だから今日も眼鏡を買う   作:yourphone

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回る炎は妹の為に

俺は転生したらしい。それもあの豪炎寺だ。

ファイアートルネードとか爆熱ストームとか使う炎のエースストライカーだ。

超次元なサッカーで超次元なシュートをバンバン蹴る豪炎寺だ。

 

ちゃんと豪炎寺として生きていけるか不安だったが、始めは大丈夫だった。

 

「てやぁっ!」

 

一人でシュート練習するだけだったから。ずっとシュートの練習をしていたら、そのうち壁にひびが入り始めた。

 

……あれ、当時の俺まだ小学生にさえなってないんだけど?

―――まぁ、それはそれとして。俺の豪炎寺としての欠陥が発覚したのは、小学生になってからだった。

 

「それじゃあ、自己紹介してもらおうかな」

 

そう、自己紹介が全ての始まりだったな。

『ご』から名字が始まるから真ん中より少し速いぐらいに自己紹介をするんだが。

 

「……ぁ…と……豪炎寺修也、です」

 

俺は、かなり喋るのが苦手だった。

豪炎寺らしく髪をワックスで固めていたのもあって、小学校ではろくに友達が出来なかった。性格が『人付き合い苦手』で、目付き悪くて、不良みたいな髪型……そりゃ、誰も近付かないだろ。

 

それでもサッカーだけはやりたい。だからサッカークラブに入りたかったが、親に反対された。

仕方無く、一人でボールを蹴る日々を続けた。

 

そんなある日ついに練習用の壁が壊れてしまった。

 

「ふぅ……」

 

いや、きっと日々の積み重ねだろう。まさか小学生のシュートでコンクリートが割れる訳が無い。

……だが。これはファイアートルネードの習得に踏み切る時が来たのでは?

 

「……」

 

まずは、このコンクリートをパズルのように元に戻そう。

 

 

 

 

 

 

ファイアートルネードの習得は困難を極めた。そもそもの話、どんな練習をしたとしても炎を自力で出すとか無理だ。つまり理論を考えちゃいけない。

ファイアートルネードに必要なのはジャンプ力・シュート力・空中での体制維持能力……そして回転力。

これらが揃ったとき、炎は燃え盛るはずだ。

 

まずは、ジャンプ力を鍛える事にした。方法は忍者が行っていたという鍛練を真似する事にした。木の苗を植えてそれを飛び越す。これを続ければ木が成長していき……いずれは木を飛び越える事が出来るらしい。

シュート力は今まで通りで良いだろう。コンクリートを壊してしまうからゴールネットに叩き込むしか無いが。

問題は残りの二つ。空中体制維持能力と回転力だ。

空中体制維持能力はジャンプ力の練習のついでに出来るかもしれないが、回転力は難しいだろう。

 

実は、これを同時に解消できるスポーツがある。

 

アイススケートだ。

 

 

 

 

 

小学五年にして、遂にファイアートルネードを使えるようになった。

アイススケートのお陰で体幹と回転力は身に付いた……が、あれは黒歴史だ。思い出したくもない。母さんがアイススケートを習ってなかったら……いや、この話はよそう。

とにかく、俺はファイアートルネードを蹴れるようになったんだ。それで良いじゃないか。

そしてアイススケートに通って痛感したことがある。―――はっきり言おう。俺はコミュ障だ。

少し強く出られるとどもってしまうし、思った事を言葉に出来ない。言葉になったとして、上手く伝えられない。無駄にハイスペックな身体とイケメン不良と言えるであろう顔を持つが故に、その事に気づく相手も現れず。

唯一、母さんだけが俺の心の支えになっていたのだが。

 

 

 

―――その母さんは三年前に死んだ。

父さんは人が変わったように仕事に打ち込んだ。俺はアイススケートを続けた。ファイアートルネードが完成するまで、せめてしっかりやっておきたかった。

当時二歳の妹は訳も分からず泣いていた。……だから、俺は誓った。妹を……夕香を守る、と。もはやほとんど覚えていない『イナズマイレブン』だが……なんだったかで妹が危険な目にあうことは知っていたから。

 

 

中学生となり、木戸川清修に入学した。部活は当然サッカー部。誰に遠慮することもなく、真面目に取り込んだ。ファイアートルネードはここぞという時にだけ蹴るようにして、基本はチーム全体としてのサッカーを目指した。

お陰で、フットボールフロンティアでは後一歩のところまで行けた。

 

そこで、妹が、事故にあった。忘れていた、それは言い訳にすらならない。

サッカーが楽しくて、忘れていた? ふざけるな……ふさけるなっ! 自分だけ楽しんで、遊びほうけて、それで結果は!? 妹が意識を取り戻さないほどの重体! 優勝に届かなかったサッカー! 死んだ母さんへの約束を、俺は! 守れなかった!

