チートそうでチートじゃない、けどあったら便利。そんな個性   作:八神っち

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 ようやく1-Aキャラとまともに話すのかな?


ぶっ壊しても!ぶっ壊しても!ぶっ壊しても!

 スリーサイズを聞こうとした奴を締め上げて放課後。自由な校風に恥じぬ雄英は入学初日から通常カリキュラムを行う所も普通にあるようで、ヒーロー科の授業も普通に行われている。

 さて、ここ数年のヒーロー科受験の傾向が仮想ヴィランを使って行われた事からわかる様に合格者の大半が「物理攻撃力」の高い者である事は想像に難くない。

 つまり何が言いたいかと言えば……

 

「あ、物見くん。こっちもお願いね」

「こっちにもよこして」

「こっちもー」

 

 1年の入学初日でも高学年のヒーロー科による戦闘訓練が行われていたのだが、まあ出るわ出るわぶっ壊されている訓練地区のビルや道路や街灯やらが。お前ら本当にヒーロー目指してんの?って惨状が。

 

「ここ本当にヒーローの訓練後ですか?ヴィラン訓練の間違いじゃ?」

 

 先生たちは何も答えてくれない。訓練の度にこんなに壊してるんじゃそりゃ工費も掛かるわな。そんな事を思いながらも先生が指定した場所を修復していく。実際の個性の発動を目の当たりにした先生は驚きを隠しきれていない。

 

「いや本当に助かるよ。君みたいな個性の人ってあんまり入学しないからね」

「どういたしまして」

 

 そんな短い会話を挟みながらも次々に修復を行っていく。日暮れまでに終わるかなと打算しながらも自身の疲れを確認する。

 

「ここで最後ですね」

 

 最後の指定箇所を修復し学内移動用のバスに戻る。夕焼けのバスの中で先生から労いの言葉をかけられる。

 

「入学初日からすまなかったね。今後もお世話になると思うからよろしく頼むよ」

「校長から話を聞いた時は眉唾だと思ったけど、実際見てみると便利な個性ね」

「君みたいな個性の子がもっと増えると嬉しいな」

 

 などなど初日にしてこの評価である。悪い気はしないものの一部の先生のそれは今後もぶっ壊す宣言である事は察した。学校の校門に着き待っていた心操と共に帰宅する。

 

 

 

 2日目の朝、髪の状態を確認する。5分の1が白色になっていてこんなもんかと思いながら登校する。なお教室に入った時に髪について聞かれたのは言うまでもない。

 その日は委員長を決めるための時間があったのだが心操の「中学ずっと委員長やってたし物見でいいんじゃ」の一言によりほぼ強制的に委員長に任命された。解せぬ。なお、副委員長の座をかけて男子の間で小競合いがあったのだが関係無い話である。

 

 そんな平凡な時間が流れていたが休み時間に先生に呼び出されて職員室に行くとそこには平和の象徴が居た。

 

「先生、それにオールマイトもどうしたんですか?」

 

 オールマイトが居るもののいつも通りに話しかける。

 

「それがねオールマイト先生から君にお願いがあるそうだ」

「オールマイトから?」

「話は引き継ごう。私的な用件で申し訳ないんだが……」

 

 話を聞くと、どうやら個性の制御が少し疎い生徒がいる様で戦闘訓練用のビルを破壊してしまった時に即時次の訓練に移れるように直して欲しいとの事だった。あと折角だから戦闘の様子を見ていかないかい?と。

 

「良いですけどこの場合、自分の授業はどうなるんですか?」

「そこは私が話を付けておいた。心配する事は無いさ」

「そうですか」

 

 問題ないのなら頼まれ事を優先してしまうか。そう思い了承する。

 オールマイトが担当する1-Aの生徒はコスチュームに着替えて戦闘訓練のビルに行っているとのことでオールマイトに担がれながら向かう事にする。

 

「私が遅れて来た!」

「なんか女子担いでるー!?」

 

 女子生徒を担ぎながら現れるオールマイトに驚く声を聞きながらも、降ろされて1-Aの面々と向かい合う。試験で見た緑のモジャモジャ少年と目が合う。

 

「突然の生徒の追加に驚いているだろう。この生徒は戦闘の見学と、とある事を頼んでいる。自己紹介を頼む」

「1年普通科、物見直だ。以後よろしく」

 

 普通科!?と驚いた様子である。そりゃそうだろう。ヒーロー科の授業に関わって来る事など通常はありえないのだから。

 オ-ルマイトが戦闘訓練について説明をしているが一部の生徒からずっと視線を受ける。説明が終わり、くじ引きでチーム分けを行い戦闘をする者以外はモニタールームへ移動する。

