夕凪の士魂   作:雨風雷光

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第10節「訓練・一日目午後」

数々と脱落者を出していくなか日がてっぺんになった。

そこで新しくルールを追加。のこり六時間のうちに基地郊外の山の山頂。そこに鳳凰が待機、辿り着いたらクリアというものである。とりあえずそこに着けばブートキャンプはなしになる。

ーーーーーー

と、その前に皆動き疲れただろうということで昼食を取ることにした。工場地帯の中心の大工場で食事をとることに。先に雨風達が料理を作るために向かうと鳳翔と間宮、伊良湖と共に目を疑う光景があった。

 

??「リュージョー、モウ一回!モウ一回!」

 

龍驤「はいはい、そーれ発艦!今度は三機やで!」

 

??「ゼロ!レップウ!マテマテー!」

 

艦載機を追いかける幼い女の子。それだけなら普通に微笑ましい光景だろうが普通の女の子ではない。

 

鳳翔「りゅうちゃん、ほっぽちゃんそろそろ準備してねー?」

 

ほっぽ「コレ捕マエテカラニスルー!」

 

ほっぽと呼ばれたこの少女。紛れもなく深海棲艦。しかも上位種の鬼や姫。そこに属する「北方棲姫」という陸上型の深海棲艦。それが艦娘と遊んでいる。なんとも驚きを隠せない状態である。

 

??「あ、雨風」

 

と、若い男性の声に呼ばれる。もちろん心当たりはある。

 

雨風「やっぱりお前か……大体予想ついてたわ」

 

少し振り替えってそちらを見る。そこにはいつの間に来たのか、軍服の青年が立っていた。

 

霧衛「九十九。君は何故何も言わずに……」

 

九十九「まあ、いいでしょ。別にあの子は危害を加える気はないから。安心しててくれると」

 

雨風「少しでも怪しい動きを見せたら容赦なく消し飛ばすからな?その辺理解してんだろ?」

 

九十九「だ、大丈夫だって……」

 

雨風は基本的に敵である者を信用しないよう、または信用させて利用するように訓練をしてきた。しかしその一方仲間だけは絶対に裏切らない。例えば主が居たとして、その主が負けそうになっても最後までついていくように教わってきた。これも師匠からの教えである。

 

ーーーーーー

 

浦風「提督さん、お好み焼き焼けたよ」

 

雨風「お、じゃあ九十九んとこ持ってってくれ」

 

浦風「うん。でも……あれいいんじゃろか……敵じゃけぇ警戒せんと……」

 

雨風「その為の護身術やったろ。とりあえず害はないから大丈夫だ」

 

浦風「うーん提督さんが言うんじゃったら……」

 

そう言ってそのテーブルに運んでいった。

ーーー

浜風「雨風さん。この飲み物なんですけど……」

 

浜風がある飲み物を持ってきた。それは雨風が愛飲している特殊なエナジードリンクの<thunder>である。何が特殊かというと帯電率を一気にあげるのである。しかしコレを飲むのには注意することが一つ。愛飲、というよりは雨風専用のアイテムのようなものであり普通に飲んでしまうと体がしびれるような代物なのだ。

 

浜風「あの……何人か口にしてしまって……」

 

雨風「何やってんだよ……ていうかなんでここにそれがあるんだよ」

 

那智「私は止めたのだが……隼鷹と千歳が……あとは千代田も巻き込まれている。私も飲んでしまったが特に以上はないな」

 

雨風「そう言ってるけどお前腰抜けてるからな。ガクガクしてるし。それともってきた三人はブートキャンプ強制だ。ドックに連れていってくれ」

 

那智「し、承知した。では……治ってからでいいか…?」

 

雨風「ご自由に。さてそろそろ再開するぞ」

 

ーーーーーー

ヒトサンサンマル。訓練を再開。先程のルールを追加し、大工場からスタートする。今回、鬼役は全員で皆より15分程遅れてスタート。ゴールの山頂までは雨風が瞬発強化を施した状態(時速約120km)でも一時間半はかかるためにここからは隠れ通すか逃げ切るかゴールするかの三択になる。

ーーーーーー

午後の部開始から40分。一番最初に山の麓に到達したのは秋津洲。

 

