チートそうでチートじゃない、けどあったら便利。そんな個性 作:八神っち
心操とコンビを組んでから1年経った2年生の夏。ヒーローとして資格も取っている訳でも無いため、体を鍛えたり個性を伸ばしたりと当たり前の事をしながら過ごす。
街中でも時々ヴィランに襲われそうになるも心操の個性により危機なく過ごす日々である。本当に感謝してもしきれない。
不本意ながら成長していく体(特に身長と胸)を不便に思いながら現在、貧乏な我が家でも遂に新たな制服の発注を余儀なくされた。そのためいつも通り心操を連れて大型デパートの中に居た。
「すまん待ったか?」
「いや全然」
「じゃあ行くか」
発注の間外に待たせていた心操に声をかけて歩き出す。
「さて用事も終わったがどうする?」
「どうするも俺は用事なんて無いよ。完全に付き添いだ」
「そうか。じゃあブラっと見て周るか」
普段お金もないため余り来ることの無い大型デパートである。夏と言うこともあり外は暑い。このままデパートで涼しくなる時間までうろつくのも悪くはないだろう。そんな昼下がり……突如サイレンが鳴り響く。
「何があったんだ?」
「さぁ?大方ヴィランが暴れているんじゃないかい?」
落ち着いて店内の放送を待つ。
『現在、ヴィランの襲撃により店内に火災が発生。従業員の指示に従い落ち着いて速やかに避難してください』
その放送があった直後、周りの人々は一目散に非常階段やエスカレーターへ駆け寄る。店内のどの階でどの範囲で火災が発生しているのか分からない状況。
「ケータイは繋がるか。一先ず警察と消防、ヒーローへ通報か」
「店側がしてくれているだろうけどね」
「万が一の為だ」
次々に電話をかけ手短に事態を説明しヒーローへの通報も終わり、さて逃げるかとなった時店の隅でうずくまる人影を見つける。
「あの子どうしたんだ?」
「見に行こうか」
影の小ささから子供だと判断し駆け寄る。お父さんお母さんと泣く小さな女の子がそこには居た。
「大丈夫か?」
「立てるか?」
「ひっぐ……ひっぐ……」
うずくまり反応を返さない子供に対しどうするかと考える心操であったが私は体が先に動いた。
「よしよし怖かったな。もう安心しろ」
子供の前にしゃがみ頭を撫でる。そうしてこちらに気が付いた子供は涙を流しながらもこちらを向く。それに対して私は笑顔でこう言う。
「私達が来た」
そうしてニカッと笑う。頼れる人が来たという事に心に余裕が出来たのか泣き止みばっと抱き着く。よしよしとなだめながらも子供に事情を聞く。
「親と一緒に来たのかい?」
「うん……おかあさんといっしょに来たの」
「どこに居るのかわかるかい?」
わからないと首を振る子供を見て一先ず一緒に行動をする事にしたが、立てないというのでおぶって歩き出す。
「さて脱出するか避難するか……どっちにしろ非常階段を使わなきゃならんが」
目線を移すと非常階段に群がる人々。だが何やら足踏みしているのか中々人が引かない。エスカレータに目を見やるもこちらも上に向かう人でごった返している。
「下に行くのは無理か」
「じゃあ上だね。だけどその前に」
「あの人の群れをどうにかせんとな」
その後の行動は早かった。心操と共に何があったのか話を聞く。すると非常階段が何らかの個性で破壊されている上に。下の階段も破壊されて身動きが取れないそうだ。
人を掻き分け壊れている部分を見て、直す。先頭の人を心操にお願いして落ち着かせ我先にと行かせない様にさせながらだが。完全に直りきったのを確認してから誘導を促す。
その間にも子供に親がいないか確認させていたがいなかったらしい。
「……人が少ないか?」
「だね。これは下にもトラブルがあるとみて間違いない」
「この子の親がいるかもしれないと思うと行くしかないか」
そう言って皆が逃げる方向とは逆の下へ向かうと、そこには約2階分の階段が破壊された跡がある。そして下を覗き込むとやはり多くの人が足を止めていた。
「声届くか?」
「難しいだろうね。あの喧噪じゃ」
「ならしょうがない。落ち着いて行動してくれるのを祈るか」
そうして個性を発動し瞬時に階段を直していく。しかし祈りは届かず直した瞬間に駆け出す人々。一応誘導をしているが、聞いてるかは分からない。
それでも親を見つけさせながら誘導をしているとこのデパートの社員の1人と思われる人がやって来ると感謝の言葉と共に下で火事が起こっているから上に逃げる様に促される。
「親はいなかったか」
「いなかった……」
すると社員から子供の名前を叫びながら探す女性の姿が下であったと言う。子供の名前を聞くと一致していた事から、非常階段で姿が見えないということは未だに下で探しているかもしれないということだ。
「じゃ、ちょっと探してきますからこの子はお願いします」
それだけ言って子供を押し付け階段を下りる。その女性を見かけた階へ降りるとそこは火が回り始めた場所であった。
「こりゃマズいな」
「火が覆いつくすのも時間の問題だ。引き返すか?」
「まさか」
ハンカチで口を覆い通路へ向かう。火が付いている物を「壊れた物」と判定し直し鎮火させる。箇所単位であるため広いフロア全部という訳ではないがそれでも確実に直しながら周囲を眺めると1人の女性が倒れているのを見つける。
「あの人か!」
「みたいだね!」
特徴が一致した女性の傍に駆け寄り呼吸と意識の有無を確認するが、呼吸はあるが意識が無い。
「煙の吸いすぎか?まあいいここから出るのが先決か」
「下からの煙がかなり多くなってきたね。急ごう」
子供と同じように女性を背負い駆け出す。非常階段前の防火扉を閉めて階段を駆け上がる。この先に何が待っているかも知らずに。
すまない。半端な所で切ってすまない。