この一匹狼の宇宙海賊に男という名の物語を   作:ホールデンマン

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盗賊のクリス

カズマ達とともに初級ダンジョンに挑み、無事にクリアする。

 

肩慣らしには丁度良かった。

 

それになんとなくだが、この世界の仕組みもわかりかけてきた。

 

ダンジョンの最奥にはお目当ての財宝はなかったが、代わりに珍しい果実を発見した。

 

めぐみん曰く、それは経験値やステータスを少量だが増加させる働きがあるらしい。

 

街に持っていけば一個辺り五万エリスで取引されるそうだ。

 

ちなみに収穫した果実は全部で十五個ほど。

 

売れば、それなりの金になりそうだが、話し合いの結果、パーティー戦力の強化という名目で、十個ほどみんなで食べることにした。

 

そのおかげか、カズマのレベルは三まであがった。

 

そして残りの果実を売り払い、金と均等に分配すると、酒場でいつものように馬鹿話をしながら食事をする。

 

それが今日のジョー……コブラの過ごし方だった。

 

血の滴るレアステーキを頬張り、こうやってカズマ達と酒を飲み交わしていると、昔の頃を思い出す。

 

それはかつての仲間だったドクやバットとの若き日の心躍る冒険であり、あるいは相棒のアーマロイドレディーと共に駆け巡った闘いの日々だ。

 

宇宙にその名を馳せた海賊コブラが、そんな感傷に浸るなど珍しい事だった。

 

相棒のレディーがこの事を知ったら、驚くに違いない。

 

あるいは、あなたらしいわね、コブラとでも微笑むのだろうか。

 

「ねえ、ジョー、その塩取ってちょうだいっ」

 

「あいよ」

 

コブラがアクアに陶器製の塩壺を渡してやる。

 

「それにしてもジョーさんの魔法は凄いですねっ、わたしの爆裂魔法にこそ及びませんがっ」

 

「めぐみんっ、そりゃ、ジョーさんに失礼だろっ、時間はかかるわ、一発しか撃てないわのネタ魔法と一緒にするんじゃねえっ」

 

間髪入れず、カズマがめぐみんにツッコミを入れる。

 

「カズマもめぐみんも食事の時くらい大人しくしたほうがいい」

 

そんな二人をダクネスがたしなめる。

 

このパーティーの食事は良く言えば賑やか、傍目から見れば騒がしい事この上ない。

 

そんな時、隣のテーブル席で飲んでいた荒くれ冒険者の一人が絡んできた。

 

相当飲んでいるらしく、酒臭い息を振りまいている。

 

「おい、やめとけよ、モハメド」

 

仲間と思しき男が言う。

 

「ふん、止めるんじゃねえよ、ダストっ、こっちは女日照りだってのに見せつけやがってよっ、少しはこっちにも回しなっ」

 

モハメドと呼ばれた男が、鼻息を荒げながらめぐみんの肩を掴む。

 

「ぎゃああっ、なんですかっ、この酔っぱらいはっ」

 

突然、酔っ払った巨漢のゴツゴツした太い指の感触を肩に受け、慌てふためくめぐみん。

 

「いいじゃねえかよ、ついでにそっちの水色髪と金髪の姉ちゃんも俺達と一緒に飲もうぜ」

 

好色そうに下卑た笑いを浮かべるモハメド、その手首を鷲掴むとコブラが制止する。

 

「やめておきなって。酒は楽しく飲むもんだ。あんた、スマートじゃないな。それじゃあ、女の子に嫌われるぜ」

 

「何だ、兄ちゃん、この俺を怒らせてえのか?」

 

金壷眼をギョロつかせ、モハメドが充血したその眼を剥いてコブラを睨んだ。

 

「ほう、ちなみにあんたを怒らせるとどうなるんだ?カエルとタンゴでも踊るのかい?」

 

そのコブラの台詞にモハメドは拳で返事をした。

 

だが、モハメドの繰り出したストレートパンチは、虚しく空を切るだけに終わった。

 

その瞬間──コブラの鋭いフックがモハメドの顎を捕らえる。

 

テーブル席に吹っ飛ぶモハメド、酒杯や料理を盛った皿が音を立てて床に散乱した。

 

「あんたの連れは相当酔っ払ってたみたいだな。いきなりおねんねしちまったぜ」

 

「へ、やるな、兄さん、このモハメドは上級職ともタイマン張れる強さだってのによ」

 

「へえ、この酔っ払ったゴリラがねえ」

 

ダストが気絶したモハメドの上体を起こすと、肩を貸して立ち上がらせる。

 

