影山率いる帝国学園に雷門イレブンは勝てるのか! 目金に出番はあるのかっ!
まぁ、無かったら作るだけですけどね。
土門君の告発によってバスへの細工は事前に取り除かれました。
監督は響木さんというラーメン屋のおじさん。いくらなんでもそれは無いでしょう……と思っていたらどうやら響木さん、イナズマイレブンのキャプテンだったそうで。
イナズマイレブン―――雷門サッカー部の全盛期のチームです。つまり雷門で過去最高に強い人たちのリーダーが監督という事です。
まぁ、過去の栄光なんて知ったこっちゃありません。経験者が監督となった、ただそれだけで充分です。ぶっちゃけ今まで監督無しでやってたようなものですからね。
そしてやってきました帝国学園!
デカーイッ! 説明不要ッ! 金と権力に任せて造られた荘厳な校舎だぁッ! って説明しとるやないかーい。
はっ。余りの大きさに脳内がオタクモードに。まさか試合前から精神的に攻撃を仕掛けてきている!? うむむ、流石時間停止軍(仮)の総統鬼道有人……。
「よ、よしっ、皆行こうぜ!」
円堂君が真っ先に立ち直り先導します。うむむ、ここまで大きい校舎だとサッカーコートまで遠そうですね。
「ふっ、来たな円堂……待て! そっちは反対方向だ!」
おお、まさかキャプテン直々に案内してくれるのですか。それと円堂君、ストップですよ。走らないでください。
さて、更衣室で着替えです。その後最後のミーティングで作戦の確認……なんですけど。
「鬼道? どうしてここに?」
「……」
鬼道君、襲来。何ですかスパイ作戦が失敗したから今度は堂々と偵察ですか? 流石に目の前で作戦会議はしませんよ?
「影山が何か企んでいる。……何が起きるのか俺には分からないが……俺が調べられなかったのは天井だけだ。だから、頭上に注意していてくれ」
鬼道君はそれだけ言って更衣室を去っていきました。ほとんどのメンバーにはちんぷんかんぷんな言葉なんですけど、円堂君と豪炎寺君だけは何か知っているような顔ですね。
さて、影山ですか。確か帝国学園の監督でしたよね。なにやら悪どい事をしている……しまくっている、という噂を聞いた事があります。イナズマイレブンがフットボールフロンティアで起こした事故も影山のせいだとか。
うーん。
イナズマイレブンの事故は今回僕らに仕掛けられたものと同様、ならばそれは影山が関連していてもおかしくないでしょう。
しかし、普通そんな分かりやすく尻尾を見せますかね?
「やれやれ、どう思います円堂君?」
「俺は鬼道の事を信じる。あいつは悪い奴じゃないからな!」
えっ。
「まぁ、気を付けるだけなら良いんじゃねぇか? それこそ鬼道よりも影山の方が怪しいんだろ?」
染岡君まで……。チラリと豪炎寺君の方を見る。
頷いてますね。すなわち豪炎寺君も鬼道君の事を信じると言うこと。
「……」
仕方無い。鬼道君への警戒は僕がすれば良いだけですし。僕にとっては影山も鬼道君も危険度は同じぐらいです。いえ、むしろ時間停止からの襲撃を複数回行っている鬼道君の方が嫌いです。
「分かりました。じゃあ作戦のおさらいをしましょう」
『準備はどうだ?』
『完璧です。これで雷門は終わりでしょう』
『そうか』
僕はスタメンです。豪炎寺君は途中まで温存しておきたいですし、土門君の言うところによると鬼道君は僕を最大限に警戒しているらしいですから、僕がギリギリまで荒らしてあげましょう。
それにベンチの豪炎寺君のプレッシャーによって不必要な疲労を避けようとする筈です。我ながら良い作戦です。
必殺技を持たないDFとMFは『皇帝ペンギン2号』と『デスゾーン』の対策を主に練習させました。まぁ、どちらも始動が鬼道君である以上、鬼道君にのみマークする予定の僕が頑張る必要があるんですけど。
「さーあ! とうとうやってきましたフットボールフロンティア予選決勝! 実況は小生、角間圭太がお送りします!」
イ~ぃですねぇ。緊張する場所で安定した実況者は、良いですよ。
キックオフ。
染岡君とのツートップ、僕はボールを染岡君へと転がして鬼道君を目指して走り出す。
僕は、目金欠流。大人しくへたれていれば良かったものを……いつから張り切り過ぎていたのでしょうか。
最後に見えたのは鬼道君の驚く顔、最後に聞こえたのは円堂君の叫び声と鉄骨が降り注ぐ音。
ん? 鉄骨? なんで鉄骨?
ふーむ、そう言えば鬼道君がうんたら言っていたような。そして帝国のサッカーコートの天井は確かに鉄骨で支えてありましたね。
となるともしかして鬼道君はいい人? うーん……しかしそうなるとあの時イレギュラーと呼ばれた理由が……。
「どうしたの眼鏡のおじさん」
「まだそんな年じゃ無いですよ」
まぁ、生前も合わせればそこそこの年齢にはなりますけど。
……じゃなくてっ! なんで女の子の声がするんです?
周りを見回す。なんか彼岸花が咲き乱れている場所に立っていました。さっきまでサッカーしてたんですけどねぇ……それになんか来たことがあるような?
隣にはしゃがみこんで彼岸花をじっと眺める少女。多分声をかけてきたのはこの少女でしょう。真っ赤な彼岸花の中に居るせいでピンクのワンピースは地味になってます。髪型はおさげで先っぽが彼岸花と触れ合ってます。
「えぇと……君は?」
「豪炎寺夕香」
「ほほう。僕は目金欠流と言いま―――豪炎寺ですと?」
「それが何?」
僕の知る限り豪炎寺って名字の人は豪炎寺君の家系ぐらいしか居ないと思ってましたよ。
「あ、いえ。僕の知り合いにも同じ名字の人が居ましてビックリしただけです」
「ふーん」
沈黙。
「……えーと、風も吹かない変な場所ですね、ここ」
「うん」
―――うあああぁっ! 話が、話が繋がらないぃっ! この年頃の女の子がするような話題が分からないですっ!
オタクのガラスハートではこの沈黙に耐えられないっ!
せめて携帯か何かがあれば!
「だってここ死後の世界だもん」
「へ、へえ……えっ」
この女の子……夕香君が途切れ途切れに喋るせいで理解がちょっと遅れました。
死後の世界? まじで言ってるんですか?
「私は一人でここに来ちゃったからお兄ちゃんを待ってるの」
「それはその、夕香君のお兄ちゃんが……死ぬのを待ってると?」
「……」
夕香君は悲しそうに頷いた。うぬぬ……どうしましょうか。
僕は目金欠流。せっかくの二度目の人生をあんなあっさりと終わらせたくないです。
あと、可愛らしい女の子が泣きそうな顔をしているのを見るのが辛いです。
「なら、こっちから会いに行きましょう」
「え?」
「フッフッフッ……ここだけの秘密ですがね。恐らく僕は一度ここに来たことがあるんですよ。一度来たことがあるならば元の世界に戻ることが出来るものです! さあっ! そんなところでうずくまってないで歩きましょう!」
僕は夕香君に手を差しのべます。
「……」
夕香君は躊躇しています。勿論僕は夕香君の意思を尊重します。ここに残りたいと、そう言うのならば無理に連れていきません。ですが。
「夕香君のお兄ちゃんに会いにいきませんか?」
「っ!」
悪魔の囁き。夕香君にこの言葉はズルいですね。
さてはて、夕香君の判断は?