この一匹狼の宇宙海賊に男という名の物語を   作:ホールデンマン

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キャベツだ

再びコブラとクリスはダンジョンの探索を続けた。

 

朽ちた柱を背にしたクリス、辺りにモンスターやトラップがないかを確認し、コブラに合図を送る。

 

「ジョー、辺りに危険はないよ」

 

「OK、クリス」

 

俊敏な身のこなしで回廊を進んでいくコブラ。

 

物音ひとつ立てずに暗がりから暗がりへと素早く移動するその姿は、まるで野生の黒豹だ。

 

それは強靭でしなやかな肉体を持ったコブラだからこそできる芸当だった。

 

途中で二人がT字の分岐路に突き当たる。

 

「ふむ、さて、右か左か、どっちだと思う、クリス?」

 

クリスに尋ねるコブラ。

 

「うーん、ちょっとアタシにもわからないかな……」

 

「よし、じゃあ、コインの表と裏で決めよう」

 

「運任せでいいのかなあ」

 

クリスにウインクするコブラ。

 

「こういう時は運命の女神に任せようぜ、クリス」

 

そう言いながら、コブラが親指でコインを弾く。

 

そんなコブラの仕草にクリスはおかしそうに笑った。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

         『この一匹狼の宇宙海賊に男という名の物語を』

 

           OP『スペースコブラ』

 

 

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「たくっ、モンスターってのはシツコイなっ」

 

小脇にクリスを抱き抱え、部屋中を走りながらコブラが愚痴る。

 

まあ、いくら倒しても切りがないのだから、流石の宇宙海賊だって愚痴りたくもなるだろう。

 

穴から次々に湧き出てくるストーンゴーレムをサイコガンで片っ端から撃ち抜いていくが、全く収まる様子がない。

 

「コブラっ、あと少しでモンスターの湧きも収まるよっ」

 

「そりゃ、本当かっ、クリスっ!?」

 

サイコガンから放たれた閃光に頭部を撃ち抜かれ、倒れるストーンゴーレム。

 

だが、倒れた仲間を踏み砕きながら、新しいストーンゴーレムの群れが二人に押し寄せてくる。

 

全く、嫌になってくるぜと思いながら、それでもコブラはストーンゴーレムを倒し続けた。

 

ようやく湧きが収まった時には、ストーンゴーレムが部屋一面、瓦礫の如く重なっていた。

 

全部で百体ほどはあるだろうか。

 

「ふう、流石にくたびれた。喉もカラカラだぜ。こいつは冷たいビールが欲しい所だね。正直な話」

 

コブラが額に浮かんだ汗を手の甲で拭いながら言う。

 

「あっ、扉が開いたよっ、コブラっ」

 

「おっ、よしっ、行ってみるか、クリスっ」

 

「うんっ」

 

新しく現れた部屋へと飛び込む二人。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

ジュークボックスから流れるのは、レイ・チャールズの名曲『Hit the road Jack』だ。

 

その横で踊るのはコブラにクリス、そしてアクアの三人。

 

「イエーイっ、この曲いいわねっ」

 

「そりゃ、なんてったってレイ・チャールズだからな。それにしても良いもん見つけたよ、本当」

 

咥え葉巻でノリノリのツイストを披露するコブラ。

 

このジョークボックスは上級ダンジョンで見つけてきたものだ。

 

クリスによると、ダンジョンでは、たまにこういう珍品が手に入るらしい。

 

酒場にいた客の何人かが、コブラ達に便乗して踊り始める。

 

ダクネスも面白そうだとコブラ達の輪に入った。

 

耳を弄するアフロアメリカン独特のリズムに合わせ、ステップを踏むコブラ。

 

見事なリズム感覚だ。

 

「アクアはともかく、ジョーさんも年の割にはやたらとテンション高いなあ……」

 

気怠そうにクリムゾンビアを啜りながら、カズマが呟く。

 

「そういうカズマは年頃の割に無気力です」

 

「うるせえよ、めぐみん……」

 

「おーいっ、カズマっ、めぐみんっ、一緒に踊らないかっ」

 

「いや、遠慮しておきます……」

 

「同じく」

 

「そうかい、そりゃ、残念だ」

 

その時だった。

 

『緊急クエスト発生っ、緊急クエスト発生っ、キャベツの捕獲をお願いしますっ』

 

「なんだ、なんだ、折角気分良く踊ってたってのに」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

それは空飛ぶキャベツだった。

 

夜空一面に飛来する雲霞の如きキャベツの群れ、群れ、群れ。

 

「キャベツだっ」

 

「マヨネーズ持ってこいっ」

 

空を仰ぎ見ながらコブラが呟く。

 

「ほう、こりゃ、射的をするにはおあつらえむきのキャベツだな」

 

襲いかかるキャベツを次々に撃ち落としていくコブラ。

 

そんな撃ち落とされたキャベツを次々に拾っては、カズマがカゴの中に放り込んでいく。

 

「いやあ、大量ですね、ジョーさん。ひとつ一万エリスだからこれだけで軽く五十万エリスにはなりそうですよ」

 

キャベツで山になったカゴを叩きながら、カズマがニンマリと笑みを浮かべる。

 

その刹那、西側から冒険者達の叫び声が飛んできた。

 

「うわあああっ、化物キャベツだっ」

 

いつのまにかコブラは叫び声の上がった方向へと足を向け、脱兎のごとく駆け出していた。

 

「ま、待ってくださいよ、ジョーさんっ」

 

コブラに追いすがるカズマ、だが、脚力が違う。

 

「なるほど、こりゃ、また随分と食いでがありそうなキャベツだな。これ一玉で千人分のサラダが作れそうだぜ」

 

軽口を叩きながら、コブラは巨大なキャベツを見据えた。

 

このサイズなら人間くらい、軽く一呑みにできるだろう。

 

巨大キャベツが大口を開き、コブラに向かって飛翔した。

 

だが、サイコガンの轟音が辺りに響き渡ると、哀れな巨大キャベツは地面へと落下していった。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

それからは連日連夜のドンチャン騒ぎだ。

 

なんせ降って沸いたように大金が転がり込んできたからだ。

 

コブラ、カズマ、アクア、めぐみん、ダクネス、クリスにもそれぞれ五十万エリスの賞金が支払われた。

 

これには普段、ローテンション気味のカズマも小躍りしたほどだ。

 

今もクリムゾンビアを片手にジョークボックスの脇で体をくねらせて踊っている。

 

ちなみに今日のジョークボックスから流れている曲はボブ・マーリーの『Bad Boys』だ。

 

「ヒャッホーっ、お金よっ、お金っ、五十万エリスよっ」

 

アクアも金に目の色を変えてはしゃいでいた。

 

物欲まみれの女神なのだから、これは仕方がない。

 

今日も冒険者ギルドは平和だ。

 

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