一月の体験も終わって道場から出ようとした。
金髪のドリル型のツインテールにゴスロリ衣装………年齢不詳のひと
外見で該当するのは原作のあのキャラ。私が知る相手だとすればハンター×ハンターでは実力者のロリババァ!!!
ビスケット・オリバ!
ビスケット・クルーガーだったか?
本物か?本物としてなんで此処に…原作でも心源流だったような。違ったか?もしかして原作と違う…少なくとも武術家ではあるだろうし道場に来るのは不自然でない。しかし不穏な台詞を言われた。この道場に喧嘩を売るっていったい。
「ふーんその反応……私を知ってるんだ」
「いや…どう、なんでしょう」
外見と特徴で言えばそうとしか思えない。もし正解なら相当に年上………母親、いや祖母ぐらいの年齢。敬語で話さないといけない。
「なんかモノすごいムカついた。先ずは話を聞こうと思ってたけど、ボコってから話を聞くことにするわさ」
「は??」
なんでボコられなきゃいけない。
冗談…?いや!あの目は!?
「じゃあ挨拶の一発行くわよ」
繰り出されたのは正拳突き。
咄嗟に正拳突きを腕を交差させて受けた。スゴい音がした。重い。細い体から打ち出されたと思えない。身体が浮かんだ。そのまま何メートルも後退して、体を回転させながら着地した。
痛い。
腕が痺れていたい。
今の一撃。身長は同じ程度なのに、まるで大男、いや熊に殴られた様に感じた。この威力は本物だ。本物以外に考えられない。本物だとすれば、本気の出せる本来の姿を隠している。それなのにアレだけの威力。恐ろしい。
本物だとしなんでだ?なんで殴られた!?本気でボコるつもりなのか。理由がわからない。私はなにもしてない。喧嘩を売りにきたって思われた理由はなんだ!?
「ふーん今の受けれるんだ……初心者じゃないって思われるのも仕方ないわね」
「…」
全く話がつかめない。
初心者…?そう言えば道場で挑まれた練習試合で負けたのが私が初心者じゃないとか難癖をつけてきたことがある。何処かの流派の回し者とか……は、喧嘩云々はそれ?模擬戦で負けた誰かが根にもって彼女に嘘をついたのか??いや、初心者と思われるのも仕方ない…という事は彼女は私が初心者だとはわかってる…ことに…????
「戦いの最中にボッとしない!」
また殴ってきた。
さっきよりも早い!
慌てて後ろに跳んだ。
「ふむふむ、これにも反応 と」
楽しそうだ。私を攻撃するのそんなに楽しいのか?楽しいのか。そういえば原作でサディストみたいな感じがあった。良い男を求めたり…実際の正体含めなくても…結婚とか絶対に無理だな。
「なんかムカつく…」
内心がバレたのか?気配を読む技量、いや年の功で察してきた??
「さーーて!!ドンドンと行くわよ!」
ドンドンって、早さがドンドンと上がるって意味なのか!?攻撃の速度が上がっていく!対処できるギリギリ、まるで猫がネズミを痛ぶるみたいな攻撃だ!早くなる攻撃をかわして受けてひたすらに逃げるしかない!い、何時まで続くんだ。
「っと」
こ、攻撃が止んだ。 此方は過呼吸をする様に息が上がってるのに全く疲れた様子がない。受けた腕や足が痛い。ボコるのは終わってくれた?
「…はぁ…アンタも武道家を目指してるなら少しは反撃しようとしなさいな」
終わった訳ではなさそうだ。
なんだろう。修行でもつけてるような台詞に聞こえる。目的が何だかわからないが、反撃しないと、反撃するようにひどい目にあわされるという事はわかる。
反撃か。
つまり…戦うと。
まったく、欠片も勝ち目を見出だせない相手と戦うのか…一撃当てられるかどうか。なんでこんな負けイベントをしなきゃいけないのか。
主人公の師匠と戦えるのは幸運!とでも思ってないとやってられない。
私は構えた。
「ふーん戦う気になったって事で良いわね」
スゴく良くない。
「たたかわないとダメなんだろう」
「そういうこと!私はビスケット・クルーガ」
「……私はカストロ、できれば帰してもらいたい」
「ダメ」
良い笑顔で言われた。
ふふ、ここの道場主に喧嘩を売りにきたとか、他流派の刺客とか言われて来たけど、誤解なのか嘘なのか。このカストロってガキが素人ってのは間違いないってのは気づいてる。身体能力は高いけど確りとした武術的な技量は感じないど素人。つまり他流派の刺客とかはありえない。
本当なら私に嘘をついた道場主をボコるべきなんだけど、カストロをちょっと試してみることにした。
試した結果……このガキ、カストロは相当に才覚がある。宝石の原石。研磨すれば確実に光輝く宝石が現れる。
ジュルリとヨダレが出そうになったわ。
カストロのようやくとった戦闘体勢、手を獣の口のように上下に広げるという独特の型。何処かで見たことがある武術を見よう見まねでやってるって感じ。
威圧感は結構ある。少しでも私のお肌をピリピリさせるなんていいわ~。
「行くぞ」
さっきの構えはブラフか。それとも、カストロのやったのはお返しとばかりに正拳突き。腕でカストロの攻撃で受け流す。
「へぇ良い攻撃じゃない」
声は余裕綽々としてるけどわりと痛い。流して此だけの衝撃、私が言うのもなんだけど本当に見かけ通りの年齢?
