主人公にならないと 作:舎遍路
エトワール・ド・ラヴランは長い夢を見ていた。
夢の中には長い黒髪の少女が出てきた。彼女は救国の聖女と呼ばれ、王国の危機を救っていた。戦場では剣を振るい、日常では人々の心を救い、希望を見せる姿はまさに『聖女』そのものだった。
彼女の聖女としての軌跡は学園生活から始まった。それまで領地に篭って暮らしていた彼女が歴史の中に現れるのはそれが最初のことだった。
彼女の清廉な性格と持ち前の明るさは人々を惹きつけ、繋がりを生んだ。
そうして出来た繋がりこそがこの国を滅亡から救ったのだった。
学院はまさに、王国に危機とそこから救う手段の両方を与えたといってもよかった。
彼女を聖女たらしめた王国の危機とは学院の魔法教師が引き起こしたものだったのだ。
風にたなびく長く美しい髪。手に持つは彼女の相棒とも言える大太刀。その無駄のない美しい刀身は彼女によく似合っていた。
「やっと、全て仕留めきったね」
彼女はその大太刀を鞘におさめると、周りを見回してそう言った。王城を混乱に陥れた異形との戦いはこうして彼女たちの勝利に終わった。しかし、敵が差し向けたと思われる前哨戦ともいえるこの戦いは、王国に大きな被害を与えていた。
この国の命運を決める最終決戦とも言える戦いの直前、彼女の仲間たちは地に倒れ伏していた。
「私は行くよ、たとえ一人でも。あの人を止めなくちゃならないから」
周りに倒れふす仲間たちを見渡しながら彼女は決意を込めて言った。
「むしろ、ちょうど良かったかも。みんな血気盛んだからみんなと一緒じゃ話し合いにならないもんね」
話し合いに終わる可能性なんか一つもないのに、仲間たちが一緒に行けなくなったことこそがその証明となるのに彼女はそう笑う。
うめき声しか出せない彼女の仲間たちがそれでも必死で彼女を止めようとする。皆、彼女によって救われたのだ。こんなところで失いたくはなかった。
しかし、一方で彼女を止めることができないことも分かっていた。皆、ここで止まることのできない彼女に救われたのだから。
「じゃあ、行くね。戻ってきたら、一緒にこの国をみんなが笑顔で暮らせる国にしよう!」
そうして彼女は一人で立ち向かっていった。
そして、それが確認できる最後の姿だった。
長い夢はそこで終わった。それは人の一生といっても過言ではなかった。
彼女がこの世界に存在しないことをエトワールは直感的に悟っていた。そして、あの、太陽のように輝かしい存在を知っているのは自分のみであることに気がついた。まさに物語の主人公といってもいい存在である。
「
そしてなによりこの世界で彼女の存在を知らしめるには彼女の軌跡を自分がなぞるしかないのだと思い立った。
彼女の名前は
エトワールとほぼ同一の存在といってもよかった。