チートそうでチートじゃない、けどあったら便利。そんな個性   作:八神っち

66 / 74
 うん…………この作品の心操くんのキャラ崩壊っぷりよ。もはや別キャラレベルですわ。八百万も暴走気味ですね。


幕間5 もう1つのプレゼント達

 誕生日会の次の週の日曜日。土曜日の内に仕事から帰って来て夜に書類チェックすればいいだけである。朝から洗濯を済ませてのんびりして現在昼前。

 

「そういや心操からのプレゼント貰ってないな。あと八百万がもう1着あるって言ってたが」

 

 新調した携帯端末に入れたSNSアプリに回って来た、誕生日会の画像を眺めているとふと思い出した。てな訳で心操にメールを入れておく。

 

「今からそっち行っていいか……っと。八百万はインターンだったか」

 

 返事待つまでに寝間着から着替えるか。選べるほどの服の量は無いため変にならない様に見繕いながらも着ていく。……下着も変えておくか。

 

「こんなもんかね」

 

 白柄のワンピースと薄い桜色のカーディガンという少しばかり淑女感がある服装である。あとは鏡見ながら髪を整えてと。うむこんなもんだろう。

 

「返事は来て……ないか。あ、父さんから何か着てた。ふむふむ」

 

 おーついに住む場所決まって引っ越しを完了したらしい。場所はエンデヴァーさん所の事務所近くのマンションだそうだ。私の部屋もあるようだ。しかし私の帰省はいつになるやら。

 

「おや続きが別のメールに」

 

 …………………………おい両親よ。

 

「家族が増えそうってマジか。てか何やってんだよ。ひと段落して舞い上がったのか?」

 

 はい。母さんが38歳にして妊娠しました。産む気マンマンだそうです。大丈夫なんだろうか年齢的にキツイだろ。

 

「おめでとう……でいいのか?……いいか」

 

 私もめでたくお姉ちゃんになりそうです。16歳上の姉ってどうなんだろ……場合によっては私の子供のほうが兄弟っぽくなりそうだが。

 

「私と比べられなければいいが……いかん心配ばかりが先に来てしまう」

 

 私と同じ苦労を歩んでほしくない。お金の方は私が仕送り沢山するから安心するがいいまだ見ぬ弟か妹よ。

 そも物心ついた頃……小学生なった時には私の苗字も変わってたりしそうだ。婿入りじゃなくて嫁入り予定だし。

 

「父さんは仕事を変えて、母さんは専業主婦か。エンデヴァーさんとこの事務員になったみたいだし安心かね」

 

 あの人はあの人で事務所の規模大きいからなぁ……学生の私とは大違いだ。将来私も事務所とか立ち上げるんだろうか。

 

「あ、心操から返事来た。昼飯の後なら大丈夫か」

 

 何か予定が入ってたり……してないっぽい。返事の中に昼の後はフリーとあった。

 

「とはいえ今日はする予定は無いがな。あくまでプレゼント貰いに行くだけだ」

 

 求められたら……やぶさかではないが。段々私の思考が変態じみて来てしまっているがたぶんストレスのせい。世の中の事は大体ストレスのせいにすれば解決するって誰かが言ってた。

 

「少し早いけど飯にしよ」

 

 そうして心操からの返事を待つのであった。

 

…………………………

 

「心操ー来たぞー」

 

 C組普通科寮に乗り込む。休日ということもあり人は疎らである。寮室前でノックして返事待ち。と、思ったらすぐに扉が開いた。

 

「入れ」

「邪魔するぞ」

 

 この前となんら変わらない部屋。机にプレゼントと思われる物が置いてある。扉も閉められた事を確認してベッドへ腰かける。

 

「それでプレゼントだったか。とは言え期待するなよ」

「大丈夫だ。お前からなら余程の物じゃないなら嬉しいから」

 

 ただの一学生である心操のプレゼントである。八百万や先生方みたいに金の掛かった物じゃないだろうし、別に金額で決める訳じゃない。

 

「まあまずはC組からのだな」

「あーそういや言ってたな。はてさて何が入っているんだか。てか開けていんだよな?」

「ああ」

 

 クラス離れたのに律義に祝ってくれるC組には感謝だな。

 

「ん?おーこれか。物凄い学生っぽい物だな」

 

 文房具一式。そうそう学生のプレゼントと言えばコレだよ……たぶん。

 

「ピンクとかが一切無く白と黒で統一されてるのが私への印象を感じてしまうが」

 

 どう足掻いても私のイメージカラーは白黒らしい。オルタってるらしい。

 

「これって誰が決めたとか聞いてるか?」

「クラス全員で決めたってだけ聞いてる。お礼なら俺に纏めて言っとけだと」

「そうか。ありがとう感謝する。大事に使わせて貰うって言っといてくれ」

「分かった」

 

 C組からのプレゼントは一旦机の上に置いといてだ。

 

「それで心操からのだが」

「俺のはこっちだ」

 

 そう言って渡される手のひらサイズの箱。重さはそこまで無い。うーむ……なんかこう……嬉しい予感がする。

 

「開けても?」

「いい」

 

 心操が少しばかり照れている感じがする。包みを開けましてー……うん。これアレだろ。

 

「心操……これ。いいのか?本当に……私に?」

「学生だし安い物だけどな……プロになったら本物買ってやるから。待ってろ」

 

 箱を開ける。そこにはシンプルな造りの……指輪。宝石も嵌められていないが、心が籠っているであろう指輪を送られる。

 

「指輪……つけて貰っていいか?」

「ああ」

 

 箱を渡し動向を見守る。指輪を取り出し、手を取る先は……左手。

 

