衝動的なの   作:ソウクイ

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第81話

 

ヘリオポリスにて秘密裏に開発された連合の戦艦アークエンジェル。試作MSを乗せるための母艦であり同時にこの艦自体も様々な新式の機能を搭載したMS並みに重要な連合の次世代艦である。

 

そんな艦が表面は無傷だがズタボロにやられていた。外でなく中の運用する人間を。

多数の犠牲は出ているが連合の兵士は居る。しかし指揮をする高級士官が居ない。

 

軍隊と言うのは上の命令で動く。軍人とは命令を忠実にこなさなければいけない。命令をされれば動く。言い換えると命令がなければ動けない。

 

指揮系統の麻痺は致命的。ザフトは指揮系統とMSだけで今回は新型艦自体は狙わなかった。もし狙われていれば奪取されたか破壊されたか。何時までも狙われないとは限らない。

 

「物資の積み込み急げ!………どうすれぱいいのだ全く」

 

声を上げているのは女性士官。

士官と言っても最下級の少尉。

 

士官学校卒で少尉に任官したばかりだろうか、まだまだ上位の上官の指示で動く新米。階級が一番上となってしまい済し崩しで指揮をしてるのだろうか。

 

強気の声で指示を出してるが、士官としての役目を演じてそうだ。隠しきれない不安が垣間見える。恐らく指揮をしてるのも仕方なくであり。もし自分より階級が高い人間が来れば指揮権を喜んで渡す。例えその相手がダメそうな相手でも

 

「…マリュー・ラミアス大尉……?」

 

見知った上位の士官と出会った。

 

技術士官でこう言う時にはあまりにも…それでも上位の士官、頼りたいと思ったのだが……一度は目の錯覚だと思う。疲れが出てるのかと思う。

 

改めてみた。

 

マリューの頭に見えている『猫耳』は変わらなかった。

 

「……」

 

無能でも許容できると思ったが流石に……ちょっとこれは無理だなとナタルは思う。

 

「お願い。変質者を見るよう視線は止めて…」

 

こんな時に良い年をして猫耳の装着、変質者でなければなんだろうとナタルは真剣に思った。何か理由があるんだろうか?物凄く聞きにくかったが率直に聞くことにした。

 

「なんで頭に猫耳を?」

 

「それは…その…亀◯縛りよりはマシだから……」

 

それを聞いて…ナタルは可哀想なモノを見る目を向けた。ああ襲撃で精神が病んでしまったのだろうと…。

 

「…ラミアス大尉、どうか医務室に……」

 

ナタルは悲惨なモノを見たと言いたげに目頭を押さえてマリューに言った。階級が上だから指揮を頼む?流石に病んだ相手に頼る気にはなれなかった。

 

「え!?……あ、あの、違うのよ!違うの!」

 

マリューはどう説明したらいいか猫耳を付けたまま、同じく目頭を押さえて深く悩んだ。どう言えば良いのか。

 

「お言葉に甘えて行かせて医務室に貰ってはどうだ」

 

「いや貴方はなんですか」

 

知り合いの猫耳だけで精神的な許容範囲は一杯で、ナタルがあえて認識から外していた存在が声を出したので反応せざるえなかった。

 

変質者(猫耳装着マリュー)の隣に(赤い服のヘルムの)変質者が居る。真面目なナタルにはとても理解が出来ない組み合わせだ。真面目でなくても理解が出来ないか。

 

「ただの通りすがりの学生だ」

 

「サラリーマンでなかったの……」

 

赤い服に謎のヘルム、学生もそうだがサラリーマンも無いだろう。

 

「が、学生?」

 

風格も声も体格も全体的に欠片も学生と思えないが…学生と納得することにした。深く追求する気力がないとも言う。怪しすぎてザフトが化けてるとも思わなかった。

 

「ごほん………それで君はなんだ。…その、ラミアス大尉を届けてくれたのか。そうだとするなら感謝はするが此処には軍の機密があるので直ぐに立ち去ってもらいたい」

 

穏当な対応だった。拘束しないのは、関わりたくないから追い出そうとしてるだけか。

 

「スマナイがもう一つの届ける荷物がある。去るのはそれが届いてからにしてほしい」 

 

