豪炎寺君がベンチに居るってなかなか無いですよね。
目の前の光景を無視したくて、そんな事を考える。
「お、おーい。目金、正気に戻ったのか?」
「……」
円堂君がゴールから声をかけてきますが、答えません。答えたくありません。気付けば10-1で勝ってるとか知りません。知りませんよ。僕は何もしてませんよ。うわーソメオカ=クンすごいなー。
「目金~? おーい」
「……」
はぁ。最悪です。やりすぎました。
僕は目金欠流。必殺技なんて使えないです。ですから、元々のステータスを鍛えるのは当然の事ですよね。
現実逃避おしまい。視線を戻した僕の目の前には、倒れ伏す秋葉名戸のメンバーたち。いや、土下座してるだけですね。
彼らのサッカーは僕を大変怒らせました。それはもう、まるでお酒を飲んで酔っ払った時のように我を無くしましたね。
相手マネージャーにメイド服の着用。これはまぁマネージャーさんたちが似合ってたから良しとします。問題は必殺技ですよ。
コートにすいかを持ち込む『フェイクボール』に間違えて当たったら痛いであろう『ねこだまし』。視界潰しの『五里霧中』とそれに合わせてこそこそと『ゴールずらし』。あげくの果てにはサッカーをガン無視した『ど根性バット』ですよ?
失望しましたね。いえ……僕は一つの事にのみのめり込むタイプのオタクではなく、幅広く様々な知識を集めるタイプのオタクです。各々の事柄に特化させている秋葉名戸のメンバーたちとはオタクとしての在り方からして別物と言えます。そんな僕が彼らのオタクとしての全力を否定してはいけないかもしれません。
だけど。僕は目金欠流。サッカーに従属しつつも、その根本はオタクです。そして僕は―――自分で言うのもあれですけど―――とても敬虔なオタクです。新たな事実を知ればそれがどんな事でも狂喜し、オタクとしての先達者を敬い、一次創作を行い僕のオタク欲を満たしてくれるクリエイターに最大限の感謝を捧げています。
彼らは。秋葉名戸のオタクたちは。
それはオタクとして絶対にやってはいけない事です。自分がよく知らないジャンルに手を出すのなら新人の気持ちでいるべきです。偉大なる先達たちをリスペクトするべきなのです。
確かにこの世界でのサッカーはおおよそサッカーらしくありません。飛ぶわ燃えるわ光るわ、空中はペンギンが飛び交い地面は隆起し理解不能のオーラが現れます。それと比べたら『ど根性バット』は平凡?
ぶっ飛ばしますよ? サッカーしてください、サッカーを。
サッカーを手段としてしか見ていないなんて、それはインターネットの向こうに居る相手を無視する事や鉄道を作る工場の人たちを足蹴にする事、アイドルの立つ舞台を作成してくださるプロデューサーを殴り付ける事と同等です。
……とまぁ、こんな考えを押し付けながら反論をことごとく潰してシュートしまくった結果が10-1で秋葉名戸が土下座するという事態です。
「うぅ……ぐ、ぐすっ。俺たちが……俺たちが間違っていた……!」
「く……うく……これでは、ヒーローたちに……顔向け出来ない……!」
やべー。やべえですよ。ガチ泣きですよ。外傷は無いはずですけど精神的にボロボロですよ。
うーむ。彼らは秋葉名戸のサッカー部員とはいえ元々は別のジャンルの住人。コズミックプリティ・レイナの為に文字通り体を張ってサッカーに立ち向かう素晴らしきオタクです。
で、あるならば。
「皆さん」
秋葉名戸のメンバーがビクッと体を震わせます。うぅむ、こんなになるまでやった覚えは無いんですけどねぇ。
「皆さんはオタクです。僕みたいな半端者よりも正しくオタクです。誇りを持ってください。そして、彼女の事は……コズミックプリティ・レイナの限定フィギュア事は、僕に任せてください」
「なっ!」
秋葉名戸のキャプテン(『ど根性バット』を振る方)がガバッと顔を上げます。その顔には驚きがありありと浮かんでいます。
「何を驚く事がありますか? 僕とてオタクの端くれですよ? ……貴方たちの事は尊敬しているんですよ」
「そ……そんな事は無いさ。……任せても、良いのか?」
「勿論」
僕がしっかりと頷くと秋葉名戸のメンバーたちは立ち上がり僕を囲います。僕とキャプテンが握手をすると、今日一番の歓声が上がりました。
あぁ、なんて素晴らしきオタクの絆。だからオタクはやめられないんですよ。
目金がオタクの素晴らしさを再確認している時、それと同時に仲間たちにドン引きされている時。
そことは違ういつかの、何処かで。浮かぶ椅子に座る男たちが会議を行っていた。
「あれがイレギュラーだと? 失礼ですがそこまで警戒するような相手には見えませんな」
「あぁ。しかし試合内容は見ただろう?」
「……えぇ」
10-1。先制点は秋葉名戸。秋葉名戸のキャプテン、漫画萌の『ど根性バット』による得点だ。
しかしそこから始まった怒濤の反撃は、全てあの
秋葉名戸のメンバーがそこまで上手ではないとはいえ、ドリブルとパスで翻弄し、シュートは無理に自分で狙わずその時々によって仲間を適格に使う。
そのプレイングは自分を基点とした攻めのサッカーだった。
「警戒すべきは円堂守、ひいては彼の『悪しき呪文』だけだと侮っていたが」
「うむ、これは考えを改めるべきだな」
「いや。あれの普段の姿を考える限りそこまで警戒すべき相手ではないだろう」
「ほう? その心は?」
「イレギュラーである理由は時間停止を受け付けないその特異体質だ。それを忘れてはいけないだろう。また、イレギュラーの実力がどのようなものであろうと……我らの最終手段には叶うまい」
あぁ、とその場に納得の空気が流れる。
しかし彼らの中で最も年齢の高い男だけは厳しい顔を崩さない。……サングラスとひげのせいで見ただけでは分からないが。
「彼だけでなく円堂守も居る。油断するべきではない。それに彼らはあくまで最終手段だ。なるべくなら切りたくない手札という事を忘れるな。……だろう?」
「む……分かっています」
そう答えた男はこの会議に参加している者たちの中で最も立場が低い。何故かと言えば彼の部下が失敗続きだからだ。イレギュラーと謎のレジスタンスのせいとはいえ、この場でお荷物は必要とされていない。
「次こそは必ず」
「……期待しているぞ」
最後に出てきた男たちはいったい何者なんだー(棒)
遊戯王やモンハンの小説よりもぱっぱと書けるのは良いですねぇ。
忘れてた。オリジナル必殺技:ねこだまし
相手の目の前で両手を力強く叩き付ける。衝撃波で相手は倒れる。