かわいすぎるしいなは世界の合言葉   作:新六毛

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狩人の一号、二号

「おはようございます!」

 

事務所のドアを潜るしいな

 

『バコンッ!』

「ギャッ!?」

 

直後に後頭部に走る激痛と衝撃

目から火花が出る…

そんな喩えを文字通りに体験し、そして意識と力が抜けて行くのを感じた

 

 

 

 

 

「はぁ… はぁ… ごめんね、しいな でも、貴女の為だから!」

 

床に倒れたしいなを見下ろすのは、金属バットを手にしたれいな

 

「…やるよ、みいな!」

 

思わぬ凄惨な光景に凍りついていた妹分は、れいなの声に肉体の呪縛を解かれる

クロロホルムで湿らせた布を押し付け、失神させる…

この脳筋は極度の緊張の余り、そんな当初の算段を無視して、あり得ない実力行使に打って出たのだ

 

(れ、れいなちゃん… 怖いですぅ…)

 

みいなは手にしたクロロホルムの薬瓶をテーブルに置くと、しいなの足を掴み、頭を持ったれいなと共に、だらんと力の抜けた同僚の身体を、事務所の奥まで運んで行くのだった

 

 

 

 

 

ハロゲンランプが一つ、仄暗い明かりで照らし上げる小部屋

その中央に据えられたベッドの上に、しいなは仰向けに寝かされた

 

「しいな… これは、貴女の為なんだからね……」

 

今一度、己に言い聞かせるかの様にそう呟いたれいなは、その手をしいなのブラウスのボタンに伸ばす

彼女の白い肌とマッチするシルク仕立てのそれは、まさに避暑地の昼下がりを散策するお嬢様、と言った、彼女のとある一夏を再現するそのままに思えた

事も無く、その上品な身ぐるみはするりと剥がれ、今度は艶かしいボディラインと、その不可侵領域を覆う桜色の布切れが現れた

清楚な外見とは対極にあるかの様、野性的で肉感溢れる豊満なボディ

みいなは思わず、己の未発達な胸板を見遣る

 

「女の子同士だから… 許してよね…」

 

またしても己に言い聞かせるかの様に呟くと、れいなはしいなのブラジャーに手を伸ばし、そのフロントホックをパチリと外す

質量のある柔肉の塊が、溢れる様にそこから零れた

 

(……ゴクリ)

 

同じ女の子同士とは言え、まだお子様なみいなにその光景は、余りにイマジネーションが刺激され、赤面しながら思わず唾を飲み込む

そしてそれは、ちょっぴり大人なれいなにとっても同じだったらしく、彼女はしいなの豊か過ぎる乳房に手を伸ばすと、無言でそれを弄り始めた

 

「……………………」(モミモミモミ)

 

「……………………」(モミモミモミ)

 

「……………よし」(モミモミモミ)

何が良いのかは分からないが、みいなの存在を完全に無視して渡り繰り広げられた蛮行は、数分の後に漸く終わる

 

(やっぱりれいなちゃん、怖いですぅ…)

 

そしてステップはいよいよ本題へと移行していく

 

(コクリ)

 

れいなの目配せに頷き、みいなはしいなの右腕を取って脇を広げる

徐にそこに顔を近付けるれいな

 

「ひべっ!?」

 

短い悲鳴と共に、彼女は仰け反った

その原因は、腕を取るみいなの元にも伝わってきた

 

(く、臭い… 臭すぎるですぅ!)

 

暴挙とも言うべき今回の二人のこの行動

それを決意させたのは、気温の上昇と共に猛威を振るい始めた、しいなの独特の体臭、それである

彼女以外の全て… 事務所のスタッフも、仕事先の関係者も、先々で触れ合うファンも、皆彼女の強烈な体臭を不快に思っている筈である

否、彼女も己の体臭の酷さを自覚し、デオドラントには気を配っているのではあるが、それは実際、彼女の想像を遥かに越えた酷さなのである

そして年頃の娘であり、曲がりなりにもアイドルである彼女に、正面切ってそれを忠告してくれる存在など居ないのだ

 

…そう、同じ釜の飯を食い、同じ夢を追う、じゃんピンガールズの仲間を置いては…!

