衝動的なの   作:ソウクイ

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ドラゴンボール

 

私はこの身体で五年しか生きてない。

 

しかし大人だ。

 

私は私になる前に地球という星で生きていた。前世の知識だと転生というヤツを体験している。知識として前の私の事はあまり覚えてないが、生活やら倫理観については多少は覚えている。新しい人生、周りの他の奴等と比べて特段劣悪な扱いをされてるわけでもない。大多数の他と同じ扱いだ。

 

 

他だが前世の精神を基準にして考えると…………今の私は相当に不幸じゃないか?

 

 

つまり私の周りも前世の基準なら不幸…

 

今の私の産まれた惑星ベジータは蛮族の生息す惑星。戦闘大好きなサイヤ人の暮らす星。サイヤ人はあれだ。宇宙最強の戦闘民族と自称している恥ずかい種族だ。

 

私が産まれる以前にすでにサイヤ人はフリーザが筆頭のフリーザ軍の一部。フリーザには勝てないとブリーザの軍門に降っている。その上で最強の戦闘民族と名乗っている。まぁほぼ戦闘員ばかりなサイヤ人は種族としての戦闘力を平均したら平均は一番高いのかも。種族くくりで最強と名乗ってるのかもな。

 

種族としての強さは私が不幸だと思う事に繋がっている。種族として強いからこそ今の仕事をやらされている。

 

 

惑星の侵略。

侵略の尖兵だ。

 

下級戦士なら赤ん坊の頃に侵略する星に送られる事もある。私もまだ五歳なのに何度も侵略する星に送られた。サイヤ人は戦闘員になる未来が決まっている、拒否権なんてない。今の立場はフリーザの戦闘奴隷と言ってもいい。少なくとも誇れるような立場じゃない。

 

サイヤ人として産まれる=戦闘奴隷。

不幸と思うのは可笑しくないだろう。

 

しかもそんな幸運とも言えない戦闘奴隷としての地位も安泰なのか怪しい。フリーザがサイヤ人に好意的でないだろうしな。

 

フリーザがサイヤ人を嫌いだと公言してるわけでもないから予想だが、もし私がフリーザの立場だとしたらサイヤ人を嫌う。

 

フリーザ軍の中でサイヤ人の役割は侵略。その侵略がマトモに出来てるのか怪しいと思う。

 

侵略の目的は資源がある星や環境のいい星を手に入れるか、またはその星の住民を奴隷にでもするため。人の住めない環境が悪い惑星で良いなら宇宙には幾らでもある。手に入れる環境はなるべく傷付けてはいけない。私が初めて侵略に送られた時にはそう判断して手加減に苦労した。

 

 

なのに、他のサイヤ人と侵略に行った事があるが必要以上に破壊活動を………。月があると罪悪だ。大猿になって理性を無くして破壊の限りを尽くす。星が無茶苦茶になる。手に入れる星を無茶苦茶にしたら意味がない。

 

 

フリーザ軍の中でのサイヤ人の評判は…あまり他との接触がないから詳しくないが、サイヤ人の性格は大体態度がデカく粗暴で煩く性格も尊大。戦闘力が弱い相手を見下す。他から好かれるとは思えない。

フリーザからすれば仕事もろくに出来な態度は大きい部下。嫌うだろ。

 

フリーザにはサイヤ人より弱くても扱い易い部下は山ほどいる。部下としてサイヤ人が絶対に必要とも思えない。此れから先もフリーザがサイヤ人を切り捨てないなんてあるか?

 

従順な下僕ならともかく…ベジータ王とか屈辱だみたいな顔をしてるの見たことがある。反乱を起こさない方がおどろける。正直、他のサイヤ人がどうなろうと別に構わない。自分も巻き込まれるから問題だ。

 

惑星ベジータから抜け出そうとは思うがまだ五歳、この年齢で一人で生活するのは難しい。

 

 

それでフリーザが切り捨てるまでの時間を少しでも稼げないか考えてみて、他のサイヤ人にフリーザさまがサイヤ人を嫌ってるんじゃないか?と質問をしてみた。質問をする時に嫌われてると思う理由も説明する。嫌われてる事に危機感を感じさせて態度を改めさせる事が狙いだった。大して変わらないとしても少しは行動はマシになると考えて。

 

逆効果だったか?

