「こら!ジャック、
ミモザちゃんに謝りなさいっ!」
鋭いチョップがジャックを襲う。
「ってぇ〜な!なにしやがる!」
顔をしかめてフローラを
睨みつけるジャックに、
フローラはふくれ顔で返す。
「ジャック、フセーしてたでしょ!?
わたし、見たんだからね!
ルーク様に、彼のカードの数教えてるとこ!」
「大丈夫ですわ、フローラ、
なんとなくわかっていましたの。
ブラフのひとつやふたつ、
見破れない私では無いですわ。」
「でも…」
「勝負は勝負ですわ。
部屋に行きましょうか、ルーク。
こんな手を使ってまで、
伝えたかったお話とは
一体なんだったのか、
とても興味をそそられますわ♪」
ミモザはルークの手を取り、
自分の部屋へと誘った。
コモド店内では其処彼処から
「ヒューヒュー」とまくし立てる。
フローラがそれを怒って抑えている声が
微かに聞こえる中、ミモザは部屋の扉を閉じた。
「それで、話って一体なんですの?」
きりりとした顔を彼に向けるミモザ。
さっきまでの優しい雰囲気とは違う。
ルークを真っ直ぐに見つめる瞳は、
まるで金色に輝いているようにも見えた。
「話が早くて助かる。
ここ最近、若人や旅人を狙った
賭博強盗が流行っているんだ。
その逮捕に協力をして欲しい。
3日後の晩に、ここら辺の領主である、
俺の親父がかえってくるんだ。
親父には、親父がいない間、
この領地をまかされてるんだ。
だから、親父が帰るまでに、
自体を収めたいんだ。頼めるか?」
「なんでわたくしなんですの?」
「あちら側に勘付かれないよう、できれば女…
しかも旅人や新入りは狙われやすい。
だから、旅してこっち来た、
新入りである女で、賭博で腕のある
奴に頼みたかったんだ。」
「なんだ、そんな事でしたの?
そんなの、あんな手を使わずとも、
普通に言って下されば、
お受けしましたのに!
わかりました、私、尽力致しますわ♪」
「あれは、腕試しをしたかったんだ。
すまなかった。」
「もういいですわ、
おかげで、わたくしとしたことが、
油断していた事を思い知りましたわ。
むしろ感謝していますわ。
早速、明日からやりましょう。」
次の日、早速街に繰り出して、
路地裏から探索を始めた。
聞き込みに励み、被害の多い地区を特定。
一旦引き上げようとした時に、
物々しい雰囲気の、3人組の男が現れた。
「けけけ、ダメだよー?旅人のお嬢さん」
「荷物重いだろー?
俺たちがもらってあげるよ、くくっ」
「賭博は好きだろ?じゃなきゃ、
こんなとこに来ないよな?
俺たちと遊ぼうぜ?
身包みと荷物をかけて、さ」
ミモザを取り囲むように三人が詰め寄る。
ミモザはその圧力に屈せず、堂々と微笑むと、
「えぇ、いいですわよ、ただし、
あなた達は逮捕されることを
賭けて下さい♪」
と言い、指を鳴らした。
路地の入り出口に、
ルークが率いる、
帝都警護団の騎士が並ぶ。
「そちらから
誘ってくださったゲームですもの、
そちらから降りるなんて、
許しませんわ。
もしそちらが勝ったら、
勝負が終わってから、
丸3日は何を起こそうと、
こちらの方々は見ないふり
して下さるそうですよ♪
こちらは荷物と身包み、
そちらは逮捕される事を賭けて、
いざ、勝負ですわ!」
「くっ…やるっきゃねぇ…
ゲームの内容は
こっちで決めちまっていいよな?
ブラックジャックは知ってるだろ?」
「えぇ、カードの合計数を、
特定の数字より下に抑えつつ、
より合計数が高い方が勝ち、
又は、ブラックジャック
と呼ばれる特殊な
組み合わせを出せば
必勝のトランプゲームですわ。」
「今からやんのは、
サイコロを使った、
いわば、サイコロブラックジャックさ!
