チートそうでチートじゃない、けどあったら便利。そんな個性 作:八神っち
女性を背負い非常階段を駆け上がる途中。爆破された様な跡がある防火扉を見つける。その状況を見てヴィランの大まかな個性を推察する。
「一度に気付かれずに多数の場所の破壊が可能な能力か」
「ここまでピンポイントで広範囲だと方法は限られる」
「となると設置型か」
「それも誰も気づかないレベルだ。厄介だね」
先程には無かった扉の爆発跡を見て即時爆破可能なのかと考えながらも近くの警戒を強める。そうして安全区画が配備されている階に到着するも、やはり階の防火扉は爆破されていた。
「ヴィランが近いか?」
「恐らく」
ヴィランの目的は不明だが前に見た防火扉からこの階の下までの防火扉が爆破されていない事を考えると狙いは安全区画であることは想像に難くない。
「ヴィランが複数じゃない事を願うか」
「そうだね。1人だけだったら何とかなるかも」
心操頼りの自身の戦闘力に歯噛みしながらも安全区画まで走る。先程の修復や女性を抱えながらのダッシュで確実に体力が削られていると感じながらも安全区画の扉の前に居るのは1人の人物。
「……」
「……」
「ああん?なんだガキかよ。今からこの扉ぶっ壊すから邪魔すんな」
体から生み出される小型爆弾を扉に設置しているデカい男は面倒そうに言う。この男がヴィランである事は分かった。ではどうするか。心操にアイコンタクトを送り互いに頷く。
「おい、お前。何故扉を爆破する?」
「決まってんだろ、どんだけの物破壊出来るか試したいんだよ。溜まってんだよこんな個性でよー。試したくなるもんだろ?この個性で人を殺してよー」
「危険思考め……他の仲間は居るのか?」
「いる訳ないだろ。こんな挑戦」
「そうか。なら安心した」
男が言い切る前に条件を達成し男の心を乗っ取る。これで最低限の安全が確保されたと思っていた。だが
「…ッマズイ」
そう思っていても時は遅し。その爆弾は時限式であった。爆弾の近くに居た男は少しばかり巻き込まれるも動くには余裕の傷であった。爆破の衝撃によって個性が解除される。
「テメェら何した?」
「教えないよ。それにその程度の爆破じゃ扉は壊れないよ」
後ろを振り向く男が見たのは新品同様に無傷な扉であった。
「……どうしたんだい?君の爆弾はその程度なのかい?」
ワザと挑発するように告げる心操。実際には扉は無傷ではなかったのだが私の能力で瞬間的に直している。
「……」
挑発に対して無反応である。警戒なのか怒りなのか。表情の見えない男は意を決した様に目を見開く。そうするだけで辺りの柱に仕掛けられた爆弾が作動する。
「ッ!」
周りを見渡し天井が落ちてこない様に柱の修復を開始する。そうして個性を察したのか私目がけて爆弾を投げる。
「危……ッ!」
背負っていた女性を遠くに投げ、爆弾の直撃をどうにか避ける。が、その動作により回避が遅れた私はモロに爆風に当たる。
「物見!」
柱の修復の時点で体力はほぼゼロであった。その上で爆風による熱と反動により痛さと熱さで意識が徐々に薄れていく。
「物見!返事しろ!」
心配そうに叫ぶ心操。だが薄れていく意識に抗えずに目を少しずつ閉じていく。近づいてくる心操が吹き飛ばされる。
「ここで死ね」
遠くから聞こえる投擲音。ああ、終わったな。と走馬燈が駆け巡っていると
「大丈夫かい?」
その声と共に聞こえる吸い込み音。爆発音はするものの熱や衝撃は一切届く事は無かった。最後の力を振り絞り目を開けるとそこには宇宙服を着た人物。あなたは?と擦れ声で呟くと宇宙服の人物は振り返り告げる。
「僕はスペースヒーロー13号さ。安心して。僕が来たからには君達を守るよ」
その声を聞き助かったと安心して意識を手放す。
その後は無事全員救出したと意識を手放して丸1日経った病院の個室で知らされる。そして助けた親子からの感謝のメッセージを受け取りながら助けてくれたヒーローを思い浮かべる。
「13号か……」
「どうしたんだい物見?」
同じ病室で事態を聞いていた心操は不思議そうに顔を見つめる。
「心操。私もヒーローを目指すよ」
「そうか」
決意に対して短く返事をする心操。こうして私達の目指す道は1つになる。あんな状況だろうと最後まで倒れずに守れる……そんなヒーローを目指す。それが私のヒーロー像だ。
それから約1年半。受験結果を聞き心操に電話をかける。
「ああ心操か……結果は……やっぱりか……私もだ……普通科への編入?当然するさ……ああ……私達のヒーローアカデミアは雄英と決めている……夜遅くにすまん……ああおやすみ」
新たな決意を胸に春。雄英へ……ヒーローとしての新たな一歩を踏み出すのであった。
次回から雄英編です。