チートそうでチートじゃない、けどあったら便利。そんな個性   作:八神っち

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 二次試験!途中から三人称視点になります。


ギミックスルーはRTAの基本

 さて15分の留守番を言い渡された私は、早速現場に向かおうとする八百万を捕まえる。

 

「八百万。創って欲しい物がある」

「なんですか物見さん」

「なるべく広い白い布。この待合所を臨時の集合地点にするから、患者を汚い地面に寝かせる訳にもいかない」

「あっなるほど。承知しました」

 

 私が端的に欲しい物を言って創ってもらう。そして何名かの待機組に指示を出し八百万が出した布を広げてもらう。

 

「ありがとう八百万」

「お気になさらず。では私は行きますわ」

 

 八百万を見送り、私はポーチの緊急医療具を確認し待機する。

 その間に集合地点である事を示す白旗を、そこらにある、ひしゃげた標識に括りつけて貰う。

 そして試験開始数分後に患者が続々と運び込まれる。連れて来た受験生達に緊急順を聞き出し、待機組と共に応急措置に取り掛かる。

 

「いてぇよ……いてぇよ……」

「大丈夫です。ここは安全な場所ですから。それに私も居ます」

 

 泣きじゃくる子供役に、柔らかい声色で声を掛けながら治療を施す。

 意識の有無、呼吸と心拍数の測定、傷口や痣の個所の視認、出血の量の確認他、必要な要素を絞り込み処置を行う。

 

「治療終わりました。よく頑張りましたね。後は安静にしていてください。こんなに沢山のヒーローが居ますから、両親もすぐに見つかりますよ」

 

 舞台設定に合わせた台詞を言い、最後に少年役を抱きしめ「よしよし」と頭を撫でて安心させる。いつの間にか量産されている枕に頭を下ろし、次の患者に向かう。

 

「完璧すぎて逆に怖い」

 

 少年役の評価を背に受ける。伊達にガチの現場である保須と神野を経験してないからな。その時にプロからコツやら聞いてますよ。

 

「さて、次の患者はと……」

「モノミンさん包帯の予備を!」

「……あいよ」

 

 相変わらず私のヒーロー名呼ばれないなーと思いながらも、ポーチから包帯を貸し出す。

 

「ありがとうございます!」

「ああ」

 

 手短に返事を済ませ、持ち場に行かせる。黒髪に白軍服という事で目立つのか、備品補充の目印扱いである。次から赤十字の白衣でも用意するべきか?

 

「物見さん!」

「どうした」

 

 と、矢継早に声を掛けられる。それに淡々と対応している内にあっという間に15分が経過して、アナウンスが流れる。

 

『物見さん。15分経過しました。個性の使用と移動を許可します』

 

 お、来たか。とはいえ今は治療中。しばらく行けないな……

 

「物見さん。ここは引き継ぎますから行って下さい」

「ん。じゃあ頼む。症状は……」

 

 交代を言い渡されたので、症状を簡単に伝え処置をお願いする。

 

「さて、行きますかー」

「もぉぉぉのぉぉぉみぃぃぃさぁぁぁん!!」

「この声は夜嵐か。どうしたー?」

 

 風を纏いながらこちらに向かってくる夜嵐は、私の姿を確認すると着地。用件を言う。

 

「はい!物見さんの行動が解除され次第!現場に運んで来いと!」

「ん。頼む」

「おっス!」

 

 そうして私はスカートを抑えながらも、夜嵐の操る風に相乗りさせて貰う。

 私の行動時の欠点である機動力と視点の高さを補い、現場の状況を遠目に確認しながらも、個性で道路を補正し、走りやすい道を整える。

 いやー夜嵐マジ便利。移動がメッチャ楽だ。

 

「先輩から『旗を靡かせるには風が必要!』と言われたっス!」

 

 そんな事情を聞きながらも私は現場に向かうのだった。

 

 

……………………………………………………

……………………………………………………

 

 

 各地に存在するレスキューポイントの1つである市街地エリア。

 周りの建物の崩落の危険性が高く、下手に手を出せない状況での救助が続いた。

 各々が個性を持ち合い、助け合いながらも救助を続ける。

 

「この風は……!」

「来たか……!」

 

 突如吹く風に目を向けると、そこには夜嵐と強くスカートを抑える物見の姿があった。

 

「ただいま連れてきました!」

「ご苦労。その場に下ろすがよい」

「はいっス!」

 

 士傑のヒゲが指示を出し、物見は着地する。

 

「状況は?」

「今説明する」

 

 確認できている範囲で、救助の対処の難しい部分と、患者の場所を分かりやすく伝える。

 

「分かりました。夜嵐頼む!」

「はいっス!あと俺のヒーロー名は「レップウ」です!」

 

 夜嵐に体を持ち上げて貰い、指示された場所を視認し、個性を発動させていく。あれだけボロボロで救出困難だった建物は一瞬で元の形を取り戻す。

 

「俺たちの苦労って一体……」

「もう全部あいつらだけでいいんじゃないか?」

 

 この場の全員が物見と夜嵐を見て頷きそうになってしまう。先程までの苦労を、徒労に感じさせるほどあっさりと直って行く現場。最短での道のりも修復され走りやすい道路になっている。

 

「ほら救助に向かえ!向かえ!夜嵐、このまま工場エリアに行ってくれ」

「工場エリアっスね!」

 

 物見が到着して3分経過したかどうかの僅かな時間。その短時間で難所部分がクリアされる。圧倒的な救助効率差。それをヒシヒシと感じてしまう。

 

「いざ現場に出ると分かるな……物見のヤバさが」

「あの2つ名の意味がよく分かるわ。居るだけで違い過ぎる」

 

 工場エリアに飛び去って行く2人を眺めながら、手と足を動かして救助を行うのであった。

 

 

 そして数分後に集合地点の近くで爆発が起き、それに呼応する様に各所で爆発が起きるのであった。




 主人公には夜嵐が付属パーツとして最高に噛み合います。低い機動力を完全に補えます。
 主人公は今回は全部直していません。最低限の修復しかしません。体力的問題と行くべき現場が多いからです。




 書いててふと思った事がある。1話平均2100字ぐらいなのに、60話前で既に仮免試験終わりそうなのって結構ハイペースなのではと。

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