ハンター試験に合格した彼女は、約束通り、ヒソカと幻影旅団のメンバーに連絡を取ってもらっていた。
「団長に了承してもらったけど♦、一週間後になるらしいよ♠」
「ふ~ん、アンタって誰にも嫌われているから、連絡取れるか心配してたけど、とれたんだね」
「流石にそれはないんじゃないかな♣でも、暇だしこれから食事でもどう♥」
「嫌に決まってんだろ変態、連絡先はこれだから集合場所と時間決まったら連絡して」
彼女はヒソカにメモを渡すと足早に去って行った。そんな彼女を見て、
「振られちゃった♠」
笑みを浮かべ、少しも気にせず、ヒソカも何処かに向かって歩き始めた。
一週間後、ヒソカから連絡を受け取った彼女は合流場所として空港に来ていた。
「ヒソカ遅いぞ」
彼女は約束の時間より、律義にも10分早く着いて待っていたが、ヒソカが逆に10分遅れてきたのに対し文句を言いつつ、待っている間に飲み干した缶ジュースを握りつぶし投げつけた。
「ごめんね♦、少し遊んでたら遅くなっちゃった♥」
ヒソカは飛んできたモノを片手でキャッチしつつ、血の付いたハンカチと共に近くにあったゴミ箱に捨てた。
「下らん事してんじゃないわよ。どうせゴミだったんでしょ」
「確かに面白くはなかったけど♣、退屈しのぎにはなったよ♥」
「やっぱり、そんなゴミより私を優先せんか変態!」
流石に、公衆の面前でサーベルを抜くのは後が面倒だという考えがあった彼女は、サーベルを抜きこそしなかったが、代わりにさっきの缶のプルトップに周をしてヒソカに向け飛ばしたが、ヒソカもその程度は簡単に避けた。ヒソカが避けたため後ろのゴミ箱に大きな穴が開いて、ゴミを捨てようとしていた一般人は腰を抜かした。
「大丈夫だよ♦飛行船にはちゃんとまにあったしね♠」
「ちっ」
後ろで騒ぎが起きていたが、二人は何事もなく会話を続け、搭乗口に向かっていった。
飛行船に乗った彼女は、飛行船の行き先がここから1~2時間で行ける距離では無いことに気づき、いやな予感がしてヒソカに質問した。
「ねぇ」
「なんだい♣」
「幻影旅団との集合時間は何時だい?」
「だいたい後3時間くらいだね♠」
彼女は、右手に硬をした。
「次の質問だけど、この飛行機が目的地に着くのにかかる時間は?」
「三時間近くだね」
彼女は拳を握り席から立ち、ヒソカに狙いを定めた。
「最後の質問になるけど、集合場所まで空港からどれくらいかかる」
「ゆっくり歩いて一時間だね」
「……」
彼女は無言で拳を振りぬいた。しかし、ヒソカは彼女と同様に右手に硬をしてこともなさげに防いだ。
「危ないなぁ♥」
「あほか!団員になろうとするもんがいきなり遅れるとか常識知らずにもほどがあるだろうが」
「君が常識を言うと違和感があるね♠」
「ウッサイわ。殺すわよ」
彼女が拳を少し動かし、オーラの移動を行うと、何故かヒソカのオーラが揺らぎ、同時に彼は右手に微かではあるが鈍い痛みを感じ、彼女の手を掴む手を緩めてしまい、彼女はその隙に拳を開放し、すぐさまオーラを纏った拳を顔に叩き込んだ。
「どうやったんだい♣」
「説明面倒くさいし、そもそもアンタに何かするなんて絶対ないわ」
ヒソカは、自身の掌で起きた不可思議な現象に気を取られ、殴られたことを気にしていなかった。
「顔面殴られて、気持ちよさそうに笑うな、立たせるな。キショいだろうが」
「ん~、君はやはり美味しそうだねぇ♥」
「……」
彼女は無視することにした。
そして空港から降りたヒソカと彼女はアジトに向かい歩き、
「流石はA級賞金首の幻影旅団、あそこにいるのは何となく分かるけど、何人で何処に潜んでるのが分かりにくいわね」