 

彼女を救えるのは、私達だけ!

その思いが二人を突き動かし、そして今回の暴挙… いや、義挙へと繋がったのだ

 

「やるよ、みいな!」

「はいですたぅ!」

 

未だ小娘の二人に、やれる事など確かに少ない

それでも動員可能な限りの知識と情報網を駆使し、しいなの悪体臭の源であろう、脇の下の汗腺を殺菌消毒する方法を、彼女らなりに幾つも見つけてきたのだ

 

「最初はこれ、やってみるですぅ!」

 

珍しくイニシアチブを取るみいな

その手には彼女の故郷、信州安曇野の特産、本わさびのすりおろしがあった

みいなが祖母から聞いたという、古来から伝わるデオドラント方、おろしたてのわさびの塗り込み…

 

(コクン)

 

大きく首を縦に振ったれいなは、木箆にわさびを取ると、それをしいなの脇の下に豪快に塗りたくる

そして脇を閉じさせ、暫し反応を見る…

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」

 

ビクンと身体を痙攣させ、しいなは意識を覚醒させた

それはそうだろう、只でさえ敏感な部位にわさびを塗り込まれたのだから

 

「ダメ! みいな押さえて!」

 

そう叫ぶと、れいなはしいなに覆い被さり、その口を己の唇で塞いだか

 

「ふごっ!? ふごっ!? ふふぅ!!」

 

喉の奥まで完全に舌を滑り込ませる

もがきながら、必死にみいなの身体をタップするしいな

その動きが徐々に緩慢になり、そしてパタリと止まった

窒息による失神

プロジェクトは無事に続行可能となる

 

(怖い…! れいなちゃん、怖すぎるですぅ!)

 

みいなは今更ながら、今回の行動に同調した事を後悔した

 

「クンクン… んん… 多少効果認む… でもまだ足りない! 次っ!」

 

植物界最高とも言われる殺菌作用も、しいなの脇の下相手では分が悪い様だ

更なる刺客を送り込む

 

「は、はいですぅ」

 

湯タンポである

発汗により悪体臭を生じるのなら、逆に大量の発汗を促せば、悪体臭の根源が洗い流せるのではないか、という如何にもオツムの軽いティーンガールの発想である

 

「セット完了!」

 

熱湯を注いだ湯タンポを、そのまましいなの脇の下に挟む

多少荒療治だが、熱消毒の意味もあるのだ

 

「……う… うぅ?」

 

程無くして、しいなは額に汗をかいて呻き声を上げる

確実に発汗を促している様だ

 

「あつぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!?」

 

当然と言えば当然のリアクション

ほぼ火傷に近いダメージを、敏感な脇の下に受けたしいなは、絶叫と共に再び意識を取り戻す

 

「ダメ! 堕ちてっ!」

 

予見していたのか、れいなは透かさず彼女に覆い被さり、再度強引に唇を重ねる

 

「ふごっ!? ぐふっ!? ぶふぅ……」

 

再び窒息

白眼を剥いたしいな

れいなはそんな彼女からなかなか離れようとせず、クチャクチャと卑猥な音を立てて、その口から漏れる唾液を啜っていた

 

(うわぁ… うわぁ… れいなちゃん、怖いですぅ…! 変態さんですぅ…! もうイヤですぅ…!)

 

みいなは遂に、軽い失禁に及んだ

 

「みいな、次っ!」

 

そんな彼女に、まるで事に及んで獣欲を満たしたかの様に上気したれいなが、檄を飛ばす

 

「はい… はいですぅ……」

 

自分はとんでもない犯罪行為に加担してしまっているのではないか…?

