俺のバーサーカーが最強すぎた   作:d-ank

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disc1

「――瞳を曇らせるべし!」

 

雁夜が呪文を唱え終わると同時に、召還陣の中に人影が現れた。一体どんなサーヴァントが召還されたのか。

 

「お前が、俺のサーヴァントか?」

 

だが、バーサーカーとして召還されたのだ、意思の疎通などできまいとわかっていても、声をかけずにはいられなかった。

 

その時、頭に直接響くように声が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーうぬは、力が欲しくはないか?ー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「我はグラーフ。力の求道者」

 

顔には道化、或いは死神を思わせる禍々しい仮面。

 

武道着の上から外套を羽織った姿で今一度告げる。

 

「うぬは、力が欲しくはないか?」と。

 

名前はともかく服のデザインから中国の英霊ではないかと雁夜が予想していると、臓硯が口を挟む。

 

「カカカ。貴様に言われずとも、その出来損ないには儂が、刻印虫という力を与えておるわ」

 

 

申し出に嘲笑する臓硯に対し、そのサーヴァントは同じく嘲りながら臓硯の言葉を切って捨てた。

 

「所詮は紛い物の力。至らぬ知恵の作りしもの。果たして、それで勝てるかな?」

 

この男の言うことに嘘はない。雁夜はそう直感し、叫ぶ。

 

「欲しい……欲しいさ!力が‼︎このクソッタレな運命を砕く力が、俺は欲しい!!!」

 

その言葉に満足げに頷き、グラーフは闘気を込めた右手を天に掲げる。

 

「力が欲しくば、我が与えよう‼︎」

 

「我の拳は神の息吹!」

 

「“堕ちたる種子”を開花させ、秘めたる力を紡ぎ出す!」

 

「美しき、滅びの母の力を!」

 

そして、闘気の輝きが増した右手を雁夜へと向け、鮮血のように赤い光が放たれた。

 

「うわあぁぁぁぁっっっっ!!あ、あれ?痛くない。それに、麻痺していた左半身が……動く?力が……湧いてくるぞ。はははっ!何だよこれ!自分の体じゃないみたいだ!」

 

注ぎ込まれたグラーフの闘気によって体内の刻印虫は死滅し、麻痺していた身体が嘘のように癒えていく。魔力回路や経絡が完全に解放されている為、五体満足だった頃よりも更に活力に満ちているのだ。

 

自身の身体の快復に喜ぶ雁夜とは裏腹に、臓硯は「余計なことを」と眉を顰めた。

 

元々、この男は雁夜の苦しむ姿を愉しむことを目的に今回の聖杯戦争のマスターに仕立て上げた為、自身の愉悦を邪魔されて苛立つ。

 

そして、自身の命運を左右する一言を放った。放ってしまった。

 

「貴様……!雁夜よ、令呪でそのサーヴァントの自我を奪え!」

 

この瞬間、間桐臓硯の末路は決まった。

 

塵虫(ごみむし)め。隅で震え上がっておれば良いものを」

 

「後悔するがいい」

 

◯(バン!)□(バン!)◯(バン!)

 

ー超武技闇勁ー

 

「コォォォ……」

 

「ぐがあぁっ!貴……様、魂喰い……を……」

 

壁や天井を張っていた蟲がボトボトと落ちていき、地を這う蟲たちも急激に干からび、腐っていく。蟲たちの精気が吸われているのだ。

 

死を喰らい、命を啜る。

 

今のグラーフは正しく“死神”だった。

 

 

「儂の……願望(ユメ)が……不老…不死……が…」

 

夢想(ユメ)ならば存分に見るがいい。永遠の眠りにつきながらな」

 

臓硯の身体は崩れ去り、後に残ったのは、術者であるグラーフと蟲蔵の中で唯一生き延びた雁夜のみとなった。

 

雁夜と臓硯は勘違いをしていたが、グラーフが行ったのは魂喰いではなく、化勁と呼ばれる他者の精気を吸収する気功術を極限まで高めた、超武技と呼ばれる奥義の一つである。

 

本来は彼の“息子”のように、特殊な演舞を行うことで発動する技だが、奥義を極めたグラーフは微動だにすることなく、呼吸法による精神統一のみでこれを発動する。

 

「は……ははは。まさか、あの妖怪ジジイをこうも容易く」

 

自分の人生を狂わせた男の呆気ない最後に、笑みを浮かべるも、すぐに重要なことに気づく。

 

「桜ちゃん!まずい、グラーフ!すぐに魂喰いを止めてくれ!この屋敷には小さな女の子も居るんだ!」

 

「案ずるな。喰い尽くしたのは塵虫どものみよ。その娘の中にいた分も含めてな」

 

それでも心配だったのだろう。桜の部屋に駆け込み、彼女の無事を確認すると、強く抱きしめ、安堵の涙を流した。

 

「もう、大丈夫だ桜ちゃん。ジジイは死んだ。あとはこの戦争を終わらせればいい。それで自由の身だ」

 

「さあ、行こうグラーフ!今の俺なら時臣に勝つことだって!」

 

「自惚れるな戯けが」

 

「貴様が求めたゆえ、力を与えたが。石に金箔を貼ったところで所詮は石よ。無駄死にしたくなければ屋敷から出ぬことだ」

 

そう切って捨てると、グラーフは屋敷の扉を開け、一人で出陣する。

 

「さて、往くとするか」

 

力の求道者による、聖杯戦争の蹂躙が始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みっともないところを見せてごめんね、桜ちゃん。おじさんはね、つまらない石ころなんだ」

 

「おじさんはつまらなくなんかないよ。だって今、とっても滑稽だもの」

 

「うん、ありがとう桜ちゃん。とどめを刺してくれて」

 

そして、グラーフが出陣した後の屋敷には、心を折られた雁夜と、ラスボスの片鱗を見せる桜の姿があった。

 

 

 

 

 




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