「もう一つの届け物?」

 

「私届けられる荷物扱い…」

 

しゃがみこんで落ち込む猫耳ありの成人女性、それを見て目の色が怪しい多数の作業員をナタルは見なかった事にした。

 

「もうすぐ来る筈だが……ああ来てるな」

 

「あれは…!!」

 

ナタルは目を見開いた。周りで作業しながらチラチラ見ていた兵士も猫耳女性を脳内に記録しようとしていた作業員も同じ様な反応だ。

 

MSが歩行してきている。

 

「あれはストライク」

 

「ザフトに奪取か破壊されてない機体があったのか!」

 

「誰か取りに行ってたのか!?」

 

「お、おい前のあの車…」

 

「乗ってるの子供じゃないか!?」

 

MSの少し前方に誘導する様に車が走っていた。

 

「箱がある!キラ左の足に気を付けろ!」

 

MSの前に後部が荷台の車を運転する小太りの男性に荷台に乗った少年や少女がいた。民間人の子供に見える。子供がMSの誘導を何で??ナタルは猫耳を見たときの様に目を疑う事になった。猫耳と同レベルの驚きなのか。

 

「か、彼らは…」

 

「ラミアス大尉に頼まれてMSの誘導を善意でしてくれている同級生だ。運転してる男性は私の親戚のドレン、因みに機体を動かしているのもラミアス大尉に頼まれた善意の協力者の同級生だ」

 

自称学生はマリューに責任の諸々を押し付けていた。あと同級生ととんでもないことを言っていた。

 

「ら、ラミアス大尉…」

 

ザフトの手にわたる前にMSは回収しないといけない。しかし誘導を学生にさせるなど問題行動過ぎる。それさえ霞むほど問題なのが、機密の塊のMSを連合兵以外に操作させてる!?話の流れからして学生に!?下手しなくても軍法会議待ったなし。錯乱して頼んだとしか思えない。…猫耳を付けてる時点で錯乱してる!!

 

いや待てとナタルは前提から可笑しい事に気付いた。学生がMSを動かしている。学生が…

 

「ただの学生がMSを動かせるわけがないだろう!」

 

「あぁ今操縦してる彼は機械が専門の学生でね。それで一応は動かせるみたいだ」

 

「……」

 

機械が専門の学生だからなんだ。

そんな理由で動かせかと突っ込もうか葛藤するナタル。

 

ナタルは開発した側でないが、それでもMSを動かすことが相当に困難なのはわかる。普通に考えれば学生が操縦など不可能だろう。MSより難易度が低い戦車や戦闘機だとしても、機械知識があるからといって学生が動かせるかどうか。

 

そもそも動作プログラムを造るのに難航してると聞いていた。プロの軍人ですら動かすのは困難だと。しかし、見る限りMSはマトモに動いている。まさかいつの間にか素人でも動かせるレベルのプログラムが出来立てたのだろうか??ナタルはMS開発陣の一員のマリューを見た。

 

「素人でも動かせるプログラムが出来ていたんですか」

 

マリューが口ごもり答えない。まさか民間人に一瞬で動かせるようにプログラムを改編されたなんて言えるわけがない。

 

返答できない間に機体が到着していた。

 

「マリューさん!MSは此処で良いですか!」

 

MSのハッチが開きマリューの名前を出していた。コックピットに見えるのは年若い少年だ。マリューが乗せた少年なのか。マリューは周りの視線に縮こまる。

 

「き、キラくんはそのまま待機、少し待ってて…バジルール少尉、艦長はどちらに」

 

ナタルは暗い顔をしマリューは察した。この場でナタルしか士官を見てない。本来なら指示をする上位の士官が他に居る筈。この場に居ないとなると……

 

「残念ながら艦長は先程の騒ぎの時に…」

 

「そ、そう……なの。なら、今は指揮は副長が?」

 

「いえ、残念ながら…現状、艦長以下、私より上の階級の方達の生存は確認できていません。ザフトは破壊工作をして指揮をする高級士官を狙ったのだと思われます…」

 

「……」

 

残された士官が技術士官の自分に新米の少尉だけ…あまりの被害を知りマリューは絶句した。

 