 

下級のサイヤ人の態度はほんの少し良くなったのに、エリートクラスとなるとフリーザと戦うべきじゃないかとかアホな事をいってるのを聞く羽目になった。脅すのは逆効果になると止めておいた。

 

 

……ベジータ王を筆頭にエリートクラスはプライドが高い。

 

 

 

フリーザの下なのに納得をしてない。やはり何れだけの規模に成るか判らないがいつか反乱をやる。フリーザ軍には総数が圧倒的に負けても種族としての差で何とかなる。幹部はフリーザ軍の幹部は、二万とか最高戦闘力が十何万とか。サイヤ人の最高でも二万以下、これは戦闘力が十倍になる大猿に成れれば何とかなる。

 

 

ただ肝心のフリーザだけは無理だろ。

 

 

私は相手の力をスカウターの様に測れるが、ベジータ王が大猿になってもフリーザの強さの半分にもならない。今感じてるフリーザの力でもだ。

 

フリーザの父親が惑星ベジータに来たことがある。その時に感じた強さ…あの強さから考えればフリーザは……私のように力を隠している。親を基準にすれば優しめに言っても百倍以上、下手をすればそれ以上か。

今は多分勝てない。

勝ち目の無い反乱には参加したくない。

逃げるしかない。

 

1サイヤ人が逃げても態々追ってくるなんて無いだろう。ただ念のために死亡したと偽装をする。何処かの星の侵略してる時に星丸ごと吹き飛ばして、それに巻き込まれる。そうして偽装して、そのあとは…………どの星に行くとかその後の生活をどうするか?その手の知識が全くないな。どう生活するか考えないといけないか。

 

……どう生きようか。

 

侵略した星で死んだと見せて姿を眩まして、そのあとは初めは傭兵とか、身体能力を生かせる仕事をやればいいか。仕事をしながらどうするか考えればいい。

 

そういう大雑把な予定を決めて逃げる準備をしている時に、私に弟が産まれてる事を知った。 戦闘力が高いと他のサイヤ人の噂になっていた。

 

弟がどんな相手か見に行った。

 

サイヤ人の赤ん坊、可愛げが無さそうだなと思いながら見たら、弟、ブロリーは隣の赤ん坊の泣き声に泣かされてる泣き虫だった。

 

「見ろよこの戦闘力の数値を産まれたばかりで戦闘力が一万だぞ」

 

「くはは!同じ親から産まれたのにもうカスのお前より格段につよいな」

 

馬鹿にした様に笑ってるヤツはどうでもいいとして、泣き虫なのに産まれたばかりで戦闘力一万か。スゴいなと思う。上級のサイヤ人クラスか。

 

 

私が産まれた頃とどちらが上かな。

 

 

私は生まれた時には自意識があった。だから誰かが自分の戦闘力が異様だと話してるのを聞いて隠した方が良いと感じた。それで力を抑えようとすると特に苦もなく自分から出る力を抑える事が出来た。力のコントロールは赤ん坊の頃に息を吸うように簡単に出来た。

 

初めは力のコントロールは呼吸するような自然な事と思っていたが、他のサイヤ人は誰も力のコントロールはできない。前世らしい記憶に戦闘力の高さ。私は特別なんだと思っていた。

 

しかし弟の戦闘力の高さ…

 

戦闘力については血筋が特別なのか?