「君の目でも分からないのかな♦」
「ふん!な訳ないじゃない。眼帯外せば分かるわよ」
彼女はアジトの前に着いたにもかかわらず、ヒソカと会話をしており、これから戦う者とは思えないほど無防備にも見えた。
そして、彼女は眼帯を外すと、何の躊躇なく扉を開け、
「こんにちわ幻影旅団の皆さん、今日からあなた達の誰かを殺して団員になる予定のセリムと言います。まっ、よろしくね!ゴミども」
飛行船の中でヒソカに常識を説いていた人物とは思えないほど非常識な挨拶をする彼女は、本当に幻影旅団に入る気があるのか甚だ疑問である。
「ぁあん!いきなり何ぶっこいてやがんだ。殺されてーのかクソガキ」
ジャージを着こなし不良っぽい男、フィンクスが当然の様にキレて返し、体を殆ど出さない黒いローブを着たフェイタンが後ろから現れ傘の先端を、いきなり現れ不快なことを言った彼女に突き刺そうとして、
「あなたが私の踏台かな?」
フェイタンは嫌な予感がして、下がった瞬間、彼の服は切り裂かれ胴体から血が噴き出した。
「あの程度じゃあ流石に殺せないか」
「この、クソが!」
フェイタンは自身が完璧にころせたと思った瞬間にきた彼女の斬撃に対し、致命傷を回避するのが精一杯であった彼は、相手が本気じゃなかったおかげで助かったのだと理解し、怒りが理性を焼き、彼の念能力を発動させようとしたが、
「落ち着けフェイタン、フィンクス」
団長であるクロロの声を聴き、理性が戻ったのか、悔しそうに彼女を人が殺せるのではないかという程の視線を送りつつも、他の団員が座っている瓦礫の山に座った。
「そいつが、新たな旅団候補かヒソカ?」
「そうだよ♥、実力は見ての通りだし、性格も問題ないでしょ♠」
クロロが他の団員に状況を分かりやすく説明するために質問し、ヒソカも先の戦闘で実力の面で問題ないことを示しつつ肯定した。ただし、性格は蜘蛛と言う悪事を働く者にとって問題なくても、旅団のメリットになるような性格では決してなかったが、ヒソカは一言でまとめていった。
「確かにそうだが、今は欠員もいないぞ、ヒソカ。それとも貴重な念能力でも持っているのか」
「確かにそうだね♣、ねぇ、君の念能力は僕もあまり知らないんだけど説明してくれない♦」
「この目だ」
彼女は簡潔に二人対して説明した。
「「……」」
「……」
簡潔すぎである。まだ説明が続くと思っていたクロロとヒソカは何も言えず沈黙し、彼女も説明し終わったと思い、口を噤んだため、奇妙な沈黙が生まれた。
「それだけか?」
「そうだけど」
「何も分からんのだが」
「頭良さそうな見た目して案外バカなの。念能力の詳細をペラペラ話す奴がいるか!そこの変態はほっとくとしても」
「酷いなぁ♠」
「……」
クロロは続きを促したが帰ってきた言葉が罵倒であり、同時にこいつは本当に幻影旅団に入る気があるのだろうかと疑問を抱いた。
「能力も分からねー奴を旅団員にできるわけねーだろーが!」
「そうネ、役立たず、イラナイネ。バカ、ウボォーとノブ、フィンの三人で十分ネ」
「そうそうって、何だとゴラ!」
彼女の態度にイラついていたフィンクスとフェイタンが彼女に対して文句を言った。途中フェイタンはフィンクスにも喧嘩を売っていたが。
「二人とも黙れ。だがまあ、そういうことだ。言えないならここで、死んでもらう」
「ちっ……。この目はオーラの移動を絶対に見逃さない。だから、絶だろうが、陰だろうが、この目に映れば見破れないものはないし、それを利用し相手の念の破壊もできる。つまり除念も可能だ」
彼女は仕方なく、嘘ではないが、全てを言わずに貴重そうに見える部分を言った。
