チートそうでチートじゃない、けどあったら便利。そんな個性   作:八神っち

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 八百万視点の総集編です。デクとはまた違う捉え方にはなっているかなと。


手を伸ばせど

 リベンジ戦の夜。ベッドに座り込み今日の試合を思い返す。

 

「まだまだ遠いですね。彼女の背中は」

 

 物見さんがどれ程の距離に居るのか。どれ程追いついたのか。私がどれ程成長したか。それを確認したい為に挑んだリベンジですが。

 

「完敗ですか……悔しいですね」

 

 物見さんはずっと遠くへ行っていました。見せつけられた圧倒的な差。

 戦闘を楽しむ気は無かったと言っていた。短い手数で終わらせると。

 今思えば、あそこでああすれば、こう動けば……と幾つも反省点があります。

 

「油断なんてしませんでしたわ。それでも尚、一方的に……」

 

 心のどこか甘えていたのでしょうか。彼女なら合わせてくれると。体育祭の激闘を演じてくれると。ライバルとして全力で戦えると。

 

「恐らく彼女は見せたのでしょう。私達が進む道を『プロヒーロー』の世界を」

 

 今から仮免を受ける私達に。これが『プロヒーロー』だと。その力を以って。

 

「貴女の居る世界は本当に遠いですね」

 

 壁に閉ざされてる隣の部屋を見やる。時間は夜10時を回って彼女は寝ているだろう。

 

「推薦組なんて肩書、もう何の意味もありませんね」

 

 ある種の称号を意味する『雄英の推薦組』。それは本来誇るべき物なのでしょう。ですが今の私には誇れなかった。

 当然だ。私なんかより余程凄い人が隣にいるのだから。それも皆から認められた称号を得た元普通科さんが。

 

「貴女に会った日が懐かしいですわね」

 

 私は物見さんとの出会いから思い出していくのであった。

 

 

……………………………………………………

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 私……というよりA組と会ったのは最初のヒーロー基礎学。オールマイトが連れて来た少女……というには大人びた女子生徒。

 ぶっきらぼうに自己紹介する彼女だが、オールマイトが選んで連れて来たという事は何か意味があるのだろう。

 

 そして他のクラスメイトが胸の話で盛り上がっていると、緑谷さん達の試合が流れました。

 

 試合が終わり、私は彼らの行動を思い返し良い点悪い点を探す。それを自分の事の様に反省し、活かそうと思っていると物見さんが動いていた。

 曰く彼女を連れて来た理由だそうだが。そう言われモニター越しの映像に驚きました。

 

 そこに映るのは内部が先程通りの姿を取り戻した物。フェイクでも何でも無く壊れた部分が直されていた。

 「物体の修復」それが彼女の個性だと聞かされた。発動条件も単純明快「ただ見るだけ」。それだけでビル1つ直せるのだという。

 オールマイトに彼女の個性はどう見えるか。それを問われる。

 

「……下手な戦闘力の個性よりかも遥かに重宝される個性でしょう」

 

 そんな個性、重宝されるに決まっている。単純で便利で強力な個性だと言えよう。

 私の個性と違い制約も少ないだろう。ただ直すだけの個性。

 

(デメリットも無しに……いえ何かしらのデメリットはあるのでしょう)

 

 個性とは何かしらのデメリットを抱える物である。では物見さんの個性のデメリットは何だろうか。この時はそれが分からなかった。

 そして平然とした表情で戻って来る彼女。恐らくいつもの事、ありふれた光景なのだろう。自慢する物でもなく「当たり前」の事。

 

(何故彼女程の個性が普通科に居るのでしょう……やはりデメリットが酷いのでしょうか?)

 

 それかヒーロー科を受けてないか。それはそれでおかしな点があるが。

 

(今は考えても仕方ありません)

 

 そう結論を出し、次の試合を観戦する。

 なお、この戦闘訓練の私の戦い方が、後の物見さんの戦い方の参考になったのは後から聞いた話である。

 

 そして時々、学食でお見掛けしては、A組の誰かしらが席に誘っていた。その為か彼女は普通科ですが、割と仲が良かったですね。

 割と気さくで深くは聞かないさっぱりとした男性的な性格。

 それが賑やかなA組の空気と合ったのでしょう。とはいえ反応が軽いだけで気を許した感じは無いですが。

 

 

 その後は雄英体育祭。これが私にとって物見さんを意識するきっかけになりましたわ。

 

 障害物競争と言う割に、特に障害を感じなかった第一種目。

 なんというのでしょうか……「彼女が通った所に道が出来る」という感じでしたね。

 恐らく彼女自身、他者を助けるためではなく、自分のためにやっただけなのでしょうが……あの光景を見ると他者を蹴落とすのが馬鹿らしくなってきましたね。

 自分たちの器の大きさを試されている感じがしました。

 

