チートそうでチートじゃない、けどあったら便利。そんな個性 作:八神っち
あとここまで書いてて主人公がやってる事の既視感にようやく気付いた。
3回戦のアナウンス前に心操に起こされながら第1試合を眺める。
飯田が1回戦に見せた超加速により轟が個性を発動しきる前に先制。そのまま場外まで連れ去ろうとした所で足のエンジンの排気筒を塞がれて失速。そのまま全身凍らせて轟の勝利に終わった。
「今回は地味に終わったなーっとじゃあ行ってくるわ」
第2試合で私と爆豪だが……爆発系の個性って良い思い出が無いんだよなー。
「こうして正面から顔合わせんのって何気に初めてか爆豪」
「……ここまで来たんだ「退け」ってのは聞かねぇよなロン毛」
「当たり前だ……てかロン毛って」
そのあだ名結構多くに当てはまりそうだが……私ってそこまでキャラ個性無かったか?……無かったわ。
「全力で来いよ?全部ぶっ壊してやるよ」
「壊されんのは勘弁だ」
お互い顔は笑いながら軽口を叩き合いミッドナイトのカウントが始まる。
『3!2!1!』
ポーチの中に手を入れながら出方を伺う。
『スタート!』
「死ねぇ!!」
先制して突っ込んでくる爆豪。それに合わせて投げるのは地雷と壁の欠片詰合せ。
「喝!」
視界に入る欠片全てを復元し擦り合わせて爆発させる。多くのビルの壁で押し出そうとするも爆豪が前方に爆発を起こして壁の勢いを落としながら躱す様に上空へ飛ぶ。
「っ!」
牽制に再度同じ事をしようとするも爆豪の起こす爆風で投げた物が後ろに流れてしまっていた。
「オラァ!」
「チッ!」
下がる間も無く距離を詰めて顔に向かって掌を振るう爆豪。間一髪で躱すも爆発で眼鏡が壊れる。
そして視界を塞ぐように再度目の前で爆破。バックステップでギリギリ直撃を避けるも煙幕が漂い前が見えなくなる。
「!!」
頭上から聞こえる爆発音、そしてその後には背中に強い熱と衝撃が走る。髪から焦げる匂いがして痛みに耐えながらも、壁の欠片を後ろに投げながら振り向くとそこには掌を両方向けている爆豪の姿が。
「っっ!!」
瞬間、掌を中心に強い光が発生。壁の復元が間に合わず直に見ていた目が一瞬で潰される。眩暈を起こしていると顔を思い切り掴まれて地面に押し倒される。片手を踏みつけて爆豪が一言。
「まだ続けるかロン毛」
「……参った」
『物見さん降参!勝者爆豪くん!』
『決勝は轟 対 爆豪に決定だぁ!!』
爆豪が体を離し視力が回復した後に立ち上がる。何にも出来ずに負けたな……
「爆豪」
「アァン?」
私は右手を差し出す。一瞬どういう意図なのか分からなかった爆豪だが握手を……するわけではなく掌をパンと叩くだけだった。爆豪らしいと思ってしまう。
「ありがとうございました。良い試合でした」
「少しは悔しがれザコが」
悔しいとは思うが負けた事実は変わらない。だからこそ次を考える様にする。それに自分で気付かなかった弱点も分かる様になる為負けて得る物の方が大きい。
決勝頑張れとだけ言い残してステージを後にする。
重い足取りでリカバリーガールの下に行き背中の火傷の治療をして貰う。
「アンタの個性……かなりの体力を消耗するみたいだね」
リカバリーガールが少し難儀な顔でこちらを見る。原因は私の個性の反動で体力的にほぼピークを迎えてしまっている。
リカバリーガールの個性は勝手に治すという訳ではなく他者の体力を使っての治癒力の活性化。故に今の私の体力では全て治すという事は出来ない事は無いのだが、全部治すと体力的に立てないレベルになるとの事。
「私としては治療に専念して欲しいんだけどね。物見さんは次の試合にも出る気なのかい」
「……はい」
どうせなら最後まで戦いたいというのが本音だ。だがそう答えるとより一層難儀な顔をされる。
「次の試合で個性を使用したらケガをしてもその場で治せなくなっちまうよ?」
「………」
遠回しな棄権の催促。次の試合で大ケガをしないとも限らない以上リカバリーガールとしては退いて欲しいのだろう。
「でも……やっぱり出たいです」
「……そうかい」
強情な娘だねと小言を言いながらもリカバリーガールが個性を使用する。最低限背中の火傷だけを治すに留める。
「綺麗な髪だったのにねぇ……本当に」
私の焦げた後ろ髪を見てそう呟くのであった。
負ける時はあっさり負けるのがウチの主人公です。
主人公の弱点である「目潰し・高機動・広範囲・高火力」全てを兼ね備えてる爆豪に勝てる訳無いんだよなぁ。
生身だと腕力任せの投擲になるので風を起こす相手にもマトモな火力が出ません。
ちなみに轟くんと戦うとどうなるかと言えば初撃の範囲攻撃は防げる……けどそれだけです。主人公から攻める手段が無いから勝ち目ゼロです。