この一匹狼の宇宙海賊に男という名の物語を 作:ホールデンマン
襲いかかる巨大熊が地響きを上げて崩れ落ちた。
「ふう、間一髪ってとこだったな」
そういうと葉巻を咥えた男がカズマを見やり、ウインクする。
「大丈夫だったかい、少年よ」
腰を抜かしていたカズマは、男の問い掛けに何度も頷いた。
「そりゃ、よかった。所でここらで一番近い村か街を知らないか?」
カズマが男の左腕を見る。
そこには腕の代わりに銀色に輝く流麗な紡錘型の銃が取り付けられていた。
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「助けていただいて本当に助かりましたッ」
カズマが何度も男に向かって頭を下げる。
「おいおい、礼はもういいよ。こうやって街に案内してもらえたしな」
「そういえば名前がまだでしたね。俺はカズマ、この街で冒険者やってます」
「俺はジョー・ギリアン、さすらいの旅人さ。よろしくな、カズマ」
自己紹介をしながら、ジョーがカズマにウインクする。
(……ああ、ベクトルは違うけどこの人もめぐみんと同じか)
カズマはそう理解した。
ちなみにめぐみんとはカズマのパーティーメンバーのひとりで、重度の中二病を患っている魔法使いの少女だ。
「あの、それでジョーさんもやっぱり俺と同じ冒険者なんですか?あれだけ強いとなるとやっぱり勇者候補とか?」
「それなんだが、冒険者ってのは一体なんなんだい?」
(この世界で冒険者を知らないって、もしかして転生者か?そういえば見た目も赤のタイツでかなり奇抜だし、あの左腕の武器も……)
色々と逡巡し、カズマはジョーに思い切って尋ねた。
「あの、もしかしてジョーさんも転生者なんですか?」
その問いにジョーが不思議そうな表情を浮かべた。
「なんだい、その転生者ってのは?」
「いや、すいません、こっちの話です。ええと、冒険者っていうのはですね……」
カズマの説明にジョーが耳を傾ける。
カズマの説明を聞き終えると、ジョーはゆっくりと頷いてみせた。
「なるほど。冒険者ってのは要するに便利屋のことか」
「まあ、ぶっちゃければそんな感じですね。俺は駆け出しでまだ弱いから雑魚モンスターの討伐とかお使いのクエストしかやってませんが、ジョーさんは強いから冒険者になれば、
すぐに稼げると思いますよ。あの一撃熊を逆に一撃で倒しちゃうほどだし……あはは」
「冒険者ねえ。中々面白そうだな、よし、登録してみるか。所でカズマ、その登録料を稼げる場所に心当たりはないか?生憎と無一文なもんでね」
「それだったら俺が貸しますよ」
「そうかい、何だか悪いな。借りた金は十倍にして返すよ」
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ジョーがカズマから借りた千エリスを支払って、早速冒険者登録をする。
受付嬢が水晶に手をかざすように指示した。
ジョーが言われた通りにする。
「お……おお、これは凄いですよ、ジョーさんっ、全てのステータスが極めて高いですっ、これならどんな上級職にもつくことがっ……あれ、ジョーさんの職業は固定されているようですね」
「職業の固定だって、そりゃなんだい、カワイコちゃん、もしかしてキャンディーのセールスマンかなにかかな?」
「いえ、違います。ただ『宇宙海賊』とだけ。なんでしょう、これは。こんな職業見たことありません。もしかして盗賊の亜種?」
受け取った登録カードを眺めるジョー。
「ふーん、まあ、いいさ。それじゃあ、早速、クエストってのを受けてみるか」
こうして、ここ、駆け出し冒険者の街アクセルでジョー・ギリアンの新しい生活が始まった。
ジョー・ギリアン──本名はコブラ、この男こそ銀河にその名を轟かせる宇宙最高の賞金首だ。
そんな男が何故この世界にやってきたのか。
その理由は二日ほど前に遡る。
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砂塵と怒号が飛び交った。繰り広げられる激しい銃撃戦。
炸裂するグレネードビームが、荒涼とした大地にいくつもの巨大なクレーターを作った。
「奴を殺せっ」
十台以上の改造ハンヴィーが、砂漠を突っ切りながらひとりの男に追いすがる。
だが、男は微動だにせず、ただ、ニヤケた薄ら笑いを浮かべているだけだ。
