「あーだるい……」
横島は雄英に登校していた。
「初日であれだけ走らせるってあの鬼きょうしめ!…いやまてよ!師匠の修行よりマシやけど、オッサンに受けさせられるってマイナス考えたら師匠のより辛い特訓か!…あーー行きたくないなぁ…けどヒーローコスチュームの要望とかあったし、コスチュームとか着たりする授業いつあるかもしれへんし休むわけにもいかんよな……どんなコスチュームやろ。ぐふふ」
口では愚痴愚痴言ってるが…昨日気絶するぐらい走った後なのにピンピンしてないか。
女子のコスチュームを想像してスケベな笑みを浮かべている不審者。ヒーローに呼び止められた雄英の生徒が…
「おはよ横島、ギリギリだぞ」
教室に入ると扉の一番近くにいた男子生徒が横島に挨拶した。
「おう、おはようさん。何もしてへんのにヒーローにイチャモンつけられてな…誰?」
「いや切島だよ!切島!昨日自己紹介したろ!てか!二回もペア組んでたのに覚えてないのかよ!」
「ペア………あーーー!うん覚えてる!覚えてる!!昨日の屈伸とかで一緒にイイモンを見た仲だよな!!良かったよな!!」
笑顔でグッとサインを見せる横島。
切島とペアでやった屈指や長座体前屈、テストの時の横島視点は女子の方に固定されていた。良いものとは……?
「「「「………」」」」ジーーー
昨日の横島の通報待ったなしな視線には女子達も気付いている。クラスには当然だが女子はいる。横島の会話を聞いて意味を理解した女子の目があれだ。…ツーアウトツーストライクだ。もう入学二日目で崖っぷち
「な、なぁ、横島…視線…気付いてるか?」
「なんか見られてるな。何でだ?」
「…気付いてるのかよ」
(近くにいるだけのオレでもキツいんだけど、良く平然としてられるな。これは漢らしいのか?)
切島は周りの視線を気にせず明け透けに本音を話すのは漢らしいのかと…漢らしい人間を目指した高校デビュー男子なので迷走した余計な思考を入れて、一緒に見たという横島の発言を否定してない。
しなかった事でオープンスケベ男と同類と見られかけている。硬派なヒーローを目指してる切島には致命的な風評被害。まぁスケベでないなら一時的な誤解で済むだろう。普通の男子なら一時でもエロいなんて噂は致命的だが
「横島ようやくきたのか」
男がワラワラと集まってきた。
「むさ苦しい!!」
昨日のテストの後、クラスメイトは多少はお互いに交流していた。そんな中で横島は一人だけ居残って他のクラスメイトと違って話が出来なかった。人によっては下手すると学生生活ボッチルート。
ただ昨日の集まりのなかでの話題の中心は横島、実技入試トップ、成績最下位、スケベ、アホという情報しかない。性格については十分にわかったが、昨日のテストでは個性が何なのか不明、クラスの誰もが気にしていたので近付いてきた
クラスの誰もがなら何で男子だけか。さっきの発言の後に横島に女子が近付くとでも?
いや横島を嫌悪して無い女子もいるが男子ばかりの所に近付こうとも思わないだろう。
「おはよう横島くん、昨日は君に自己紹介してなかったよね。名乗るのが遅れてスマナイ、ぼ、俺は聡明中学出身の飯田天哉だ」
(む、真面目系か!)
真面目な委員長ぽい男子だ。
横島は自分の天敵になりうる可能性があると思う。此で女にモテてる素振りでも有れば確定で横島は敵になる。ヒーロー候補としてのライバル意識は?
「障子だ」
(あ…)
大柄な少年。横島は昨日のテストで腕などを複数出してる所を見ている。エロい事に使えると思っていた事は懸命にも口には出さなかった。
「昨日運んだ俺は覚えてるよな?瀬呂半田だ」
その男子の特徴は…特徴は……地味なこと?
(まぁオレも地味系だし人の事をいえないんだよな。次は……ひぇ)
「オレは砂藤力道…お前の昨日の発言のせいでそう言う趣味なのって女子に聞かれてるんだけど?否定しても疑われてんだけど、どうしてくれるんだ?ドウシテクレンダ??」
暗い目で横島を見るマッチョ。
どうやら昨日の発言が尾をひいてるようだ。
横島は目をそらした。
そして男子は砂藤から少し離れている。
誤解は更に酷くなってるようだ
「は、はは俺は尾白、よろしく頼むよ横島」
(おーー…普通だ)
普通…太い尻尾を生やした少年。横島は尻尾を生やすなら女子だろと思う。いや男なら前に一本尻尾がある、後ろに2本目の尻尾があると思えば…なんだろう。
「オイラは峰田実……」
頭がブドウみたいな少年。
ジーーっと横島を観察する様に見ている。
(何だコイツ)
「俺は上鳴だ。よろしくな!横島は昨日は大変だったな」
(見掛けはチャラチャラしたナンパな男や!)
