気付くと彼は人類が宇宙に進出している未来に生まれ変わっていた。彼の二度めの人生の生まれは最悪、ようやく最悪な環境から抜け出して初めて世間を見て、生まれだけでなく世界も最悪かと思わされた。
月に人が住み、宇宙船もあり、極めつけに宇宙に浮かぶコロニーなんてモノに人が住んでいる。彼は何となくガンダム世界に転生したのかと思ったからだ。知らないガンダム作品だろうと思った。
知らない作品なのにガンダムと何となく思った理由は、まずナチュラルやコーディネーター。
ガンダムで言えばオールドタイプとニュータイプ、いやスペースノイドとアースノイドの関係に似ている。
大雑把に言えばナチュラルは普通の人になる。コーディネーターは産まれる前に遺伝子に細工された改造人間、強化人間か。ガンダムで強化人間と言えば戦争で倫理観が欠落していた時に産み出された産物。この世界でも遺伝子改造は倫理的にダメだという認識がある。なのにコーディネーター(強化人間)は…トチ狂ってるのか数千万人は居る。そしてナチュラル、コーディネーター、当然な事に両者の関係は悪い。
致命的に関係が悪化した原因と知られてるのはある時期に猛威を奮った新種のウイルス性風邪。多くの被害が出たが、この風邪に対してコーディネーターがワクチンを完成させ……お互いの関係は最悪となった。
このウイルス風邪、コーディネーターが発症しなかったそうだ。コーディネーターは病気に対して抵抗力が強いと納得できる。しかし病気に強いから必要もなく医療はコーディネーターが遅れている分野だった。なのにワクチンの開発には真っ先に成功…。
作れたのはコーディネーターが優秀だから?
そう言う認識は持たれなかった。
何で遅れてる分野でいきなり成果を出せたのか。自分達が造ったからワクチンも直ぐに出来たと疑惑を持たれた。元から人工的なウイルスだという疑いもあり、ナチュラルからすればコーディネーターに助けられたでなく攻撃されたという認識になる。コーディネーターからすれば助けたのに恩知らずとなった。
対立が致命的となったのか、多くのコーディネーターはナチュラルと離れるためか宇宙の工場コロニー郡、プラントに移り住む。プラントは多数の国が資金を出しあってコーディネーターが建造。当然だが持ち主は資金を提供した国で、プラントのコーディネーターはただの住み込みの労働者か従業員か……従業員、コーディネーターは反乱を起こしてプラントを乗っ取った。
当然ながら乗っ取りの鎮圧が行われる事になる。プラントの本来の持ち主の国との戦争が勃発。この戦争の情報から彼はやっぱりガンダム世界と確信させられた。
MS(モビルスーツ)
ガンダムの主力兵器の代名詞
プラントが戦争にMSを出した。
MSだけでもガンダムと確信できたが、さらに言えば謎粒子のミノフスキーの代わりに成りそうなジャマー。数が勝る連合相手にMS無双。連合が連邦、プラントがジオン擬きという認識ができた。
彼は認識すると地球には絶対に行かないと決めた。
ジオン擬きならコロニー落としでもすると思ったからだ。コロニー落としはしなかった。しかしある意味でもっと質が悪いことをした…ニュートロンジャマー(NJ)
電波か粒子で誘導兵器や核関連のエネルギーを阻害する装置。兵器をダメにするだけでなく、この世界の地球では核融合は自動車に核融合動力を使うぐらいメジャーなエネルギー。コーディネーターにしても狂気的な世界過ぎないだろうか。
もしも、そんな核動力が主体の地球上に、核分裂を阻害するNJなんてモノを地球に投下すれば…子供でもどうなるかわかる。わかる筈なのに、NJが投下された。
血のバレンタインという核攻撃への報復らしい。どんな拡散機能なのか地球全土がNJの影響下。地下に埋没したNJの装置を取り除くのは困難。装置の動力とかどうなってるのか拡散が止まらない。地球全土で何時まで続くかわからない主要エネルギーの喪失に陥った。