そんな思いで、もうすっかり腰が引けたみいなは、恐る恐る最後のデオドラントアイテムを差し出す

 

紙ヤスリ…

 

最早、肉体そのものを改造した方が早いのではないか?

古い角質と共に、臭いの元となる雑菌を、物理的に擦り落とすのだ

れいなはしいなの腹の上に馬乗りになると…

 

「みいな! ボサッとしないで押さえる!」

 

みいなに命じて、再び脇の下を開帳させる

 

「しいな! 絶対臭わない乙女(ガール)にしてあげるっ!」

 

そしてそう宣言すると、白眼を剥いたままグデンとする彼女のそこに、紙ヤスリを押し付け…

 

「サンダースピアセルフバーニングゥゥゥッ!!」

 

などと、意味の分からない事を絶叫しながら、高速で擦り始めた

 

「ギャァァァァァァァァァァァッ!!?」

 

またしても意識を強制覚醒させられるしいな

だが、腹の上に乗られ、両手を拘束された彼女は十分な身動きが取れない

 

「しいな! 今… 今、キレイに…! 今、カワイくキレイに! ……しいな… カワイイ… 痛がるしいな、カワイイッ!!」

 

そんな悶えるしいなの姿を見下ろすれいなの様子が、あからさまにおかしくなっていく

 

「むほぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

そして遂におぞましい絶叫を上げると、しいなに覆い被さり、その唇をむしゃぶり始めた

 

「カワイイ! しいなカワイイよっ! はぁはぁ… いい匂い! しいなの脇の下、とても良い匂いぃっ!!」

 

「あわわゎゎわぁぁぁぁ……!!」

 

みいなはもう、目の前の光景を脳内で処理できなくなっていた

変態さんと臭いさんが、激しくまぐわっている…

みぃの同僚で、チームメイトで、同じ夢を追う仲間が…

お子様みいなには、余りに衝撃的過ぎる光景だった

 

「もうイヤですぅ! こんなのアイドルじゃないですぅ! こんなアイドルイヤですぅ! 帰るですぅ! 安曇野に帰るですぅ! おばあちゃぁぁぁぁぁん!!」

 

みいなは泣きじゃくりながら部屋を飛び出し、事務所を飛び出し、八時丁度のスーパーあずさに飛び乗って、仲間達の元を旅立った

 

 

 

 

 

約半年ぶりに顔を見せた孫娘を、彼女の祖母は温かく迎えた

畑の水やり、犬の散歩、牛の世話…

ほんの少し前まで日課だったそれを、彼女は久しぶりに引き受ける事になった

何もかも懐かしく、何もかも美しい故郷での生活…

野沢菜で頂く質素な筈の朝ごはんは、東京で食べるどんなお洒落ブレファよりも美味しかった

夜は庭先で祖母と線香花火を楽しんだ

ふと夜空を見上げると、そこにも目映く輝く光の群れが、競い合う様に瞬いていた

 

「もうずっと、ここに居てえんじゃで…」

 

祖母の優しい声に、彼女はゴミの入った目をゴシゴシ擦ると、明日の朝一番で東京に帰る事を告げた

自分がアイドルになるのを誰よりも一番楽しみにし、誰よりも応援してくれたのが祖母なのだ

自分の夢は祖母の夢…

それを思い出したのだ

 

 

 

 

 

東京に戻ったみいなを、これまたれいなとしいなは何一つ変わらず、これまでと同じ様に迎え入れてくれた

みいなは自分がとてもお馬鹿さんだと思った

そしてこれまで以上に、じゃんピンガールズの活動に力を入れる事を誓ったのだ

 

…ただ、どうしてもれいなちゃんとしいなちゃんの距離感が、それまで以上に近くなっている気がして、ちょっぴり疎外感を得るのだった

そしてまた、あの日の光景を思い出し、いけない一人遊びに耽る様になったのも、この頃からだった…

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