同じように転生して…ないか。弟の精神は普通の赤ん坊にしか見えない。赤ん坊に泣かされてるしな。

 

普通の赤ん坊なら私のように戦闘力を隠すなんて出来そうにない。私が初めに戦闘力の高さを知られたら不味いと思ったのは恐らく間違いはない。王やエリートサイヤ人が弟の戦闘力の高さを知れば、弟を育ててフリーザへの切り札として使われるんじゃないか。道具として…。

 

…弟をどうするか。

 

サイヤ人なら血縁なんて気にしないだろうが、前世の感覚のせいか。産まれたばかりの弟を見捨てるのは気が進まない。

 

どうするか何日も迷っていると、ベジータ王が弟を殺すとか言い出したと聞いた。

 

意味が判らない。フリーザと戦う切り札となる可能性があるのにそれを捨てるのか?ベジータ王にフリーザと敵対するつもりがないとも思えない。殺す理由が思い付かない。もしかしたら殺したと偽って何処かに隠して切り札にするつもりか。

 

ベジータ王の元に向かっていた。

 

私はベジータ王の居る王座のある部屋の前までいくと、ちょうど王座前でベジータ王がパラガスの息子を抹殺しろとか言ってる声が聞こえた。殺したと偽るつもりじゃない。本気で殺す気だ。

「お前、此所は王の間の前だぞ!何を無断で入ってきているのだ!」

 

私を退かせようする護衛を突き飛ばして扉を突き破り驚いてる王を蹴倒した。

 

「ぐふぁ!?」

 

「ベジータ王!?」

 

蹴倒してから少し冷静になった。

 

「き、きさまは何者だ!」

 

私は王に弟を殺すのは止めるように頼んだ。

ベジータ王は起き上がってきた。

 

「弟だと、貴様パラガスの娘か!ふざけるな!!!私にこの様な真似をして許されると思っているのか!姉弟共々死ぬがいい!」

 

ベジータ王とついでに護衛らしいエリートの戦士が襲ってきた。

 

どうしよう。

 

……殺さない方がいいのか?

 

殺す殺さないかで迷う。今の時点の私で表向きに見せてるフリーザなら倒せる自信はある。そのフリーザに大猿でも勝てそうにないベジータ王に負ける気は少しもしない。

 

「ど、どいうことだ。パラガスの娘ならお前の戦闘力は千にも届かなかったはずでは…」

 

驚いた。下っぱの私の戦闘力を知ってるのか。単に弟の事があって調べたのか。

さて、ベジータ王と話し合いをするか。話し合いに応じなければ……誰かが入ってきた。

 

増援かと思えば…

 

「い、いったい、ど、どういう状態なんだこれは…」

 

うん?あれは父…パラガスだな。

なんで此処に居るのかきいてみた。

まさか弟の事でなのか。

 

「い、いや…ブロリーが王に殺されるときいて…止めにきたんだが」

 

本当に弟を助けに来たのか。

 

子供のことを助けに来るとかサイヤ人にしては珍しい。王に反抗するなんて殺される危険があるのは解っていただろう。弟の素質に下心があったんだろうが、それでも評価は随分とよくなったな。

 

「そ、それより、な、なぜ…ベジータ王を倒せて……お前の戦闘力はまだ千にも届かなかった筈では…」

 

親父も私の表向きの戦闘力を覚えていたのか。

弟の事があって調べたか、一応私を気に掛けてはいたか。

 

「そ……そういえば!産まれた頃、ブロリーと似た戦闘力が計測されて、測定器の故障と片付けられたそうだが……まさかあれは」

 

今さら隠す事も出来ないか。戦闘力をコントロールして隠していた事を教えた。

 

「………あ…赤ん坊の頃から戦闘力をコントロールしていたというのか…」

 

頷くとこの場の全員が絶句していた。

絶句してる内に考える。

 

面倒になるので惑星ベジータには居られない。弟は当然だが…親父も連れてくか。単に下心だけなのか子供の事を気にしていたのか判らないが、残して処刑とかになったら後味が悪い。ベジータ王と交渉して私達の記録を抹消して出ていく事にした。息子の妻とか意味の判らない妄言は無視した。

