衝動的なの   作:ソウクイ

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大魔王INハイスクール

此所は駒王学園、朝早く。

 

朝練のある部活生徒はもう来ている。

駒王学園は元女子高だっただけあり女子生徒の方が多い。

 

「会長おはよう!」

 

汗を掻いたブルマの体操服姿の女生徒が元気良く真面目そうな眼鏡の女性徒に挨拶をした。

 

「はい、おはようございます」

 

挨拶を返した彼女の名は支取蒼那

 

 

この駒王学園の生徒会長。

 

見掛けは一見して厳しく真面目そう。実際にも成績も素行も良く模範的な生徒に思われている彼女だ。

 

だが……そんな彼女には人に言えない大きな秘密がある。その秘密は真面目な生徒会長にあるまじき暴走やタバコ!……などの真面目女子の裏の顔的な非行では別にない。いや意味は違うが彼女には裏の顔はあった。

 

 

この世界には人間の住む場所以外に別世界がありその世界には人以外の種族が存在している。それは妖怪であり魔物であり吸血鬼であり、天使であり、悪魔もいる……それこそ一般の人には物語の中だけに居ると思われている種族や生き物が存在していた。

 

彼女の秘密とは、彼女が実は悪魔や竜、魔物などが住む冥界という世界から来た生粋の悪魔だということだ。

 

彼女の本名はソーナ・シトリー。

 

この学園には悪魔は彼女のみでなく他にも悪魔は居る。そもそもこの学園の理事長が悪魔。つまりこの学園は悪魔が運営する学園なのだ。いや学園だけでなくこの駒王の地自体も悪魔が自分達の領地だと定めていた。

 

と言っても基本的には駒王の町は他の町とさして変わらない。悪魔が直接管理してるといっていいこの駒王学園も普通の人間が通う学園とさして変わらない。ただソーナのように人に悪魔が混ざっているだけだ。あとこの駒王は悪魔の領地だが悪魔以外の人外がいる。

 

悪魔は種として朝が苦手だ。ソーナは苦手な朝に何をしてるのか。部活動等で何か問題が起きていないか確認をしていた。今は新入部員も入る時期で問題が起こることが多い事が理由だ。

 

「陸上部は問題なしですね」

 

「問題なしなら練習に戻るね。じゃ会長またクラスで!!」

 

「ええまた後で」

 

同じクラスの相手にそう返したソーナの様子には人を見下す様子はない。演技でも無さそうだ。

 

ただの人ならそれも可笑しくないが先に言った通り彼女の正体は悪魔。悪魔は悪魔より力が弱く寿命も少ない人を種として人を見下している。それは高位の悪魔なほど見下す傾向は強い。上位に位置する悪魔貴族にもなると人を家畜同然に見ていた。

 

そんな悪魔の中でソーナが最上級と言っていい名門貴族の令嬢と言えば、悪魔としてのソーナの異質さが判るだろう。

 

この学園にはソーナの他にソーナと似た立場の上級の貴族女悪魔が居る。その彼女は家畜とまで言わないが極自然と悪魔より人を下として見ていた。

それでも悪魔の中では人に迎合しすぎていると言われるほど良心的であり、やはりソーナが悪魔として異質なのだ。

 

彼女元来の気質性格なのか反面教師でも居たのだろうか?いや、そもそもソーナは見下すどころか人の築いた文化に憧れを抱いていた。

 

これはソーナの夢からもわかる。

 

ソーナの夢とは悪魔の世界の冥界にも学校を造ること。

 

別に冥界に学校が存在してない訳でもないかもしれないが、学校に通えるのは所謂上級階級だけ。 

悪魔の世界には人の世界のような地位や力の上下に関係なく誰もが権利として学べる学園などはない

 

悪魔は人を見下してると言ったが弱い同族もまた同様に見下されている。悪魔の世界では貴族の様な地位があるか単純に力がある悪魔が上を占め、悪魔として弱者に生まれれば弱者のままで終わる。

 

そんな悪魔の世界に不満をもち弱者の子供でも通える学校を造るのがソーナの夢。冥界の学校でなくこの学園に来た理由も優れたと思う教育を学ぶためだ。ソーナは悪魔では珍しい他者の為に努力する努力家だ。

 

「バレー部も確認終わり……あとは最後ですね」

 

ソーナは部活の練習を見て特に問題が起きていないことを確認すると、最後に学園の端に向かう事にする。

 

その足取りは重い。別にソーナは疲れている訳ではない。朝が苦手な悪魔らしく体の体調は少し悪いがそれでも足取りが重くなるほどでもない。

 

向かう先にあるのは園芸部。

 

ソーナとしては園芸部については問題が起きてるかの確認ではない。確認しなくても判る。園芸部では絶対に問題は……起きてるからだ。

 

