戦姫絶唱シンフォギア~黒紅の騎士~   作:みんふみ

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第七話 復帰

「……誰もいないな」

 

 朝。

 俺は職員専用の出入り口を使って、リディアンの敷地内へ入っている。

 今の時間なら、普通の生徒は朝のホームルームを行っているはずなので、そこまで警戒する必要はないのだが、たまに遅刻した人と出会いそうになったりするので、完全に無警戒で良いという訳でもない。

 まぁ、俺はスーツで登校しているわけなので、仮に見られてもすぐに怪しまれる確率は低いわけだが。

 

「さて、まずはギアを受け取りに行きますか」

 

 俺の授業は、正確には授業ではない。

 あらかじめビデオ撮影された講師の動画でもって授業をしているため、1日何コマという決まりはあるものの、明確に何時から1コマ目という風には決まっていない。

 だから、時間には多少の余裕がある。

 教室に行ってビデオを見始める前に、二課に行ってギアを受け取ってくることにする。

 別に放課後でも良いのだろうが、万が一、昼間とかにノイズが現れた時に戦力にならないからな。

 

 

 

 

 ―――

 

 

 

 

「おはようございます」

「あら、雄輝君じゃない。学校はサボり?」

 

 俺が二課に顔を出すと、櫻井女史が端末から顔を上げて、ニッコリと笑顔で出迎えてくれた。

 

「まさか。映像授業なので、時間がカッチリ決まってる訳じゃないんです。なので、先にギアを取りに来たんです」

「あら、そういうことだったのね。ギアの調整は済んでるわよ。トレーニングルームで動作を確認して、問題なければオッケーよ」

「了解です。……あれ、司令は?」

 

 見渡しても、いつも腕組みしてOTONAとしての雰囲気を醸し出している風鳴司令の姿が見当たらない。

 

「司令なら、今日は非番だよ。そうか、君たち装者が普段ここに顔を出す夕方や夜の時間は非番を入れないからね」

「あー、なるほど」

 

 オペレーターの藤尭さんの言葉で納得する。

 そりゃそうだ。

 いくら司令が人とは思えないような強さを持ち合わせていても、休みなしでは生きていけない。

 ミーティングや作戦行動で俺たちと一緒のことが多い夕方や夜に仕事をできるように、こうやって俺たちが学業に励んでいる間は休んでいたのか。

 約2年二課に在籍しているが、そういった側面は知らなかった。

 

「おまたせ雄輝君。はい、ギアを返すわね」

「ありがとうございます」

 

 櫻井女史の手からムア・ガルトを受け取ると、いつものように首にかけ、ペンダントの部分は服の内側へ仕舞いこむ。

 外見では特に変わったところは見られなかったが、実際に使うとどう違いが出るか……。

 

「それじゃ、準備ができたらトレーニングルームに入ってちょうだい。そこでテストして……」

 

 そんな櫻井女史の言葉を遮るように、警報音が響き渡った。

 

「ノイズッ!?」

「弦十郎君が非番な時に……弦十郎君に連絡を。それまでは私が臨時に指揮を執るわ。場所は?」

「エリアA-27、ここから近いですッ! 数は12ッ!!」

「それほど多くないわね……」

「該当エリア近辺に避難警報発令ッ! 装者の二人に連絡を入れますッ!」

「待って。ここは雄輝君に任せましょ」

 

 そう言うと、櫻井女史は俺の方を向いてウィンクをした。

 つまり、ギアの試運転をトレーニングルームのまがい物ではなく、本物のノイズでさせてくれるということだ。

 

「ですが……」

「大丈夫よ。この私が調整したんだもの、問題ないはずよ? それに雄輝君だって、そろそろ体動かしたいでしょ?」

「もちろんッ! それじゃあ、行ってきますッ!!」

 

 せっかく櫻井女史から貰ったチャンスだ。

 本物のノイズ相手に、今まで通りの立ち回りができるかどうか試してやるさ。

 

 

 

 

 ―――

 

 

 

 

「藤尭さん、その後の経過は?」

『相変わらず、ノイズは最初の出現地点から動いてはいないよ。でも妙だな……普通ノイズは、人を求めて動き始める傾向にあるのに……』

「留まってくれてるなら好都合ですよ。そっちの方がまとめて倒せて楽ですから……ねッ!!」

 

 角を曲がると、ノイズたちを視界に捉えた。

 群れているが、数は報告の通り12体で間違いない。

 だが、どこか変だ。

 なにやら、ノイズの意識が一点に集中しているように見える。

 ……まさか、そこに誰かいるのかッ!?

