってるじゃないか?)
蓮子は箸を掴んだまま右隣に視線を移す。
霊奈は薄ら笑いを浮かべて視線を送り返す。……つーか心ん中で思ってんのになんで会話が成立してんだよ……
(場の空気を読まず、さっさと箸をつけてしまう可能性がある……ユカリさんも同様……。やはり最大の問題はメリーね……。小娘の生態と趣向にいち早く気付き、さりげなく白滝を多めに更によそった……、間違いなくできる……!!)
蓮子は再度メリーに視線を移す……って俺はシカトなのね(´・ω・`)
(はっ!しっ、しまった!どうして霊夢さんによそってあげた後、蓮子にもよそってあげなかったんだ?!気配りキャラを演じつつ、最後に自分の分をよそう、鍋のレイアウトを変えるなどして、最も多く鍋に触れたという既成事実を作っておけば、鍋女王の座は私のものだったのに……!!いや、待て……、霊夢さんはもうすぐ食べ終わる……もう一度霊夢さんによそってあげるというのはどうだろう……、いやダメだ!2度目のチャンスは無い!!何故なら2杯目からは、自分で自分の取り分を演出してみたいと思うもの……!人にやられて耐えられるハズがない!こうなったら……やぶれかぶれだ!!)
メリーは奥歯を噛み締めて、
「それにしてもここの作者さんって、完結してからしばらく、随分と自堕落な生活を送ってましたよね……!!」
その瞬間、メリーは瞬時に視線を移し、鍋目掛けて箸を振り下ろす。
が、メリーの箸は目の前にあった彼女のご飯が入った茶碗に吸い込まれてしまった。
(なっ……?!)
慌ててメリーが鍋に視線を戻すと、
「あれ、火が弱くなってない?」
蓮子が鍋に覆い被さり、メリーの箸を阻んだのだ。
(鍋女王は……私だっ!!)
蓮子は鍋に向かって箸を振り下ろそうとする。
直後、何かの気配を察したのか、上を見上げると、そこには誰かの箸が宙を舞っていた。
「なっ?!は、箸だと?!」
(ま、まさか、あの一瞬で……?!)
そう。メリーが先程の一瞬で箸を投擲したのである。
「くっ!!」
蓮子は慌てて鍋の中に落下しようとする箸に箸を伸ばす。
(行けっ!!チョップスティック・ベーナーキャノンッ!!)
メリーは即席で考えた技名を心の中で叫ぶ。が、
箸が鍋に落ちる寸前、蓮子の箸がメリーの箸を掴む。
「なっ……?!」
メリーは思わず声が出てしまう。
(ふっ……、伊達に20年近く日本人やってないわよ!)
蓮子が勝利を確信した瞬間、蓮子の両隣から箸が伸びてくる。
そう。霊奈とユカリの箸である。
(勝ったっ!全ては今この時のためっ!!)
(しまった!!傍がガラ空き……!!)
蓮子がそう思った瞬間、
「ぶえっくし!!!」
蓮子たちの左から猛烈な風と粘液が飛んできて、蓮子たちの箸は四つとも吹き飛ばされてしまった。
「「「「!?」」」」
蓮子たちが左を見ると、霊夢がずるずると鼻をすすって、
「ああごめん、私風邪ひいたかもしれないわ。」
そうして蓮子の部屋にあったティッシュで鼻をかんでティッシュをゴミ箱に捨てた。
「なっ、なにーーーっ?!」
(て、手も足も使わず、たった1発のくしゃみで……)
(第1手を決めただと……?!)
蓮子とメリーは目を丸くしている。
(こ、こんな先手の決め方が……)
(あったなんて……!!)
それは霊奈とユカリも例外ではなかった。
ひとしきり鼻をかみ終えた霊夢はティッシュを再度ゴミ箱に捨てて、箸と自分の皿を持って鍋を漁り始めた。
(いや、事実……、こんな鍋はもう食べる気が起きない……。この鍋は霊夢さんしか食べられなくなった……!無邪気、無垢ゆえの勝利とでもいうのか……?!)
蓮子は霊夢がてきぱきと鍋から具を取っている様子を見てそう思案する。
(いや、この女、まさか!?)
蓮子は霊夢の表情が一瞬で歪んだのを見逃さなかった。
(くくくくく………鍋女王はアタシだよ…。)
(こっ、この女、無垢なんかじゃない……!!)
霊夢から放たれるドス黒いオーラに、霊奈すら畏怖の感情を抱いている。
(この女、鼻から白滝が出ているっ……!!)
(霊夢……恐ろしい子……!!)
