衝動的なの   作:ソウクイ

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第83話

 

ジャンク屋は嫌われている。ゴミ漁り等とバカにされるのはマシで、戦争中の今は人の生き死にが関わる兵器の回収等をする火事場泥棒。連合、ザフトからすれば窃盗犯。放置されてる犯罪者と認識されてるのが普通。

 

戦時の兵器は最新式の高級品ばかり。今だとMSにバカスカ落とされる戦闘機一機でも高級車よりも遥かに高い、部品だけでも札束や金塊が落ちてる様なもの。莫大な予算で造った兵器の残骸をタダで取られるのを許せるだろうか。

 

なんでジャンク屋は放置されてるのか。

 

戦争の片手間に潰すには規模が大きいからか。政府に賄賂などが渡されてるのだろうか。

 

全体が潰されないのにしても、一部だけでも見せしめに潰すなど十分にありえる。そう認識しているジャンク屋は拠点には防衛に長けて隠蔽に長けてる所を選ぶ。

 

「それで隠す拠点にユニウスセブンの跡地を選んだと……安全の為に地雷だらけの危険地帯に入ってるように思うのは気のせいか?」

 

ラルフからユニウスセブンにある事について説明を受けたカガリは真顔でそう言う。シャアもカガリの近くで一緒に聞いていた。因みにシャアとカガリの間を遮る様にキサカが居た。理由は特に無いだろう。カガリの発言にシャアは思ったことをそのまま話した。

 

「もしバレたら、プラントなら当事者だけでなくジャンク屋全体の殲滅に乗り出したりしそうだな」

 

プラントならやりそうと思えたのかラルフは顔色を悪くした。

 

「…ま、まぁ戦時中の今はユニウスセブンに態々行くプラントの人間も居ないですし。バレる心配は先ず無いでしょう。」

 

何故かラルフがフラグを立てたような気がした。

 

「それでどうします。ユニウスセブンの業者の所に行きます」

 

ユニウスセブンの業者の元に行くかどうか。ユニウスセブン跡は言うなれば墓場だ。

赤い人としてはガンダム的に亡霊、死後の意思など普通にありそうと思っていた。死者が大量に出る戦場の後でジャンク品集めをしてて今更な話だが、それはそれとしてやっぱり縁起悪そうなのでユニウスセブンには入りたくない。

 

誰も積極的に行きたい訳がない。だが地球方面に行く途上で代わりの売り先を知ってるわけでもない。

 

「よし!ユニウスセブンに行くぞ!」

 

と、渋る男たちを差し置いてキッパリと決めたのが部外者のカガリ。

 

シャアの輸送艦とカガリの民間船はヘリオポリスから、地球、ユニウスセブンの方角に出発した。何故かカガリはシャアの船の方に乗っていた。

 

「何故此方に?」

 

「ムカつくヤツが乗ってるからだ!」

 

不機嫌そうな様子から喧嘩でもしたのかと思う。良くも悪くもカガリは真っ直ぐそうで相性が悪いと反発して喧嘩をすることは想像することは容易。解らないのは、何でそんなムカつく相手を船に乗せてカガリが退避してくるのか不思議に思う。こんなのと言っては何だがカガリはオーブの権力者の娘だ。だから直ぐに船の確保もできた。オーブの領地のヘリオポリス住民なら船から追い出されないか?

 

赤い人とカガリとの間に立ってるキサカを見る。

 

「相手が連合国の事務次官の娘でな……助けた連合兵と捕虜と一緒に船に乗って来た」

 

それは娘の事を除いても船に乗っていたくない面子。

 

シャアはそう言えば連絡していた救助した連合兵士が、事務次官が来るとか言ってたなと思い出す。事務次官が何でとか疑問に思ったから覚えていた。思い出すとパパとか聞こえていた。まさか事務次官が娘を迎えに?それで娘はどうせなら早く会いたいと同乗してきた?

 

 

 

「酷い職権乱用が起きてそうですね。娘の為に艦隊を動かすとは連合意外と余裕あるんでしょうか」

 

「流石にそれはないだろう。大方ヘリオポリスで開発していた船とMSの迎えの艦隊に同乗してるんだろ」

 

カガリは更に不機嫌そうになり吐き捨てた。

連合の船やMSの事を知っていたのかと驚きかけるも、オーブの偉いさんの娘なら知っていても可笑しくないなと納得。

 

「この速度だと……艦隊とはユニウスセブンの先辺りで合流か。ユニウスセブンでジャンク品を売る時間を省いての話だが」

 

端末を見ていたキサカはそういった。

 

「彼方のお嬢様は文句を言いそうだな。この輸送艦の速度と合わせてたらこれが限界だと言っても納得するか?」

 

カガリは良いことを考えたという顔で発言する。

 

「ならアイツの船だけ艦隊の方に先に向かわせたらどうだ?」

 