 

 

……もはや。俺はサッカーをやる気力が無くなった。

 

 

サッカー部を抜け、仲間たちとはなるべく顔を合わせないようにした。

翌年、俺は雷門へと転校した。理由は雷門の方が夕香の寝ている病院により近いからだ。

 

世界が灰色に見えた。常に曇り。気分も乗らない。

ただでさえコミュ障な俺は、転校してからも浮いていた。

 

そんな俺に声をかけてくる奴が居た。同じクラスですらない男子。なんでも、サッカーの練習試合の為にサッカー部に入部してほしい……と。お前の力を貸してくれ……と。勿論断った。今更、サッカーなんかする気は無い。

だが、あいつはしつこく付きまとってきた。時も場所も考えずにずっと勧誘してきた。

うるさかった。しつこかった。厄介だった。余計なお世話だった。

しかし……眩しかった。いつでも笑顔で、ついつい頷きかけた時もあった。面倒臭かった訳でも、勢いに押された訳でも無いからな。

 

結局断り続けて練習試合の日になった。興味は無かったが、 学校中の噂になっていたから自然と耳に入ってきた。

 

さっさと帰ろうとしたんだが……試合を見ることにした。相手があの帝国学園と言うのが分かったからだ。

フットボールフロンティアの優勝チーム。どんなプレーをしていたのか、事故が無ければどんな風に戦っていたのか。

 

 

そしてプレー開始。始めから帝国は圧倒的な実力を見せつけた。雷門の、最後に来た眼鏡の奴もそれなりに上手かったが帝国はその何倍も上を行った。

 

そして帝国は凶悪なプレーを開始した。

 

雷門メンバーは次々と倒れていった。そしてキーパーのあいつが倒れた時、眼鏡の奴がタイムアウトを申請した。

 

……これが、サッカーか。こんなものに……俺は……。

 

「嫌なら逃げてもらって結構。僕は出ますし、もしもの時は逃げますよ? どうせへたれですからね」

 

ふと、聴こえてきた声。何故だか、俺に対して嫌味を言っているように聞こえた。

逃げてもらって結構……俺は逃げているのか?

へたれ……へたれているのか俺は?

 

……こんな俺を見たら。夕香は、母さんは何と思うのだろうか。

 

ぼんやりしていたら、点が入ったようだ。……一旦立ち直った雷門だが、メンバーは再び倒れていた。例外は眼鏡の奴だけ。

いや、なんなんだあいつ。どうしてあの帝国の猛攻を前に一人で立ち向かうのか?

 

「僕は目金欠流(かける)! ただの―――サッカー部員です!」

 

眼鏡は……いや、目金は叫び、ボールを蹴る。ただの……サッカー部員……?

 

目金は返しの帝国シュートを避ける。

 

と。目金と共にFWをしていた奴が、俺の前で土下座していた。

 

「頼む……」

「……」

 

悪い、聞いてなかった。それどころじゃなかった。

何故か、俺はユニフォームを手に持っていた。

 

「あいつらを……助けてやってくれ……!」

「……」

 

いや、土下座とかしないで? どうすればいいか俺、困るんだけど。

 

「頼む……!」

「……」

 

なんとなく。夕香が背中を押してくれた気がした。

 

「そう簡単に頭を下げるな」

「っ!」

 

ユニフォームを着る。他人の汗でベタついて、冷たいとかいう最悪なコンディションだ。

 

だけど、夕香……お前がやれと言うなら。やってやる……!

 

走る。ちょうど、目金のヘディングでボールが高く浮かんだ所だ。

 

なんとも都合の良いことに。ファイアートルネードを最大火力で蹴れる高さだ。

 

「ファイアー!」

 

回転しながら飛び上がる。足元が熱い。火が燃え盛る。

 

夕香……ありがとう。

 

「トルネード!」

 

ボールは、ゴールへと突き刺さった。

 

 

 

 

 

その後、帝国はあっさり帰っていった。どうやらお目当ては俺だったようだな。

あのピンク髪の坊主頭の奴にユニフォームを返そうと思い、喜ぶ雷門サッカー部から少し離れた場所でキョロキョロしていたら、目金に絡まれた。

不良のように、格の違いを見せ付けてやるとか何とか。

いや俺、サッカーをやるつもりは無いんだが。さっきは夕香が背中を押してくれたからシュートしただけだから。

 

だが、かなりのコミュ障だから言葉にならなかった。

 

雰囲気に流され、やけに強引な目金に引きずられるようにしてフィールドへ。途中、睨み付けてきたのが正直かなり怖い。こいつ……不良だったのか。

 

そして目金はサッカーで決着を付けようと言ってきた。……こういうのは、わざと負ければいい。しかも目金の眼鏡はひび割れ、まさに満身創痍と言った風貌。もしもの時は何とか言い訳出来そうだ。こう、『お前が疲れているようだからな』とか何とか。

 

 

 

駄目だった。俺は怒鳴られると言い返せない。

ならばと隙だらけでドリブル。目金はボールを取らず、これでイーブンだと言ってきた。

まあ、そうだが。それもそうだが。

 

「らぁっ!」

 

目金が渾身のスライディングをしてくる。あまりの気迫に、思わずヒールリフトをしてしまう。

これ(ヒールリフト)は難しい分、大体の確率で相手を抜く事が出来る技だ。……案外、身体が覚えているものだな。

 

俺が勝ったと見るや否や、目金はさっさと帰っていった。

 

何だったんだ? まるで、俺に負けることが目的だったような……。

 

「えーっと、ってことは、豪炎寺は10番のユニフォームで良いんだな?」

 

キーパーの円堂に言われ、気づく。

あのくそ眼鏡……俺を逃がさない為に!

 

「おーい、豪炎寺?」

「……はぁ」

 

まあ、良いか。どのみちこうなっていただろうしな……。

 

「よろしく」

「……! あぁ、よろしくな豪炎寺!」




地の文が読みにくいのならば、それはコミュ障豪炎寺君だからさ。
と言うわけで、豪炎寺君目線で短編でした。

―――短編なんだよ? なんで続きを期待してるの? そもそも一話だけで終わらせるつもりだったのに……くそぅっ!(続きを書きながら)
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