だから今日も眼鏡を買う   作:yourphone

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しかし今回眼鏡は勝てない

「皆! だ、大丈夫!?」

「秋君、水! それとタオルを!」

 

マネージャーさんに怒鳴る。あんまりそういうキャラじゃないんですけどね。

 

「救急箱は!?」

「あ、こ、これです!」

「分かりました!」

 

なんかさっきからずっと叫んでますよね、僕。

やっぱり裏方に回りたいですね。マネージャー……良い響きじゃないですか。柔らかく、そして伸びがある。

 

「影野君、少林君、少し染みますよ」

「っ……」

「あたたた!」

 

どうせすぐに怪我するでしょうけど。消毒するだけで気休め出来るなら安いものです。

 

「円堂君。大丈夫ですか? 恐らく君が一番消耗している筈ですが」

「あぁ……すっげぇシュートだった。今でも手が痺れてる……」

「……」

 

あ、これ全然大丈夫な奴だ。どうせ次は『次こそは止めてみせる』とか言うんでしょうね。

 

「だから、だからこそ止めてみたい……いや、止めてみせる!」

 

流石サッカー星人。期待を裏切らないですね。

 

「時間みたいですよ」

「あぁ! 皆、行くぞ!」

 

沈黙。ま、そりゃそうでしょう。あそこまで徹底的に痛め付けられたら普通に考えてやる気を無くすでしょう。

 

「み、皆……?」

「無理ですよあんなの……」

「どうせまたやられちゃうでヤンス」

「怖いッスよ……」

 

染岡君も風丸君も視線をそらす。

 

「何言ってんだ! 俺たちならやれば出来るって!」

「円堂君……」

 

おやおや、マネージャー君が円堂君の事を熱い目で見てますね。そーゆー関係なんですかね。

ま、それこそ関係無いですけど。

 

「円堂君。良いですか?」

「ん? どうした目金」

 

仕方無いので、言ってあげますよ。サッカー星人にも分かるように、丁寧にハッキリと。

 

「ハッキリ言います。まず僕たちに勝ち目はありません」

「そ、そんなのやってみなきゃ」

「やった結果がこれですよ? 何か言い訳は?」

 

円堂君は言い返せない。そうでしょう。至極もっともな事しか言ってませんから。

 

「勿論円堂君が悪い訳ではありません。単にレベルが違い過ぎただけです」

「……」

「っと、あんまり待たせると怒られますね。さっさと行きましょう」

 

鬼道君が今にも声をかけてきそうだったので皆を急かす。言いたいことは言えましたし、むしろスッキリした気分でへたれますよ。

 

「おいおいおい! 目金! お前何言ってんだ!?」

 

染岡君に止められました。まったく、折角いい気分だったのに。

 

「ですから、あの怖い帝国に怒られて―――」

「そうじゃねぇ! 負けるからもう止めようって話じゃねえのかよ!」

「何言ってるんですか? 僕はノーテンキな円堂君に事実を伝えただけで、そんなこと一言も―――あぁ、なるほど」

 

染岡君の言いたいことが分かりました。

ですけど残念ですが、僕は目金欠流であって眼鏡欠流ではありません。

それでなくとも君の性格は分かりきってますよ。

 

「僕に負けるのが怖いんですか。嫌ですねぇ、そういうのって嫌われますよ」

「はぁ?」

「君は……君たちは、自分の言った事を覚えてますよね? 僕に10番は合わないとかなんとか。自分の方が動けると、そう思ってたんでしょう?」

「……っ!」

「自分の実力を見てから言えって話ですよね」

 

おっと角間君。すみませんね、今行きます。

 

「嫌なら逃げてもらって結構。僕は出ますし、もしもの時は逃げますよ? どうせへたれですからね」

 

さりげなく、しかし堂々のへたれ宣言。これで逃げても何も言われないでしょうね。

あー、速く豪炎寺君来てくれませんか?

 

「おい! いつまで待たせる!」

「ほら怒られてた。染岡君、君のせいですよ」

 

フィールドへ。確か……こっちのボールからですね。

 

「ほら、怒鳴るほど体力があるんですから頑張ってください」

「ぐ……!」

 

……何で僕、仲間を挑発してるんですかね? 仲間を挑発するへたれなんて聞いたこと無いですけど。

 

「はい、頑張ってください」

 

ボールを蹴って染岡君へ。

 

「ちっ……やってやらぁっ!」

 

ドリブルで攻める。僕も前に出ますけど……風丸君に抜かされました。

身体能力の差が、顕著です。悲しいな。

 

「風丸!」

宍戸(ししど)!」

「マックス!」

 

おー、パスでなんとかしてますね。あれ、僕FWなんだからあそこに入ってなきゃおかしい気が……。

 

「おらあっ!」

 

染岡君がシュート。片手で止められました。

 

「残念だったな」

「くそっ!」

 

あ、ちょっ、そんな無防備に後ろを見せたら!