「じゃあ今度はこっちから」
「きつい、な!」
このカストロ、どんな修行をしてたのか知らないけど、身体は相当に鍛えられてる。
だけど
「また行くわよ」
右から行くと見せかけて左から行く。
「くっ!」
だからこそ残念というかチグハグと言うのか……コイツ、簡単なフェイントにもふざけてるのかって思うぐらい引っ掛かる。とにかく私の目に見える動きに対応して動く。けど動きだけ見ると悪くない。鍛えただけの素人。
素人って言い換えたら何の手垢もついてない状態とも言えるのよね。やっぱり宝石の原石,研磨次第でどんな風にもなる。
ぐふ……ぐふふふふ、
私の目にはもうカストロが輝きを放つ宝石の原石にしか見えない。宝石ハンターの私がこんな奴を見付けて放置とか出来るわけないわさ!
私は戦闘をしながらそんな事を考えていたのが悪かった。
「……」
真綿に水を染み込ませるって言うの。カストロの動きは一秒ごとに対人戦に適応してきてる。
原石としてみると余計なモノが削れて輝きが増してるのに興奮するけど、勝負としてはちょっと不味いかも、油断したら手痛い反撃受けるかも。
仕方ない。
そろそろ終わらせよう。
勝ってから私が師匠になってあげると言う。
「はやい!?」
わりと本気に技を仕掛けたのに防がれた。最初の頃より確実に強くなってる。強くなりすぎてる……成長もそうだけど人との戦いに慣れて本来の力が出せてきてるって感じ?
別に今の段階でも勝てないことは無いんだけど……今の力の差だと怪我させないように手加減して倒すってのが難しい。
流石に無理矢理仕掛けておいて怪我させるってのも…ね。怪我させといて師匠になるなんて言うのもあれだし。
どうしよ。怪我させない手段は有るんだけど、姿を本来のモノにするの論外なのよね。こんな場所で使いたくない。まだ念を使う方がいいわさ。
う~ん念を使う?
ま、念を使うとしてもその前に試してみる事を思い付いた。私の勘が正しいならカストロは……
一旦カストロから距離を開いた。
で!
「あ」
さも何か有りますよと言いたげにカストロの後ろをみた。
「……」
普通に後ろを見た。
経験的にカストロみたいな戦いかたをするのは単純馬鹿。正解だった。
なんかあれだけどチャンス!
殴った。
上手く当たって足が崩れた。
「く…さ、流石というべきか」
うん、ソコは卑怯と言われる方がいいわさ。今ので賞賛されたくない。皮肉とかじゃなくて本気で言ってる目をしてのちょっと。外野とかみたいに卑怯だって目をしてる方が正しい……まぁあの程度で卑怯とか無いんだけど
一応謝っておこう。
「お兄ちゃんだましてゴメンなさい☆」
ブリっこのポーズでいった。
「うわ、きつ」
心底キツイものを見たって顔をされた。ブリっこポーズのままの私の顔が固まる。ガチで吐きそうな反応をされた。そして吹き出したヤツだれ?
意識の誘導とかじゃなくて、カストロみたいに単純なタイプだと本気で心からキツイっていった……ちょっと怪我させても良い気がした。
私の念が燃え上がる。
脚力に念を全力で込めて!
吐き気を催してるカストロに突撃!!
「ぐはぁぁ!!!?」
私の乙女の怒りの頭突きにカストロぶっとび飛んだカストロが道場の壁を破壊した。
イヤイヤ、何してんのわたし!
私のあの突撃って大型車ぐらい壊せそうな勢いあったわよねーー…………壊れた壁に足だけ見えるカストロ。
私を見るヤっちまったという視線。
……うん、やっちまったわさ。
いや!やってない!生きてる!オーラは見えるし生きてる!良かった…それは良かったけど……良くない。全く良くない。相手は道場に体験で入ってきた子供。鍛えただけの子供。
……と、とにかく…病院に運んで
「何をしとるんじゃ?」
何でジジイがここにいんの!?