発展した文明ではエネルギーは血液、NJ投下後は人体で言えば心臓が止まり血液が止まった状態。地球のエネルギー事情は破滅、経済の混乱、物流が止まり食料不足で餓死発生、医療機関の麻痺、オマケにレーダーも駄目になり民間旅客機は多数墜落。それが地球全土、特に敵でもなかった国も巻き込み地上に住んでたコーディネーターも巻き込んだ。経済的な損失は莫大、死者も何億人というレベル。プラントの数千万人の為に世界人口の何割かの人間が死んだ。元の世界に例えると、アメリカと戦争をするのに無差別に総ての国に核を撃ち込んだような事をした。
世界人口の何割かを殺し経済の建て直しは何れだけ掛かるか。滅んだ国が無いとも思えない。プラントは当然だが地上の総ての国から憎悪されないと可笑しい。
因みにプラント的に人道的な報復らしい……
中立になる国は多数あり、国益が目的かプラント側に立つ国によりプラントに食料などの輸出もあるが、心情的な意味での友好国がいるわけがない。物資の交流はあってもプラント側の兵士に成ろうなんて人間は居ないだろう。プラントの戦力は増えない。
そんなプラントがどう考えてもレッドラインな戦争から凡そ一年、戦争はプラント側が押している形で続いている。その一年で彼は戦争に巻き込まれたりはしなかった。
彼が居るのはオーブの資源衛星ヘリオポリス。オーブは中立を宣言している。此までは周りは戦争だが平和そのもの…危機感はわりかし感じていた。
中立だが、地上の全てに影響するニュートロンジャマーをぶちこんだ、ガンダムのジオンに思えるプラント相手、中立コロニーにいても安心安全なんて思えるわけも無い。もしもの時はトンズラしようと決めていた。
逃げようと思えば逃げれる身軽さがある。
彼の職業はジャンク屋、宇宙に漂うジャンク回収、盗掘と同じ様なアウトローな商売、彼としては不安定な職は嫌だったが、産まれに問題が有りマトモな職業には着けなかった。
他に軍人にも成れるチャンスはあったが、今は身軽な立場で良かったと彼は思う。
彼は二度目の人生を楽しみたい。
楽しむ趣味として今はMSを作る事が目標としている、ガンダム世界と言えばMSだと思ってプラントがMSを使う前から造ろうとしていた。
ヘリオポリスの宇宙港、資源コロニーだけあり船の出入りは多い。行き来する多数の船、一隻の輸送艦が入ってきた。輸送艦だが船体には会社のロゴなどがない。個人の所有物の船。船から二人の男が出てきた。
片方はこの世界に転生した彼、ジャンク屋をしながらMSが戦争の主力のこんな御時世にも、お気楽な趣味でMSを作ろうと世間の空気ガン無視……見掛けから内面の変人さがよくわかる。
もう片方は
「ドレン、機体の方には問題はなかったのか?」
そこら辺に居そうな特に特徴のない小太りの男性、名は…ラルフ・タマル。日系人の血を引くジャンク屋の技術者、MS開発の一番の協力者でありメカニック全般の担当。常識人にみえる。
ラルフは人型のメカの画像が映った端末を見ながら話した。
「だからラルフですってば。機体の状態ですが、前よりはマシですが…貴方の操縦は無茶なんですよ。ガタが少し出てます………そもそも貴方の操縦にはついていけてませんが、もう性能向上を目指すのは良いのでは?私達が理想とする子(MS)はある程度動ければ高い性能なんて必要ないですよ」
「折角理想のMSを造るのに中身がポンコツというのも嫌だろう?」
「いえ私の理想としてはポンコツな子でも良んですが…大体今の段階でもポンコツとは言えませんよ」
「ポンコツでもいいのか……、なら…優等生タイプとポンコツの二つを造るとすればどうだね?」
「そう来ましたか………今の子がポンコツとなる優等生の子を新しく造るんですか」
「いや…そうでなくてね…ポンコツとしても簡単には壊れない機体にはしたいだろう?」