近付いてきた男子は其々自己紹介をして挨拶をした。来てない男子も女子も横島の方を意識している。そんな中で横島は言った。
「俺は横島忠夫!此方こそ是非ともよろしく頼む!あの極悪非道な鬼畜担任とはクラス皆で一致団結して戦わなきゃいけないからな!」
そんな事をいう横島に反応に困った。
「横島くん!担任の先生を極悪非道なんて言うのは止めないか!」
「スゴいこと言うな…」
「先生に何か恨みでも…あったか。昨日、一人だけ残されてたか。あの後どれぐらい走らされたんだ」
上鳴が恐る恐るきく。担任が何れだけ厳しいのかの確認。担任なので自分達に振り掛ける事も十分にありえる事。全員が耳を澄ました。
「何れだけ………時間とかは覚えてへんけど、辺りは真っ暗になってたな!知ってるか!誰も居ない所で一人で走るのとか無茶苦茶寂しいんやぞ!!寂しいんやぞ…!
「うわぁ」
「あの時間から暗くなるまで……二時間以上は走らされてたのかよ」
やっぱり厳しい教師なんだとウゲェという顔をした。
「……」
一部の生徒は相澤の厳しさよりもテストの後に夜中まで走らされていた。テストの後だ。
……横島に体力がそれだけ残っていたと言うことじゃないか?テストで手抜きしてたんじゃないか?という視線を向けていた。
「けど恨むのはダメだろ。横島の自業自得な部分も大きいし」
「なんでや!オレなんも悪いこととかしてへんやろ!……なに言ってんだコイツみたいな視線向けられてる!?」
「そりゃ向けるだろ」
「先生に暴言はいてたよな。無精髭とか」
「えぇあれぐらいでもアカンの」
「横島、あの先生に良くあんな事を言えたよな。オレ、先生がキレてマジで除籍すると思ったぞ」
「他にも横島はテストで手抜きしてた様に見えたしな。…横島、テストの時に個性使ってたのか?」
「使ってた…ぞ?」
「何で疑問系なんだよ!横島の個性ってなんだ」
「おうおう!そうだ!横島の個性なんだよ!昨日からずっと気になってんだよ!」
「なんでオレの個性の話しになってんだ?」
「まぁ話は違うけど、個性を教えてくれよ」
「横島の個性だけ誰もわからなかったし」
「オレの個性とか気になる?」
「「「「気になる!」」」」
集まってないクラスメイトまでも声を出して横島はビビる。
「そ、そんな興味津々にされても大した個性じゃないぞ。オレの個性は」
「「個性は?」」
「いや、そんな注目されたら言いにくいんやけど、霊能って言ったらわかるか?」
「レイノウ?」
殆どが首をかしげた。
「冷凍?」
「言い間違いでないぞ」
「よくわからんけど、レイノウって具体的にどんな個性なんだ」
「具体的に…?」
「ほら!何が出来るとかだよ」
「何が出来るかと、言われたら…あーー身体能力は強化されてるのかな?」
「やっぱ身体能力の強化はされてるのか」
「何で自信なさげな言い方」
「他にも何かあったりしない?」
「ほかは…ドアの前にデカイ影が?」
ドアに視線が向く。だれかが入ってきて横島の個性についての話は中断されることになった。
「ワタシが普通にドアからキタァ!!」
現れたのは現役ナンバーワンヒーロー。
異質な画風の濃い顔!
「「「「おおお!!」」」」
自分達が生まれる前から活躍してるナンバーワンヒーローの入室にクラス全体が沸いた。
「生オールマイトだ! すげぇ!本当に先生やるのか!!」
「あれシルバーエイジのコスチュームだよ!」
大人気アイドルが来たみたいな大騒ぎ。
横島は周りの反応のデカさに引いていた。
(えぇあのオッサン大人気やなぁ。…オールマイトってナンバーワンのヒーローやっけ?男ヒーローのあのパッツンパッツンなタイツな格好何時見ても……無いな!)
