賭博エレジオン   作:くろの あずさ

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第1話<お嬢様と門番>

満月が静かに照らす夜、帝都サクリファイスの東門に身なりの良い美少女が、大荷物を抱えて現れた。

ギャハギャハと聞こえる声は、門番たちが発しているようで、その門番たちは、ポーカーに夢中なようだ。

 

「こんばんわー!夜分遅くに申し訳無いのですが、どなたかいらっしゃいませんのー?」

 

声に気がついた門番は、監視室の窓から手だけを出して、追い払うようにひらひらと振ると、

 

「悪いけど今日は終いだよ、さぁ、帰った帰った!」

 

と酒焼けでガラガラの声で言い放つ。

 

「通常料金の倍をお支払いしますわ!おねがいです!中に入れてくださいまし!」

 

彼女がそう言うと、酔っ払った門番が、真っ赤な顔とふらつく足で監視室から出て、少女を舐め回すような目で見た。

 

「随分といい身なりじゃねぇか、お嬢ちゃんヨオ、ヒック…。でもなぁ、そんな簡単に中に入れるわけにゃいかねぇのさ。ヒック…。この先は、我らが賭博王国の帝都、サクリファイスだ。何かを賭けて、俺と勝負してもらわなきゃなぁ?例えば、嬢ちゃんのその綺麗な服とかをヨォ♪」

 

と言い、ニヤニヤしている。他の門番も、いいぞ、いいぞと盛り立てる。そんな中、彼女は、天使のように、にこりと微笑むと

 

「わかりましたわ。私は服を。あなたたちは、門を開ける権利を。それで、何で勝負しますの?」

 

と承諾した。門番達からの口笛が鳴り止まない。

 

「せっかくトランプがあるんだ。ヒック…。コレで俺達とひと勝負しようか。」

 

そう言うと、門番達は折りたたみ式のテーブルを広げ、新品のカードを開ける。

「やるのはジジ抜きだ。だが、ただのジジ抜きと思うなよ?ヒック…☆カードを配り切らないで、途中から増やすのさ…ヒック…」

 

「増やす?と言うと?」

 

美少女が尋ねると、まだ酔いが回りきっていない門番が答える。

 

「まず一人7枚ずつ配る。んで、当前のようにペアは捨てる。その時、捨てたペアの数の分だけ引いてくれ。全員が捨て終えたら、時計回りにジジ抜きを始める。このゲームでは、他人からカードを受け取る時、山から一枚取らなきゃいけない。ジジ抜きのジジがいつくるかもわからないし、途中で手札がなくなったら、山から3枚取らなきゃならない。ちょいと億劫だが、これがルールだ。わかったかい?お嬢ちゃん。まずは慣れるために俺と一戦…」

 

「いえ、結構ですわ。理解しました♪」

 

門番が言い終える前に断る。そして、嬉しそうに、

 

「さぁ、早くやりましょう。楽しみですわ♪」

 

と微笑んだ。

門番がジジを抜き取り、シャッフルする。7枚ずつ配り、それぞれ思い思いにカードを見る。酔いが回りきっていない門番、脂ぎった小太りな門番、酔っ払いの門番、そして美少女の順に時計回りでカードを引くことが決まり、いよいよ時は来た。

 

「準備はいいかい?嬢ちゃん。」

 

「えぇ、構いませんわ。ちゃっちゃと始めて下さいまし」

 

一枚引き、山から一枚取ることを繰り返す。しばらくはそればかりだ。門番もこの工程には飽きていたのだろう。

 

「それにしても嬢ちゃんよ、一体どこから来たんだ?」

 

と、美少女に質問を投げた。

 

「チェス村ですわ。亡きお母様の遺言で、生き別れのお父様が、帝都にいると言う情報だけを頼りに来たんですの。」

 

「やめてくれよ、お嬢ちゃん。俺はジョークは嫌いだぜ?」

 

「ジョークなんかじゃありませんわ!」

 

「わ、わりぃ!」

 

そんな中、美少女は違和感を覚えていた。

とあるカードが自分の元に何度も来ることを。

よく観察してみると、そのカードは綺麗に一周して戻って来ることを。

 

きっとまだペアが山にあるのだろう。

そう思って進めるも、なかなかでない上に、そのカードが門番にまわると、全員が嫌そうに顔になる事も。

 

彼女は行動に出た。本来引くべきカードを手渡しし始めた。そのカードは必ずペアになる為、最初は恐る恐る受け取っていた門番も、後半には喜んで受け取るようになった。そして、山がなくなった。

 

「さぁ、嬢ちゃん、ここからがバトルロイヤル…」

 

「あがりです♪」

 

彼女は最後の一枚を門番に渡した。次の瞬間、門番は青ざめた。そのカードは

 

「ジョーカー…」

 

「私の勝ち、ですわよね?ジジはジョーカーなんでしょう?さぁ、門を開けて下さいませんか?」

 

「おい、おまえ!まだジジはひらかれてないのに、なんでわかった⁉︎まさか、不正したんじゃないだろうな?」

 

「不正?何を仰いますの、不正をしていたのはあなた方でしょう?このジジ抜きはジジ抜きではなく、最初からババ抜きだったのでしょう?ジョークをやめろと仰ったのは、カードがジョーカーであると他の者に伝える為だったのでしょう?表情や意図が丸わかりですわ!」

 

「こんにゃろ…!!」

 

逆上して手を振り上げる門番。美少女が顔を腕で隠した次の瞬間、

 

「いででででで!」

 

一人の美少年が、大の大人の腕をひねりあげていた。

 

「やめたまえ、門番くん。レディに暴力を振るおうだなんて、男の風上にも置けんな」

 

「誰だお前、じゃまする…ぁ…あぁ…る…ルーク様…」

 

「門番、確か貴様は、俺に借金があったな?貴様の借金には高利子をつけてやる…覚悟しろ。さぁ、門けたまえ。通さぬと、全員の借金の利子をはねあげるぞ!!」

 

門番達はみな恐れおののいて、

重く閉ざした門を、やすやすと開いたのだった。

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