チートそうでチートじゃない、けどあったら便利。そんな個性 作:八神っち
一先ずメイド服にお帰り頂き、改めてサイズを採寸してコスチューム案を提出。銃などの装備だけのレンタルで土日返上で扱い方の訓練を行い一応スナイプ先生から及第点は頂いた。拳銃とスリングショットだけ。
そしてコス(というより装備)を受け取り1週間。私の正式なコスチュームが送られてくる。
なおメイド服は差し上げると胸の修繕を行った後自宅へ送られて来た。いらねぇ……と思ったが貴重な着心地自体は別格の服なので悔しいが自宅着になってしまっている。
「お、要望通りじゃん。うむうむメイド服よりマシだ」
結局せっかくの銃という事で軍服を選択した。上は白を基調に袖口と襟は黒色。襟元には雄英の校章が付いている。白の手袋も付けて貰った。
下は黒の膝丈スカートになった。スカートばかりは意見を聞いたほぼ全員から選択された。白タイツを穿いているから下着等は見えない。厚めの黒ブーツも要望通りである。
「あとは各装備をセットしてと……」
動きに問題が無い事を確認して髪を結いカチューシャを付け試験会場へ向かう。
…………………
「入試試験のトコと同じ場所か……」
見覚えのある門の前で開始の合図を待つ。
「ルールは……特定数の仮想ヴィランの討伐又は拘束、指定拠点に置いてある物の修復、そして最後にヴィラン役の奥の部屋にある物の修復。ヴィラン役との戦闘は逃げてもいいしカフスを付けての拘束でもいいと」
置いてあるガイドラインを見て確認する。
指定拠点は2か所……どうせ直前に0点ヴィランとか置いてあるんだろうな……。嫌に場所が広いし。
「場所を示す端末を受け取って……と」
上着のポケットにしまう。あとは開始の合図を待つだけだ。そして待つ事3分。
「……門が開いたって事は試験スタートか!」
入試試験の反省を生かして開くと同時に駆け出す。
「行きますかー!」
さて門を潜り最初のお出迎えは1点の仮想ヴィラン3機。早速銃を構えて……ゴーグルの照準に従い目標をセンターに入れて……
「……悪いな」
1機につき3発ずつ撃ち込み機能停止させる。
「さぁ次々」
2点ヴィラン2体も銃で壊していく。だが思ったよりも弾数がかかる。
「3点ヴィランか……」
流石に拳銃では倒せないか……てな訳で。
「対ヴィラン用手榴弾ー」
ピンを抜き投げて1個目で体勢を大きく崩して間髪入れずに2個目で機能停止へ追い込む。
「ここまでは個性無しで倒せるか……装備様様だな」
次の区画へ向かうと1点3機、2点3機が待ち構える。
「とりあえず1点から壊すか」
処理している間に2点3機が接近する。流石に同時に相手は無理か。
「いつもの壁ー」
分断するように投げ込み復元。1対1の状況に持ち込み1機ずつ壊していく。
「思ってたより戦闘で弾の消費って多いな……対人相手じゃないから仕方ないか」
マガジン1つにつき弾は6発。全5本の替えマガジンを持って来ているが1周分じゃ流石に足りないか。弾の復元を行い4つ分のマガジンを再使用可能にする。
「次はっと」
区間を移動すると1点4機と3点2機が近づいてくる。
「流石に銃だと手間か……」
スリングショットでまだ距離のある団子状態の1点4機に対して全部巻き込む様に壁を撃ち出す、そして復元し押し潰す。あとは3点2機だが……
「手榴弾でいっか」
思考停止の手榴弾爆撃。よし壊せた。
「次は……指定拠点の修復か」
どうせ0点仮想ヴィランが居るよね。
「本当に居たよ」
さて……どう壊そうか。装備を確認して考える。
「やっぱコレだよなぁ」
取り出すのは尖った金属片。それをスリングショットで胴体部分に突き刺さる様に撃ち出す。そしてだ
「復元をっと」
金属片の正体は馬鹿でかい鉄板の欠片である。壁よりも各所に刺さりやすいので撃ち込んだ箇所の切断に使う。これにより最低限の厚さで0点ヴィランが胴体から真っ二つである。
「まあ受け売りなんですが」