サイコロを3つ同時に振って、
サイコロの合計数を競う。
バースト数は14だ。
ただし、6のゾロ目だけは別だ。
それをブラックジャックとして扱う。
簡単だろ?」
「ええ、良心的ですわね♪」
「だから特別ルールを設ける。
今回、サイコロを1個、
ライフとして扱い、
そのライフを削り合うんだが、
そのライフを一つ減らす代わりに、
サイコロを
振り直す事が出来るのさ。」
「サイコロを振り直す…?」
「気に入らない結果を塗り替えれるのさ
。ライフを犠牲にしてさ。
そして、振り直したサイコロの目が、
より良ければそれを採用、
悪ければ現状維持すればいい。」
「わかりましたわ。
ただ、サイコロを振るのは、
久しぶりですの。少し、
練習させてくれませんこと?」
「それくら構わんさ。
この赤いサイコロがライフだ。
何か質問はあるか?」
「引き分けの時はどうしますの?」
「ライフの増減は無しだ。
あぁ、最高でも10回戦で切り上げるぜ。
それでも引き分けたら、
バーストしなかった数を全部足して、
より数が多い方が勝ちだ。
そこにいるケーサツのあんちゃん。
おまえが両方の数字をきろくしな!
そろそろ投げ慣れたかい?お嬢ちゃん。
無駄だとは思うけどよ!
最後に、投げる合図を教えてやる!
『ジャックドダイスで3.2.1』
これの1で投げるように。」
「ええ、わかりましたわ♪
では、始めましょっか♪」
《ジャックドダイスで3.2.1!》
カラカラと音を立てて
サイコロが転がる。
あちらは…5-3-4…合計11
私は 6-1-6…合計13
「一振り目は、
わたくしの勝ちですわね!」
「どんどんいくぜ?嬢ちゃんよぉ…」
《ジャックドダイスで3.2.1!》
向こうは2-5-5…。合計は12。
私は6-6-1…合計13。
「余裕ですわ!」
「いっきに差をつけてやるよ!」
《ジャックドダイスで3.2.1!》
向こうは5-4-3…合計12
私は2-3-1…合計6だ
「大丈夫かい?嬢ちゃん、ケケッ!」
「これくらい。痛くも痒くもありませんわ!」
《ジャックドダイスで3.2.1!》
私は1-2-2…合計5
あちらは、2-4-3…9
私は、
なんとも言えない違和感を感じた。
「ほらほら、まだまだいくぜ?」
「え、えぇ…」
《ジャックドダイスで3.2.1!》
私のは6-5-1…12
あっちは4-5-4…13
さっきっから、サイコロに混じって、小さなかけらが、サイコロと同時に
カラカラと転がるような音もする。
それに
5-3-4、2-5-5、5-4-3、2-4-3…
6と1が…無い…?
この音と関係あるのだろうか…?
私は彼のサイコロの
振り方に注目してみた。
《ジャックドダイスで3.2.1!》
振る前に、強くにぎってる…?
いや、おしてるんだ…!
サイコロの1の目が
ボタンになってる…!
1と6がでなかったのは出せないから…
向こうは5-3-5…合計13。
私のは6-5-4…15のバースト
間違いない。タネがわかった。
サイコロに仕掛けが施されている。
なら私も…仕掛ける!
「負けがこんでるなぁ、嬢ちゃん。」
「ええ、そうですわね。
でも、もう負けませんわ。
あなたみたいな、最低な奴には。」
「んだと!?
いいぜ、絶望させてやるよ!
かくごしろよ、小娘が!」
かかった。
《ジャックドダイスで3.2.1!》
あちらは5-5-3。合計13
私は
「6-6-6…
〈ブラックジャック〉だと!?」
「どうかしました?何か問題でも?」
「なんでもねーよ!おら、やんぞ!」
《ジャックドダイスで3.2.1!》
あちらは4-5-4、合計13
私は
「うそ…だろ…?」
「嘘じゃありませんわ♪
当然の結果です。」
「ふざけるな!0.5%以下の確率を」
「いいから続けましょうよ、さあ!」
「くっ…」
《ジャックドダイスで3.2.1!》
あちらは2-5-5…合計12
こちらは
「なんでだよ…ありえない…」
「ありえますわ。
全くないわけではないのですから。
3回連続、
6-6-6〈ブラックジャック〉
ぐらい☆」
「んのやろう!インチ…」
「インチキだなんて、
言わせませんわよ?
イカサマしてるのは、どっちかしら?
ねぇ?賭博強盗様♪」
「っ…ちっくしょう!このアマ!」
「さあ、さあ!最後の一振りしましょう?」
《ジャックドダイスで3.2.1!》
向こうは、5-5-3の13
こちらは
「なんでだよ!ふざけるな!」
ー6-6-6〈ブラックジャック〉ー
「約束ですわ、
大人しく捕まって
いただけますわよね…?」
こうして、賭博強盗は、
逮捕されたのだった。