ラルフとしては良いと思った。ユニウスセブン跡で別れる言い訳を考えずに済む。事務次官の娘や連合兵、ザフトの捕虜にジャンク屋がユニウスセブンに居るとか知られたくない。キサカは首を振る。

 

「それも無理だな。此方を護衛として宛にしてるようだ」

 

キサカは寝た状態の赤い機体を見ながら言った。勝手に護衛扱いに宛にされてた事にラルフは顔をしかめた。

 

「護衛と宛にされても困るんだが。この機体は観賞用で戦闘用でもないぞ」

 

「ジン一機と戦艦を潰したと聞いたが…」

 

運良く、いや運悪く救助したザフトの人間が艦の乗員で話しを聞いたらしい。赤いMSを使って救助してたら誤魔化しも出来ない。

 

「あれは不幸な事故だよ。偶然ぶつかって運悪くジンと船が落ちただけだ」

 

だいたい嘘はなかった。

 

「どんな不幸な偶然だよ」

 

ジットとした目でカガリに見られた。

胡散臭いか嘘だと思われたようだ。

 

ラルフはさっさと先にいって欲しいが相手が権力者の関係者だと思うと弱い。

 

「まぁ……襲撃を受けたばかりで不安なのも仕方ないですよ。形だけでも護衛を引き受けても良いのでは?どうせこちらは民間船と輸送艦。先ず襲われる事は無い筈ですしね」

 

シャアはさっきからラルフの発言に嫌な予感がして仕方なかった。

 

「そう言えばアレは動かせないのか。無傷ぽいが」

 

カガリが指差した先に有るのはジャンク品に埋もれたシャアに蹴られたジン。救助活動中に中身が気絶したまま漂っていたので鹵獲された。中身は捕虜となった。話からして本来はカガリの乗る船に捕虜として乗ってそうだ。

 

「状態は良いので動かすだけなら出来そうですが、ジンとなるとコーディネーターでないとマトモに動かせません。生憎此処にはナチュラルしか居ませんから」

 

カガリは首をかしげた。

 

「あの赤い機体と同じプログラムにしたらナチュラルもいけるんじゃないのか?外見は違うけどジンのリペア機なんだろ」

 

ナチュラルと言ってる赤い人が動かしていたの勿論カガリも知っていた。血液検査でナチュラルだと確定したと助けられた連合の兵士がこそこそ言ってるのも聞いた。

 

「あーいえ、同じプログラムにしたら…………余計操縦困難に成りますね」

 

改良どころか改悪?赤い機体と同じにしたら酷くなるならそうなる。なら赤い機体を操縦してるヤツはなんだとなる。

 

「……ナチュラル何だよな?」

 

「分類としてはナチュラルだな」

 

「分類ってなんだ!?」

 

航行を続けた。

 

カガリは航行中の暇潰しに修理したジンを動かせないか試す事にした。艦内だと無理だと外に出て試した。売り物のジンだ。状態が良いので高く売れる。乗せたくない。しかしラルフは権力の影と若さに押しきられた。

 

ジンは言うなれば高級スポーツカー。

コーディネーターで無いと戦闘にマトモに使えないだけで、動かす事だけならナチュラルでも出来る。徐行運転なら問題ない筈だった。

 

暫くあと

 

「あんたなに考えてるの!?」

 

ちょっと慣れてきて調子にのって徐行運転を止めて事故をお越しかけて当然にも、ぶつけられかけた船に乗ったお嬢様に怒られた。

 

「いや失敗した。失敗した。やっぱりMSは難しいな!!」

 

「笑ってないで反省しろ!!」

 

暇潰しを封じられてカガリは暇になった。

 

「ちょっと話いいか」

 

同じく暇している赤い人の隣に座ろうとしたらキサカが間に挟まった。仮面の赤い人、ムキムキの男、少女、そんな状態で世間話をしているとカガリは少し真剣な顔で訊ねた。

 

「なぁ中立のオーブが連合のヘリオポリスでMSを造ってたのどう思う?」

 

コソコソと中立違反をしていた自国をカガリは良く思ってないようだ。シャアは少し考えてから答えた。

 

「巻き込まれた事には思うことはあるが……オーブが連合に協力するのは此といって特に問題あるとも思えないが」

 

「え」

 

予想外の事を言われたとばかりの顔だ。

キサカも意外そうな顔をしていた。

 

「問題あると思わないのか!?」

 

「中立国がどちらかの陣営の兵器開発をするのは良くあることだろう?」

 

「…よくある事だったか?」

 

あくまでも彼の知る中立国のイメージで実際には不明だ。

 

「そ、それじゃあオーブの中立についてはどう思う」

 

「中立自体は別に良いと思うが…」

 

中立国が中立国と認められるなら相手からも中立と認められる必要がある。認められてないと中立でなく孤立してるだけになる。

 

オーブの立場。

 

