チートそうでチートじゃない、けどあったら便利。そんな個性 作:八神っち
多くのプロヒーローが大打撃を受けた事件「神野の悪夢」。No.1ヒーローであるオールマイトが引退を発表し、世間を大いに騒がせる。
オールマイトの引退により不安が大きくなる中で警察達もこのままではいけないと会議が行われる。
「1人にもたれ掛かって来たツケか……」
「絶対に倒れない平和の象徴」の損失。その状況を引き起こしたヴィラン連合を恐れながらも新たな希望の台頭にも話が移る。
「再建の旗……か」
「あの雄英の生徒の1人だったか。今ではオールマイトと彼女とエンデヴァーの話で持ち切りだ」
「未だプロの資格の無い少女に……いやプロでさえも重すぎる名だろう」
神野の悪夢が起きた朝に現れた少女。彼女が居たお陰で国民は「次がある」と辛うじて思えているのだ。それ程までに彼女の登場は神秘的であった。
「旗とはよく言った物だ」
「ええ……決して寄りかかる事も出来ないし、下地が悪ければ倒れる。だが居るだけで影響を与える」
そう旗を立てるには立派な下地が必要である。闇雲に立ててもすぐに倒れてしまう。少女の儚さを表すには適当であろう。
「オールマイトが居れば安心出来た物を……!」
「言ってもどうにもならん。現実を見ろ」
そしてその下地にあの「オールマイト」が居てくれれば……そう思ってしまうのも仕方がない。彼の影響力はそれだけ大きかったのだ。
「ヴィラン受け取り係と揶揄される警察にも改革が必要だが。差し当たっては彼女のヒーロー免許をどうするか」
ここまで大きく発表されているのだ。普通なら特例で免許を与えて活動を促すだろう。
「未だ学生の身分である彼女だ。無理に免許を押し付けて活動を強制し高校中退なんてなってしまったら目も当てられん」
「だが今動かさんと彼女の影響力は小さくなる」
時間が余り無いのも事実である。マスコミが取り上げている今こそ彼女をより宣伝するチャンスであり、影響力を確実な物に出来る。それだけの力を彼女は持っている。
改革についてと同時に彼女の扱いについてあーだこーだと話し合っていくのだった。
………………………………………
警察に事件についてのアレコレを聞かれながらも爆豪共々謎の保護をなされた私は1つのニュースに目を向ける。
「メイド服が売れてるって……マジか」
何でも私の着ていたメイド服が印象に残ってしまい、親にあれ着たい!と言う少女が全国に続出してしまったらしい。
おかげでメイド服の需要が高まっているらしい。既に裏では私のフィギアとかも作られている……らしい。肖像権も何もあったモンじゃねぇな!
「これも全部Mt.レディって奴の仕業なんだ」
何だって!?それは本当かい?
「そういや今回の働きについて報酬が出るからと口座作って今日振り込まれるってあったな」
はてさて10万円は貰えるだろうか。貰えたら生活が楽になるが。
「通帳に書き込み……いざ!どれど……」
0の山を見て絶句し通帳をそっと閉じる。そして目も閉じて一度揉み解す。多分見間違いだろう。そう思いもう1回通帳を開く。
「………………………どんだけー」
私の目に再度映るのは0の束。慎重に数えていき……
「oh……」
2億って……アホですか?こんな小娘に大金持たせるなんてアホですね(確信)。おかしい……きっと誰かが間違えて振り込んだに決まっている。
「えーと振り込むにあたっての統括は……エンデヴァーさんだったけ」
今回の報酬は正式なヒーローではない私に対して何も無しじゃ駄目だろうという事で、エンデヴァーが主体で神野に居たヒーローやその事務所、他有志を募って集めたお金だという。
というわけで貰った連絡先へ凸る。あ、すぐ出た。
「エンデヴァーさんお疲れ様です。今大丈夫ですか?」
『大丈夫だが何かあったか?』
「あー……その今日振り込まれたのを確認したんですが、2億って……本当に合ってます?何かの間違いじゃ?」
『間違いは無いが?』
「あっ……そうですか」
合っているらしい。
『それだけか?』
「何でこんなに高いのか、理由を聞いてもいいですか?」
『理由?そんなもの、貴様がそれだけの働きをしたからに決まっているだろう』
「それだけですか?」
『それだけだ』
それだけの様だ。えぇーホントにござるかぁ?
「わかりました。深くは聞きません。お忙しい所ありがとうございます」
『フン。切るぞ』
「はい。それでは」
エンデヴァーが電話を切る。その後に私にとって一番親しいヒーローであるMt.レディに電話をして心当たりが無いか聞いてみた。
心当たりはあった様で尋ねてみると、国民を安心させた行動に「ヒーローとしての感謝の気持ち」を感じたヒーローや事務所が多く、結果1000にも登る有志が集まり、この額になったらしい。
『ま、貴女のお金だし好きに使いなさい』
最後にそう言われてしまった。
「好きに使え……ねぇ」
私はある人達に電話を掛けていく。
………………
私の保護されている警察署に私の両親がやって来る。不安と安心が入り混じっている両親の顔。そして私の顔を見ると母が泣き出してしまった。
「話があるんだけど」
泣き出している母を撫でている父に話かける。私が聞くのは今の両親の借金について。幾ら残っているのか尋ねる。
聞いちゃダメだと言って来る父だが「私の将来にも関係あんだ」の一言に苦い顔をする。
しばらくお互い無言が続き、父が勘弁したのか渋々と小さい声で残りの残額を言う。
「1憶6000万……か」
ならば丁度良い。私の金だと、好きに使って良いと言われたのだ。ならば好きに使わせて貰おう。私は通帳を差し出して父に開かせる。
「利子や利息は分からんが、それでさっさと返して来てくれ」
驚愕した顔であると同時に受け取れないという両親。ここまで迷惑かけて娘にこれ以上はと言った感じである。
両親の気持ちも分かる……だが。
「いいからさっさと返して来てくれよ!」
私の気持ちも分かれよバカ親。
「借金抱えたまま私を産んで後ろめたさがあるのも知ってんだよ。私に苦労させた事を後悔してんのも知ってんだよ」
顔を伏せる両親。
「でもそれ以上に苦労してんのは父さん達だろう。毎日毎日遅くまで働いてさ。ほぼ家に居なくてさ……それでも私の前で無理矢理笑顔作ってさ」
疲れてんのに私の前では笑おうとする両親の痛ましさ。
「私はこれ以上父さん達の暗い姿見たくないんだよ」
また泣き出す母。父も泣く寸前である。
「だから娘の親孝行くらい素直に受け取れバカ両親」
父の手に通帳を持たせて押し付ける。すると父も泣き出して両親が私を抱きしめてごめんなさいと謝ってくる。私はそれを泣き止むまで笑って抱きしめ返す。
………………
落ち着いた両親に雄英の全寮制についての話をすると「親として止めたいけど、好きにしなさい」と言われた。さいですか。
帰り際に寮制になったからと言って彼氏の部屋に夜這いしちゃダメよと言われた。……何故私がする側なのか小一時間話を聞こうか?
はい。てな訳で借金返済です。貧乏キャラからの脱出です。まあ主人公がプロになれば1年で余裕で返せるレベルでしょう。
次回はデク達から見た神野の悪夢でもしますかねー。
両親の個性についての設定。
父が「目に見た物を動かす」個性
母が「物をくっつける」個性
これが超融合した結果「目に見た物を直す」という個性に。復元は何故か追加された。不思議だね!