蓮子とメリーもただ呆然とそう思案するしか出来なかった。
(うふふ……今頃気付いたのかいお嬢ちゃんたち?お腹を鳴らすところから白滝に夢中になるところまで……、全てはアタシの芝居……。ケツの青いお嬢ちゃんたちを油断させ、鍋女王になるための布石だったってことに……。そこで指を咥えて見ているがいいわ。あんたたちの愛する牛肉が、小娘に蹂躙される様をね!!)
霊夢は薄ら笑いを浮かべながら、鍋を掴み持ち上げる。
そして、ニタァと笑ってから、大きく口を開け、鍋を傾けて、全ての具を一気飲みし始める。
(い、一気飲み……だと……?!)
(博麗の巫女の胃袋は化け物か?!)
メリーと蓮子は呆然としながら霊夢を見る。
全ての具を平らげ、頰をリスのように膨らませた霊夢は満足そうに咀嚼する。
「こんばんはーっ」
「お?なんだ?もうおっ始めてたのか?待ってろって言ったじゃないか。」
すると、突然ドアが開け放たれ、そこから2人の女性が入ってくる。
2人の女性、それは魔理沙と美鈴だった。
(ふふふ……、残念だったわね魔理沙、美鈴……。お目当ての牛肉はもう……)
霊夢は余裕の表情で魔理沙たちを見る。が、その直後魔理沙が放った一言が衝撃を呼んだ。
「ん?なんだお前ら、豚肉ですき焼きなんてやってんのか?」
(!?)
「ったく、せっかくの宴会だってのに泣けてくるなおい。」
やれやれといった感じで魔理沙は首を振る。
((ぶっ、豚肉だとーーーっ?!!))
この時、霊夢と一緒に霊奈までもが雷が落ちたかのような衝撃に包まれた。
(そっ、そんなバカなことが……!豚肉だなんて、ありえない……!!確かにさっきのアレは牛肉の味だった……。牛丼とか、肉野菜炒めとか、焼肉とか!いつも食べてる牛肉の……!!)
(そうだ!いつも人里に漂っていた、焼肉屋の扉が開いた一瞬に漂ってくるアレと同じ……!い、いや、食べたことはないんだが……。確かにこれは牛肉の……!!)
「悪いな蓮子、ちょっと入らせてくれ。」
「あ、はい。」
蓮子は魔理沙にスペースを作る。
そして、ニヤリと笑った。
((まさかっ?!!))
(そうさ……。貴女が今まで牛だと思って食べてきた食卓の肉は全て!!)
((安い豚肉だっ!!!))
蓮子とメリーは霊夢を嘲るように見つめる。
「!!!」
(牛肉などという高価な代物が、宇佐見家の貧乏な食卓に並ぶとでも思いましたか?霊夢さん……!!んなもん私が食べたいわ……!!!)
(そ、そんな……今まで信じていたものがウソだったなんて……!私の生活の全ては虚構で固められたフィクションであり、実在の人物、団体とは一切関係ありませんだったなんて……!!!)
霊夢は既に寒気が止まらなくなっていた。
(私はその時、自分の足元が崩れ去るような言い知れぬ不安を感じていた……。もう誰も信じない、信じられない!豚があいつであいつが豚で……。嫌だぁぁぁ!!お前ら全員、両手首両足首骨折しろーーっ!!)
霊夢は半狂乱になって、テーブルに突っ伏して気絶してしまった。
(………1人消えたか。)
メリーは目を閉じてそう思案する。
(流石に打たれ強いですね霊奈さん。)
蓮子は横目で霊奈を見る。
(こ、これしきの傷で死ぬ私ではないぞ……、まだ何も成し遂げてはいないんだからな……!!)
(今いいセリフ言ったわね。)
霊奈が蓮子を見つめ返しそう考えて、ユカリがくすっ、と笑う。
鍋を見返すと、早速美鈴が油をひき始めていた。
「たまにはいいもの食べないとダメよ、とお嬢様からいいお肉をいただいてきましたからね。美味しいもの食べて、美味しいもの飲んで、パーっとお祝いしましょう!」
(これからだ……、居眠りと胸が取り柄の女と、ただ突撃するだけの無策女!!)
(生きるって書いて死んでいるって読む2人組!!)
((………チョロいな))
2人は互いにそう確信する。
(……問題はヤツか……)
(蓮子、決着つけようじゃない。)
「美鈴さん、魔理沙さん、よそいましょうか?」
メリーは先程と同じ戦法で攻め始める。
(先手必勝っ!!)
(メリーめ、また同じ手を……!)
(今度こそ、鍋女王の地位、手に入れる!)