「貴方の操縦が乱暴なんですよ…と、言いたいですが、丈夫な子にはしたいですね………怪我をしない様にしないとダメですよね………装甲の素材を…いや我々の理想とする機体の素材ではどうしても今よりも脆い素材になるか……そうなると運動性の向上…」
ラルフは端末を操作しながらブツブツとなにかを考え出した。それにしても……会話の内容がMSのド素人でも可笑しいと思える発言ばかりだった。
「まぁここで考えるよりも教授の所に相談に行こうか」
「そうです…ね…え、貴方も行くんですか…別に私だけでもいいんですが……いえ着いてくるのは良いんですが…」
何か言いたげに彼の服装を見た。
言葉に出して無いだけで服装が問題だとあからさまに態度にだしている。
「ん?何か問題が」
彼はラルフの言いたいことは察しているのにそういった。
「…いえ何でもないです」
ラルフは頭が痛いと言いたげに顔を振るが彼は気にしない。港から出てラルフと共にヘリオポリスにいるMSのOS等で関わっている教授の居るガレッジに向かった。
学校がある所で当然ながら学生達がいる。彼は【特異な外見】で学生たちに注目されるが特に気にせず歩く。学生達は彼から離れるように歩いている。ラルフも彼から離れて歩いていた。もし通報されても知り合いではないと言うつもりだ。
「うわぁ…(なにあの格好)」
「(は、離れましょうよ)」
学生の集団がまた前から来た。学生たちは他と同じ様に彼を見て他の学生達のように関わらないように避けようとするが…学生の集団の中に彼の知り合いがいた。
「あ、ドレンさん」
「「「(!?)」」」
ラルフに学生達のなかにいた一人の少年が自分から近づく、友人たちは驚いている。腐女子に人気そうな声と外見。声を掛けられたのはラルフ。少年は彼とも知り合い…人知れず自分の名前が呼ばれてない事も気にしている。格好があれなのにわりとメンタルが弱かった。
「ドレンでなくラルフですよキラくん」
か
「それよりどうでしたテスト」
「それより…まぁ新しいosのお陰でテストは良好でしたよ。機体に掛かる負荷が二割ほど減りました……ですがまだガタが」
「そうですか…」
「き、キラ知り合いなのか」
学生の集団の中で何となく幸が薄そうな眼鏡の男子がキラに訊ねる。ラルフでなく彼を見て、知り合いの前に(こんなのと)と言う副音声が聞こえた。そんな副音声が聞こえた気がしたラルフは気のせいとは思わなかった。
「う、うん、教授から紹介されて最近知り合った人たちで…その……ちょっと特殊なモノを造っててボクも協力をしてるんだ」
「教授から紹介…?」
「協力って、キラ何か危ない事をしてない!?」
「み、ミリアリア失礼だよ」
少女は彼を睨み気味。協力してると聞いて即危ないと何で思うのか。
「あはは危なくなんて、うーん、危な……い…のかな?」
危ないと言う言葉は否定が出来ない様子。
「え、キラ、ヤバイのか?」
「キラに何の協力をさせてるんですか!」
キラの曖昧な返答に少女がラルフでなく彼に問い詰めてきた。
「いや、危なくないよ。ただMS開発のOSで協力をして貰ってるだけだ」
「え、MS開発?」
学生組はお互いに顔を見合わせた。
「あの、MS、MSってプラントが戦争で使ってる奴…ですよね?」
「ぐ、軍の人なんですか。キラに兵器の開発をさせてるんですか!?」
MSは今まさに戦争の兵器として使われてる兵器、そんなMSの開発と考えれば、学生組は友人が兵器開発に協力してるのかと慌てた。
「はは、私は軍に関係の無い民間人だ。造っているMSを兵器にするつもりもない」
「…本当ですか。本当は軍の人なんでは…それ…軍服のような感じが…」
ミリアリアは彼の服装をみてそう言った。
彼の格好は紛れもなくガンダム世界のある軍人の格好(コスプレ)…彼は軍人だと認識されるのも仕方ないと思った。どう弁明しようか悩んだ。
ラルフは笑いながらフォローした。
「いやいや、君、確かに軍服にはみえるけど、こんな可笑しな格好をした軍人さんが居るわけないでしょう」
