俺は今、工場地帯にある、縦に細長いタンクのような建造物のてっぺんに立っている。
ここからなら、制服の女の子が逃げた場所も見やすいと判断してのことだ。
普通の人間なら登ってここまで来るのに相当な苦労をするだろうし、落ちる危険もある。
が、シンフォギアを身にまとった俺には関係の無い話だ。
黒紅の装甲の首元の部分からは、身体の後方にマフラーのようなものが出ている。
俺が意識してなくても毎回現れるのだが、それがわずかに風に揺れる。
無風ではないが、戦闘に大きく影響するような気象状況ではない。
「どっからでも出てこいよノイズ。……おッ」
すると、建物の屋上に人影が見えた。
よくよく見てみると、どうやらさっきの制服の女の子だった。
どうやら、小学生くらいの女の子と一緒に、建物の側面に備え付けられたはしごを登ってあそこまでたどり着いたようだ。
今まで気付かなかったが、制服は私立リディアン音楽院のものだ。
「ほぉ、なかなかやるじゃねぇか」
ノイズと戦う術を持たない一般人は、ノイズが出現するとシェルターに逃げ込むことが何よりも優先される。
なにせ、一回でも攻撃を食らえば身体は灰と化し、死んでしまう。
だがあの制服の女の子は、自分より一回りも小さい子供を引き連れてあんなところまで逃げおおせてみせた。
恐らく、シェルターから離れるようにして逃げてしまったんだろう。
普通ならその時点で生きることを諦めてしまいそうなもんだが、かなり根性があるとみえる。
しかし、ノイズは無慈悲にも、二人が逃げ込んだ建物の屋上にもわんさか出現。
あっという間に、二人かノイズに囲まれてしまった。
唯一、二人の後ろはノイズがいないが、それはあの高さから落ちて下さいということを意味する。
流石にこれ以上の時間的猶予はない。
「さーて、ほんじゃまそろそろ……ん?」
飛び降りて、そのままノイズどもの群れの中へ突っ込もうと思っていたその時だった。
「こ、これは……!?」
歌が聞こえてきた。
しかもこれは、装者がシンフォギアをまとう時の、聖詠だ。
一瞬、翼先輩がもう到着したのかと思ったが、違う。
この歌声は、聞きなじみのある風鳴 翼のものではない。
当然だが、俺でもない。
俺はもうシンフォギアを身にまとっているし、何より俺は聖詠無しでもシンフォギアを扱える。
「一体誰が、どこで……うおッ!?」
答えは、すぐに示された。
ノイズに追い詰められ、死が目前に迫っていた二人のうちの、リディアン音楽院の制服を着ている方の女の子。
その子の身体が突然光りだし、オレンジ色のまばゆい奔流が天高く突き上げていくのが見えた。
「な、なんだッ!?」
あまりの眩しさに、女の子がどうなっているのか見えない。
だが、直前に聞こえてきた聖詠と合わせて考えれば、たどり着く答えは一つしかない。
「まさか……シンフォギアかッ!?」
ノイズどもも、あの子から発せられた光とエネルギーに気圧されているのか、その動きが止まっている。
だが、装者が俺と翼先輩以外にもいるなんて、そんな話は聞いたことがない。
これは一体、何が起こってるんだッ!?
「~♪」
あまりに予想外の展開に動けないでいたが、再び歌が聞こえてきて我に返る。
どうやら、制服の女の子がもう一人の子を抱きかかえながら、歌を歌っているようだ。
しかし、あの数のノイズを相手に、しかも守らねばならない子供を連れていては、まともに身動きが取れないのは間違いない。
「なんだか分からねぇが、行くしかねぇッ!!」
何の迷いもなく飛び降りると、右手に意識を集中する。
すぐに、右手に白く輝くエネルギーブレードが現れる。
アームドギア、ナイトフェンサー。
切れ味は抜群で、ノイズはもちろん、現実世界にあるどれほど硬い物であろうと傷をつけ、破壊する。
流石にシンフォギアの装甲相手にはそうはいかないが、威力なら申し分ないというより、ややオーバー気味だ。
「はあッ!!」
ナイトフェンサーを上段に構えながら、俺はノイズの軍勢のただ中に殴り込みをかけた。
まず、着地時の踏みつけで1体撃破。
そのまま、着地の反動で身体を起こしながら回転させ、ナイトフェンサーで周囲360度のノイズをなぎ払う。
倒されたノイズの灰をその身に浴びながら、俺は跳躍して二人の隣に降り立った。
「無事か?」
「は、はいッ」
「なら良い。それより、ここは少し狭いな……」
身動きのとりにくい場所で戦うのは、この二人に流れ弾的に攻撃が当たる可能性もあるし、なにより俺がこいつらを思う存分殺せない。
という訳で、この屋上から降りて広い場所で戦うことにする。
「その子を抱えて跳べッ!!」
「え? ええッ!?」
「ビビるなッ!! ただひたすらに、足に意識を集中させて跳ぶことだけ考えろッ!!」
「そ、そんなこと言われても……うわわッ!!??」
俺の言葉に難色を示していたが、まとっているシンフォギアの脚部ユニットが、とんでもない跳躍力をもたらしたようだ。
「な、なにこれえええええええぇぇぇぇッ!?」
「……もう少し、気をつけるように言うべきだったか? よっとッ!」
俺も、後を追うようにして屋上から飛び降りた。
下を見ると、女の子を抱えた状態で何とか両足で着地できたようだ。
だが、気を抜いている場合じゃない。
「上を見ろッ!! ノイズどもが降ってくるぞッ!!」
「え、ホントだあああッ!?」
再び悲鳴をあげながらも、少女は今度は少し大胆さを見せながら横っ飛びを敢行した。
俺は今しがたまで少女がいた地点に着地すると、振り向きざまにナイトフェンサーを振り抜いた。
あまりの切れ味に、手ごたえがほとんどないのが少し残念な気もするが、ノイズどもは一刀両断だ。
「ウガアアアアアッ!!」
「うわわッ!! 大きいッ!?」
「ッ!?」
気付けば、人の身長をゆうに超える、デカブツまでもが俺たちのすぐ近くまで迫っていた。
小型のノイズがわんさか押し寄せているなか、あのテカブツも相手しないといけないのか。
俺一人ならなんてことないが、今回は護衛対象付きだ。
必然的に、動きも制限される。
それにしてもこの子、シンフォギアをまとうのはこれが初めてか?