 

「くッ!!」

 

 誰かいるとなると、ガンブレイズは使いにくい。

 コントロールを失敗すればその誰かに当たるかもしれないし、当たらなくともガンブレイズはノイズに当たった後小さな爆発を起こす。

 その爆発に巻き込まれてしまうかもしれない。

 もちろん、誰もいないことも考えられるが、それは近づいて確認してからだ。

 

「まずは……お前だッ!!」

 

 一番近くにいた人型ノイズに、ナイトフェンサーでもって斬りかかる。

 ナイトフェンサーがノイズに触れた瞬間、手に引っかかる感触が伝わってきた。

 以前にはほとんど感じられなかった、何かを斬っている感触。

 ギアの出力が下がったことで、ナイトフェンサーの切れ味にも少し変化が出たか。

 だけど、別にノイズが倒せていない訳でもない。

 今斬りつけたノイズはちゃんと炭化している。

 

「これくらいの手ごたえの方が……ッ!!」

 

 最初の1体を斬り捨てた流れでさらに加速。

 前に踏み込んで、今度は突きをお見舞いする。

 2体倒したところで、ノイズどもの群れの中に立っている一人の人間を視認。

 よくノイズにやられなかったな。

 

「大丈夫かッ!?」

「……」

 

 怪我がないかどうか聞いてみるが、答えが返ってこない。

 ノイズに追われて恐怖で声が出なくなることはまぁあることなので、外見から判断することにする。

 四肢に特に問題はない。

 何故か全身をローブのようなもので覆っているという奇妙な格好ではあるが……。

 

「頭を下げろッ!!」

 

 この人を抱えてノイズの群れから脱出することも考えたが、まだギアの調子を完全に確認できたわけではない。

 であれば、無茶はせずに今の状態でノイズどもを殲滅することを優先する。

 ノイズの数体が飛びかかってきたが、寸前でローブの人物が頭を下げる。

 それを待ち構えていた俺は、すべてナイトフェンサーの一刀両断のもとに切って捨てる。

 これで半分が倒せた。

 ノイズの陣形に乱れが生じ、囲いが解除された。

 

「立てるか? 行くぞッ!」

「……」

 

 相変わらずローブ人間は何も言わないが、俺の言葉に即座に反応した。

 俺はローブ人間の左手を掴むと、ノイズの輪の外へ抜け出すことに成功する。

 その時、掴んだ手が包帯のようなものでグルグルおおわれていることに気付いた。

 怪我人だったか?

 思いっきり手を掴んでしまったけど……

 

「後はこれで……終わりだッ!」

 

 こうなれば後はどうということはなかった。

 どんな攻撃でも倒せるが、ここはガンブレイズの威力も確かめておく。

 左手を空に突き出すと、それを合図にしてノイズたちの頭上に火球が次々と降り注いだ。

 しかも、当たれば爆発するおまけ付きだ。

 炎に、そして爆発に次々とノイズたちは巻き込まれ、すべて灰燼と帰した。

 

『……お疲れ雄輝君。ノイズの反応はすべて消滅したよ』

「ういっす。非番の司令が指揮所に来る前に倒せたみたいっすね」

『そうだね。ギアの調子はどうだい?』

「まったく問題ありません。流石は櫻井女史」

『んふふー、そうでしょう? 一応メディカルチェックをしておきたいから、戻ってきたら医務室までお願いね?』

「了解っす」

 

 無線を切って、ローブ人間の方へ向き直った。

 ……どうみても、変な格好だ。

 ぶっちゃけ、不審者と言われても仕方がない。

 全身はほんの少し紫がかった黒のローブで覆われ、顔はフェイスガードというべきか、目元から顎にかけても黒の布で覆われている。

 見えるのは、瞳を含めた顔のほんの一部分だけだ。

 目の形や雰囲気から察するに、女か?