「っ……!」

「物見。誕生日おめでとう。これが俺の気持ちだ」

 

 そう言いながら、指輪を嵌める。私の左手の……薬指。この前自分の気持ちを語ったからか……色々な感情が込み上げて来る。

 

「……っ!」

「物見……何で泣いて……?嫌だったか」

「嫌な……っわけ!無いだろ!……嬉しいに……っ!」

 

 嬉しいに決まっている。だけど私の頭がゴチャゴチャしてて……心操からそういうアクションが今まで無くて……突然の事で驚いて。

 

「物見」

「あっ……」

 

 抱きしめられる。それだけで安心して感情が溢れ出す。言いたい事が言わなきゃいけない事があるのに。それも言えずに私の口が勝手に言葉を呟いて行く。

 

「なあ……心操……私さ……頑張ったよな?色んな事我慢してさ……本当は嫌な事……沢山あったんだぞ」

「ああ」

「誰かに……恋出来るのか……誰かを愛せるのか……私を否定しないか、私が否定しないか……不安だった」

「今のお前を俺は否定しない。だからお前も自分を信じろ」

「………好きで居続けても……いいか?こんな面倒な女でも……いいのか?」

「面倒なんかじゃない。安心しろ。好きだぞ物見」

「…………………………っっ!」

 

 嬉しいのに声が出なくて……それでいて涙が止まらない。抱きしめる心操の胸で私は静かに泣き続けた。

 

 どれ程時間が経ったのか分からないが、ようやく泣き止んだ私。胸の前で手を組み、大事そうに嵌められた指輪を撫でながら、我ながら晴れ晴れとした笑顔で、1つの結論に至る。

 

「ありがとう心操……私さ、やっと思えた事があるんだ」

「どうした」

「女性に生まれて良かったな……って」

「……そうか」

 

 苦労したこの体を受け入れられた。それはとっても嬉しいなって。

 

 

…………………………

…………………………

 

 

 いくつかの雑談を……主に私の親に関する行動に少し私の意見を言いながらも4時間。結局求められる事無く終わったため、少し何かの不満が残るがお開きとなった。

 そして八百万も帰り着いており、少し疲れたご様子。

 

「お疲れー」

「お疲れ様ですわ。あら?明るいですね。何か良い事がありましたか?」

「おうとも。あったぞ」

 

 どうも最近暗かったっぽい。いつも通りなはずだったのだが。

 

「あ、そういえばメッセージ見ました!もう1着渡し忘れてましたね!」

「タイミング無かったからな。仕方ない」

「では今からお渡ししますわ!少しお待ちを!」

 

 談話室から早足で戻って行く八百万に私も着いて行く。

 

「これですわ!」

「お、おう」

 

 そうして手渡されるのは……燕尾服。分かりやすく言えば執事服である。まさかの男装コスである。

 

「直さんならメイドもいいですが。執事服も絶対似合うと思いまして!」

 

 熱弁してくる。まあミニスカフリフリメイドよりかは似合うだろうけど。

 

「ま、着て見るか」

「良いんですか!」

「私が今更男装に抵抗あると思うか?」

「いえ……その昔の話を聞いてしまうと」

「ま、昔の事は気にするな。そんでこれ胸とか大丈夫か?」

「女性用に作られてますので胸の方もゆったりしてるかと」

 

 大丈夫そうだ。てなわけで八百万を部屋から追い出す。こういうのは一気に変わった所を見るのが面白いからな。髪型は後で八百万に結ってもらおう。

 

「おーまた良い生地で作ってるっぽい。幾ら使ったんだか」

 

 気にしたら負けだと分かっているが、つい気にしてしまう。さてさて上を着まして下も着て、ネクタイを調べながら付けまして、最後に手袋をつけてと。鏡で確認して変な所は……無いな。

 

「オーソドックスって言えばいいのかね?夏に着るモンじゃないのは確かだな。寮が涼しくて助かった。あ、出来たぞー八百万ー」

「はーい。失礼して……まあ!」

 

 執事服の私に目を輝かせている八百万。ご満悦と言った表情である。

 

「とっても似合ってますわ!直さん!ええ!とっても!」

 

 いつになくテンションが高い。楽しそうで何よりです。

 

「これは!皆さんに見せなくては!あ、その前に髪型弄りますわよ」

 

 そう言って櫛とヘアスプレーを創った八百万は、私の髪型を整えていく。後ろ髪を大きな三つ編みに束ねた感じである。ゆるふわ感は無いな。

 

「行きますわよ直さん」

「はいはい。エスコートしますよ、お嬢様」

「お願い致しますわ執事さん」

 

 うむ。久々の男性衣装で私も地味にテンションが上がっている。恥ずかしいという感覚は全く無い。なんだかんだで男性思考も抜けてないなと感じてしまう。

 

 そして皆のリアクションはと言えば。最初は戸惑われながらも、おおむね良好。女子連中からの黄色い声が多い。

 男子連中からも普段のスカートよりも似合うと言われてしまった。親しみやすく感じるのだとか。少しばかり乙女心が傷つく評価である。

 

 なんかめっちゃカメラで撮られてしまいながらも、ノリノリの私がそこには居た。途中で八百万がメイド服着て参戦して来たのは余談である。




 これが最終回で良い気がしてきた件。45話の「再建の旗」もある意味で最終回なんですけどね……書きたい事書いたという意味で。
 現在書いてる話の蛇足感が……ね?凄い訳ですよ。

 ちなみに作者が思い描いている執事服のイメージは「ノラと皇女と野良猫ハート2」に出てくる「ノエル」の執事服です。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。