夕凪の士魂   作:雨風雷光

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第9節「訓練(一日目・午前中)」

朝。昨日の嵐が嘘のように晴れ渡る。

隣に寝ている少女を起こし朝食を支度する。

 

雨風「目玉焼きとベーコン。青海苔の味噌汁。紅鮭。俺の好きな米の<ひとめぼれ>。あとはきゅうりの漬け物と大根のお浸しだ。では頂きます」

 

天津風「貴方って料理上手なのね…はむ……ん、美味しい♪」

 

雨風「鳳翔さんに教わってるわけだからな。ちなみに俺はスイーツの方が作るの上手いぞ。自分で言うのも何だがな」

 

天津風「そうなの?あ、じゃあ今度お願いしてもいい?」

 

嬉しそうにそんなことを聞いてきた。もちろんそれには頷いた。

 

ーーー食後ーーー

 

雨風「よし、じゃあ出発!それとここは今から俺の管理下だ!たまに戻ってこれるぞ」

 

天津風「ありがとう、そんなとこまで気を使わせちゃって……」

 

雨風「いいンだよ。俺が司令官になったんだからそれくらいはやらないと」

 

そんな会話を交わしながら桟橋から二人で出発。

 

天津風「でも……」

 

雨風「ん?どした、忘れもんか?」

 

天津風「いえ……重くない?」

 

雨風は天津風を背負っている。それに加えて自分の艤装と天津風の荷物を持っている。しかし全然軽いので「問題ない」と答えた。

 

雨風「よし行くぞ!しっかり捕まってろよ。あ、あと痺れるかもだが我慢してくれ」

 

天津風「え、どういう……痛っ!?」

 

雨風が電撃を纏う。

そして大きく跳び跳ねる。これならすぐにつくだろう。

 

天津風「きゃぁぁぁぁ!!?!」

 

ーーーーーー

 

出発してから二時間程。やっと離島支部が見えてきた。

本部の港に叢雲と時雨の姿が見える。そして後ろから駆け足で扶桑と山城が出てきた。

 

ーーー

 

雨風「到着!天津風~着いたぞ」

 

天津風「貴方って無茶するわね……」グッタリ

 

叢雲「おかえり。遅かったわね。あとは……」

 

時雨「提督、その娘は……」

 

天津風「あ、私は天津風。雨風が遭難してたから助けただけよ。これからここの配属になったわ」

 

叢雲「[雨風]…?呼びすてなんてずいぶんと仲良いのね……ねぇ雨風?」ジトー

 

叢雲がこちらをジト目で見てくる。それにたいしては焦るばかりの雨風。

 

雨風「おい待て、誤解だ。正式な決定ではなかったからそのまま呼ばせてただけだ」

 

叢雲「ふん。ま、無事で良かったわ。お風呂沸いてるし汗を流すわよ。……背中流してあげるから」

 

雨風「お、いいのか?悪いな。てか風呂の時間でもないだろうになんでだ?」

 

叢雲「か、勘違いしないでよ!?あんたが帰ってくるからって用意してたんじゃないから!私が入りたかっただけだから!でも、ほら、あんた汗かいて来たから……い、入れてあげるわ!感謝なさい!」

 

見事なまでのツンデレっぷり。まあこういうところに惚れていた訳でもあるのだが。お言葉に甘えて背中を流してもらうとしよう。

 

ーーー入渠中ーーー

 

叢雲「全くあんたはいつもとんでもないことやらかすわね」

 

雨風「これも不幸艦の運命的な?まあおかげで仲間に恵まれてはいるんだが」

 

背中を洗って貰いながらそんな会話をしている。

この話については後で詳しく説明するが、俺自身も前までは特殊部隊の所属。一人残ってこうして艦隊の指揮をするようになったわけだが、元の部隊の隊員達に顔向けできるよう。あいつらのためにも今はこの場所で同じ過ちを繰り返さないように指揮をとっていくばかりである。

 

叢雲「あ、そうそう。今日はあんたがやるって言ってた訓練の日よ。今日と明日、二日にわたって続けるって言ったわよね?」

 