 初戦には試験で見かけたモジャモジャ少年、緑谷が居た。

 

「ではヴィランチームは核弾頭を隠してくれ。合図したら訓練開始だ」

 

 隠している時間に見ている生徒は何をするかと言えば。

 

「ねーねー物見さん。頼まれてたある事ってなーに?」

「てか何で普通科から?」

「どんな個性なのかしら?気になるわ」

「ああ確かに気になるぜ。その胸の大きさが!」

「峰田ちゃんそれ普通にセクハラよ」

「うっせー!気になるもんは気になるんだよ!」

「でも確かに大きいよね!ヤオモモと同じくらいありそう」

「ん?どうかしましたか?」

「……八百万に負けず劣らずとは普通科侮り難し」

 

 自分への質問である。話に挙がったやたら露出の高いコスチュームを着ている女子生徒八百万は首をかしげている。話しかけた面々は胸を見比べながら盛り上がっていた。ある女子が自分の胸を触って難しい顔をしていたのは無視した。

 てか自分は自己紹介したものの相手からされていない為どう返したらいいのかわからん。胸の話で盛り上がられると尚更。

 

「こらこらトークもいいが、相手の隠し場所を見て何故そこに隠したかの判断や自分ならどこに隠すか、またそこに隠されたらどう見つけるかと、考える事は山程あるぞ」

 

 オールマイトから注意を受け、胸の話は一旦終わりモニターを見る。セオリー通り探し辛いビルの上階に核弾頭を運びゴツゴツした装備の生徒が準備完了の合図を出す。

 

「整った様だね。じゃあ訓練開始だ」

 

 

 開始早々に爆豪と呼ばれる生徒の独断先行で緑谷を潰しに掛かっていた。爆破の個性で高い機動力を維持しながら周りを構わずぶっ壊しまくる。言動を見ても完全にヴィランのそれである。

 緑谷が爆豪の攻撃をどうにか捌いている中、ヒーローチームの相方が核弾頭を探し回り見つけるもののヴィランチームの相方が見張っていて手が出せない様子だ。

 

 少しの膠着状態の中、緑谷が相方に指示を出して勝負に出る。爆豪の攻撃を片腕を犠牲にして受け止め、無事な腕を上に向かって突き上げる。

 

「君が一番派手に壊すのか……」

 

 一瞬オールマイトに目を向けるとやっちゃったかと言った顔である。もしかしなくても制御が疎い生徒とは緑谷の事だったのだろう。溜息と共にじゃあ行ってきますとオールマイトに言ってモニタールームを後に、ぶっ壊されたビルへ向かう。

 

 

………………

 

 

「緑谷の個性スゲーな!まるで……ってあれ?物見は?」

「物見ちゃんならさっき出ていったわよ」

「そりゃそうさ。この事態こそ彼女に依頼していた事なのだから。見ているといい」

 

 どういう事かと首を傾げる面々。固まっている緑谷と爆豪、勝利を喜んでいる麗日と悔しがっている飯田をビルから出させて無事なモニターから中の様子を見てみる。

 

『風圧で窓ガラスも割れてる。まあいいや』

 

 言うや否や、緑谷が開けた穴を下から見上げて視界に収める。そうして個性を発動する。

 

「穴が塞がって……?」

「あ、一部モニターが復活してるって嘘!」

 

 個性の発動と共に先程まで空いていたと思われる大穴が綺麗さっぱり屋上までヒビ一つなく直っているのだ。物見は窓ガラスを見て周り上の階でのフロアにも問題が無いか確認しながら大穴の余波で壊れたカメラ等を直してビルを出る。時間にして5分も掛かっていないであろう。大穴だけなら一瞬と言える速度で直している。

 

「これが彼女の個性ですか……」

「物体の修復だそうだ。直接的な戦闘能力が無い故目立つ事は無いがどう思うかね?ヒーローの卵達よ」

「……下手な戦闘力の個性よりかも遥かに重宝される個性でしょう」

 

 物見の個性の価値にいち早く気付くのは同じ物質に関する個性を持つ八百万であった。「ビル一棟を5分かからず直す」言葉にすると単純だろうがそれを可能に出来る人物がどれだけ居るか。

 

「ヒーローってのはただただヴィランを倒せば良いって職業じゃない。人を助けるってのは多岐に渡る、それを肝に銘じてほしい」

 

 そう話を締めくくり、物見が戻ったのを確認して今の戦闘の総評に移るのであった。




 まともに話すと言ったな?あれは嘘だ。
 早く体育祭編に行きたいでござる。

 何故オールマイトは主人公に即時の修理を頼んだの?→場所移すよりも主人公が修復する方が時間的に早いから。壊れないなら壊れないに越したことはないですが。

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