 

「うぐあっ!?」

「おーっとすまない。まさか避けないとは思わなくてな」

 

ほらぁ、パスに見せかけた攻撃をくらうに決まってるじゃないですか。

 

「うーん……まあ……もう少しやってみますか……」

 

弟も見てますし。気付いてますよ? 幸い、木の影の豪炎寺君とは逆方向です。……あーあ、きっとまた色々馬鹿にされるのでしょうね。

この目金欠流、最近様々な事で弟に勝てないんですよ。あれですかね、やっぱりオタク文化に浸かりすぎですかね。

と、ぼんやりしてたらシュートうたれてますね。何で僕に攻撃しなかったんでしょうか……きっとへたれオーラが漂っていたんでしょうね。

 

あれ? なんか、あのシュート円堂君に当たって跳ね返ってますけど。蹴った本人の所に戻ってますけど。

 

―――コントロール素晴らしいなー流石帝国だなー僕もあれくらいになりたいなー。

 

「う、く……」

「どうした、もう終わりか?」

 

あらら。まったく目に入らなかったですけど、皆倒れてるじゃないですか。これはもう、そろそろへたれる所ですね。心の準備しましょう。

 

深呼吸深呼吸……すー「おい、貴様」げほっげほっ!

 

「な、ひゃ、はい?」

「……助けに行かないのか?」

 

あっれぇ? 鬼道君、何でここに? 君はあそこでボール蹴っててくださいよ。

 

「まさか。あんなのに割り込めるほど、僕は強くありませんよ」

「冷静だな。……キラースライドをかわした事といい、崩れかけたチームをまとめた事といい、何者だ?」

「何者、ですか」

 

円堂君が遂に倒れた。さあ、へたれなければ。

 

「……あーあ。君が話しかけてくるから、タイミングを逃したじゃないですか」

「なに?」

 

歩き、ボールを回収する。

 

「円堂君、諦めたらそこで試合終了ですよ」

 

返事を待たずに中央へ。……あれ、今のってバスケの名言でしたっけ?

 

「まあ、いいです」

 

ボールを中心に置く。前を見て、鬼道君を見据える。

 

「何者か、と聞きましたね。答えてあげますよ」

 

足を振り上げ、

 

「僕は目金欠流! ただの―――サッカー部員です!」

 

振り切る。高くボールは飛んでいき―――

 

「……」

 

なんか大きい人に取られた。いやぁ、そんなもんですよね。

……な、泣いてなんかいませんよ!

 

「ふん……貴様といい、そこのキーパーといい、案外骨のある奴が居るじゃないか」

「お誉めいただきありがとうござ―――」

 

ぐぶぅっ!? ボール、が……腹に……

 

「だから、しっかりと折らせてもらおうか」

「っ!」

 

ま、ず……。なんでデスゾーンとかいう謎攻撃の準備してるんですかね……?

ちょ、真っ直ぐに僕の方に……。

 

まぁしゃがんで避けますけど。

 

「なにっ!?」

 

え、何で驚くんですか? あんなの避けるに決まってるじゃないですか。……それに。

 

「止めるのは僕じゃないですからね」

「うおおおおおぉぉぉぉっ! ゴッドォォ!」

 

現れるのは巨大な右手。黄色く光るそれは、前へ付き突き出される。

 

「ハンドォ!」

 

止めた。流石……サッカー星人です。その情熱は期待を裏切らない。

 

「目金ぇ! いっけえぇぇぇ!」

 

ボールが飛んでくる。どうしましょう、これ、ファイアートルネードのパターンなのですけど。

この僕は目金欠流。ファイアートルネードなんて超次元技はまだ使えません。だから、全力で蹴る。

 

シュートはそれなりの勢いでゴールへ飛んでいき。

 

「ふん……この程度か」

 

ゴールポストに当たり跳ね返る。まあ、シュートが入らなかったんですから、その態度は分かりますよ。

ボールは大きく跳ね上がり、帝国DFの真上へ。

 

「だらあぁぁぁ!」

「んなっ!?」

 

走り込む。そして、ヘッドシュート! 油断しましたね! そのボールはもっとも取りにくいであろう内角にえぐりこみますよ!

 

「させるかぁっ!」

 

あ、ギリギリで止められました。くぅ……一人では無理でした、か。

 

「この、雑魚がっ!」

「え、ちょぐはぁっ!? 」

 

ボールが僕の顔面にシューッ! 超! エキサイティンッ!

 

おぉ……大空にボールが……川が……見える……。

 

「ファイアー!」

 

川が燃えた。気のせいでした、誰かのスパイクが燃えてます。

 

「トルネード!」

 

生ファイアートルネードだぁ。凄いなぁ。格好いいなぁ。

 

 

 

 

……あ、やけにぼやけてると思ったら眼鏡壊れてるじゃないですか。

 

もう……そこそこお金かかるんですよ? 眼鏡って。

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