「奴めっ、どうやら死にてえらしいなっ」
海賊ギルドの殺し屋どもが男目掛けて次々にレーザービームを放つ。
だが、男は既にその場には居なかった。
地面に転がりながら、吹き上げる砂埃を弾幕に身を隠したのだ。
殺し屋どもが視界から消えた男の姿を急いで探し始める。
その瞬間、激しい閃光が轟き、ハンヴィーごと殺し屋どもを貫いた。
雷鳴のごとく響き渡る爆発音、照りつける陽光、燃え上がるガソリンの臭い。
何事もなかったかのように葉巻を咥え、男が立ち去る。
左腕に見えるサイコガン、この男こそ宇宙海賊コブラだ。
「全く、海賊ギルドの連中はしつこいったらないね。これじゃあ、オチオチ、お宝も探せないぜ」
コブラがこの惑星サンサを訪れたのは、かつてこの惑星で栄えた大貴族カラカラの財宝を手に入れる為だ。
財宝の隠された遺跡を突き止めたコブラは、そこで海賊ギルドの連中と鉢合わせし、宝の奪い合いとなった。
海賊ギルドの連中もカラカラの財宝を虎視眈々と狙っていたのだ。
だが、海賊ギルドはコブラの前に敗れた。
遺跡に潜り込んだコブラは様々なトラップを掻い潜り、ついにお目当ての財宝にまでたどり着いた。
しかし、あと一息の所で罠が作動し、気がついたら別の場所に飛ばされていた。
そこからコブラは二日ほど見知らぬ森を彷徨った。
そして偶然にも一撃熊に襲われているカズマを発見し、これを助けたのだった。
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『この一匹狼の宇宙海賊に男という名の物語を』
OP『デイ・ドリーム・ロマンス』
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ジャイアント・トードを討伐し、クエストを完了させると酒場で食事と酒を注文する。
「おい、アクアッ、俺の唐揚げを横取りするんじゃねえっ」
「うるさいっ、さっさと食べないカズマが悪いのよっ」
途端に騒がしくなる。
ジャイアント・トードの唐揚げを巡って、カズマとアクアが取っ組み合いの喧嘩を始めた。
「おい、おい、二人共、飯の時くらい喧嘩はよせって。俺のTボーンステーキ分けてやるから」
ジョーがナイフで切り分けた肉をカズマとアクアの皿に移してやる。
すると、途端に静まった。
「キャーッ、ジョーはやっぱり大人よねっ、ガキのカズマとは大違いだわっ」
「うるせいっ、そのガキからからあげ横取りする駄女神の癖にっ」
再び言い争いが始まる。
二人に呆れ返るジョー、その横ではめぐみんが黙々と食事をしている。
「まあ、喧嘩するほど仲が良いっていうしな。お似合いだぜ、二人共」
「それ、どういう意味ですか、ジョーさんっ」
「そうよっ、こんなダメニートと女神のあたしじゃ、釣り合いが取れてないわっ」
「まあ、まあ、お二人さん、それよりもビールが運ばれてきたぜ」
給仕が運んできたシュワシュワをいち早く受け取ると、アクアが一気に飲み干す。
「ぷはああっ、まさに生きてるって感じねっ」
「良い飲みっぷりだな、思わず惚れ惚れしちまったよ」
アクアを褒めるジョー、いつものようにウインク。
「そりゃ、勿論っ、なんてったってあたしは女神よっ」
ジョーに胸を張って威張るアクア、そんな女神にジト目のカズマがボソリと呟く。
「そんなの威張れるようなもんじゃねえだろ、このクソ女神。馬鹿じゃねえの」
「何よっ、最弱職の元引きこもりの癖にっ」
そんな二人をジョーが静止する。
「まあ、まあ、お二人さん、そんなにいがみ合わずに落ち着きなって。アクアもそんなに怒るとチャーミングな顔が台無しだぜ」
「チャーミングって褒められたわっ、ま、当然だけど」
ジョーの言葉に浮かれるアクア、根がかなり単純に出来ていることが丸わかりだ。
「ジョーさんっ、この腐れ女神を付け上がらせないでくださいっ、こいつ、どんどん調子に乗るんでっ」
「ん、それよりもカズマ、今後の予定って考えてるか?」
「今後の予定ですか?」
「ああ、流石にずっとカエル狩りじゃ、気が滅入ってくる。それに本来の俺はモンスターの討伐よりもお宝探しの方が性に合ってるんだ」
「それだったらダンジョン探索ですかね。意外と高価なアイテムが手に入ったりするそうですよ」
「なるほどね。面白そうだな」