秋津洲「あとは登るだけかも!大挺ちゃん!行こっ……ひゃあっ!?」

 

後ろにいた自分の友達に振り替える。しかしその友達の後ろにもう一人。いつの間にか立っている。気配も音もなく。ただそこに居た。腰が抜けてしまった秋津洲。

 

秋津洲「え……あ……」

 

すぅっと。息を吸い込んだ。

 

秋津洲「わあわぁぁぁぁ!?!!?」

 

その辺一帯に悲鳴が響いた。

ーーーーーー

工場群の屋根上で戦う山城と雨風。

山城は得意な武器がなく槍と複数の鎖、そして放電やスパークといった多彩な攻撃を繰り出す雨風からは防戦一方だった。

 

雨風「ほらほら!逃げるな!」

 

山城「逃げてません!前に出れないだけです!」

 

雨風「それが逃げてるんだよっ!そら!」

 

山城「きゃっ!?」

 

足元の屋根を突き破り鎖が出現。山城の足に絡まる。

 

雨風「足元注意、だぞ。山城」

 

山城「うっ…あ……くっ……!」

 

雨風「ほら、そろそろ終わりだ。降参しろ」

 

山城「まだ……やれます!」

 

雨風「なら仕方ない……ふん」

 

雨風が山城を宙に浮かせる。

 

山城「やっ……うぅ……!」

 

雨風「雷殻!」

 

激しい電撃が山城に浴びせられる。

 

山城「ああああああぁっ!!!」

 

全身がピンと伸びる程の強さ。艦娘であるから耐えられるものの常人なら即死レベルの高電圧。それを雨風は自在に操る。しかしデメリットとして月に一度充電しなければならなかった。それを補うアイテムが<thunder>だ。

 

山城「あっ……うっ……」

 

雨風「気絶したか。すぐ降参すればいいものを」

 

電撃を止め、ふわりと鎖で地面に山城寝かせる。

そして次に行こうとした。しかし

 

ザッ。

 

雨風「?」

 

山城「まだ……です……まだやれます……」

 

膝からガクガクといっているがそれでもなお立ちあがり雨風に挑む。

 

前からそうだ。何度負けても諦めない。そんな姿勢だった。だから俺も諦めずに、妹に情けないところを見せまいとここまでこれた。

 

雨風「ははっ。ふはははははは!!!!」

 

山城「むぅ……」

 

雨風「いいな!それでこそだ!でもな諦めることも大切だ!」

 

山城「でも諦められません!」

 

雨風は山城に向かって歩いていく。ゆっくりと、まっすぐに。

 

雨風「まったく強情な妹を持つと苦労するな」

 

その一言の直後雨風に抱き締められる山城。

 

山城「きゃっ。兄様……」

 

安心したかのようにゆっくり力を抜く山城。

そのあと少しばかり嬉しそうにドックに向かっていった。

 

ーーーーーー

 

霧衛「ふっ!」

 

小さめの工場の中で霧衛は応戦していた。

 

??「やぁっ!」

 

??「はっ!」

 

左右から挟み撃ちにされる。だが霧衛はそれを軽く防いだ。しかし相手の動きが早く防戦一方となってしまう。

 

霧衛「二対一はどうかと思うがな、神風、春風」

 

神風「こうやって足止めしながらでないと」

 

春風「逃げ切れませんからね」

 

霧衛「ならこうすればどうかな?」

 

神風&春風「「!!!」」

 

小工場を炎の渦が囲う。

戦艦の装備すら瞬時に消し炭にする炎。それがある以上逃げられない。ここはどう出るのだろうか。

 

霧衛「ブレス起動。神風、春風」

 

神風「私たち……?」

 

春風「お姉様警戒を」

 

直後。背後に気配がある。それは目の前の霧衛と同じ気配。

 

神風「えっ?司令官が二人……?」

 

霧衛「これは分身だ。きみたちの組み合わせではこういうのが使えるようだな。どうする?降参をおすすめするが」

 

春風「まだ増えるんですか?」

 

霧衛「もちろん」

 

これ以上増えては勝てない、それどころか逃げられないので降参を決めた二人であった。

 

ーーー

秋津洲「……きゅ~……」

 

