チートそうでチートじゃない、けどあったら便利。そんな個性 作:八神っち
体育祭の翌日の休日。朝9時に起きた私はと言えば。
「むぅ~りぃ~」
死んでいた。いやマジで動けん。髪も真っ白だし。布団から出る気も起きない。
両親も昨日の体育祭でのハッスルを見て大興奮……かと思っていたがガチで心配された。主に爆豪のせいで。髪焦げたまま表彰式行ったからなぁ。
おぶって来た心操に両親共に感謝の言葉を言いまくっていた。伊達に3年間一緒に通い続けてないな。
私の体を心配してか今日一日何もすんなとお達しが出た。いや言われなくても何も出来ないが……せめて着替えがしたい……汗がヤバイ。
「悔しい……でも動けない」
女らしさ皆無のし○むら寝間着(お値段なんと在庫処分セールで500円)をどうにか脱げないかと体を布団の中でもぞもぞと動いてみるが……諦める。
「はぁ……インフルかかった時を思い出すな」
あの脱力感と何も考えられない感じが頭の中に過る。熱は無いから命の危機とかは無いけど。
「2度寝する気も起きないし暇だー」
そう!暇なのである!昨日までは体育祭のアレコレで忙しかったからその反動で暇な時間の潰し方を思いつかない。
「いつも何やってたっけ……」
今生の自分の行動を振り返る。起きて牛乳飲んで個性使う、牛乳飲んで個性を使う、更に個性を使う、あとは……牛乳飲んで個性を使って寝る。
「……牛乳ばっか飲んでるな」
コーンフレーク山盛り2杯を追加で食べれば良かったのか?……いやコーンフレーク地味に高いしな。うんコスパ悪いから無しだな。いやでも食パンとかも言う程コスパ良いか……?やっぱ日本人は米だな。うん。
「思考が安定しない……これも全部ドン何某って奴の仕業なんだ」
あっそうだ(唐突)A組の女子連中とレクリエーションの間に連絡先交換したんだった。
「ケータイ……ケータイ」
古き良き3世代位前と言われてる格安ガラケー(これを見た連中は皆可哀想な奴を見た目で見て来る解せぬ)を手に取りメールを確認する。
『メール着信無し』
……悲しい。
「まあいいやこっちから送れば何か返ってくるはず」
メール内容は
宛先:芦戸・蛙吹・麗日・耳郎・葉隠・八百万
タイトル:動けん
本文:暇
1ミリも生産性の無いメールが完成してしまった。駄目みたいですねこれは……もっと今どきの女子高生らしい文を……
タイトル:もうマジムリ……
本文:体がダルイっていうかーホントやってらんなーいって感じーwチョベリバーw
ないな。自分の中の女子力を信じた私が馬鹿だった。そういや白一色になった私の髪を見てみたいって言われたっけ。
「どう撮ればいいんだ……?自撮りスキルなんて皆無だぞ」
まあ適当に撮って……と。
タイトル:前言ってた白一色の髪
本文:これでいいか?あと動けんから布団寝っ転がったままで悪い。
画像も送付して送信っと。返事待つか。
「って早い。蛙吹が1番乗りか」
1分も経ってないのに返事が来た。なになに「髪は綺麗ね。だけど服がダサいわ」……ハハッ。
同じ様な内容がほぼ全員から来てしまった。そして私服のセンスも疑われてしまい今度買い物に行く事が強制的に決まってしまう。
中学の頃に一応仲の良かった女子にファッション云々を言われたな。そして服を見繕って貰った事があるものの。
「髪の配色割合が日毎にランダムすぎて諦められたんだが……」
黒7:白3と黒2:白8で印象が全く違うせいで難しいとの事。あいつらもその事分かってんのかね。
一応メールでその旨を伝えてみたら「想定済み」と言われた。マジか。
「外出着どうしてんのって……言われてもなぁ」
基本制服と返信。全員から冷たい返事を頂いた。芦戸と葉隠からは「彼氏が可哀想」と言われた。誰だ彼氏って……もしかしなくても→心操
お前らは制服女子の凄さを何もわかっていない。と送ろうと思ったが何故か耳郎が傷つきそうなので止めといた。
その後も他愛のない話をして昼前になった。
…………
おなかすいた。両親からは援軍を呼んであると聞いていたが……と思ったらインターホンが鳴り扉が勝手に開かれる。
「物見、居るか?」
聞きなれた声。援軍とは何か荷物を持った心操だったらしい。家も近いしな。
「物見……って案の定か」
個性の反動の大きさを知っている心操は特に心配する事も無く部屋に上がり込む。
「悪いな心操。お前も疲れてんのに」
「動けない君ほどじゃ無い」
腕は動くのかと言われて動くことをアピールして上半身を起こして貰う。そして肩を借りて洗面所に向かう。
「助かった」
今の今までトイレを我慢してた訳で……援軍来なかったら諦めてた所だった。現在は親が作った飯を温めて貰っている。
「ほらよ」
「ありがと。んでその荷物はなんぞや?」
出された飯を食べながら尋ねる。
「ん?ああうちの親がお前んちに持ってけって持たされた素麺だ」
「おーありがたい。毎年毎年すまんな」
「こっちこそ送られてくるのはいいけど扱いに困ってるんだ。持ちつ持たれつって事で」
「今度何か持って行くな」
「それについても親が「たまに誤って作った弁当を渡してくれてるの知ってるから何もいらない」との事だ」
「お前んとこの両親らしいな」
もきゅもきゅと食べ進めて完食。食器を片して貰いお互いに麦茶を飲んでくつろぐ。
「そういや心操」
「なんだ」
「着替え手伝え。あとタオルで汗も拭いてくれると助かる」
あ、心操が固まった。
「すまん。着替えはいいからタオルで汗拭くだけでいいから」
「それならいいけど……たまに不用心だな」
呆れられた声で言われる。反論出来ないな。
「別に心操になら肌見られてもいいんだがなぁ……」
「そういうのが不用心だって言うんだ」
怒られた。ピッチピチのJKが言う事じゃなかったな。
「すまんすまん」
「まったく……困った奴だ」
立ち上がりタオルを取って来る心操。その間に髪を前にやってシャツの後ろ側をたくし上げて……下着も一旦外してと。
「お前凄い恰好してるな……」
「そうか?いいから拭いてくれ」
背中にタオルがあてられる。ふわふわな布地で拭かれてベタついていた感覚が無くなっていく。少しくすぐったいもののそれも乙なものだ。
「んっ……んーっ!」
背中を満遍なく拭かれてスッキリする。もう1枚タオルを渡されて前は自分で拭けとお達しが入る。仕方なしか。
「ありがと」
「どういたしまして」
体を拭き終えて再度麦茶片手にダラダラと過ごす。
「そういやさっきA組連中とメールしてたんだけどさ」
「どうした」
「出かける時の私服って見たい?」
「本当にどうした?」
話を飛ばしすぎた。1から説明してみると「別に気にしない」と言われた。制服で出かけるのも私らしいとの事。褒められて……はいないだろうな。現在の寝間着を見て溜息をつかれた。
「いいじゃん……し○むら」
「俺は何も言ってない」
いやー露骨に残念な方向に走る様に思われてるな。否定できないのが悲しいがな!見返してやるとは思わんがな!
そんな休日の一幕であった。