チートそうでチートじゃない、けどあったら便利。そんな個性   作:八神っち

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 オルガする(動詞):発破を掛ける。止まらない様に諭す。止まらないという意思を示す事。


48話で死にそうな物見UC(お顔はトランザム)

 実技試験はコスチュームが届いた1週間後と決まり書類を受け取り教室へ入ると一身に注目を浴びる。

 

「おっ!来た来た!謎のメイドヒーローさんが!」

「委員長すげーじゃん!新聞にデカデカと載ってるし!」

「委員長の署名活動俺も書いたぜ!あのニュース見たら書かない訳いかねーよ!」

「あっ!それ昨日の?私も書いたよー。委員長頑張ってね!」

 

 やんややんやと盛り上がるクラスメイト。私以上に誇っているな……てかさっきから一部の男子がメイドメイドとうるせぇ!

 

「物見」

 

 このクラスでそう呼ぶのは1人しか居ない。視線を向けると心操が居る。

 

「まあそのなんだ……ドンマイ?」

「ああ……」

 

 おおよその事情を察してくれた。ありがとう心操味方はお前だけだ。両親も結構ノリノリだったし。

 

「そういや心操。昼休み少し時間あるか?」

「あるけどどうした?物見……?」

 

 いつになく真剣になっているであろう私の顔を見て、向こうもまた真剣に答える。

 

「わかった。じゃあ昼休みに」

「おう。あ、それとだ……職場体験お疲れさん」

「物見程じゃない。お疲れ様」

 

 そしてクラスメイトにメイドメイドとからかわれながらも時が過ぎ昼休み。屋上前の踊り場(屋上は締まってた)。

 

「それで物見話ってのは?」

「それなんだがな……私のヒーロー科編入への試験が決まった」

「……そうか。話して良かったのか?」

「校長が特に問題無いと。いずれ分かる事だしな」

「それで何故それを俺に」

 

 そうだよなー。私も何故まずは心操に話そうと思ったのか……思い付くままに話してみるか。

 

「私達はさ……一緒にヒーロー目指して来ただろ」

「俺が目指していたのを君が着いてくる形だったが」

「それなのにさ……私だけ1人で先に行っちまうのがさ……なんつーか嫌なんだよな」

「物見……」

「我がままなのかな……一緒に進んで行きたいって思うのはさ」

 

 呟く心操は溜息を吐きコツンと私の頭を叩く。

 

「馬鹿か君は」

「……馬鹿とは何だ馬鹿とは」

「2人一緒に仲良しこよしでやって行ける程優しい世界じゃないだろヒーローは」

「わかってるんだけどさー私が先に行くのが……」

「だからそれが馬鹿だって言ってんだよ」

 

 心操が厳しい口調で言う。私は言葉が出ない。そんな事一度も無かったから。

 

「物見はさ……先に行くのがとか言うが、今回だけだと思うなら大間違いだ!いつもいつも俺の先を行ってるんだよ。受験の時も!体育祭も!今回の職場体験も!」

「心操……」

「そんな先を行ってたまに笑って振り向いてさ……そんなお前に憧れたんだよ。そんな君がヒーローになれるって言ってくれたから頑張れたんだよ」

「……」

「君が先に居るから俺は安心して進んでいけんだよ!だから今回も笑って言えよ。先に行くってさ」

 

 初めて知る心操の内情。それを聞いた私は考えを改めて嘆息。苦笑いで告げる。

 

「……ったく人の気持ちも知らないで」

「お互い様だ」

 

 ああ……安心した。こいつは私が先に行っても嫉妬なんてしない。追ってくれる。だからこそ私はこの言葉を言える。

 

「分かった。私は止まらないからさ……心操が止まらない限り、その先に私は居よう」

 

 だから……止まるんじゃねぇぞ

 

「……上等だ」

「言ったな」

「君こそ」

「……」

「……」

「ふふっ!あー悩んでたのが馬鹿らしい」

「一人で勝手にな。あんだけ真剣な顔してたんだ。てっきりもうプロになる!とか段取り飛ばして言ってくんのかと思った」

「流石にそれはねーわ」

「物見ならありえそうなのが怖いんだよ」

 

 向かい合って言い合って……そして笑う。これが本心を知った私達の今後の関係になるだろう。

 

「心操」

 

 さて本来ならこれで終わりで良いのだが……折角関係が変わったのだ。私も少し対応を変えてやろうではないか。

 

「どうし……!!」

 

 私から近づきお互い何も言わぬ……言わせぬ空白の10秒。そして私が離れて言ってやる。

 

「待ってるぞ私のヒーロー」

 

 固まっている心操を置いて私は踊り場を後にする。

 

 

……………

 

 

 踊り場の後に向かうのは学食。無料だからね!是非も無いよネ!

 今日は一人で食べようかと思ったら珍しく八百万に捕まる。そしていつもの席に連行。

 

「おーっす。緑谷と轟と飯田は災難だったな。まさかあそこに居るとは思わなかった」

「物見くんこそ保須市に居るとは思わなかったぞ」

「あ!うん峰田くんから聞いたよ保須の街を全部直したって!」

「あの脳無がぶっ壊した街をだろ、親父が珍しくすっげー褒めてた」

「やっぱヤベーよな物見の個性って」

「いやアレはヤベーってレベルじゃないから、それで何か署名があったんでしょ?」

 

 耳郎が切り出すのは署名の件。やっぱり知れ渡ってんな。

 

「あーあれね。私をヒーロー科へ!って署名だったらしくてな」

「あの場に居たプロヒーロー全員が「彼女がヒーローにならないのはおかしい」って言ってたぜ」

「それで数はどれ位集まったんだ?」

 

 切島が尋ねる。まあ黙っとけって言われてないし大丈夫か。

 

「70万」

「なな……っ!」

 

 A組の全員が驚愕する。私も驚いたぜ。まさかそこまで数が集まるとは思わなかった様だ。私もだ。

 

「それじゃあモノミンもヒーロー科に!?」

「モノミ……いや芦戸はただのあだ名だったな」

「?どうしたんですの?」

「それがよーこいつ職場体験で……」

「峰田黙れそれ以上言ったら……お前を殺す」

 

 デデン!

 

「でヒーロー科へはまだ分からん。今度編入試験があるからその結果次第だそうだ」

「物見さんなら絶対受かるでしょう」

「同感だ。そうでなければ俺たちの立つ瀬が無い」

 

 体育祭で私の対戦相手だった2人が確信する。評価高いなー。

 

「なるようにしかならんさ」

 

 私の話はこれで切り上げて他の連中の話を聞きながら昼休みは終わっていく。




 新コスチュームは次回ですね!
 クラスメイトからの呼び方は「委員長」一択です。
 
 ちなみにこの作者、全話視聴したと言えるガ〇ダムはXだけです。

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