??「……ごめんなさい……」

 

秋津洲は気絶していた。その理由は驚いてしまった。背後にいた女性に。暗闇から現れた女性に。そう

 

??「驚かすつもりなんてなかったのに……もう泥だらけ……」

 

逃走中に苔を踏み足を滑らせ池に転落しそのまま鬼役に素通りされた扶桑に。

 

扶桑「仕方ない……連れていくしかないわね…」

 

そのままあっさりゴールした扶桑だったが途中も散々だったそうな。

 

ーーーーーー

ヒトハチサンマル。訓練終了のサイレンが鳴る。

脱落者135名。ブートキャンプ回避7名。

一日目の訓練はここで終わり。

明日に備えてしっかり食事をとることとブートキャンプの説明をすることとした。

ーーー

 

雨風「みんなどうだったよ鬼役としては?」

 

霧衛「最後神風たちには苦戦したな。なかなかに刀剣の扱いが上手い。それに身軽ですばしっこかった」

 

神風「そういう訓練は雨風さんから受けましたから!」

 

春風「雨風様は速さと手数を考えられますものね?」

 

雨風「もちろん。速さで勝っても手数で押し切られたら意味ねぇしな」

 

霧衛「雨風仕込みだったならあの身のこなしもよくわかる」

 

雨風「由良は?後半全然見なかったけど」

 

由良「ずっと阿武隈ちゃんと戦ってました。提督さんも阿武隈ちゃん強くなったと思いますよね、ね?」

 

阿武隈「でも鞭は痛いよ由良姉……太腿とか痣だらけ……」

 

雨風「修復剤使えばなおるさ」

 

阿武隈「そうします……」

 

加賀「翔鶴は手強くなったわね。さすが装甲空母」

 

翔鶴「加賀先輩……」

 

ばんから「なんたってうちの主力だからね。にしても最後まで残ってるなんて驚いたなぁ。ここはすごい娘たちばっかりだったから」

 

加賀「私が一対一でやろうって言ったの。だから来なかったのだと思います」

 

翔鶴「私もそれを受けましたから……」

 

ばんから「なるほどねー」

 

九十九「雨風、ほっぽ知らない?そろそろ帰らないとなんだけど……」

 

雨風「鳳翔さんのひざ枕で寝てる。連れてってやんな。害はないようだし龍驤にもなついたみたいだら暇なときはまた遊びにこいよ」

 

九十九「分かった。それじゃあな。次は連絡するよ」

 

鳳凰「にしても俺が捕まえたの四人だけかー」

 

蒼龍「お兄ちゃんは無駄撃ちしすぎたからだと思うけどなあ……」

 

愛宕「破壊力あったけどねぇ……」

 

鳳凰「ま、お前たち以外は巻添えなんだけどなw」

 

ちなみに巻添えになったのはRomaとAquilaである。

しかも始まってすぐだった。

 

雨風「そういえば光藤さんは?」

 

霧衛「そこで大鳳と寝ている。そっとしておけ」

 

壁に寄りかかって大鳳とくっついて寝ている光藤。

今回は二人でブートキャンプに行くとのことだったのでさすが意識が高いと思った。

 

ーーーーーー

雨風「それではブートキャンプの説明を簡潔に。日程は来週。マルゴーマルマルから20kmをマルナナマルマルを目標にランニング、休息をとってマルナナナサンマルから俺と霧衛と実戦訓練。ヒトフタマルマルから昼食をとり、ヒトサンサンマルまで昼寝とかもありだ。ヒトヨンマルマルからウェイトトレーニング、ヒトロクマルマルから水泳訓練。水着は好きにしろ。ヒトキューマルマルに晩飯、フタマルマルマルから夜間訓練で今回の工場をで実戦訓練。フタフタマルマルに風呂に入りフタサンサンマルまでには消灯と就寝。これを五日間かけて行う。以上、準備するように。あとは七人ずつ班に別れるように。ちなみに提督は鬼役も全員さんかする」

 

ばんから「え?嘘でしょ?」

 

霧衛「本当だ。もちろん来るだろう?」(威圧)

 

ばんから「はい。いきます。行かせていただきます」

 

こうして一日目は終了した。

 

 

 

 

 

 

 

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