地球が一丸となってプラントと戦おうという事で連合が出来たのに、オーブ等は中立を宣言した。オマケにニュートロンジャマーで各国が甚大に被害を受けるなかで、地熱エネルギー利用をしていたオーブの被害は軽微で。更にコーディネーター等も多数国民として要している。……

 

交戦国同士だと交渉も拗れると交渉するために中立国を通す場合もあるが、オーブは別にプラントとの関わりが深いとも。食料輸出など他の国の方がプラントと関わりがあるだろう。交渉の緩衝の為の中立国にもならない。

 

戦線や戦場を選ぶ為の中立もあるが、宇宙から来るザフトと島国のオーブではほぼ影響もない。

 

プラントは分裂してる方が都合がいいとして、連合がオーブの中立を認める理由はどこか…。

 

無価値で放置されて中立もあり得るが…マスドライバー、地熱エネルギー、資源コロニーや宇宙の軍事施設、高い技術と満遍なく価値はある。中立と認められる理由が無い。好かれる要素もない。奪うものはある。オーブはとても危うい。

 

と、シャアは中立で大丈夫なのか心配な点をあげた。

 

「……少しは遠慮しろよ」

 

自国への遠慮のない辛口な評価を聞いてカガリはひきつった顔をするしかない。

 

「其から考えたら兵器開発の協力ぐらいは仕方ないんじゃないかと思える」

 

「オーブの立場だと連合の兵器開発は仕方ないと?」

 

「そうだと思うよ」

 

オーブの中立違反の行動を、回りくどく擁護してくれた様に思えた。他国の人間に自国の擁護をされたと思うと、カガリは何にしてもオーブを悪く思ってない事には感謝した。しかし許容はできなかった

 

「それでも中立はオーブの理念だ…理念を汚す行動はダメだ」

 

赤い人は何かを言いかけて口を閉ざした。しかし言わなかった言葉は別の所からでた。

 

「理念って…ただの中立に成るときの方便ですよね?」

 

艦の操縦席に居るラルフが笑いながら言った。

ラルフはメカニックとしての腕は一流、人格も常識的、しかしたまに失言をポロッとするのが欠点。

 

「……」

 

カガリは無言で拳を握ってラルフの元に向かったので、キサカは羽交い締めする事になった。

 

ユニウスセブン跡。

 

ユニウスセブンに着く前に、ジャンク屋の仕事だとカガリの(カガリを乗せてない)船は待つ事になった。

 

お嬢様がごねると思ったが不満な顔をするだけで何も言わなかった。別にシャアたちには護衛なんてする義理もない。善意を利用してるだけの立場だと判っていたようだ。

まぁさっさと先に行きたいとは言ったが其所は連合兵士が止めた。新型艦を迎えに来た艦隊を、ザフトが放置してるのか怪しいからだ。

 

『少し其所の瓦礫を退けてください』

 

残骸を掻き分けて進む輸送艦。小さなモノなら問題ないが大きな残骸は赤いMSで退かしていった。なぜかカガリもジンに乗って事故を起こしそうな動きながら瓦礫を退かしていた。ストレス発散らしい。安全運転なら問題ないと許可された。艦内からモニターで見てるキサカはストレスで胃がギリギリしていた。

 

『ま、まだなのか』

 

ジンの操作は大変なのか汗を掻いていた。

 

『もう少し奥辺りに拠点が有るそうで……どうしましたキサカさん』

 

『レーダーに熱反応が、反応が動いてる』

 

『ジャンク屋の人ですかね。其方から何か見えませんか』

 

「………ジンが見えるな」

 

『は?ジン?』

 

カガリとは別のジンがユニウスセブン跡を移動していた。シャアの機体に引っ張られ二機は残骸の影に隠れた。

 

『……ドレン、ここの業者はジンを使っているのか?』

 

『いえないです。ナチュラルだけしか居ない業者の筈でした。普通はナチュラルでジンは動かしません。あとドレンじゃないです』

 

暗にカガリは普通じゃないと言われていたが、それどころでないので本人は気付かなかった。

 

『な、ならザフトか!?なんでここに!?』

 

『あのジン…何かを探してるように見えるな』

 

『業者が居るのがバレたんでしょうか……どうします』

 

『出来ればやり過ごしたいが、ん?』

 

『な!?』

 

ジンが爆発した。

 

カガリの角度からは解らなかったが赤い人には光が貫いたのが見えた。

 

『爆発物でもあったのか!?』

 

カガリは残骸の中の何かが原因なのかと周囲の残骸を警戒し、隠れていた残骸から離れてしまう。

 

『ッチ!』

 

『な!うわぁ!?』

 

『何をして…!!』

 

赤い機体がカガリのジンを蹴る。キサカが怒鳴るが閃光がカガリのジンの居た場所を通った事で言葉が止まる。蹴られて飛ばされてなければ……

 

閃光が発射された方向、其処には…ライフルの銃口を此方に向けて構えたガンダムがいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

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