「「「!!!」」」
「ほう」
「へえ♣」
彼女の念能力を聞き、旅団員は驚き、団長も興味を示し、ヒソカは飛行船で起きた現象の理由が分かり、感心していた。
「それは確かにすごいな」
クロロは彼女の念能力を奪いたくなっていたが、さっき彼女が見せた戦闘能力から、生かしておくことができないこと想像し、奪うことは諦め手元に置くことにした。
だが、彼女の目は確かに高性能だが、クロロやヒソカ、その他の団員が思うようなことはできない。と言うのも、念の破壊と言っても、弱点みたいなモノを見つけれるだけであり、戦闘中にそこを突くのは至難の業であり、普通に避ける、あるいは力業でぶった切る方が安全であり、仮に実行するにはしてもかなりの怒りと愛の感情とオーラが必要であり、コストパフォーマンス的にまずしない。
ヒソカの時は、単なる硬による掴みだったので、動いてもおらず、オーラを軽く揺らして硬を一瞬維持できなくさせればよかったためできた芸当なのである。
さらに、除念に関しては、できなくはないが、オーラを相手に直接畳み込まなければならず、はっきり言って攻撃と大差ないので、急所に念の弱点があればその時点で除念できても、掛けられた本人もあの世に行くことになり、念が強力ならその分だけ大量のオーラを必要とし、致死の一撃となる。もちろん相手がオーラで防御してると意味がなくなるので、除念できるのは、弱く人体の急所に被らないものだけである。
だが、言わなければ分からないことであり、嘘は言ってないので、彼女は平然としたまま、
「誰と戦えばいいの、欠員がいない場合はヒソカから誰かを倒して入団するって聞いたけれど。こちらから選んでもいいかい?」
「……、シズクとコルトピ、パクノダの三名は替えが効かないから勘弁してもらいたい、それ以外ならいいぞ」
クロロとしては、彼女の能力は魅力的なので旅団員の誰かに監視をさせるか、外部協力者の形でも取ろうかとも考えたが、彼女の戦闘能力の高さは厄介であり、その目に気づかれずに監視も不可能に近く、裏切りの際や旅団に不利なことをされた場合対処が厄介なことを考え、瞬時にメリットとデメリットの計算を行い、ここで戦わせて旅団員になれば枷ができるし、負ければ殺せる、もしくは能力を奪うことも可能かも知れないので特別な3人以外と戦うのを許可した。
「では、そこの包帯男と勝負したい。ミイラみたいで不潔そうだから、一緒にいたくないから死んで」
「……」
彼女は包帯男ボノレノフに挑む本当の理由を別の理由で隠し、相手を挑発した。
彼女とボノレノフはお互い二十メートル離れた位置に相対し、団長の合図を待っていた。
戦いの場はさっきと同じ場所であり、足場は瓦礫が所々にあり、よいとは言えず、視界も薄暗く、良好とは言えないが、二者の殺意は高まり開戦を今か今かと待っていた。
クロロがコインを弾き、それが床に着くのと同時に、先ず彼女が先に仕掛けた。
彼女はヒソカ戦や怪鳥の時に見せた爆発的な速度で肉薄し、地面すれすれの前傾姿勢から不可視の一撃を放った。
しかし、ボノレノフも戦う前の彼女の発言やスピードタイプのフェイタンがやられたのを見て近接系のスピードタイプと当たりを付けていたため、開始と同時に後ろに下がりながら全身に巻いた包帯を外し自身の姿を見えにくくすると同時に包帯に周を施し、一時的な軽い盾とし、自身の穴だらけの体から音を出し、音楽を演奏するという前提条件をクリアし、自身の念能力を発動しようとしたが、切り裂かれた包帯の間からオーラを纏った小さな石が飛び出してきて、予想外の攻撃が来たため思わず体勢を崩すことになる悪手を行ってしまった。
