衝動的なの   作:ソウクイ

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ねこよん

 

ボクはヒーローに成るために幼い頃から今まで、飼い猫と言う名の獄卒、師匠のピトーから来る無茶な特訓を受け続けてきた。

 

ピトーに回復されても三途の川が身近な日常、川の向こうに渡りそうになる日常、ヒーローに成るために周りの誰よりも努力してきたと自負してる。特訓の密度がボク以上の人は居ないと思う。ピトーの回復無しでボクより努力してたら……川の向こう側に逝ってるからね。

 

個性抜きの身体能力は同年代ではトップ。個性を含めたらトップとはとても言えないけど簡単には負けると思わない。個性もちとも十分に戦えるだけ鍛えてきた。

 

だけどそんなボクでも無個性ならヒーローに成ることは無理だと言う人ばかり。実際、此だけ努力しても何とか個性持ち相手に食らい付けてるだけ………個性持ち相手に負けない可能性もある。そんな微妙な立ち位置でヒーローになれるのかな。

 

心の中でヒーローになるのは無理なのかもと思っていた。無個性はヒーローになれないそんな不安は何時も抱えていた。

 

だけどそんな弱気な思いは今日消し飛んだ!

あのオールマイトにボクがヒーローになれると言ってもらえれたんだ…!!

 

オールマイトはすごい。ただの言葉で、オールマイトの言葉で此までの何年も続けた努力が報われた気がしたんだ。ずっと心の中で疑ってきたのにボクはヒーローになれる!そう強く信じられる様になった。もし人生最高の日があるなら今日だと思う!

 

 

ただ

 

 

命日も今日かなって?

 

 

は、はは名前の横に故人って文字がつきそうで膝が震える。オールマイトの後ろから僕を見てる死神、鬼、猫耳が鬼の角に見えるだ。オールマイトの話が嬉しすぎて忘れてたんだ。絶対に怒ってる。スゴい怒ってる顔だ。助けに来てくれたのにビルの屋上に放置した。あと、さっきのヴィランとの戦闘、特訓を無駄にした感じ……はは…許してもらえる気がしない!!

 

あわわわ…も、もし予想より怒られなくても…と、特訓増やされる!。今でも命の崖っぷちの特訓増やされたら崖っぷちから落ちる!増量は勘弁してくださいと命乞いをしなければ!そう思考した瞬間にボクは土下座していた!

 

「少年!?いきなり土下座してどうしたんだい!?」

 

「あ、スミマセんオールマイト、命乞いをしないといけないので」

 

「命乞い!?…命乞いに土下座もそうだけどなんで私に向かって、後ろに誰か……っ!」

 

オールマイトは後ろにいたピトーに凄く驚いていた。万全とは程遠そうなオールマイトだけど、オールマイトの後ろをとるとかとんでもない事をしてるよね。うちのお師匠が化け物だ。

 

「君はさっきの!?何時から後ろに!」

 

「あ、驚かせたみたいでゴメン。話の邪魔もしたみたいだし」

 

「話!?き、きみ!?何時から話を、ま、まさか……私の個性についても…聞いたのかい」

 

「え、オールマイトの個性ってなんの事ですか」

 

「少年が聞いてなかった!?」

 

嘘、オールマイトが個性にまつわる話をしてたの!?もしかしてボクはピトーを見て命の危険を感じて聞いてなかった!?そんな!?日本のヒーロー界隈で最も謎とされてるオールマイトの個性、秘密のはず!!それをオールマイトは意図せずに聞かれた!?た、大変だ!!ピトーに聞かれ…って問題ないじゃない。

 

「聞いたけどどうでもいいよ」

 

「どうでも!!?」

 

ほらね。やっぱり欠片も興味ない。ピトーなら五分もしたら忘れる。ピトー猫みたいに興味ない事にはとことん興味ないからね。猫みたいにじゃなくて猫だった。オールマイトの秘密を知ってもネコに小判。

 

「それよりイズク」

 

「はい!なんでございましょう!!」

 

「人前で土下座は止めなよ。命乞いってのも人聞き悪い」

「怒ってません?」

 

「怒ってないよ。たださっきのヴィランを相手にする時の行動がダメダメだったから、ダメだった所をジックリ教えるつもりなだけなのに」

 

それなら…怒ってなくても命乞必要じゃないか()

 

「あと別の文句も言いたいかな。イズク……師匠のボクのこと忘れてたよね?屋上まで追い掛けてあげてボクの事を放置したよね?」

 

やっぱり怒ってる。背景にプンプンって擬音が見えてもうって可愛い顔だなー。死神の幻影が見えるんだ。ボクは恐怖で泣いてるんだ。

 

「え、えーーと、緑谷少年、彼女が君の師匠なのかい」

 

見かけから同い年の女の子を師匠にしてたのって聞きたいんですか?ボクが恐怖で泣いてる所を気にしてもらえません?泣いてる理由を聞いて助けてください。

 

「はい素晴らしい崇拝すべき尊敬しているお師匠さまです」

 

「そ、そうなんだ。彼女はそんな素晴らしい師匠なのか……それだと…私が少年の師匠になるって提案しようと思ったんだけどダメかな」

 

オールマイトが師匠になってくれるつもりだったの!?なんで!?わからない!師匠になってくれる理由は全くわからないけど!!