自称学生はガンダム的にやっぱりなと思う。戦場などで指揮官が戦死した場合、一番上の階級のモノが次の責任者となる。マリューは技術士官だがナタルより階級が上。ナタルは猫耳を見て…やっぱり指揮を頼めない。

 

「た、たしか…移送の護衛部隊がヘリオポリス付近にきてるんじゃ。その部隊と連絡は」

 

「いえ、通信は試みましたが、応答はありません。通信を妨害されているのか…それか」

 

通信が不能としてももし無事なら護衛として確認にぐらいは来る筈だ。其処から考えれば…来る余裕が無いか。それか、護衛艦隊が既に存在してないか。

 

これからどうすれば良いのか。

 

今指揮をしてるのは新米でその上は技術士官、此処には艦やMSの開発に来ていたので軍人と言っても後方専門の軍人ばかり。実戦的なアドバイスは誰も出来ない。巻き込まれた側のラルフや学生が同情の目を向けるほどに重苦しい空気。

 

そこを無視するのが自称学生のシャア

 

「さて、必要なモノは送り届けたのだし皆行こうか」

 

(こ、このタイミングで言う!?)

 

このときの学生組の思いが一つになっていた。しかし発言のタイミングが最悪としてもここにいる理由がないのは間違いない。

 

「では…その、失礼します」

 

「あ、ああ届けてくれて感謝する」

 

ナタルとその他はそれはまぁ微妙な表情だが何も言わない。機密に触れた事を考えれば拘束しないといけないのだが……切っ掛けがマリューから頼まれたと考えると…いや他はまだ良くても流石にMSを操縦した民間人は放置できないか?MSから降りれば拘束しなければと思う。

 

確実に確保するのに、警備の人員は艦の護衛に居てこの場には非武装な人間ばかり。MSを艦内に入れてそれから…

 

「あぁキラくんは此処で降りようか、流石に此処から民間人が戦艦の艦内にMSを入れるのは不味そうだからね」

 

「は、はい」

 

まるで其方の考えは判ってるぞと言うタイミングの台詞。シャア達は去ろうとする。

 

「ま、まて」

 

ナタルが呼び止めると振り返りこう言った。

 

「何の用なのか判らないが、ザフトが何時来るか判らない。迎撃なり逃げるなりの準備を早くした方が良いんじゃないかな。…小事にかまけて大事を見逃すなんて嫌だろう」

 

暗に…MSを動かした相手の確保よりMSや艦を護ることを優先すべきだろうと言っている。唇を噛みながらナタルは彼等を拘束する指示を出す事は止めた

 

「行っていいかな?」

 

「ああ…呼び止めてスマナイ」

 

「では行こうか。私達はしがないただの学生だからね。ここにいれば邪魔になる」

 

白々しく感じる台詞を吐くシャア。 

 

「何時から貴方も学生の一員になったんですか」

 

ミリアリアのドン引きした声を無視して、シャアは学生とラルフを連れて立ち去ろうとした。

 

シャアは立ち止まった。

 

「私は大人しく去るつもりなんだが…?」

 

「え、どうしたんですか」

 

シャアが突然脈絡のない言葉を言った様に思える。建物の角を見ていた。何もない……と、其処から男が出てきた。

 

「いやー気づかれた?」

 

銃を構えたパイロットスーツを着た男だった。銃口はシャアに向けている。

 

「そ、そのパイロットスーツは連合のひとですよね。なんで銃をむけてるんですか」

 

「お、俺達頼まれて届けただけですよ」 

 

学生たちは弱った女性でなく見るからに軍人に見える相手に銃を向けられ先程よりも怯えていた。

 

「んー…いやいや、君達は関係ない。俺の任務は護衛なんだ。だから護衛対象の近くに怪しい奴が居たら警戒しなきゃいけないだろ?」

 

一斉に赤い服に仮面の誰かが見られた。

 

「なるほど、確かに良い歳をした猫耳の女性は怪しいな」

 

マリューはえ!?私!?と驚いていた。

 

「え、そっちの場合は怪しいと言うより痛い…」

 

「……」

 

猫耳の女性の熱い視線に二人の男が自業自得で冷や汗を掻いた。 

 