つまり、彼はオーラで身を守り多少のダメージを覚悟で踊り音楽を演奏するべきだったのに、胴体に飛んできたそれを軽く体を傾けることにより避け、音楽が一瞬とは言え途切れ、同時に体勢が微妙に崩れたため持ち直すのに一秒にも満たないが少しの時間が必要となった。
そして、彼女のサーベルが包帯の壁を容易く破り見えないはずの彼の体に正確に突き刺さった。
一本目がその右足の甲に突き刺さり彼の機動力をそぐのと同時に二本目が即座に包帯の壁から出現し、彼の左足の脹脛を貫通し、三本目のサーベルがさらに彼の右肩を貫通し、そこで彼はようやく体勢を立て直したが、すでにその場から動くことは難しく、四本目のサーベルが彼の右肩に刺さるのを見ることしかできず、最後に包帯を横に切り裂きながら自身の首に迫るサーベルを視認した彼は間に合わないことを今までの戦闘経験から感じつつも全力で硬を首に行い、……その首から大量の血を噴き出しつつも彼女のサーベルを折った。
彼女は折れたサーベルを彼の胴体の穴に投げつける、最後の抵抗の可能性を封じつつ、距離を取り、彼が倒れ、その体からオーラが消えていくのを眺め、消えると同時に、彼に近づきサーベルを抜き、一本一本振り、血を落し鞘にしまっていった。
この戦いを他の団員からの視点で見ると、彼女はサーベルを握り地面すれすれをかけると同時にボノレノフの意識をそちらに集中させている間に左手で瓦礫を拾ったのを体で隠しつつ移動し、
彼が包帯で姿を隠すと同時に切りつけた部分から瓦礫を投げ、ボノレノフの意識をその石に向けさせている間に振りぬいた腰のサーベルを宙に軽く放り投げ、空いた右手で肩のサーベルを抜き、脚の甲に刺し、その時には、石を下から投げ上に上がった手で肩のサーベルを抜いており、二本目を彼の体に刺す時には体を起き上がらせつつあり、残りの二本を彼に突き刺すころには彼女の体勢は完全に整っており、四本目を刺した時には、投げたサーベルを掴み最適な姿勢であり、彼女はサーベルを振りぬき彼に致命傷を与えたのだ。
この戦いはボノレノフが何も出来ず瞬殺されたが、それは仕方のないことである。
なぜならば、彼女は彼の戦闘スタイルを知っており、彼は知らなかった。これだけでも不利だが、さらに彼はその体の都合上どうしても包帯を外すため視界を悪くさせざるを得なく、彼女はその目により完璧に彼を捕らえていた。
そして、決定的なのが、彼女は漫画とアニメにより彼の最初の動きを読めており、その目と合わせたら最初の一瞬とは言え未来予知の真似事さえでき、速さで上回る彼女にとって勝利が約束された戦いであった。
そもそも、前提条件が難しいが威力は強力と言うタイプは彼女に勝つのはほぼ不可能である。
先ず、発動される前に追いつめられるということを除いても、彼女の目は大抵の出来事を見抜くため先ず当たらないもしくは、強引にでも破壊され、その隙にやられてしまう。
だから彼女は、
「驚いたわ、まさか私のサーベルが一本、その先っちょだけとはいえ折れるとは。自身の技量のなさに怒りを抱くのは久しぶりよ。あなたの愛と怒り、確かに私に届いたよ」
彼女はその首を切り裂く際、彼がその自身の民族の誇りが通じなかったことへの怒りとその誇りにより無駄と知りつつも硬を行い彼女のサーベルを折った民族愛を、全てではないが誰よりもその二つの感情に敏感な彼女は感じ取り、彼女は微笑んだ。
「……これによりセリムを幻影旅団の一員とする」
クロロはその彼女の表情にある種の芸術性を感じ見とれていたが、彼女がいつも通りに戻ると、彼も正気に戻り、彼女の幻影旅団入りを宣言したのであった。
次は飛んでヨークシン編にするつもりです。