衝動的なの   作:ソウクイ

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セル3

 

 

雄英、体育祭本番。

 

声が聞こえる。

 

例年通りならマスコミやプロヒーローまで混ざった大量の観客が来てるんだろうな

 

もうすぐ入場だ。

 

生徒は全員緊張をしている。

 

あの発目嬢ですら緊張を……してないな。

何時も通り笑っている。恐らくどう自分の作品を目立たそうかしか考えていない。

 

因みに私は帰っていいかと考えている。

 

この体育祭、其々の科には別の参加意義がある。

 

ヒーロー科は自分の強さを世間やプロヒーローにアピールしライバルに勝つ為に。普通科は活躍してヒーロー科になる為。経営科は将来のパートナー探し等。そしてサポート科は自分の作品のアピールまたは実戦テストの為に。

 

そう考えると……何故か作品を出すのを却下されたサポート科の私はなんの為に出るのだ。

 

周りがヤル気なら自分もと多少は思うかもしれないが、私以外のサポート科全般にやる気が薄い。

サポート科の顔を見れば早く帰りたいと顔にかいてある。それでもまだマシで多くが見学希望だったか。私も見学にすれば良かったか。

 

しかしそのやる気の無さも仕方ないだろう。

 

サポート科にとって今日が発明品のアピール日だが、発目嬢以外肝心の作品をちゃんと造れたサポート科生徒はほぼ居ない。全員口を揃えて日数的にキツいと言っていた。造れてる発目嬢がおかしいのだ。

 

状況を考えれば、元からサポート科の一年は体育祭で蚊帳の外なのだろうな。

 

そう考えると、少し腹が立つな。

 

待っていると入場することになった。

それぞれの組で別れて入場。

 

テレビで見てたがやはり会場は大きいな。前世で言えばオリンピックの会場じゃないか?有名とはいえ1高校の会場と思えば異常だな。

 

「雄英体育祭!ヒーローの卵がしのぎをけずる一年に一度の大バトル!どうせテメーらアレだろ、全員見に来たのはコイツらだろ!ヴィラン襲撃を鋼の精神で乗り越えた奇跡の新星、ヒーロー科!1年!A組だろぉ!!」

 

実況は良いのか?。

 

ヴィランに襲撃されて生徒を戦わせたのは雄英の醜聞だと思うが。1ーAを持ち上げて美談にしているのか?

 

改めて考えればヴィランに襲撃されておいてよく体育祭を開催できたな。確かヴィラン連合か?オールマイトが居たのに主犯には逃げられたのだろう。雄英は襲撃されて主犯には逃げられると実質痛み分け。

 

オールマイトや他ヒーローから逃げられる程のヴィラン連合の幹部は未だに野放し。それだけならまだしも今後襲撃が起こらない為の対策を雄英がする時間もなかっただろう。そんな状態で体育祭競技を行う。此だけ大規模な体育祭で発生する利益に、面子があるから中止は無理だったのだろうか。

 

これでもし生徒に対しての襲撃がまた有れば洒落にならない。自分達の利益や面子の為に生徒を危険に晒した事になるからな。

 

はぁ他人事なら何が起きようとどうでも良いんだが、ヒーロー科ではないが私も雄英の生徒である。何か起きれば私にも関係ないといえないのが面倒だ。

 

 

入場した1ーAに大歓声。

 

ヒーロー科B組、普通科は1ーAに妬む視線を向けているな。目立つ1ーAが気にくわないか。 

 

殺伐とした向こうと比べて此方はなんと平穏か。

何やら観客を観察している発目嬢を筆頭にサポート科は特に気にしていない。元からサポート科は裏方だからか。

 

サポート科が入場した時に観客の反応は殆どなかった。テレビでやる体育祭は何時も主役はヒーロー科、次点でヒーローを目指している普通科だ。

本人たち含めて誰もサポート科の活躍なんて期待はしてないだろう。

 

……予想を覆せばどんな反応をするかな?そんな言葉がふと脳裏に過った。

 

予想を覆すか。

少し面白そうだな。

 

別に目立ちたいとは思っていなかったが、予想を覆すのは面白そうでもあるし。私の作品を却下したパワーローダー先生へのちょっとした意趣返しもできる……やってみるか?

問題は私がこの体育祭で観客の予想を覆すほど活躍出来るかか。

 

サポート科なのにアイテムは持ってこれなかったので活躍は無理だ。サポート科としてはな。

 

サポート科としては無理でも選手としての活躍は恐らく可能だ。 

 

この体のスペックが本物のセルに匹敵するかはしらないが、それなりのスペックは持っていると確信している。相手と競技次第な部分もあるが恐らくよほど運が悪くなければソコソコ活躍できる。上位入賞もできる筈だ。そこまで行けば予想を覆した事になるだろう。

 

ふむ、しかし、本来の主役(ヒーロー科)を差し置いてサポート科(裏方)が活躍とは、空気が読めないと思わるか?別に気にしなくてもいいのだろうが、残念ながら私は発目嬢のように図太くない。

それに私は……面倒な個とになるとコレまでセルの力を使わないように自重をしてきた。それをこの様な場で使うのはな……。

 

壇上に変態としか思えない教師が出てきた。

全身タイツ。片手に鞭、年齢は3…………キツいな。

エロさより痛さを感じる。

 

おっと睨まれた。

 

 

選手宣誓か。

 

宣誓は入試一位の生徒がするのだよな……ん?

