「ゴン!おい、ゴン」
キルアは病院に運ばれたゴンの病室に来ていた。
病室に駆け込んだキルアは、包帯でぐるぐる巻きとなったゴンに駆け寄り声をかける。
「もう食べられないよ、むにゃ、むにゃ」
下手な寝言が帰ってきたためキルアは思わず、彼の頭にチョップを落としてしまう。
「イッタ!ってキルア?あれ?ここはどこ?」
ゴンの最後の記憶は彼女に殴りかかろうとしたところで止まっている。なので彼は混乱しつつも周りを見てここが試合会場ではないのを悟るとキルアに詰め寄る。
「キルア!試合は、試合はどうなったのっ、イテェ〜」
怪我をしていることに気づいてなかったためかゴンは悶絶する。その様子に呆れながらもキルアはゴンも薄々分かっているであろう結果を伝える。
「負けだよ。それもボロ負け」
「そっか。強いなぁ〜」
ゴンは負けると分かっていたが、それでもいざここまで圧倒的に負けてしまうとさすがに凹んでいる。
ゴンの見たことのない弱気にキルアはどう声をかけていいか分からなかった。
「うん。今度は勝つよ!次は何とかいけるよ」
キルアはすぐにいつものゴンに戻りホッとしたが、同時にふつふつと湧いてくる怒りをゴンにぶつけなければ気が済まなくなっていた。
「次だぁぁ〜。何能天気なことを言ってやがる!お前理解しているんの?あの女にお前殺されかけたんだぞ!次なんてねえよ!」
「でっでもキルア。こうして生きてるわけだし、それに怪我はそんなに見た目ほど酷そうじゃないよ」
ゴンは病衣を脱ぎ切られた上半身を見せる。包帯が巻かれて痛々しいが、逆に言うと包帯しか巻かれていなかった。
「動くとちょっと痛みが走るけど、これならすぐに治りそうだよ」
ゴンはキルアにそう言うが、この病室に入る前に医師にゴンの容体を聞いたキルアは自分の手を制御できなかった。
むんず
キルアの手はゴンの傷跡を優しく掴んでいた。ただ、キルアは殺人一家の天才児。傷口を開くことなくゴンに激痛をプレゼントする。
声にならない声をあげ、ゴンが折れていない方の肩の腕をバタバタ動かしているのを見てキルアは心底呆れる。
「全治1ヶ月だよ、このバカが!お前が助かったのは本当に偶然だよ!偶然。分かってんのか」
「そこまで言わなくても」
「いーや、理解していない様だからもう一度言うけどあんなの偶然以外の何物でもないね。奇跡と言ってもいいほどだぜ」
キルアはなおも言い訳をしようとするゴンの傷を再度優しく撫でてあげる。
「あの試合、俺は爺や親父にしごかれたからかろうじて見えたけど、本当にお前が死んだと俺は思ったんだぜ」
「キルアはあの時何があったか分かるの!」
「ん、ああ、それは客席から見逃さない様に集中してみてたからって、もしかしてお前あの女の攻撃を全く見えていなかったのか」
「うん。何にも。気づいたら病院だもん」
キルアは今度は両手で傷口をいたわる様にゴンを撫でてあげる。傍目には親友を気遣う様にも見えなくはないが、その親友は悶絶している。
「よくそれでもう一度戦ったらなんて言えるよな。はあ、で、何が起きたかだっけ。お前の攻撃は簡単に片手で受け止めた後、その包帯が巻かれている顎にまず蹴りを一発。そのまま返す足がお前の肩を砕いたと思ったら、体が倒れる前にサーベルでその傷跡の様にバッサリさ。まじ化けもんだなあの女」
「ふーん」
「ついでにその時あの女の体が少し揺れなかったらお前あの世に行ってたな。もしくはお前が無意識に体を捻らなかったらな。本当お前って野生児だよな」
「えへへへへ」
「とにかく、死にかけたってことをよく理解しろよ。たく、あれだけ試合は棄権しろって言ったのに」
「でも無事だったからいいじゃん」
「これのどこが無事だって?お前もあの時声をかけてきた三人組の様に体のどこかを持っていかれたかもしれないんどぞ」
「うん。でもそれでも、あれほど強い人と戦える機会なんてそうない気がするんだ」
「はあ」
キルアがゴンのまったく反省していない姿にため息をついているとウイングが入ってきて、ゴンを再度叱るのであった。
「なんで私がこんなことしなければいけないのよ」
ゴンがウイングから叱られている頃、彼女はというと、強盗に勤しんでいた。
「くそ!別に死んでないじゃん!それに全治1ヶ月なら原作よりも早く治るというのに、私は全然悪くないじゃん!むしろ主人公のためにいい壁として出てあげただけじゃん!ちっ!うるさい」
彼女はゴンを殺しかけたということをすでに忘れている。そんな彼女はとある屋敷の扉を蹴破り、大胆に屋敷に侵入をしていた。
そんな彼女に対して奇声をあげて銃をぶっ放す男ども、彼女はその銃弾を切り裂き一歩一歩前へ進んみ、ついでとばかりに死体を増やしていく。
彼女は銃を向けられ撃たれているというのに全く焦らずただ目的地の部屋まで歩く。その際何かを斬り殺しているが彼女は気にしない。彼女がこの場で気にするのはヒソカに盗む様に言われた目的物のみだ。
彼女は自分の歩く道を血で染め上げながらも目的地に着くと、その部屋にあった金庫を切り裂き開ける。
分厚い鉄の金庫の扉が簡単に倒れる。
彼女はようやく仕事が終わると金庫の中に入って愕然とする。彼女がどれだけ金庫の中身を見てショックを受けていたかというと、その手に持つサーベルを取り落としてしまうほどである。
「こっ、これは」
そこに彼女の携帯が物騒な着メロを流し始める。
彼女はその携帯を握りつぶさない様に取り出し誰からか分かっているが確認し、少しだけ画面にヒビを入れてしまう。
彼女は無言で通話ボタンを押す。
「........................」
「やあ、僕だよ♥」
「........................」
「反応が悪いなぁ♦︎まあいっか、それよりも大切なことを伝え忘れていたよ♣︎」
携帯が嫌な音を立て始める。
「昨日、どうやら引越しがあったみたいでね目的地の住所はここじゃないんだ♠︎」
ヒソカが新しい場所を告げている間、携帯の画面のヒビの数はどんどん増えて行く。
「というわけでごめんね♥」
めきゃ
暗い室内に火花が飛び散り、携帯だったガラクタが床に落ちる。
「ヒ、ソ、カぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!絶対殺す!」
彼女の咆哮が響き渡るのであつた。