だから今日も眼鏡を買う   作:yourphone

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ほう……なるほど、それは良い案ですね

「うーん」

「どうしたもんか……」

 

おやおや。これは皆さん重症ですねぇ。頭脳担当の風丸君や半田君、豪炎寺君も珍しく部室に居ます。

染岡君や円堂君はおつむがあれなので外で体を動かしています。

え、僕? 明らかに頭脳担当じゃないですか。

 

「ほら、マネージャーさん。何か良い案を出してくださいよ」

「無茶言わないで」

 

野生中との試合の後マネージャーになった雷門夏未君にちょっかいをかける。

なんでも、理事長の娘だそうで前々から弱小のサッカー部(円堂君たち)に無茶苦茶を言っていたそうな。僕がサッカー部に入る切っ掛けとなった帝国との練習試合も理事長からのお達しだったそうです。

 

まー、こんな典型的なお嬢様が存在していた事に驚きですし、中学校で親の七光りを十全に活用しているのには驚愕しましたし、なによりツンデレなのが、ツンデレなのが素晴らしい!

 

僕は目金欠流! 雷門サッカー部最強のオタクです!

このようなジャンル分けは得意中の得意!

 

……まぁ、ツンデレはオタクが喋るには敷居が高いのであくまでマネージャーに対する態度でないといけませんが。それに権力が怖いですし、夏未君のデレの対象が円堂守君っぽいですしねー。もてもてですねー(棒)

 

……ちっ。

 

「あーもー、いっそのこと必殺技の練習はしない方向で良いんじゃね?」

「……まぁそれが安全ではあります」

 

ちらっと豪炎寺君の方を見る。少し顔をしかめてますね。

そう、この集まりはこれからの練習方針を決めるものです。

何故今更? とお思いでしょうが……まぁ、有名となった弊害、とだけ伝えておきましょう。

 

「実際今のところ僕たちが使える必殺技で高威力なのは円堂君の『ゴッドハンド』、豪炎寺君の『ファイアートルネード』、染岡君の『ドラゴンクラッシュ』、豪炎寺君と壁山君の『イナズマ落とし』に豪炎寺君と染岡君の『ドラゴントルネード』の五つです。その内、『イナズマ落とし』は現実的な必殺技ではありません」

「まぁ、な」

 

『イナズマ落とし』はシュート技ですので、DFの壁山君が前線へ行かなくてはいけない時点で狙うのは難しいのです。

 

「そして正直な所『ファイアートルネード』は豪炎寺君が小学生の頃から使ってる技ですから今更隠す必要が無いんですよね」

「……」

 

強いて言えば威力が桁違いになっているかもしれないのですけれど……劇的にシュートコースが変わったりはしないでしょう。

 

「隠すべきは『ゴッドハンド』、『ドラゴンクラッシュ』、『ドラゴントルネード』ですね。『ドラゴントルネード』はともかく、残りの二つはお二人がひっそり練習すれば良いでしょう」

「お? 俺の案、意外といい線いってる?」

「そんな訳無いだろ」

 

否定したのは風丸君です。

 

「必殺技の練習を出来ないっていうのは、逆に言えば新しい必殺技を編み出せないって事になるだろ?」

「それは、そうだけど……」

「面白い事を教えてあげます。あの帝国学園の使った事のある必殺技なんですけど、どんなのを知ってます?」

 

悪いですけど話に割り込みませてもらいます。なに、ちょっとした自慢ですよ。

 

「えっと……まず『キラースライド』だろ?」

「それに、円堂を吹き飛ばした『デスゾーン』だな」

「ふむふむ。では驚かないでくださいね―――まず、恐らく全員が『キラースライド』を使えるようです。DFは一人では『サイクロン』や『アースクエイク』といった技でボールを奪ってきますし、二人で使う『ビックプレッシャー』は染岡君のようなワンマンプレーではまず抜けられないでしょう。

 それをなんとか越えてもGKの源田君は『パワーシールド』という必殺技で数々のシュートを止めてきています。しかもその『パワーシールド』を越える技を持っているような発言もしてます。

 キャプテンである鬼道君は凄いですよ? 『イリュージョンボール』というボールを一時的に三つに増やすオフェンス技に『皇帝ペンギン2号』という三人で放つものや『ツインブースト』という二人で放つシュート技、他には良く分からないディフェンス技も使っています」

 

ほんと、あれは何度リプレイを見ても理解出来ないんですよね。直前まで確実にボールを持っていたはずなのに気付くと取られている……しかし鬼道君は激しく何かをした様子が無い。

 

「そ、そんなに!?」

「全員が『キラースライド』を使える……本当か、目金」

「流石にDFとGKは分かりませんけど、最低限FWとMFは全員一度は使っています」

「……そう、か」

 

そう、雷門は明らかに必殺技不足。それにポイントゲッターがほぼ豪炎寺君だけなので豪炎寺君にマークを付けられた途端に攻めあぐねるんですよ。

え、僕が点を取れ? 無茶言いますね。

 

「勿論、このままでは必殺技以前の問題として個人個人の技量に差が有りすぎますけどね」

「……まぁ、良い場所が見つかるまで基礎練習しかないか」

 

ま、僕は目金欠流。そもそも必殺技なんて持ってません。なので別に練習を見られても気にならないんですよね。

 

 

 

 

 

次の相手が判明しました。御影専農ですか。ふむふむ。

 

「練習を隠す意味など無い」

 

いやぁあの髪形……髪形? あれ、髪なんですか? とげとげヘッドとか初めて見ましたよ。その隣に居る人は普通な髪形ですけど。

 

「君たちの必殺技は全て解析済みだ」

 

さて、今どういう状況かと言うと

 