 

アレが一位か?

 

見掛けで人を判断するのはダメなんだが…………………チンピラにしか見えないな。申し訳ないが見掛けだけでみれば嫌いなタイプだ。

 

まぁエリート校の雄英の代表なのだ。見かけと反してマトモなんだろうが。変態教師は居るが。

 

『選手宣誓、爆豪勝己…せんせー俺が一位になる』

 

 

首をかっきる動作を全員に見せつけた。そして笑っている。スゴいな。こう、なんというのか、なんというべきか、そうだな。一言言葉にすればこれだ……イラっときた。

 

自信過剰なチンピラタイプ。

いやまさか私の大嫌いな部類な奴が雄英にいてしかもトップとはね。

 

「ふむ………別に頑張っても良いか」

 

私はそう呟いて不敵に笑った。

 

私は自重してこれまで私(セル)の力を使うことはなかった。それなりに面倒な事になると思っていたからな。それなのにこんな公の場で使うのは愚かだとは思う。しかし我慢の限界だったらしい。自分の力を使おとう一度思うと内心のワクワクは止められない。

 

今日私は自重を捨てるぞ!ジョジョォォ!!と、言った所か。私は吸血鬼でないが。

 

 

 

第一競技は障害物競争。

 

選手が一同に集まっている。

むぅ所詮はほぼ予想通りの構図、これならスタートと同時に投網が有れば一網打尽に出来たものを……惜しいな。

 

変態な先生がコースさえ守れば良いと言ってたんだ。ルール的にも問題なかったのにな。

 

スタートの合図。

全員一斉に走り出した。

 

私はワンテンポ遅れてスタートし後方からついていく。この競技なら余裕がある。先ずは生徒の実力を観察することにした。

 

前方にトンネル。

生徒がトンネルに密集して速度が落ちた。

 

このトンネルは観察に適さないな。

サッサと抜ける……か?

 

何か来る予兆を感じた。前からバキバキと冷気、私に何か飛び乗ってきた。私は浮かび上がる。私に続いて何人か防御体制に入ったり飛んだりした。そして冷気が通った。飛ばずに地面に残った選手が凍結した。早速か。前方の誰かが個性で凍らせたのだろう。

 

洞窟の狭さを利用した一網打尽とは、私がやりたかったな。

 

「いやーセルさん助かりました」

 

凍結を回避するのに私の体に勝手に飛び乗った発目嬢が悪びれずにそう言った。凍結した生徒の上を飛んで通りトンネルを抜けた後に剥がして落とす。

 

『オオットいきなりの波乱だ!凍って脱落者多数か!?しかし本格的に障害物競争が始まるのは今からだぞ!雄英から選手にプレゼントする第一の障害物はコレだ!ロボインフェルノ!!』 

 

ロボ?確かに大量にロボがいる。

 

小型ロボで人のサイズ、大型ロボとなるとビル並みじゃないか。上級生のサポート科が作ったのだろうか。他にも競技の障害物を用意したりしたんだろうか……体育祭でサポート科は不遇と思ったが活躍の場は色々と有るのかもな。私も参加したかった。

 

しかし、あんなロボが良いならなんで投網程度がダメだったんだ。ロボと戦闘する選手を観察しながらそう思う。

 

大型のが凍りついた。さっきトンネルで凍られせたヤツか。白赤のツートーンカラーの髪の毛だな。

 

「ふふ、やるじゃないか」

 

ヒーロー科だろうが中々派手に倒す。選手は驚愕の表情、歓声が上がっている。今回の私の目的は活躍することだ。私はこの反応を上回る活躍をするのには相当に目立たんとな。

 

「申し訳ないがロボットくんには次は私からの攻撃を受けてもらおうか」

 

どんなに攻撃しても問題ない巨大ロボは格好の獲物だ。私はとんでロボの元に向かう。

 

『おおっと!生徒のひとりが超跳んだ。ロボに真っ向から突撃か!』

 

私は巨大ロボの頭の前で空気を叩く音を鳴らしながら急停止。

 

『跳んだんじゃない。アイツは飛んでる』

 

言いたいことは判るが文字にしないと意味が通じにくいぞ。まぁそんなことより……

 

「セリャァァ!!!」

 

私はロボを蹴りあげる。

 

『はぁぁ!!!??ろ、ロボを蹴りあげた!?』

 

「体育祭開催の祝砲といこうか」

 

私は腰を捻り両手を揃え腰の辺りで構える。

私はセルであり気が使えた。前世の日本人なら全員が試しただろう必殺技を本当にやれると気付いたが、やってはいけないと、やりたいという衝動を何度も何度も我慢をしてきた。

 

それを今回やる。この場で最も相応しい技だからな。私の顔は笑っているだろう。

 

両手に小さな光りが灯る。

 

「かぁぁーめぇぇーー」 

 

小さな光りは大きくなり蒼白く輝く。

 

『なんだ!あの光りはなんなんだ!?』

 

観客も生徒もまるで競技を忘れて私を見ている

 

「はぁーーめぇぇーーー」

 

その輝きはまさに太陽。

 

さぁヒーロー好きもヒーロー達も刮目すると良い。この世界には存在しない最強の英雄(ヒーロー)の必殺技だ。

 

「波ぁぁぁああ!!!!」

 

大きな光の柱は空へと登り柱は巨大ロボを飲み込んだ。

  

 

ふぅ

 

 

…………何をしてるんだ私は

 


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