雨風「そうだったな。まあ風呂から出たら集合をかけて説明しよう。あとは天津風も参加させる」

 

叢雲「分かったわ。あとは湯船にでも浸かってから出ましょ?」

 

ーーーーーー

 

入渠が終わり、大会議室に全員を集める。そこで今回の訓練の内容を説明した。

 

ーーー

霧衛「今回のテーマは身隠し、脱出。遊びでいうと…」

 

雨風「隠れ鬼のようなもんだな。まあやるの隠れ鬼なんだが。しかしただの隠れ鬼ではないぞ、お前たちは鬼に追い付かれたら近接戦で応戦してもらう。あとは煙幕はなしだ」

 

阿武隈「はい。質問いいですか?」

 

手を挙げて阿武隈が質問をしてきた。

 

阿武隈「近接戦で戦える私たちは別として戦えない娘たちはどうするんですか?」

 

霧衛「そこだ。それが問題なのだ。もちろん主砲や機銃、艦載機を使った鬼役の足止めもありだ。だがそれだけでは鬼側が不利になるが。近づかれたら近接戦で、それが嫌なら妨害して逃げ切れ」

 

阿武隈「なるほど、考えてのことだったんですね……」

 

響「私からもいいかな?」

 

雨風「お?どした」

 

響「鬼役は決まってるのかい?それとも捕まったりしたら交代とかかな。そこのところを教えてほしい」

 

雨風「ああ、そうだったな。では鬼役は一人からスタート。まず俺と霧衛、それから叢雲、加賀、時雨、雪恵(雪風)、由良、あとは大鳳だ。全員、この前の体力測定で高評価を出しているからな。それではこのあとヒトマルサンマルから始めよう。それとあとで三人の提督にも参加してもらう」

 

霧衛「以上、各自準備をしておくことだ」

 

雨風「ああ、それと!潜水艦は別枠で鬼役の手伝いをしてもらうから談話室に来てくれ、説明する」

 

ーーー

 

伊13「それで……なにをすれば?」

 

伊58「オリョクルとかだったらはったおすでち」

 

雨風「全員で訓練だって言ってるだろうが。まあ訓練終わったら各自五回位頼む」

 

伊168「わかったわ。で、ないようは?」

 

霧衛「鬼役に負けた相手をドックに運ぶだけだ。あとはそのあとの監視か」

 

伊8「大体、わかりました。では交代しながらやりましょう」

 

まるゆ「あの、まるゆは監視だけでいいですか……?」

 

雨風「ああ、かまわない。ではそろそろだな。さあて!いっちょやりますか!」

 

ーーーーーー

訓練開始10分前

 

雨風「それでは10分後に開始する。それとさっき全員に配った<オーブレス>はある程度なら応戦能力をあげられる。それを使いながらヒトハチヨンゴーまで逃げ切ること」

 

叢雲「ルールは鬼役に見つかって戦闘し敗北、鬼役に気付かず触れられる。この二つが敗北条件。勝利条件、ならびに生存条件は鬼役に勝利した場合か鬼役から逃走したときのみよ。それと協力して鬼役から逃げ切るのもあり」

 

加賀「それでは始めるわ。私たち鬼役は時間毎に一人増えていくわ。まずは雪風と時雨から。それでは隠れて。私たちは10分後に探し始めるわ」

 

霧衛「それと他に参加する提督の<鳳凰蒼輝>と<光藤悠雅>、<ばんから>。こちらも鬼として、だ。以上はじめ!」

 

艦娘たちは一斉に隠れ始める。

場所は訓練用として雨風が使っていた工場地帯。ちなみにこの工場地帯はすべて廃工場で機械などに巻き込まれる心配はなく、塀や背の高い草が生い茂りこういうことにはもっていこいなのである。

 

ーーーーーー

10分。時雨と雪恵がスタートする。時雨は西に雪恵は東に進む。

ーーー

 

??「ここなら見つからないはず……」

 

タッタッタッ

 

