チートそうでチートじゃない、けどあったら便利。そんな個性 作:八神っち
迷走……というよりも謎シリアスが始まった原点から変えさせて頂きます。
今度こそプロット通り進むといいなぁ……
さて飯の時間も終わり暗くなるまでお風呂に入ってからの肝試しとなるらしいが、私は風呂の時間をズラして貰った。
「物見さん銃のメンテナンス終わりましたか?」
「ん?もう少しかかると思うから先に行ってくれ。脅かす方には参加するから」
「分かりましたわ。お待ちしております」
3日目にしてやっとこさ行っているのがスナイプ先生に教えて貰った銃器のメンテナンスだ。本来は毎日行った方が良いのだが昨日一昨日は何だかんだで出来ず仕舞いであった。
そして私は煤で汚れるからと風呂を先延ばしにして貰っていた。勿論許可は取ってある。
八百万の声が遠くなる中でせっせとメンテをしていく。途中で芦戸達の慈悲をー!という声が聞こえて来たが気のせいだろう。
………………………
「これで良しっと」
メンテが終わる頃には既に肝試しが始まっている時間帯であった。流石に煤だらけの状態で参加するのは女性としてどうかと思う為、道具と着替えを持ち込み温泉へと足を向ける。一人温泉とはなかなか出来ない物だ。
……
「いざ!温泉!」
服を脱ぎタオル一枚と道具を持ち温泉へ入ろうとすると、唐突なマンダレイさんの通信が入る。ヴィランが現れたから先生の下へ戻ってとの事。
「はぁ……しゃーなしか」
楽しみな1人温泉を断念して出戻りし即服を着て先生の居るであろう補習室へ。
「にしても何でヴィランが来てんのかね?てか皆無事なのか……」
心配ではあるが今の私にはどうしようも無いため素直に補習組と待機である。頑張れ相澤先生。
「温泉入り損ねた私が来た!」
「モノミン!煤けてるけど大丈夫?」
「銃のメンテの時の煤だから気にするな芦戸」
B組の担任に本人かの確認をとられた後に皆が作ったであろうバリケードの中へ入れてもらう。
「一応壁追加しときます?」
「……頼む」
B組の担任に許可は得たのでバリケードに壁を1つ追加で作る。いつもの学校の壁である。頑丈さは保障しよう。
そして相澤先生からの戦闘許可が下りたり爆豪が狙われている事が分かったりと展開が動いていると扉の方に人影が。
「相澤先生か!?」
切島が叫ぶと同時に扉と周りの壁が青い炎で吹き飛ばされる。わざわざ扉から壊すとは律義である。その後ヴィランはB組の担任の手で拘束されるが、その直後にやって来た相澤先生に即ベシャってされる。
「物見ここ直しとけ!」
「サー!イエッサー!」
ヴィランが施設を壊すのは勝手だ。だがその壊した跡は誰が直すと思う?万j……私だ。
「B組では馴染みないが改めて見ると凄まじい」
「どうも」
B組の担任からお褒めの言葉を頂いた。てか初めて見る人からは大体お褒めの言葉を貰っている気がする。
………………………
そんなこんなでヴィラン襲撃が終わり爆豪が拉致られ、昏睡状態の生徒も多数。緑谷は腕が重症、八百万は頭を怪我して意識朦朧。他怪我人多数。プロヒーローも大打撃を受けた。
そしてこのヴィラン連合襲撃に伴い林間合宿は中止。無傷な者は一時自宅待機となっていたが私だけは話が違うらしい。
相澤先生が根津校長と共に話し合った結果を告げられる。
「物見、お前の家は親御さんがほぼ居ない状況だと聞いている」
「そうですね」
「そしてお前の家のセキュリティは無いに等しい。いつ襲われても可笑しくない。だが今の学校に置いておく訳にもいかない」
「……つまり?」
「お前だけ自宅ではなくプロヒーローの事務所へ行って一時保護をお願いして貰う」
ふむふむ。
「その保護して貰うヒーロー事務所というのは?」
「幾つか問い合わせして受け入れOKなのが3ヶ所だった」
その3つのリストを見せてもらう。
「エンデヴァーさんとベストジーニストさん、それとMt.レディですか」
「規模が大きくサイドキックの数も多い2名かお前も馴染みのある1名か。どれかを選べ」
「…………………」
安心感で言えばトップヒーロー2名なんだろうが……
「Mt.レディさんの事務所でお願いします」
「……わかった、こちらから連絡しておく。車は回しておくからクラスの連中に伝えたい事があるなら今の内に言っておけ」
伝えたい事か……あるとしたら八百万だろうか。でも今意識不明だしな。手紙1つ書いて置いとくか。他の連中は何かあったっけ。
「私の励ましなんて意味無いしなぁ……蛙吹に一言くらいか?」
「なら行って来い。終わったらミッドナイトに声を掛けろ」
「相澤先生は?」
「大人は大人で色々あんだ」
イラついた顔で言う相澤先生。記者会見的なあれか?頑張って下さい。
話を切り上げて私は蛙吹の下へ向かう。
「蛙吹居るか?」
「居るわ。入って大丈夫よ」
「お邪魔しまーす」
私も病院に居たから手土産なんぞ無いが遠慮なく入る。大分暗い表情の蛙吹がそこに居た。
「皆が心配か?」
「ええ。物見ちゃんは余り心配してる様子じゃないわね」
「薄情に見えるか?」
首を横に振る蛙吹。
「この状況で冷静に居るのは大変な事だと思うわ。でも1人が冷静だと安心する。物見ちゃんは強いわね」
「他人に心配掛けさせるのは苦手だからな」
「ケロケロ物見ちゃんらしいわ。それで何か用事があったのかしら」
「ん?ああ、そうだった。私は暫くこっちに来れないからな。だから蛙吹から皆に伝えておいてくれ」
「伝言って事でいいのかしら?」
「ま、そうだな。それで言いたい事ってのは「誰かに心配掛けさせるな」それだけ」
「……物見ちゃんらしいわ」
嬉しそうにケロケロと笑う蛙吹。可愛い。よしよしと頭を撫でる。
「じゃ私は八百万の所に置手紙して来る」
「ええ、わかったわ。それと」
「ん?」
「梅雨ちゃんと呼んで」
「すまん忘れてた。また学校でな梅雨ちゃん」
「そうね。「また」学校で」
その後、私は八百万の所に寄り手紙を置いてミッドナイトに声を掛けてMt.レディの事務所へ向かうのであった。
こっちの方が主人公っぽいかなと。誰かを怒る訳でも誰かを咎める訳でも無い。
誰かに心配掛けさせるな。遠回しな「自分も心配している」というアピール。これに初見で気付くのは蛙吹と八百万だけかな?