チートそうでチートじゃない、けどあったら便利。そんな個性   作:八神っち

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 職場体験は1日目と2日目と最終日だけ書きます。


丸投げって楽だよね

 書類作成の講義が終わりお礼を告げる頃には割と良い時間になっていた。

 

「事務員さん達はそろそろ帰宅になるんですか?」

「そうだね、この書類を纏めたらね。物見さんは確かうちの事務所に泊まり込みだったっけ」

「ですね」

 

 そう私はこの事務所の一部屋に泊まり込みである。一応ホテルをとってくれるとも言ってくれたのだが遠慮してしまった。貧乏性なのである。

 それにこの事務所は冷蔵庫やお風呂も完備されてるしトイレもある。布団も仮眠室にあるので問題ない。

 

「夜少なくなっちゃうけど大丈夫?一応宿直が1人は残るけど」

「子供じゃないんですから大丈夫ですよ。それにヒーロー事務所ほど安全な場所なんてそうそう無いでしょう」

 

 ヒーロー事務所にわざわざ忍び込むアホなんてそうそう居ないだろう。ぶっちゃけ下手なホテルより安全だ。

 

「お、オイラも事務所に泊まろうかなー」

「よし私は野宿する」

「ヒデェ!」

 

 即決されて悲しみに包まれている峰田だが周りは私の味方である。峰田に味方する理由が無いとも言う。てかお前ホテルだろ。

 

「お疲れ様でしたー。じゃあ物見さんと峰田くん明日もよろしくね」

「あっはーい。お疲れさまでした」

「お疲れさまでした」

 

 事務員の一人が帰って行きそれに続き次々と職員さん達が帰って行く。

 

「峰田はホテルのチェックインとか大丈夫なのか?」

「あっ!そろそろ行かねぇとヤバイ!」

「行ってこい行ってこい」

 

 じゃーなーと職員達に挨拶を済ませながら去っていく。よし出て行ったな。

 

「んー!やっとあの視線から解放された!あー無駄に疲れた」

「物見さんも大変だね」

「ずっとチラチラ見て来るんですもん。気付かないとでも思ってるのか……はぁ言っても聞かないでしょうからね。あのタイプは」

 

 ついつい愚痴を言ってしまう。苦笑いの男性職員さんに「同じ男としてごめんね」と言われてしまう。いやいや貴方は悪くないですよ。

 ふと私は現在手持ち無沙汰になっている事に気付いてしまう。このまま邪魔する訳にも行かないし何かせねば……

 

「まだ仕事続きそうですか?何か淹れてきますよ?」

「ん?じゃあお願いしようかな」

「わかりました。少し待って下さい。他の方たちもいりますかー?」

 

 パソコンと睨めっこしながら仕事を続ける職員達にも尋ねると各所から「いる」と声が上がる。私は人数を確認して下の階にある給湯室に向かう。

 

……

 

「良いお湯だったわ!ってあれ物見さん達は?」

「峰田くんならホテルのチェックインへ帰りました。物見さんはお茶を淹れて来てくれてますよ」

「お茶をってあの服で?なんか本格的にメイドになってるわね」

「気遣いも出来る良い子ですね。ホント体験と言わずに今すぐにでも雇えませんかね?」

「難しいでしょうねーそれに物見さんにはヒーロー免許を取って欲しいのよね。まぁ彼女今は普通科なんだけど」

「彼女をヒーロー科から落とした雄英にはがっかりですよ。目先の戦闘力を優先しすぎです」

「ここで言っても仕方ないわよ。職場体験での経験がヒーロー科編入の足しになるように頑張りましょう」

 

 

……

 

 

「すいませんお待たせしました」

 

 コーヒーだけじゃ寂しいかなと思い少しばかりの軽食を作っていたため時間がかかってしまった。作り始めて先にコーヒー出してから作りに戻った方が良かったかと思ってしまったのは内緒だ。

 

「遅かったわねってこれ物見さんが?」

「はい。お口に合えばいいんですが」

 

 広めのトレイに沸かしたコーヒーと砂糖とミルク、それと先程買った食材で作ったサンドイッチが並んでいる。

 

「ありがとう物見さん。じゃあいただくわね」

「はい。皆さんもどうぞ」

 

 自分の分のコーヒーカップは増えたMt.レディにパスする。あとで自分で淹れればいいし。

 舌鼓を打つ職員さん達を端で眺めているとMt.レディからちょいちょいと手招きされる。

 

「ねぇ物見さんってご飯とか作れる?」

「家庭料理なら一通り」

「お願い!私の分も作って!ぶっちゃけ自分で作るのって面倒でね!」

「構いませんが。それだと貴女の帰りが遅くなるのでは?」

「いーのいーの帰ってもどうせ誰も居ないし!」

 

 笑い飛ばすMt.レディだが心なしか涙が見えてるのは気のせいだろうか。一応宿直の人にも必要か聞くと欲しいとの事。他の人も数名欲しいと声が上がっていた。

 

「分かりました。時間がかかりますがいいですか?」

 

 全員から構わないと返事を頂く。じゃあ作って来ますかね。基本3人分だから大所帯向けの料理は久々である。お皿とかあったのは確認済みだ。

 

「……本っっ当に今すぐ雇えませんか?」

 

 そんな話が聞こえてきた。

 

 その後は皆で夕飯を食べて各々帰宅。私は宿直の人から泊まる際の注意事項やらを聞いてお風呂に入り、学校に提出する用の日誌を書いてその日は寝る事にした。

 

「あっ仕事中はそのコスチュームで固定ね?」

「えー」




 ちなみに主人公を指名した事務所のほとんどから「なんで彼女ヒーロー科じゃないの?」と問い合わせがあった模様。
 家事が出来る人が居ると丸投げしたくなる人間の性。夕飯が欲しいと言った人達は全員独り身の模様。悲しいね!なお食材は経費で落としてる。

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