??「ん?足音?」

 

カンカンカン

 

頭の上、ようするに建物の屋根の上を誰かが走っている

 

??「ヤバッ、逃げよっ!」

 

走り出したがすぐに見つかった。

 

時雨「見つけた!」

 

鈴谷「ちょっと!いきなり!?」

 

初めに時雨が見つけたのは鈴谷だった。

鈴谷は機銃を撃って時雨の足止めを謀るが

 

時雨「遅いよ!たぁっ!」

 

時雨が壁と壁を飛びながら鈴谷に攻撃する。

背後にまわり首を狙い一気に斬りつける。

ドッ。と鈍い音がする。

 

鈴谷「あぅっ……」

 

時雨「大丈夫、峰打ちだよ。イムヤお願い」

 

いむや「早すぎるのよ……まずは一人ね。次も頑張って」

 

 

鈴谷を小舟に乗せながら水路を泳いでいく。この水路はドックに繋がっている。

 

ーーー

??「遅いおそーい!」

 

雪恵「さすがですね島風さん!」

 

雪風は島風を追いかけている。しかし追い付けないどころかだんだんと距離を離される。が、それが狙いだったりする。

 

雪恵「逃げるのはいいですけど、足元注意ですよ!」

 

島風「だいじょ……おうっ!?」

 

突如として島風が宙吊りになる。雪風が島風を一度見つけ、わざとスルーして罠をしかけておいたのだった。

 

雪恵「では!行ってらっしゃい!」

 

島風「嫌だあ!!」

 

そのままドックに運ばれていく。しかも同じように数名引っ掛かり連れられていく。

 

30分経過。

ここまでで脱落者は17名。

現在は時雨が夕立と交戦中、雪恵が罠のかけ直し、鳳凰と光藤が火炎球と矢を打ちまくる。雨風がWarspiteを追跡中。

 

ーーー

 

Warspite「はっはっ。いくらアイテムで強くなってるとはいっても……」

 

元々体が強いわけではないWarspite。さすがにこれ以上は無理だと判断し雨風に降参した。

 

雨風「うん。いいことだ。さて……と」

 

雨風は次の相手は決めており、その相手を目指して走り去っていった。

 

ーーーーーー

更に10分。霧衛が出動。

ーーー

 

 

??「ここなら見つからないで過ごせるかな…運が働いてくれるといいんだけど…」

 

そう思っていた矢先、背後で火柱があがる。

 

??「えっ!?うっそ!」

その中から現れる霧衛。

 

霧衛「さてまずは君からだな。瑞鶴」

 

瑞鶴「……分かった。でも負けないから!ブレス起動!」

 

瑞鶴が普段とは違う特殊な艤装を身につける。

それに対し霧衛もブレスを起動させる。

 

霧衛「ブレス起動。加賀、長門」

 

霧衛も別の組み合わせを使う。

ーーー

夕立「やあっ!」

 

時雨「はっ!」

 

同じ形状の武器。短刀を二本使う時雨と夕立。威力は夕立の方が上だが手数で時雨が勝り時雨がやや優勢であった。

 

時雨「夕立。そろそろ終わりだよ」

 

夕立「ううん、こんなに楽しいの久しぶりっぽい!だから…負けないわよ!やるっぽい!」

 

戦いは激しさを増した。

壁は崩れ倉庫の天井には穴が開く。その穴から屋根の上に出てまた戦いを続ける。

 

夕立「まだまだっ……ぽい!?」

 

夕立の足元が崩れる。

 

時雨「チャンス!後ろに回って峰打ちを……」

 

時雨が動こうとしたその瞬間。

遠く離れた場所でものすごい爆煙があがる。

訓練をしていた皆がそこを見る。その場所は霧衛と瑞鶴が戦っていた場所であった。

 

ーーー

 

カララララ(刀を引き摺る音)

 

瑞鶴「あっぶなぁ……」

 

霧衛「よけないでくれないか五航戦。あてられないだろ?」

 

瑞鶴(なんとなく……加賀さんの圧を感じる……ていうか……)