明らかに使い慣れてないです感が見て取れる。
だがまぁ、二課に所属していない人間がノイズ相手に戦い慣れていたら、それはそれで驚愕な訳だが。
しかしそれならば、この子はシンフォギアをどこで……?
「ッ、しまったッ!?」
そんなことを考えながらノイズどもを斬り捨てていたのだが、俺の立ち回りにわずかな隙が生まれてしまった。
そして運の悪いことに、その隙をついて小型のノイズが1体、二人の方へ動き出していた。
「野郎ッ!!」
ノイズの動きはかなり俊敏だ。
あの攻撃モーションに対して、後ろから追いかけて切りつける芸当は流石にこの状況では不可能だ。
後は、あの子が上手く避けてくれることを祈るしかない。
「ッけえええええ!」
「ッ!?」
だが、あの子の採った行動は回避でも防御でもなく、攻撃だった。
攻撃と呼ぶには、あまりに稚拙な一撃。
ただ思いつきのように、右手の拳を突き出すだけの、それだけの行為。
それでも、ノイズにとっては致命傷となる一撃だった。
「ぁ……」
女の子はただ、灰と化して散ってゆくノイズを呆然と見つめていた。
理解が追いついていないのが、手に取るようにわかる表情だ。
改めて確信する。
この人は、シンフォギアに慣れていない。
そして、ようやく援軍が現れた。
「……?」
突然聞こえてきたエンジン音に、シンフォギアをまとった少女は困惑気味だ。
しかし、俺にはこの音が誰によるものだかすぐに分かった。
俺と同じく、ノイズと戦う力を持つ人間。
『Imyuteus amenohabakiri tron』
その聖詠は、上から聞こえてきた。
見ると、ジャケットを羽織った翼先輩が、身体をひねって空中でバランスを取りながら落下してくるところだった。
そんな翼先輩の様子を、保護対象である女の子二人は目を見開いて、俺は「この人はまた派手に来たな」という心境で見た。
「待たせたな、雄輝」
「道でも混んでたんですか? いつもより遅かったじゃないですか」
「そういう雄輝こそ、いつもよりノイズを多く生かしているではないか。叔父様の言葉を無視してシンフォギアをまとった割には、成果があがってないのではないか?」
「俺しかいないのと、保護対象がいるのとでは、戦い方が違うんですよ。でも、これでようやく暴れられそうだ」
「そうか。……そこのあなた」
「ふえっ?」
翼先輩は俺の方をチラリと見た後、後ろで小さな女の子を抱きかかえている少女に声をかけた。
「呆けていては死ぬわよ。貴女はそこで、その子を守っていなさい」
「ま、そういうことだ。そうだな……5分もかからずに片づけるさ」
その俺の言葉を合図に、俺と翼先輩はノイズの群れに向かって駆け出す。
翼先輩は走りながら自らのシンフォギア、
一方俺は、すでに『ムア・ガルト』を身にまとっている。
さっき俺は5分と言ったけど、ひょっとすると3分もかからないかもしれない。
これから始まるのは、防人と狂戦士による、一方的で圧倒的な蹂躙だからな。
字数も少なく、物語も大して進まない……申し訳ありませんッ!
ですが、今はシンフォギア熱がかなり高い状態にあるので、勢いを優先して投稿してます。
ヒロインはまだ決めかねてますが……みんな大好きクリスちゃんと、Gまで行って調ちゃんが好きな子なので、そのあたりは色々考えてます。
書くのに慣れてくるまではこんな感じで勢い優先になるかもしれませんが、よろしくお願いいたします。