チートそうでチートじゃない、けどあったら便利。そんな個性 作:八神っち
「いやー疲れたぁ!」
医務班であるリカバリーガールの下に行き銃爆破の際の細々とした破片による傷の治療を受けて、観客席でクラスメイトに声を掛けながらも心操の隣に戻りそう言った。
「お疲れ。大立回りだったじゃないか。俺と違って」
「いやいや心操の場合は相手が悪かっただけだって。それにやっぱり慣れないわ自分から壊すのは」
動き回りながらの連続復元のせいで体力もそれなりにキツイし。
「普段から物を大切にする物見らしい」
「物をその場で創れる八百万だから遠慮なしに壊せたからな……あれが一点物とかだったら壊さなかったな」
壊す為に個性を使う。直せる私でも……私だからこそ嫌になってくる。雑に扱っても直してくれると思っている、そんな連中を相手にする事が多々あるのだ。
自分がそんな連中と同じ事をしていると思うと反吐が出てしまう。
「直せるからって壊していい事にはなんねーんだよ」
言い聞かせる様にそう呟く。
……………
………………
一方A組は戻って来た八百万を労いながら迎え入れて先程の戦闘を分析していた。
「分かってはいたが実際見ると修復速度が凄まじいな物見くんは」
「うん。実質的なタイムラグは無いと考えてもいいレベルじゃないかな」
「八百万ちゃんも素早く物を作れるけど考える必要がある分ラグが出来てるわ」
「そのラグを見逃さずに突いて行く物見の洞察力と行動力、それに個性の速度……厄介な相手になるな」
「それに物見さん明らかに何か札を隠してるね。彼女の個性からして壁と拾った地雷だけしか持ってないっていうのは考え辛いよ」
「前もってあのポーチは渡してあると聞いている。なら相応の準備はしているだろう」
次の対戦相手である常闇が警戒を強める。元々何が種目としてあるか分からない体育祭だ。どのような種類の道具を準備していても驚かない。
「一番確実なのは物を取り出す前に倒す事……か」
「それか目を潰す事だな。最も物見くんは自身の弱点についても理解しているから対策の為に眼鏡を使用しているのだろう……眼鏡キャラが被ってしまっているが」
「それに物見は委員長だからな。案外お似合いなんじゃねーの?」
上鳴が煽る。それに対して飯田は否と異を唱える。
「残念ながら俺も馬に蹴られる覚悟はない。だろう緑谷くん」
「えーと……ああ心操くんか。確かに彼らの信頼関係はちょっとやそっとじゃ壊せないかな」
「それについては俺も聞いたぜ。何であんな個性信用出来るのかって」
尾白が先程の事を思い出しながらも言い出す。周りから「よくそんな事聞けたな」と呆れた目で見られていたが。
「それで物見ちゃんは何て?」
「「ヒーロー目指すって言ったから」だと」
「物見ちゃんらしいわね」
その一言を聞いて緑谷は別の事を思い出していた。「ヒーローになれるって言ってくれた」と。
普通科とはいえ一緒に雄英に入学した事に物見の信頼と心操の努力が垣間見える。
ただのクラスメイトにそう言われただけで倍率300越えの雄英を目指す者などそうそう居ないだろう。
「てかこの前言ってた弁当作ってる男性ってもしかして」
「……」
「……」
次の瞬間には女子達はキャーキャーと黄色い声を上げる。
「超ラブラブじゃん!え?あれでモノミンは彼氏じゃないとか否定してんの!?」
「一方的なラブコールの可能性!?物見さんあの口調なのに滅茶苦茶乙女!」
「あの胸で落ちないとか、ええい普通科の精神力は化け物か!?」
いつでもどこでも恋バナには盛り上がる女子達。
「ちっきしょー!あんな不気味な奴にすら彼女がいんのに!」
「あのオッパイブルンブルーンな彼女とか勝ち組も良い所じゃねーか!爆発しやがれ!」
上鳴と峰田が血の涙を流していた。戦闘の分析はどこ行った。
………………
………………………
A組なんか盛り上がってんなーと思っている内にステージが整い次の試合に移っていた。
私と八百万の試合とは真逆の男同士の正面からの殴り合い。物が飛び交う先程と違って地味で泥臭い戦い。だが不思議と応援したくなる……昔の少年漫画を見ている気分である。
結果は引き分けで目覚めた後に腕相撲なんかで勝敗を決めるとの事。
1回戦最終試合である麗日と爆豪は……まあ爆豪の一方的な試合で幕を閉じた。途中で相澤先生が爆豪を非難したプロを叱っていた。
切島と鉄哲が目を覚まして腕相撲を行った結果、切島が勝ち2回戦に進出した。
2回戦
緑谷vs轟
飯田vs上鳴
常闇vs物見
切島vs爆豪
少しの休息時間の後に2回戦の第1試合が開始される。
緑谷がボロボロになりながらも轟の氷結を相殺。そして個性の使用を煽った後が問題であった。
「おーおー派手にぶっ壊すねぇ」
お互いに全力をぶつけ合いコンクリートの壁に阻まれながらも大爆発。ステージは半壊して緑谷は場外の壁に吹っ飛ばされていた。
『緑谷くん場外!勝者轟くん!』
ミッドナイトから勝敗のアナウンスが入るが皆ドン引きであった。そりゃそうだろう、あんな死んでもおかしくない戦い方をしたのだ。後から説教が入るだろうな。
ボロボロの緑谷は即担架で運ばれていった。轟も思い詰めた顔でステージを後にする。
半壊のステージをどうするのかと見ているが先生方も対応に困っている感じであった。
「少し行ってくる」
「ああ」
心操が何も言わずに送り出す。内心ではお人好しめとでも思われているんだろう。安心しろ自覚はあるさ。ステージに降りて話し合いを続けている先生方に向かう。
「お困りですか?」
「物見さん。貴女は休んでていいのよ」
「そうだ。君にはまだ試合が残っているんだ。こっちはどうにかするから」
「余計なお世話……ですか?」
先生方が頷く。復旧にどんだけ時間がかかるか分からないのに良く言うよ。
「私も普通科ながら雄英生です。だから言いますが……『余計なお世話こそヒーローの本質』でしょうヒーローさん?」
それにこういう時のための私だろう。その言葉を聞いた先生方も少しの話し合いの末にお願いされる。
「了解です。……この体育祭でアイテムの復元しか使ってないですし、折角だから本来の使い方知って欲しいんですよね」
先生方にそう伝えステージを視界に収める。そして個性を使用する。一瞬で修復されるステージに観客席から騒めき声が聞こえる。
『これこそが彼女……物見直の本来の個性の使い方です!ありがとうね物見さん』
ミッドナイトの一言で騒めきが一層強くなる。特にプロヒーローから「是非欲しいな」と声が多数上がる。
「じゃあ私はこれで」
騒めきと視線を一身に受けながらもステージを後にする。
実際の所、主人公の勝因は奇襲により八百万の思考時間を削いだ事と単純な発動速度差ですね。
初期の八百万はとにかく奇襲に弱いイメージがあります。
ちなみに主人公の心操に対する好感度が実際どれくらいなのかと言えば……1回くらい体重ねてもいいかなーと思ってるくらいの好感度です。
職場体験の票数主人公はどれくらいが妥当なのだろうか。