 第2種目で彼女ともう1人の……心操さんと組んだ、尾白さんに聞いた話で、彼女らの信頼関係が羨ましく思いましたわ。そして彼女の「ヒーロー」という言葉への信頼を垣間見たと思いました。

 

 そして体育祭最終種目。1回戦で物見さんとの戦い。

 持ち込む物に制限がある彼女に対して有利に立ち回れると、そう思いました。

 しかし結果はと言えば、彼女に創造した物をことごとく利用されて敗北を喫しました。

 

 周りの状況を考えての立ち回り。相手の物を利用する狡猾さ。個性への理解。そして無茶を通す行動力と思考力と胆力。

 纏めると「即席の作戦構築力」と言う所でしょうか。

 

 お互いに物に関する個性だからこそ、この差が大きく勝敗を分けたのでしょう。1手の遅れが致命的。物の産出が間に合わなければ負け。

 そんな展開は今まで感じた事のない感覚と、何とも言えない高揚感でした。

 負けた悔しさもあります。それ以上にまたこんな試合をして、勝ちたい!と思えました。 

 現状で足りない物が分かっただけでも益のある試合でしたし、何より楽しかったです。これを糧に要精進!ですわ!

 

 物見さんは常闇さんをあっさり破りましたが、爆豪さんに何も出来ずに敗北。彼女でも負ける時は負けるのだなと、当たり前ながら手を伸ばせば届く存在だと感じました。

 

 そして職場体験での活躍を得て、ヒーロー科へ編入を果たしました。むしろ今まで居なかったのが不自然に感じました。それ位馴染んでいました……というより馴染み過ぎですね、はい。

 

 職場体験で出会った拳藤さんから、彼女の個性を使った男子生徒がビル1つ直して倒れたと立ち話しながら聞かされました。

 やはり物見さんは凄いな、と拳藤さんは笑っていました。私にもそれは同意です。ただ漠然と「凄い」と。

 

 私にとって、そんな彼女の印象が変わったのが林間合宿でしたわ。

 短期間で個性を伸ばす訓練合宿。各々伸びしろがある課題の中。私達は死に物狂いで個性上限を伸ばす訓練をしていました。

 その苦労を知って、ふと彼女の訓練を思い返す。

 

「彼女は個性上限を伸ばしていない」

 

 それが何を意味するのか。もう彼女の個性は伸びない?いいえ違うでしょう。彼女の個性は短期間で伸びない?それもあるでしょう。

 恐らくですが実態は「個性上限を伸ばす必要が無い」のです。

 

 各々が死に物狂いでこなす上限突破。その必要が無いと言われている。

 個性は使わなければ伸びない。身体能力の一種だ。

 これが何を意味するのか。答えは簡単。

 

 「過去に死に物狂いで個性を使っていた」である。

 

 どんな苦労を積めば、その人外な体力を得ることが出来るのか分かりません。

 彼女がヒーローとして目指している先は、どの様な物なのか。

 そんな彼女に、私は林間合宿でどれ程近づけるのか。彼女の努力はどれ程の物なのか。それを確かめたいと思いリベンジの約束をしました。

 

 ヴィラン連合の襲撃で林間合宿がおじゃんにされたのは残念でしたが。

 

 そして神野区での活躍を目にする。その場に居る全てのヒーローから託される物。あのオールマイトにすら託されたソレは、明らかに1人で持てる物じゃない。

 そんな彼女の顔は平然としている。個性を使う事に躊躇いは無い。

 「自分なら大丈夫だ」と、そんな風にも言っている様にも見える。

 

(彼女はこれから先も苦労を表に出さないでしょう。それこそどんな物を背負おうとも)

 

 今までの彼女を見てれば嫌でも理解できる。そういう人物だと。誰にも心配をかける事も無く、心配した誰かを逆に気遣う事すらある彼女だ。

 

(私だけでも、いえ、この光景を見ている、クラスメイト皆がそう思っているでしょう……友達として)

 

 本当に悩んでいたら相談してくれる位の間柄にはなりたい、と。 

 

 そのためには知らなくてはいけない。彼女を……物見直という人物を。彼女の見ている世界を。

 

(さし合ったっては彼女との差を、ですわ!)

 

 これから知って行けばいい。先は長いのだから。

 

(女性同士どう仲良くなれば良いのか、芦戸さんなら知っていますかね?)

 

 芦戸さんに尋ねたら、やはりスキンシップだと答えを得ましたわ!ならばマッサージを!そして芦戸さん曰く「胸もマッサージしてあげたら」と答えを頂きました!それは是非とも実践してみましょう!




 八百万視点でどこまで語るのか悩みますね。
 内容を変えました。すいません。

 次から時間飛ばして仮免試験開始です。

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