そのラルフの発言に彼の格好を改めて直視した。軍服にも見える服装の色合いに、彼の被った頭の特徴的なヘルム。
「た…たしかに軍の人なら格好がそんな事には成りませんね…疑ってごめんなさい」
「俺もごめんなさい。どう考えても軍人じゃないですね」
どうやら学生たちは彼が軍人ではないことは全員が素直に信じられたようだ。
彼はラルフを見ている。
ラルフは視線を逸らした。
彼としては不本意にも軍人で無いと納得された。
「あの軍人でないなら貴方たちは?」
「ただのジャンク屋だよ」
「同じくジャンク屋に所属してるメカニックです」
「ジャンク屋ですか…」
声色的にあまり良い印象がないようだ。元から知ってたキラ以外の他の学生は似たり寄ったりのあまりいい顔をしてない。ジャンク屋をアウトローな職業かゴミ拾いと蔑んでるのか。それか今のジャンク品は戦争で出た残骸だからか。学生のそんな様子に二人とも不快そうな様子は見せなかった。
「あのジャンク屋の人が何でMSを…」
「あ、ジャンク品を集めるときの作業用ですか?プラントも確か最初は作業用って事にしてたし」
「観賞用だよ」
「は??」
ラルフとキラ以外の全員がなにいってんだこいつみたいな視線を向けた。
「え、観賞用って…まさか…人形、フィギュアみたいなかんじですか?」
「そうだね」
「作業用とかでなくて!?」
「そうだよ」
「ち、小さいサイズのMSを作るんですか」
「いやプラントのMSと同じサイズのだよ」
性能は不明だが今まさに使われてる現役の最新兵器を観賞用?まだ兵器として作ると言われた方が安心できた。嘘をついてると思えない。
MSを観賞用に作るなんて格好から察せる通り相当……趣味の世界の広さに学生たちは戦慄した。
「け、けどMSって……軍事兵器扱いですし貴方が観賞用で戦闘に使うつもりがなくても造るの不味くないですか」
「MSなんて造ってたら国に無理矢理に奪われるって事があったりしません」
学生達はジャンク屋の二人を心配してるのか、それか観賞用のMSという意味不明な存在の誕生を阻止しようとしているのか。
「多分大丈夫だろう。それとジャンク品で個人で造るMSを国が盗ろうとかないよ。今のところは外見が少し違うだけのプラントの機体をリペアしただけのMSだしね」
「………」
機体に関与しているキラが何か言いたげだ。
「何かなキラくん」
「いえ…なんでもないです。話を戻しますが新しいOSですが、アレ大丈夫だったんですか」
「まったく大丈夫だったよ。もう少しキツめの設定でも良いかな」
「まったく…もっとですか…あのドレンさん、本当に大丈夫だったんですか。ガタが来るまで動かしたそうですが、体とか」
「ラルフです。…今はテスト後から一時間も経ってませんが、彼に肉体的なダメージとか有るように見えます?」
キラは複雑そうな顔で聞いた。
「この人ってナチュラルなんですよね……」
「…一応ナチュラルなんですよ」
学生たちは何なのか判らないが、少なくとも服装はナチュラルでは無いと思った。グループでリーダーぽい少年が時計を見て慌てた表情を見せた。
「キラ、時間」
「え、あ、もう時間か」
「スミマセン、予定があるんでこれで失礼しますね」
「此方こそ足止めしてすみません。あぁキラくん、テスト結果はキラくんのPCに送っておきます」
「解りましたドレンさん。此方もパターンを変えたOSのデータを送ったので確認して見てください」
「ええわかりました。ではまた今度…あとラルフです。なんで二人は頑なにドレンとしようとするんです」
特に波乱もなく彼等と別れる。別れた後の学生組み。話題は先程会ったあれしかない。共通して聞きたいことがあったが友人の知り合いという事で皆が言葉に困っていた。
脳裏にずっと先ほど去っていった…軍服にも見える赤い服にヘルムを被った人物が離れない。
「え、えーーと、話した感じ悪い人じゃない感じだったわね…その二人とも」
「一人は…普通ぽい人だったけど、いや普通ぽいから際立ってたと言うのか」