 

背後の壁が吹き飛んで隣の倉庫まで丸見えである。それにコンクリートの床が抉れ吹き飛んだ壁の破片は真っ二つ。

 

瑞鶴(こんなの喰らったらヤバイ……)

 

霧衛「ふっ。侮らないでいただきたいな。しかし私とて手加減は無理だ」

 

瑞鶴「うっ……じゃあ……降参する。勝てそうにないし」

 

ひらひらと手を振りながらドックの方へ歩いていった。

霧衛もそれを見て自身の武装を解除した。しかし

 

霧衛「ぐっ……!さすがに大型艦2隻は体力を使うな……次からは組合せを軽くしなければ」

 

体力の消耗がかなり激しく使い続ければすぐに倒れてしまう。使い方を改善すべきだ。

 

ーーー

 

??「ここなら大丈夫だよね……?別に見つからないよね?」

 

一人スタート付近の倉庫に隠れていた。

回りが激しさを増してきたために出られなくなってしまった。

 

??「よ、よし。そろそろ出よう……」

 

出入口から顔をだしキョロキョロと見回す。そしてタイミングを見計らい一気に駆け抜け……られればよかったが火の玉が降り注ぎその一つが直撃。

 

蒼龍「あっつぅい!!?」

 

鳳凰「左右とかばっかじゃなく上も見ろよ蒼龍!」

 

蒼龍「お兄ちゃん!?」

 

蒼龍の頭上から鳳凰提督が狙い打ちしたもよう。

リングの効果は切れたので複製したブレスを使った攻撃をしていた。

 

鳳凰「あ、ちなみに愛宕もドック行ったからな~。じゃまたな!」

 

蒼龍「ええ……そんなぁ……」

 

ブートキャンプ行きが確定した蒼龍はとぼとぼとドックに歩いていった。

 

ーーー

 

大鳳「第六○一航空部隊!発艦!応戦して!」

 

打ち上げた航空機で応戦する大鳳。しかし放たれる多数の矢に全て撃ち落とされる。

 

光藤「パターンが良く分かるんだよね~。これも大鳳の力使ってるかからかな?」

 

ブレスを使った光藤が大鳳のタイミングに合わせ確実に全滅させる。しかし大鳳も光藤もそろそろ残段が尽きる頃で、次の攻撃で決まるだろう。

そのためにはどちらかが後に動かなければならない。先に撃たせて手薄になったところを撃破する。だがいまの対戦では撃ち落とされる航空機を出す大鳳の方が不利。

ここでどのように行動するかが戦いの鍵を握る。

光藤は弓を構え大鳳も狙いを定める。

数秒の沈黙。と、先に大鳳が動く。光藤目掛けてまっすぐ走る。光藤も狙いを合わせる。

 

光藤「それじゃあ……」

 

光藤が弓を引く。

 

大鳳「たあっ!」

 

光藤「うわっ!?」

 

大鳳が武装を解除し光藤に抱きついた。丘の上にいた二人は緩い坂道をゴロゴロと転がり止まった頃には大鳳が光藤を押し倒す形で上に乗る。

そして息を切らせながら嬉しそうににっこりと頬笑む。

 

大鳳「私の勝ちですね。……光藤さん」

 

光藤「……そっか……でもっ!」

 

光藤は大鳳を抱き寄せる。

先程とは逆に押し倒す。そして首元にナイフを当てる。

 

光藤「詰めが甘いね。僕だって一つの武器だけじゃないんだよ?…これで引き分けだね。……ブートキャンプ、二人で行こうか。ツラいと思うけど」

 

大鳳は完全に裏をかかれ、ぽかんとした表情だったが光藤の意見に賛成。そして二人で寝転び嬉しそうに笑い声を上げた。

 

大鳳「ふふ。相変わらずですね提督。そうね一緒に頑張りましょう♪」

 

光藤「あはは。そうだね、頑張ろう!」

 

丘の上で休息をとり二人でドックに向かっていった。

 

to be continue ?

 

 

 

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