 

「……アンタが誰かは知らないが、もうすぐ特異災害対策機動部が来る。情報漏えいに関する書面にサインを……」

「これを」

 

 俺の言葉を無視して、ローブの女(?)は懐に手を入れて何かを取り出した。

 よもや拳銃ではないかと一瞬身構えたが、出てきたのは封筒だった。

 

「……封筒?」

「そこにも書いてある通り、それを二課の風鳴司令に見せて欲しい」

「二課のことを知っている……だと?」

 

 コイツ、一体何者だ?

 二課の名前だけならまだしも、司令の名前を知っているとなると、一般人ではない。

 当然、今まで二課にこんな珍妙な格好の人がいるのは見たことがない。

 

「風鳴司令にだけ見せて欲しい。櫻井了子をはじめ、他のメンバーには伏せて欲しい」

「言うのは勝手だが、こっちが『はいそうですか』となるとでも思うか?」

 

 相手の素性が分からない以上、二課の司令塔である人間においそれと会わせる訳にはいかない。

 

「……では、これを見てもそう言えるかな?」

 

 そう言うと、ローブの女はポケットに手を入れ、そこから何か小さなものを取り出した。

 包帯が巻かれた手のひらに、小さな赤い石が二人ばかり載っていた。

 どこかで見たようなそれは、俺たち装者に欠かせない……。

 

「し、シンフォギア、だとッ!? それも、二つ……ッ!?」

「別に風鳴司令を害したりというようなことはしないし、その手紙にも書いていない。ただ、重要な話がある。こっちの世界を守るための、重要な話が」

 

 敵ではない、そう言いたいらしい。

 この状況、本来ならばもう一度二課に無線をつなぎ、指示をあおがなければいけない。

 だが、このローブの女は、司令にだけ話を通してほしいと言っている。

 シンフォギアを持っているということは、二課に関係しているか、二課のような組織が別に存在しているということか……。

 

「……分かった。それで良い。ただ、最初から二課に連れて行くわけにはいかない。万が一もあるし、そもそも二課に直接連れて行ったら、司令以外の人にも会ってしまうしな」

「……感謝する。ありがとう」

「ここにいると対策機動部の人たちが来ちまう。俺のマンションがこの近くにある。俺の部屋で待っててもらおうか。そのあいだに、司令と話をつけてくる」

「それで構わない」

 

 ローブの女は俺の提案を、特に拒否する素振りも見せずに快諾した。

 俺はローブの女を先に歩かせ、後ろからついて行くようにしてこの場を去ることにした。

 どのみち、ギアを持っている以上は、司令に会わせるのは確定だ。

 ならば、相手の提案を了承しておいた方が、何かと都合が良いと判断した。

 

 それに、この女そのものについても気になることがある。

 声は変声器でも使っているのか変な風に聞こえるが、どことなくしゃべり方に引っかかるものを感じる。

 それに、唯一身体で見えていると言っても良い目元も、どこかで見覚えがあるような、でも無い様な……。

 とにかく、引っかかる点がいくつかある。

 素直に色々としゃべるとも思えないが、会話の流れの中で聞き出せそうであれば聞き出そう。

 

 そう心に決めて、マンションへと向かった。

 

 

 

 




ここからはちょっとずつオリジナル要素も入れていきたいと思っています。

雄輝「ところでお前、このローブの下はどうなっているんだ?」
ローブの人物「……知りたい? だが、ローブを脱ぐということは、すなわち衣服を脱ぎ捨てるということ……なら、そちらも同様にしてもらおう」
雄輝「……良いぜ。なら、よく見ておけ。抜剣ッ!!」
ローブの人物「……///」
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