 

「まったくダメじゃないです!お師匠になってほしいです!!オールマイト以上にお師匠さまになってほしい人なんて存在しません!!…あ」

 

ボクは反射的にそう言った。

言ってしまったよ。

なんでボクは考えて声を出さないかなぁ。

 

あ、あはは……どうしよう。師匠のピトーに許可をとらずに新しい師匠をとろうとした、それも怒ってるピトーの目の前で許可をとらずに…………

 

「………」

 

オールマイト、顔が青くないですか。あのオールマイトが顔を青くするなんてレアな光景だなー。ピトーの方を見てどうしたんですか。わかりたくないです。オールマイトの体でピトーの顔が見えないんです。物凄い怖いんです。タスケテ。

 

「その、うん!今日は遅いからまた後日!これ連絡先!明日出来たら連絡してね!」

 

ピトーに念入りに個性の事は内緒にして欲しいとお願いしてから、そそくさとオールマイトが去っていった。とても足早に去っていった。命綱が去ってしまった。明日またオールマイトと会うんだ。オールマイトとの師弟生活が始まるんだ。明日から……

 

 

明日から…

 

 

 

「イズクお話ししようか」

 

 

 

 

 

…………ボクに明日あるかな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イズクは好きな筋肉の人、オールマイトって人にヒーローになると認めて貰った。良かったねイズク。ボクの事を脳から忘れるぐらい嬉しかったみたいだしね?

 

筋肉の人と別れた後、二時間ほどしてからイズクをおぶって家路を歩いてる。やれやれ、まったくボクは優しいなー。師匠の目の前で新しい師匠をとろうなんて不届き者で不忠で浮気者なバカ弟子をゴミ捨て場に捨てて行かずに部屋まで背負ってあげるなんてね。

 

二時間なにしてた?

 

これもまたボクの優しさだよ。イズクが対抗策無しにヴィランの前に出るなんて危険な事をしたから確りとお説教してあげた。あんなの助けるの無理で危険で無謀なだけだからね。お馬鹿な弟子に師匠としてキチンと脳が忘れないぐらい注意しないとね。それと僕の目の前で喜んで師匠の鞍替えした事への説教もちょっぴりとだけ。

 

 

 

「い、イズク!!?ピトー、イズクどうしたの!?」

 

家に帰るとママさんがぼろ雑巾なイズクの姿に大絶叫した。うん、ヴィランと遭遇した結果こうなったと説明した。大元をただせばヴィランのせいだから嘘じゃないよ?

 

「うぐえ」 

 

イズクを優しくベッドに放り込んだ。

 

色々とあったから今日はイズクの修行は休みにしてあげた。疲れてたら休みをあげるなんてボクって本当に優しい師匠だよね。その代わり明日二倍やって遅れを取り返さないといけないけどね。あ、もっと修行も増やした方がいいかな。新しい師匠がほしいそうだしね。

 

魘されるイズクを布団に投げてボクも猫の姿に戻って自分の寝床に入った。

 

ねよーーーって思ってたんだけだ、寝る前にどうしても考えてしまうなぁ。

 

興味ないフリしたけど、筋肉の人の個性は受け継ぐ個性なんだよね。イズクがあの筋肉の人の個性を受け継ぐかぁ。違うものなんだろうけど個性の受け渡しってスゴく嫌なヤツのことを思い出す。はぁこんないやこと忘れてイズクに増やす修行内容を考えながら寝ることにしよ。 

 

もうすぐイズクも高校。

 

高校からヒーロー科がある。もう一年もなく高校、今日のイズクの行動的にも修行内容も今のままだと甘いよね。ちょっと厳しい修行を増やそうかなー。

 

 

例えば…んーー知り合いの熊さんとの鬼ごっことか?ヴィランって熊より強いの普通に居そうだしこの程度の課題は良いよね。

 

数十メートルくらいの絶壁からのバンジージャンプ(ノーロープバージョン)ヴィランの攻撃を考えるとこれぐらいどうにか出来る耐久性は必要。

 

路地裏探索でヴィランの人達と遊ぶ。度胸付けとヴィランに慣れる為にやってみよう。たとえば覆面被ってヒーローorヴィランに暴言吐いて逃走

。もしもの時に逃げるための逃げ足が必要だよね。

 

これは初級コースであとは……あんな事をしたイズクの為にこんなに考えるなんて本当ボクは良い師匠だと思うよ。

 

 

 

  

 

 

 

「いやぁぁあ!!しぬううう!!ムリムリ!ヒギャア!!死んじゃう!!いやだぁぁ!!オールマイト助けてーー!!は!!!…はぁはぁはぁ!……え、部屋?ゆ、夢、夢だったの」  

 

そ、そうだあんな事は現実に起きないよね。よ、よかった!本当によかった。 

 

と、とても恐しい悪夢を見た。なんて恐ろしい夢を見てるんだボクは!こ、高校に入るためにピトーの特訓(拷問)が更に過激になるなんてあり得るわけないよね!

 

あぁ夢でよかった。

 

何であんな夢を見たんだろ。昨日なにかあっ……そ、そうだ。ボク生きてる?生きてる!!ピトーが激おこで昨日で本当にダメだって…グスッ…よかった。生きて今日を向かえられた…!!

 

うぅ生き延びたって事は!オールマイトと師弟関係になれるんだ!!うわーーーオールマイトの連絡先を貰ったんだ!さ、早速オールマイトに連絡して…あ、時間が早すぎるからダメか。

 

 

あぁ本当なのかな。

オールマイトの弟子になれるなんて。

連絡先は登録してある……

 

オールマイトと出会ってヒーローになることも肯定されて弟子にして貰える。ボクに都合が良すぎる。今も…昨日の事も、全部夢じゃないかな。 夢じゃなかったらいいんだけどなぁ。

 

 

頬を引っ張てみた。

 

痛い…夢じゃない…

 

「イズクー起きたー。…なんで頬を引っ張てるの?やっぱりドM…じゃなくて。昨日やらなかった分の修行今日やるから早く着替えて。あと新しい師匠がほしいぐらいだし修行が足りないって事みたいだから修行を増やすからね」

 

はは…これって夢?夢だったらいいなぁ。

 

 

 

 

 


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