「ああ、気を使わなくて大丈夫ですよ。」
「そういうこった。皆直箸でいいだろ?」
美鈴と魔理沙は2人して遠慮する。
(不覚っ!私としたことがっ?!これで全員区別なく、鍋に触れることを許してしまったっ!)
(裏目に出たね……、気配り作戦に囚われるあまり、気配り作戦返しの可能性に気付かなかった……、己の若さを悔やむがいいわ!)
蓮子は安堵と自身の表情を浮かべる。
(……認めたくないものねぇ。)
ユカリはこっそりそう感じていた。
(確かに私は失敗した……、だがまだ敗北はしていない!)
(そうね。もうしのごの考察する必要はない!)
(同感だな。戦士たるもの勝負に背を向けるわけにはいかん!)
(すき焼きーーっ!!)
メリー、蓮子、霊奈、ユカリの順にそう決意を新たにする。
(残りの文章量を考えると、ここで勝負を決めるしかない!)
蓮子は箸を構える。
(最初に鍋に手が届いた者が勝つ!!)
メリーも蓮子と同じように箸を構える。
((((鍋女王は……!!))))
(私が!)
(私が……!!)
(私がっ!!)
(私が!!)
蓮子、メリー、霊奈、ユカリは一気に勝負を決めようと手を伸ばす。
が、瞬間、猛烈な爆風が吹き荒れ、蓮子たちを吹き飛ばし、壁に叩きつけた。
「なっ、なにっ?!」
「あ、あれは……!!」
蓮子とメリーは鍋があった方を凝視する。
……そこには、猛烈な勢いで具材を食い荒らす2人組がいた。
そう。魔理沙と美鈴である。
2人は目にも留まらないスピードで鍋に箸を入れ、そのまま具材を口に運んでいる。
その余りの速さに、2人の動きはスローモーションのように見えてしまっている。
「な……?!」
「なんですって……?!」
霊奈とユカリも目を丸くしている。
「くっ!!」
諦めずに蓮子たちは魔理沙たちに向かっていくが、肘打ちされたり、蹴り飛ばされたりで全く歯が立っていないようだ。
(ばっ、バカな……!!)
(こんなことが……?!)
蓮子とメリーは何度も吹き飛ばされ既にボロボロになっていた。
(肉どころか、鍋にすら箸が……!)
(届かない……!!)
霊奈とユカリも既に満身創痍になっている。
(だがここで……!!!)
「「「「負けるわけには!!!」」」」
蓮子たちは再度鍋に手を伸ばす。
が、
「うわっ!!」
「っ!!」
「あべしっ!!」
「ひでぶっ!!」
呆気なく先程いた位置に戻されてしまった。
(こ、これは鍋女王どころじゃない……!!)
(こいつは……絶対神……!!)
((((鍋女神か?!!))))
(けっ、ケタが違う……!!鍋が遠い、届かない……っ!!ってか、この2人ここに何しに来たの?嫌がらせ?!)
蓮子はズタボロにされながらそう思案する。
(わ、私たちの今までの戦いはなんだったんだ……?!所詮井の中の蛙、無駄に傷つけあった、あの戦いに、何の意味もなかったなんて……!!)
メリーももうボロボロだ。
(いや……)
(違う……!!)
しかし、蓮子とメリーは箸を持つ手に再度力を込める。
直後、激しい閃光がほとばしる!
「なっ、なにっ?!」
「まさか……?!」
魔理沙と美鈴は目を見開く。
そう。蓮子とメリーが箸で2人の箸を掴み止めたのだ。
「だからこそ……っ!!」
「あの戦いを無駄にしない為にも、この勝負!!」
メリーと蓮子は箸を掴む手にさらに力を加え、
「「負けるわけには!!」」
2人を持ち上げ吹き飛ばした。
直後、瞬時に霊夢が起き上がり、鍋を掴む。
「いかないのよぉぉっ!!!」
「行けぇっ!霊夢さん!!」
「「鍋女神に……なれーーっ!!!」
蓮子とメリーの叫びに応えるように、霊夢は鍋を再び一気飲みし始める。
「「あーーーっ!!!」」
魔理沙と美鈴は一瞬で余裕の表情が崩れた。
霊夢は再びリスのように頬を膨らませ、具材を全て飲み込む。
「っふぅ……」
「なーんか、乳臭くてイマイチね。豚の方がいいわ。」
「「「「………」」」」
霊夢の言葉を聞いて、全員は黙りこくってしまう。
「てめぇぇぇ!!舐めてんのかーー!!」
「出せやぁっ!!今の全部、吐き出せやーーっ!!」
結局、殴り合いの喧嘩に発展してしまった。
「………はぁ。」
それを見ていた紫は大きくため息を吐いて、こうつぶやいた。
「…………くだらね」