「兄さん、今日のところはこれで失礼させてもらうぜ。この詫びは後日、キチンとするからよ」

 

「ああ、別にかまわないさ。それよりもゆっくりと養生させることだ。当分は流動食暮らしだろうからな」

 

そういうとコブラが、取り出した葉巻に火をつける。

 

その姿を見て、カズマは思った。

 

なんだこれ、すげえカッコイイぞ、これが大人の男の魅力なのか、と。

 

 

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          『この一匹狼の宇宙海賊に男という名の物語を』

 

            OP『スペースコブラ』

 

 

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隆々と盛り上がったたくましい筋肉に熱い湯を浴びせる。

 

ここはアクセルの街に置かれた大衆浴場だ。

 

汗を流し終え、コブラは間延びをしてみせた。

 

「ふう、さっぱりした。こうなると、冷えたビールが欲しくなるな、カズマ」

 

「労働を終えた後のシャワーとシュワシュワはたまらないっすからね」

 

「よし、それじゃあ、早速酒場に繰り出すか」

 

仕事を終えてから公衆浴場で汗を流し、酒場でシュワシュワを楽しむ。

 

そんな日々が続いていた。

 

「ちょっと待ってよっ、カズマっ、ジョーっ、私達もすぐに上がるからっ、シュワシュワの抜けがけは許さないわっ!!!」

 

隣の女湯から聞こえるアクアの大声。

 

「わかってるってっ、俺達は外で待ってるからもう少しゆっくりしててもいいぞっ」

 

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久しぶりの単独行動だ。

 

コブラは侵入した上級ダンジョン内部を慎重に進んだ。

 

闇から飛び出てくるモンスターやトラップに警戒しながら。

 

柱廊を突き抜け、十字路に出ると、コブラは右の方へと曲がった。

 

途端に頭上から激しい金属音が鳴り響いた。

 

身を屈めて、コブラがトラップを躱す。

 

トラップは巨大な振り子鎌だった。

 

鈍色を放つ鎌が、獲物を逃したとばかりに虚空で揺れている。

 

「やっぱり一人で来て正解だったな。流石にこいつは今のカズマ達には荷が重いだろうぜ」

 

物陰から次々に飛び出してきたストーンゴーレム達にサイゴガンを浴びせ、全て始末すると、コブラは再び歩を進めた。

 

上級ダンジョンとは言っても、この宇宙海賊の前では形無しだ。

 

ダンジョンに出現するモンスターは、どれも上級職の冒険者に匹敵する強さを誇り、それが集団となって襲いかかってくるのだ。

 

だが、そんなモンスター達も不死身の宇宙海賊と呼ばれた男を前に次々と倒されていった。

 

「さて、お宝、お宝っと」

 

壁伝いにダンジョンの奥へと向かうコブラ。

 

「きゃあああああっ」

 

その時、通路にけたたましい悲鳴がこだました。

 

「ん、なんだっ」

 

反射的に悲鳴が聞こえた方角へとコブラが駆け出す。

 

コブラの脚力は素晴らしい疾走を見せ、すぐにその場へとたどり着いた。

 

「何だ、あのデカイ蛇はっ」

 

見ると、そこには三叉の首をもたげた二十メートルほどの巨大な蛇が、銀髪の少女に襲いかかろうと赤い舌を出して威嚇しているではないかっ。

 

「待ってろっ、今助けてやるっ」

 

蛇の頭部目掛けてコブラがサイコガンを炸裂させた。

 

蛇がその巨体を震わせながら、地面に倒れる。

 

「た、助かった……」

 

その場にへたり込む少女。

 

「怪我はないか?」

 

「うん、大丈夫だよ、助けてくれてどうもありがとう」

 

コブラが少女に腕を貸し、立ち上がらせてやる。

 

「俺はジョー・ギリアン、君は?」

 

「アタシはクリス、冒険者だよ。ちなみに職業は盗賊だね」

 

「ほう、それなら俺とご同業ってわけか」

 

「へえ、じゃあ、あなたもアタシと同じ盗賊なんだ?」

 

「ああ、厳密には海賊だがね。よろしくな、クリス」

 

「うん、アタシの方こそよろしく、ジョーッ」

 

「それでクリスもやっぱりお宝狙いかい?」

 

「勿論だよっ」

 

「なるほど、それじゃあ、仲良く探索といこうか、見つけた財宝は山分けってことでさ」

 

そう言いながら、軽くウインクするコブラ。

 

そんなコブラにクリスは笑顔を浮かべながら、うんっ、と頷いてみせた。

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