五分ほどの向かう途上に三度ほど行かない事を考えたソーナだが、結局は園芸部近くまで来ていた。

 

そこにはキラキラしたハートや星マークなどとカラフルな字でこの先園芸部という園芸部の用意した小さめの看板が有るが、生徒会の用意した真っ赤な字で大きく危険と書かれた看板と鉄の柵がこの先にあるのが園芸部と思わせない。

 

柵と看板を越えて進むと園芸部員達と畑が見えてくる。

 

 

畑の看板には手足のついたニッコリ笑う可愛いイラストのニンジンとナス。畑ではニンジンやナスを育てているんだろうか。地面に突き立てられた木の棒に付けられた紙に丸い字で『まんどらごら』や『なすびなーら』と書かれている。

 

畑から感じる禍々しい気配は何だろう。畑に生えた植物が風と関係なく蠢いてる様に見えるのはなんだろう。たまに草の下から根が出て鳥やらを捕獲しているのはいったい何なのか。畑を見たあと改めて看板のイラストの手足のついた可愛いナスビやニンジンの絵が恐ろしく見えないだろうか。

 

畑の近くの園芸部員。

 

服はプロテクターの付いたジャージ、頭にはヘルメット、顔にはマスク、手には鍬やスコップ、腰にはサバイバルナイフ。

 

……園芸部員?

 

過激派の様な園芸部員の中に一人だけジャージだけの青ざめた顔をした女子がいた。園芸部に装備無しで来るとは自殺志願者だろうか。可笑しくはない。この学園では園芸部と書いて戦地なのだ。

 

ジャージのみの女子は命知らずのクレイジー野郎だろうか。いや違うようだ。花が好きそうな大人しい外見の女の子、恐らく何も知らないで来た新入部員だろう。

 

因みに園芸部員の新入部員は他にも居たがここに来る途上で既に逃走済み。残りは逃げ後れた彼女のみ。

 

「あ、あのアレッてなんですか?お、襲ってきたりとかしませんよね」

 

「ははは、大丈夫大丈夫……」

 

確かに初見の人は畑の下で蠢く何かが人は襲わないのだうかと疑うだろう。疑う余地もない。

 

大丈夫と言っている生徒の足に根が伸びてきて……

 

「うわぁぁ!!?」 

 

普通に襲ってくる。

 

男子生徒が足に根を絡まされズルズルと畑まで引きずられている。ソーナはB級モンスターパニックみたいな光景を遠い目で見詰めた。

 

「はやくナイフで切るのよ!かじられるわよ!」

 

「か、かじるんですか!?」

 

ソーナもこれが冥界にある畑なら可笑しいと思わ……ないなんて事もない。自然に発生してるならともかく畑で人でも食べそうな植物を育てることとかないだろう。余程の変人なら有るかも知れないが。

 

それはともかくソーナも本当なら生徒会長としても悪魔としても良識的にも、あの畑は何とかしなければいけない。

 

一番良いのが畑の物理的な消滅。

 

それを出来そうな知り合いはいる。

 

この学園のソーナに並ぶ上級悪魔のリアス・グレモリー。リアスには消滅の魔力というバアル家特有の魔力が有るが、畑を消滅させてと頼んでも全力で拒否していただろう。

 

リアスは若年ながら上級悪魔に列され自身の強さに自信がありプライドの高さもおりがみ付きだが……園芸部の部長にはビビっていた。

 

 

園芸部の部長は人の世界での立場は一般的な(人間の)男子生徒である。ソーナ(悪魔)達が裏から調べても完全無欠の人間の立場。

 

しかしリアスに調査結果が間違ってると言われたらソーナも頷くしかない。

 

気付くとソーナの体が震えていた。

 

(……きました、か)

 

園芸部の部長がきたことを震えが教えてくれる。畑の蠢いていた根が一斉に土に戻っていた。 

 

ソーナの視界に園芸部部長の姿が映る。

 

「「「おはようございます!」」」

 

部員達は膝まづいて挨拶をした。

新入部員の女子は驚きオドオドしていただけだが部長を見てやらなければいけない気になり他を真似た。

 

こんな独裁制みたいな挨拶は注意すべきだろうがソーナは言う気になれない。ソーナも気を張らなければ彼等と同じことをしていたと思うからだ。

 

 

二メートルを越えていそうな長身であり筋肉質な肉体、見られただけで思わず膝まずきたくなる眼光を放つ三つの目、上位者だと知らしめる王者を思わせる頭の両サイドから生えた角。ソーナのような魔力を操る悪魔や魔女に見える魔力が彼の周りで漆黒の太陽の様に輝いていた。

 

 

園芸部部長、田中太郎(17)

 

転生者(?)

 

世界人口の八割、人其々で違う《個性》という能力を持った別世界でヒーローをしていた経歴が有るだけの極普通の男の子。

 

彼の個性名は『大魔王』

 

 

 

 

 


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