職業柄男の朝は早い。
地域の住民とはそれなりに交流もあり外を歩いていると元気よく挨拶をされたりする。
「あ、トグロのアニキおはようございます!!」
「トグロのアニキ、今日も早いですな!」
弟なのにアニキと呼ばれる不思議。
年は20代の後半ほどだろうか。
キッチリ整えられた短髪。
確りとスーツを着てネクタイも締める。
スーツは筋肉のせいでピチピチ。
黒いサングラスのせいで感情が見えない。
その姿はどうみても……教師だろう。
地域密着型のその手の職業の人間じゃない。なぜかクレ○ンし○ちゃんの組長先生と同じ枠の扱い。やはりサングラスがダメなのだろうと思うけど……トレードマークを無くすのもイヤだよね。
中二草な大会優勝をしてからからかれこれ数 十年後の現在、今のオレは都内にある中学の正式な教師をしている。担当教科は妥当に美術教師。
教師をしてる理由は単純に仕事がほしくて………いや、教師の前も働いてなかった訳でもないけどね。表に出せない職でご近所さんにフリーターや無職なんて誤魔化さないといけないから、表向きの職が欲しかったんだよ。
そう言うわけで、裏の仕事関係で知り合った中学の理事に教師として就職させてもらった。
今は教師として皿屋敷市に住んでいる。
市の名前でオレの様な『原作』の知識持ちなら予想できそうだが、教師をしているのは市立皿屋敷中学。
偶然なんだよ。
狙う以前に、原作知識があるとはいえ数十年前の漫画の知識なんてうろ覚えだ。中学の名前なんて完全に忘れていた。ワルガキを見るまでね。
なんの狙いもなく本当に偶然に知り合いからの紹介で、この中学への就職をしたんだ。運命か因果を感じてしまうよ。
霊光波動の次期継承者候補?
道場主?
うん、いや、継承者どころかあの道場からは大分前に破門されたんだよ。端的に言えば大会で優勝した報酬の願いが原因でね。
いやーー……当時の師範に破門されて抹殺対象になされるぐらいキレられるとは思わなかったよ。
後から考えたら当然だなーと思ったよ。
当時は目的優先で不味いと気付かなかった。若気の至りってヤツだね。
破門は少しアレだけど、次期継承者にはなれなかった事には特に未練は無かった。原作でそうだったからと言うのは関係なく、継承者なんて元から成りたいとも思っていなかったからだ。それに自分が道場主になるのも、道場主として道場経営とか面倒く、自分の肌に合わないし。
未練はあっても怨みはない。
今では道場の事は若い頃の、青春の一ページという思いかな。
まぁ俺が継承者に相応しいとか言ってくるのは居るけどね。
破門後のこの数十年は……色々とあった。破門したからこそあった様々な出会いと数多な強敵との戦いを経験することになった。中々に大変で決して平穏無事とは言えない人生を送った……まぁ振り返れば充実した人生といえるかな。いや人生ではないか。
とにもかくにも人生に満足してる。
人生の大半を強くなることにかけた人生だけどね。
だいぶ昔にオレは強くなることを決めた。
時間はだいぶ過ぎたけどその思いは今も変わっていない。
十代の頃に道場に入門してから始まり、数十年前の破門後以降も強くなる為に努力は惜しまなかった。
そのお陰さまでつよさは……ソコソコかなと思う。未だ未だ最強なんて遥か地平では有るだろうけど其なりには強いと思えるようになった。
人ならとっくに全盛期は過ぎてる年齢だけど、願いのお陰で肉体は衰えるどころか全盛期を更新し続けている。実際……何れぐらいくらい強いかと言われると、。恐らく原作の『トグロ』より強いとは思う。彼の強さが原作より極端に弱くなければだけど
人生の大半を強くなることに掛けて更に強くなることは止めてない。ただ充実はしていた、普通なら人生の終わりも近い時間を満足して送れた……仮にもし今あの世に逝くとしても大往生を迎えられるとは思える。……ただ折角生きてるならこの時代だからこそやりたいこととかは有る。
時間が経ちすぎて既に記憶から掠れてきた原作知識。アレが正しいかはすでにわからないけどね……
戸愚呂先生を見ることになる登校してきた生徒達。
中学につくと荷物を降ろし同僚と挨拶を交わしそれから校門前に立つ。まるでその手の事務所前の警備……。
教師の前の前職が不明で本当にそう言う裏仕事の人だったという噂もある。先生に化物みたいな巨漢が潰されたって噂もある。先生は本気になると筋肉がムキムキになるって噂もある。体育のお手本でオリンピック記録を軽く更新してた。都内の暴走族は煩いからって先生に潰されたって噂がある。怖そうな舎弟の人がたくさん居る。調子にのった不良が泣かされた。こんな噂と実話があるから大半の生徒に先生は怖がられていた。
「おはようございます先生」
「雪村か、おはよう。今日も早いね」
私は先生に挨拶した。後ろから友人たちも挨拶してるけど、声も小さいしそれになんで、私を盾にしてるかな!!そんな先生が怖い??
「はぁぁぁ……や、やっぱり戸愚呂先生って怖いよね」
校門を抜けて先生が見えなくなってこれ、失礼じゃない?
「螢子よく普通に挨拶できるよね」
「そんなに怖いかな?」
私は首を傾げた。
「怖いじゃない」
「ほら螢子って幼馴染みがあれだから……」
ほんとーに失礼な事を言うわね。
まぁ、しょうがないとも思うんだけどね。
噂に幾つか本当のあるし。
けど被害に会うのは悪い人だけだし普段は穏やかでいい人なんだけどなーー。
それで幼馴染みってアイツの事よね。アイツも……怖がられてるのよねぇ。これは先生とは違うのよ。アイツの場合は普通に暴れん坊だから怖がれるのも自業自得と言えるのよねぇ。
あ、幼馴染みといえば……先生も幼馴染みと言えるのか。小学生になったばかりの頃から店によく来てくれてたし。
アレ?
う~ん?
先生って……初めて会ったあの頃からちっとも容姿が変わってないような。それにお父さん何時も年上を相手にするみたいに接客してて……先生って幾つなんだろ。
何となく私は教室の窓から下を見ると校門が見える。
「またバカやってる」
私は溜め息をはいた。校門の塀に上って小学生のガキみたいな間抜けな幼馴染みを見つけたから。
遠くて表情まで見えないけどアイツがドヤ顔してるのわかる。先生は生徒に挨拶してて後ろの馬鹿は視界には入らない。……どうせ気付いてるんだろうなぁ。
あ、馬鹿が飛び立った。
後ろから飛び膝蹴り。
狙いは先生……
「隙ありぃいい!!!……うひゃぁぁ!??」
「浦飯、朝から元気だねぇ…………毎日言ってるが隙無しだ」
「くそぉ!後ろに目がついてるのかよ!」
足を掴まれて先生の片手で宙吊り。
台詞まで聞こえないけどキャンキャン吠えてる。
なーんか、楽しそうよねー。
大型犬にジャレつく元気な子犬にしか見えないんだけど。先生に大型犬は失礼か。…………それにしてもいつの間にか隣に居る友人、怖いとか言ってた癖に先生と幽助を見て顔を赤くしてる友人はなんだろ?