説明書を読んだのよ!……ロケラン欲しくなった。
「あっさり倒せるもんだな……」
さて指定拠点の物とやらは……
「これ……だよな?」
ビルに入り見つけるのは割れた豚の貯金箱。何故よりによってコレなのか……とりあえず修復して外に出ているお金をチャリンチャリンと入れていく。765円と微妙な数字であった。
「持ち主の下へお帰り」
そう豚の貯金箱に話しかけて次の拠点へ向かう。
「同じじゃないですかやだー」
同じ事をするだけであった。工夫はどうした雄英。ちなみに相変わらず豚の貯金箱であった。中は346円だったが。
「ここまでは多分茶番なんだろうなぁ……」
ちゃんと壊せるかの覚悟の確認だろう。嫌な気分であるが仕方ない。
「さて次のヴィラン占拠拠点はと」
端末に示された場所に足を運ぶ。
……………
よりによって貴方?ですか……ヴィラン役は
「13号さん」
ビルの一室を鏡でこっそりと相手を陰から確認する。さて相手はプロヒーローしかも質量無視のブラックホールか。
「質量で押し切らせない為……かな?近接戦闘になるよりかはマシだけど」
オールマイトとか出て来よう物なら1撃で葬られる。そう考えると少しマシか。
「自分の有利を押し付けろか」
戦闘の基本を思い返す。さて私にとっての有利とは……
「やっぱりコレだよな」
さあ――――戦争を始めましょう。
……………
まず陰から投げ込むのはピンを抜いた閃光弾。吸い込む直前で強く光り辺り一帯を白に染め上げる。
(ちょっと腕を上に向けてと)
威嚇がてらの拳銃6発全弾。当然ながら前方に向けている指に吸い込まれるが上方向に撃ち出した壁の欠片はギリギリ吸い込まれない。
(復元)
上方向からの急な特大壁への対応に指と視線の位置を変える13号。その隙に部屋に入り込み近づいて……両側に手榴弾を投げる。
(てか良く見えてるな……やっぱり対策済みなのね)
光が収まり片方の手榴弾が爆発。その衝撃によろけている隙に更に近づき。
「……捕りました」
すれ違いと同時に手首部分にカフスを掛ける。
「……やられたよ。強くなったね物見さん」
「……やっぱり覚えているんですね名部での時の事を」
頷いてくれる13号。
「当然さ。君と心操君のことは良く覚えているよ。あの時は遅くなってごめんね」
「……いいえ。私達は貴方に救われました。それは事実です」
「とても勇敢に戦ったと聞いているよ。本来なら戦っちゃだめなんだけど、それでも君達の勇気で多くの命が救われたんだ」
そう言って褒めてくれる。
「……あれから私もヒーローになろうと思いました。ビルの時の様に中途半端じゃなくきちんと助けられるヒーローになろうと」
「……そうかあれからか」
感慨深そうに呟く命の恩人。
「13号さん……あの時聞けなかった事を1つ聞いても良いですか。」
「なにかな?」
あの時助けてくれたヒーローの口から聴きたい言葉。こればっかりは心操には務まらない。
「私は……貴方の様に人を助けられるヒーローになれますか……?」
「なれるとも。君はヒーローになれる。僕よりも多くの人を救える立派なヒーローにね」
「……ありがとう……ございます。あの時助けて頂いたお礼まだしてませんでしたね。改めてありがとうございますお蔭で救われました。私も心操も」
恐らく私の今の顔は嬉しさで泣いているだろう。さっきから頬に水滴が伝っている。……こうして泣いたのは何年ぶりだろうか。
「物見さん」
「はい」
「良く頑張ったね」
「……はい」
私はようやく1歩踏み出せた気がする。あの事件の時から。
「じゃあ試験を終わらせて来なさいな」
「はい」
最後の修復物は金色のトロフィーであった。結果は後日発表らしい。
主人公の軍服……ぶっちゃけ言えばFG○の婦長の上を白にした物である。クリミアの火薬庫である。
仮免試験の1次試験の初手で街ぶっ壊した振動個性のアイツにブチ切れる主人公を書きたい。
「死ね」の一言と共にハイライト消えた瞳で銃ぶっ放す主人公を書きたい。