遠回しに何かをキラに伝えようとするが…キラが理解してないのか答えてくれない。
「もう片方はなんというか…随分と特徴的な格好の人だったわよね。キラどうしてあんな格好なのか聞いてない」
もう仕方なくミリアリアが突っ込んだ。
「趣味らしいよ」
キラは端的に答えた。
「趣味なの……」
「うん」
「……趣味……そうなんだ!!」
趣味なら何にも言えない。
MSを観賞用に造ろうとしてる辺りも含めて本当にあれな人なんだなと思った。
「買ったのか自分で作ったのかちょっと聞きたかったな」
「「ぶふっ!!自分でって」」
自分でつくったという発言に何人か吹いた。
彼が裁縫してる光景でも浮かんだのか。
「ふふふふ…もう」
「そ、そういやなんで誰も本人に格好について聞かなかったんだよ」
「トールも聞いてないから同じだろ」
「そういやあの人の名前もきいてなかった!」
「片方はドレンさんだろうけどもう片方は?」
「あの人の名前はシャアさんって言うんだよ」
彼はシャア・アズナブルと名乗っていた。
偽名である。
それから数時間後、教授と会ってから船に帰りシャアと名乗る赤い人はラルフと宇宙に出た輸送船の中。OSを新しくした。
「新しいOSはどんなものか。では二回目のテスト飛行に行かせてもらおう」
「早速試したいんですか…まぁ今回はジャンクヤ品集めもしてください。船を出しますよ」
赤い人の船はヘリオポリスを出て宇宙の岩礁地帯に来ていた。何かの残骸も漂っていた。
『着きました。気をつけてくださいよ』
「ドレン、ハッチを開けてくれ」
『ラルフです。わかりました。また酷くピーキーな仕様なので壊さないでくださいよ。ナチュラル詐欺な貴方には無用な心配かもしれませんが…ハッチ開きます』
「酷い言われようだ。では出る」
ジンを改造した赤い機体と共にシャア(偽名)は宇宙(そら)に出た。
爆発の光り
飛び交う銃弾にミサイル。
宇宙は音の伝わらない無音の世界だが、機械が再現した戦場の音が鳴り響いていた。
そこはヘリオポリス近郊。
中立であり本来この宙域に居る筈のない連合、そしてプラントの建前として自警団、実質軍隊のザフトが戦闘を行っていた。
押しているのはザフト
連合艦にザフト艦。艦の性能はそれほど大きな差はないと思われるが、問題は艦載機。ザフトは人型兵器のMSジン、連合は戦闘機メビウス。
メビウス5機にジン一機が対等と言われる戦力比、メビウスはザフトのMSに対して一方的に撃墜されていた。
メビウスと言う護衛機もほぼ無くなり連合艦は無防備に撃沈され始めている。もう少しでザフトの勝ちが決まる戦況。ザフト側のレーダーに戦域に近付く新たな反応があった。
「此方に所属不明な機体が近付いて来てます」
正体不明の反応が近づいているという報告だが緊張感は薄かった。
「連合か?民間船なら近付くなと伝えろ」
「いえ民間船ではないようです。MSの様な反応なのですが…ザフトのMS反応ではありません…」
「ヘリオポリスで開発してたという噂の連合のMSか?潜入部隊の奪取が成功したのではないか」
「奪取した機体だとすれば味方識別反応を出すと思うのですが」
「…反応は何機なんだ」
「一機だけです」
「…連合兵が乗ってるとして、単機で突攻でもしに来たのか?本当に反応は一機だけなのか……」
「はい、あの、それと速度が可笑しいんです」
「可笑しい?どう可笑しいんだ」
「ジンのおよそ三倍ほどの移動速度が出ています」
「三倍!?それを真っ先に言え!…本当にそれはMSなのか。モニターにうつせないか?」
「少しお待ち下さい。モニターに出します」
「移動光…あれだな」
「赤い物が移動してる様に見えます」
「たしかに赤いな」
「真っ赤なMS……赤い彗星にも見える」
「あの、艦に真っ直ぐに向かっているのですが…」
「っと!何をボサッとしている!ジンを出せ。あの機体を止めろ!」
後世で赤い彗星と呼ばれる逸話は此処が始まりだった。