河川敷で練習→御影専農のバス来襲→御影専農のキャプテンがいちゃもん(今ここ)→サッカー対決

 

って感じですね。警戒し過ぎなんですよ……まったく。

 

「それがなんだ!」

「ふん、要するに君たちが勝てる可能性は0%だということだ」

「んなの試合してみなきゃわかんねーだろうが!」

 

おーおー、円堂君も染岡君も元気ですねぇ。僕はさっきから走ってばかりで疲れきってますよ。……これでも前よりは動けるようになっているんですけどね。

 

「試合? 試合……試合、ねぇ」

「あ?」

「俺たちは試合だと思ってない。次に行うのは、害虫駆除だ」

「んだと……!」

 

害虫……害虫、ですか。農業系らしい例えですね。

残念なことに何かに害を与えられるほど強くないんですけれど。

 

「じゃあ見せてあげよう。君たちとのレベルの違いをな」

「おうっ! やってやる!」

 

はいはい、PKPK。

 

先攻はあちらさん。ピンク髪の男(のはず)がシュートするようです。こっちは当然円堂君。

 

「ふん、既に君たちの必殺技はコピーしてある。……絶望しろ!」

 

その場で飛び上がる。そのジャンプの仕方は……もしや!

 

「ファイアートルネード!」

「なっ!?」

 

足にまとった炎がボールへと移り、円堂君へ襲い掛かる。

 

「う、おぉぉっ! 『熱血パンチ』!」

 

円堂君、拳を叩きつけますが弾かれました。

 

「まぁ、この程度簡単だ」

「な……」

「豪炎寺さんの……」

「ファイアートルネードが……!」

 

皆さん、驚愕のあまり言葉が出ないようです。

 

―――ふーむ。これはこれは、面白いですね。

 

「さあ、次はお前たちの番だぞ」

「ぐ……! 豪炎寺! お前の本当のファイアートルネードを見せてやれ!」

 

「いえ、ここは僕に任せてください」

 

「「「 目金ぇ!? 」」」

 

驚き過ぎじゃないですか? いや、まぁ、分かりますけど。分かりますけどね? 少し……かなり心に来ます。

 

「豪炎寺君の()()()ファイアートルネードを見せる訳にはいけないでしょう? 染岡君は冷静にシュートを蹴れないでしょうし、ここは僕しかいません」

「おいこら目金! さらっと馬鹿にするな!」

「豪炎寺君もそれで良いですか?」

「無視すんなぁ!」

 

豪炎寺君は目を閉じて考えています。……。…………。……寝てないですよね?

 

「……あぁ」

「よし、やらせてもらいます」

 

皆さんから集まる視線の中、僕は相手と相対する。

あの髪形……凄く気になります。凄く、気になります。

 

「ふん。目金欠流、背番号12番、ポジションはFWだが目立った戦績は無し。シュートが入る確率0.05%……負ける理由が無いな」

「良くもまぁそれだけの情報で確率計算出来ますね……ま、いきますよ」

 

大きく右足を振り上げる。

 

「ドラゴーン!」

「むっ!?」

 

蹴る!

 

「クラーッシュッ!」

 

あ、爪先に当たってあらぬ方向へ……。

 

「シュートポケッ―――なっ」

 

うおーっ! あぶなっ! ギリギリ左上のゴールポストに当たって入りました! ……ふぅ~。

 

「計画通り!」

 

入ればいいんですよ入れば!

いや勿論自力で勝機は作り出しましたよ? 必殺技の名前だけでも適当に言っておけば解析した通りにしか動かないでしょうし。

……つまりドラゴンクラッシュは解析済み、と。

 

「…………」

 

おや、なんか静かですね。

 

「……っ! ~~~っ! 怒鳴りたくても、入れちまったから怒鳴れねぇ……!」

「染岡君、我慢は良くないですよ?」

「誰のせいだっ!」

 

うーん、この鼓膜が揺さぶられるような大声、これでこそ染岡君です。

 

「目金欠流……貴様の情報は更新した……! 次は負けん!」

「いえいえそれほどでも。……あぁ、それとありがとうございます」

「……なにがだ?」

「必殺技の可能性を、見せてくれましたからね。一応」

「……ッ!」

 

そう、これは一方的に雷門が情報を得たようなもの。

相手はノーマークだったこの僕にむざむざと点を取られただけ。

対してこちらは『必殺技をコピーされている』という情報にチラッと見せてもらえた『シュートポケッ―――』とかいう必殺技の存在、更に言えば『必殺技をコピー出来る』という可能性を、この、僕に見せてしまったんですからね。

ついでに個人的な伏線まで張らせてもらいました。これはもう一方的な情報量です。いやぁ、得るものの多い良い対決でした。

 

結局、御影専農の方々は何も言わずに帰っていきました。

 

「目金! 凄いじゃないか、見直したぞ!」

「円堂君……」

 

円堂君が飛び付いてくる。ビックリして眼鏡が少しズレてしまいました。

 

「いつの間にドラゴンクラッシュなんて覚えたんだ!?」

「はい? 使えて無いですよ?」

「……は?」

 

どれだけ雰囲気に騙されてるんですかこのサッカー星人は。

 

「僕はただ叫んだだけですし。全然、必殺技の『ひ』の字も出てないですよ」

「……えぇ~っ!?」

 

僕は目金欠流。必殺技なんて持ってませんし。ですけどこれからは三人目のFWとして、必殺技の一つでも持たなければ……。




オリジナル必殺技『ビックプレッシャー』
でかい方のDFの前に小さい方のDFが立ち、小さい方はジグザグに、でかい方は真っ直ぐ突進するディフェンス技。横には小さい方のせいで避けにくく、かといって前方は愚作。おかげで源田君が暇になりやすくなっております。
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