 

「………」

 

呆然としたままの親父に弟を抱かせて親子で惑星ベジータから早々に出た。母親は来なかったし放置でいいか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と、惑星ベジータから旅だって十数年後。

 

あの日でてから直ぐに、風の噂で惑星ベジータに隕石が激突しサイヤ人ごと消滅したと伝え聞いた。惑星が衝突する隕石…無いこともない。ただそんな惑星を滅ぼす程の大きさの隕石は衝突前に見つからない方が難しい。事前に惑星ベジータから脱出できる。それに惑星ベジータの外に侵略に行ってるサイヤ人が普段から沢山居た筈だ。

 

なのにサイヤ人が滅んだという。

 

まぁ隕石は嘘でフリーザに惑星ベジータが壊されて、フリーザ軍に外に出ているサイヤ人も含めて始末された。そんな所か。

 

サイヤ人の反乱の失敗の結果か。

それかフリーザの我慢の限界がきたか。

 

「つまりフリーザに利用され尽くして殺されたか。無謀な反乱をして返り討ちにあったか……どちらかがサイヤ人の末路か」

 

ベジータ星がフリーザに破壊された所までは同じ推測をしていた親父は項垂れた。弟は特に興味なさそうだな。私も同族意識は其処までないし落ち込むことはないな。

 

だが問題はある。サイヤ人が全滅し私と父と弟のサイヤ人は絶滅危惧種の様な立場。絶滅危惧種……サイヤ人は絶滅危惧種でも宇宙を荒らしてた種族。サイヤ人だとバレると面倒が起こるかもとサイヤ人となるべく名乗らない事にした。

 

サイヤ人である事でトラブルもなくこの十数年、弟の世話をしながら星を移動し順風満帆に暮らしている。色んな星の旨い食べ物を探して風来坊の様な生き方、旨いもの探しの旅、根なし草と蔑まれる時もある生き方だが、弟も父親も結構この暮らしを其処まで悪く思ってもない様にみえる。

 

 

暮らしを支える収入は賞金稼ぎに傭兵みたいな仕事、猛獣だったり賞金首の犯罪者の捕縛だったりをしての報酬。大概弱い相手ばかりで戦闘欲については解消されない

 

だからか弟が頻繁に戦闘をせがんで来る。弟はサイヤ人のわりに普段は大人しい。なのに弟が何でか金髪になったりムキムキになったりすると普段の大人しさが嘘のような状態に成るから相手をするのが少し大変だ。

 

まぁ弟との戦いは私としても戦闘欲が発散できて楽しい。戦いを楽しむ他のサイヤ人の気持ちが初めてわかった気もする。弟が手強くなると私の戦闘力もドンドンと延びてく実感ができて嬉しくもある。

 

不満があるとすれば、なんで弟は体まででかくなる?対戦する度に弟のデカさを見せ付けられるのがイヤだ。普段でも私より大きいのに。なんで私の身長は12才ぐらいで止まったんだろう?身長も戦闘力の様にグングンと伸びていいんでないだろうか。…弟の妹に見られる。弟が頭を撫でるようになったのも地味に悔しい。    

 

サイヤ人は子供の頃はチビで青年期に入ると一気に身長が延びる筈なのに……もう20を越え自然な身長の伸びは期待できない。どうにか身長を伸ばせないだろうか。

 

色んな惑星の身体が成長する逸話を調べたりしたが……駄目だった。

 

そんな時にナメック星人の噂を聞いた。

ナメック星人はなんでも願いを叶える不思議な球を持っているそうだ。

 

何でも願いを叶える。願いを叶えるなんてモノの逸話は色んな星に有るけどガセだ。ただ探していれば身長を伸ばすぐらいの何かが見付かるかも。私がナメック星人を探すと二人に言うと父が無言で牛乳を差し出してきた。弟は無言で私の肩に手を置き首を振った。

 

なんか腹立ったから二人とも殴っておいた。

 

 


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