「ま、まぁ怪しいと言うなら早急に離れよう」

 

「いやーーー少し待ってくれよ………礼だけは言わせてくれ」

 

男は銃を向けながら笑顔で言った。

 

「銃を向けておいてお礼ね。礼を言われる筋合いはないと思うが」

 

「はは、そうかな?少し前にな…宇宙で蹴りを噛ましたヤツのお陰で助かったんだ。あれで敵が混乱して首の皮一枚で助かった」 

 

「…何のことだ」

 

「ソコは普通宇宙で蹴りって何の事か聞かないか?まったく意味がわからないだろ?…当事者でもないとな」

 

二人の間にピリピリとした空気を感じてその場の全員が息をのんだ。

 

「ふむ、意味がわからなすぎて聞く気に成らなかっただけだよ」

 

「ふーん、そう答えるか。あ、自己紹介してなかったな。俺の名前はムウ・ラ・フラガだ。そっちは?」

 

軍人たちはその名前に反応していた。

仮面の男も反応していた。

 

「その名前はエンディミオンの鷹…!」

 

「お、綺麗な女性に異名を知ってて貰えたなんて嬉しいね」

 

「エンディミオンの鷹?」

 

「俺の異名だよ。ちょっとばかり活躍してね」

 

「エンディミオンの鷹殿(笑)か」

 

「なんか不愉快なんだが…てか此方が名乗ったんだ。そっちの名前もさっさと名乗ってくれるか」

 

「自己紹介の必要はないと思うが」 

 

声にはトゲしかない。

 

「頼むよ聞かせてくれないか?知ってる名前かも知れないならな」

 

シャアは答えた。

 

「エドワウ・マスという」

 

堂々とした名乗りに学生組が困った顔をした。ラルフは頭痛を堪えるように頭を抱えた

 

「ふーんエドワウ・マスさんね。知らない名前だな」

 

「それは残念だ。ではもういいか」

 

「最後に……ちょっとそのヘンテコなヘルムをとってもらえないか?」

 

「断る。仮面のヒーローの顔を見ようなんて不粋だな」

 

「…絶対にヒーローなんてタイプじゃないだろ。誤魔化してないで取ってくれるか」

 

「これはベッドの中でしか取る気はない。それでも見たいか?」

 

男に対しての台詞である。ウゲェと言う反応のなかで一部の女性陣が違う反応をした。どういう反応かは…不明だ

 

「…男にそんな台詞吐かれた吐き気がするな。特にアンタみたいなのに言われるとな」

 

「ハハハ私も吐き気がしたからお相子だな。いや君以上に吐き気がしたから私の負けかな?」

 

「「……」」

 

お互いに思った。

何だがコイツ無性に腹が立つと。

 

「あ、あのーお互いにこんな所で時間を掛けるのは不味いですよね」

 

ラルフの常識的な意見にお互いが見合って舌打ちをした。

 

「確かにこんなのに構ってる時間はないな。さっさといっちまえヘルムの変質者」 

 

「君が呼び止めたんだろう。まぁいい。ではな中二的な異名で呼ばれる痛い軍人殿」

 

ムゥが瓦礫を投げつけるがヘルムの男は中指を立てながら瓦礫を避けて行った。ラルフも地味についていった。

 

学生達は去るタイミングを逃していた。

 

「………そう言えば何で猫耳してんの?」

 

其所で私に来る!?とマリューは驚いた。

 

「これは…えーー…なんと言うのか…さっきのヘルムの人に」

 

無理矢理つけられても外さないか?ナタルはどういった経緯で何でずっと付けていたのか疑問を感じた。

 

「は!女性に無理矢理猫耳付けるなんて外見同様に中身も変態野郎だったって事か」

 

詳しく聞かずにムゥはヘルムが悪いと決めつけた。本当に相性が悪かったようだ。

 

マリューは困った。

違うのだが言いづらい。

 

少し前にストライクにランチャーを付けてコロニーをぶっ壊しそうになった責任の罰として、付けられたとか言えない。

 

「あの、降りていいんですよね」

 

どうでもいい事だがMSの中でキラは降りていいのか迷っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

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