ヒーローに有りがちなピッチリタイツで筋肉がムキムキな姿。女性ヒーローしかピッチリなのはアカンやろと思う。もし口に出していたら男女共に激怒させる事間違い無しな事を考えていた。
「早速だけど今日はこれ!」
示されたプレートにはBATTLEと書かれていた。
「戦闘訓練だ!」
「はぁ!?二日目に戦闘訓練!?」
「それに伴って…入学前に君達は個性届けと要望を出してたよね!それに沿ってあつらえた…戦闘コスチューム!」
壁が回転して出てきたカバン。戦闘コスチュームがはいってるんだろう。収納スペースをなんであんな所に作ったんだろうか。
「着替えたら順次グランウンドβに集まるように!」
(着替え…!)
着替えという言葉に反応してしまう横島。
反応したことを女子に気づかれる。
横島はまた男子に連行された。
男子更衣室。
「くそぉ!何で男子に取り囲まれて着替えんといかんのじゃ!男の熱とか感じたくない!スメル嗅ぎたくない!」
「煩いぞ横島…また女子から頼まれたんだよ」
「なんでや!?」
「それだけ信用がないって事だな」
「まだ何もしてないのに!!」
まだとか言っている。
「横島よーーー」
絡む様な声だった。
下から聞こえた。
中学生、小学生サイズの男子。
「な、なんだ…峰田だったか?」
峰田はどす黒い空気を発して横島を見ていた。
まさか横島のスケベさに怒っているのか?
「横島、お前、スケベな事が大好きだよな」
「大好きだ!けど、それ別におれだけじゃないよな。スケベな事が大好きでない男子高校生がいるわけないだろ」
真面目な顔をして言う。
「そうだな」
峰田は間違いないと頷く。
「横島、お前イケメンが嫌いだろ」
「嫌いってかイケメンは男の怨敵だろ常識的に考えて」
「そうだよな常識だよな」
何かへんだ。この発言を二人とも真顔で言っている。他の男子は途中から少し離れて着替える。二人の発言を注視はした。警察が不審者の行動を確認するような感じか。
「横島………おっぱいは好きか」
「おっぱい…オッパイは大好きだ!!!」
魂からの叫びだった。
隣の女子更衣室にも聞こえた。
「横島なに叫んでんだ!」
「隣は女子更衣室だぞ」
「ゴホン、峰田お前はどうなんだよ」
「大好きに決まってるだろ!いや崇拝してると言ってもいいな。オッパイイズゴッド」
「おっぱい様が神さまなの否定はしない。けど尻神様とフトモモ神様も忘れたらアカン…3柱の神様が女体にはあるんやで?」
「ふ、忘れるわけないだろ?オレの脳内はその女神さま達の事だけで一杯だ!」
「峰田、お前とは仲良くなれそうだ。よくエロ本が落ちてる河原を教えてやろう」
横島と峰田は認めあうように感動の握手を…しない! 峰田はパンと横島から差し出された握手する手を弾いた!!拒否した!
「な、なんでだ!峰田!」
「横島…お前とは仲良くなれねーよ!だってお前…お前は!!…オイラとエロキャラ被りしてるんだよ!!」
「は、別に被ってても何も問題ないやろ!?」
「大・問・題なんだよ!!」
キャラ被りいったい何が問題なのか。
出番が減るからか。
「あ、それは、それとしてエロ本が落ちてる河原について詳しく。代わりにオイラの知ってるベストエロスポット教えるぜ」
「騙した系のスポットじゃないやろな」
「安心しろよ…若い女子大生の生着替えが覗けるスポットだ」
「おお!」
「普通に犯罪!!」
何かこそこそと会話をする二人
「おいソコのワイセツ物コンビ、着替えないと遅れるぞ」
「うお!皆殆ど着替え終わってる!?何時のまに!?」
「何時のまにって…」
「お前らがいかがわしい話してる間にだよ」
「早く着替えろ」
「おう!」
「「「………」」」
「な、なぁ」
「………着替え終わってるのになんでまだ居るんだ」
「お前らが着替え終わるの待ってんだよ」
「……待たせるのも悪いし先に行っててくれても良いんだぞ?」
「そうそう、オイラたちの事は遠慮なく置いていってくれていいぜ!」
「…お前ら置いて言ったら隣の女子更衣室に行きそうで不安なんだよ」
「そ、そそそそ、そんなことするわけないしな!そうだよな!峰田!」
「お、おう!オイラ達がそんなハレンチな事をするわけないだろ!」
何でなのか横島、峰田は身の潔白を信じて貰えない。峰田より先に横島は着替え終わった。
他と違って着方に迷うようなモノでなくすぐに着替え終わった。
「……横島……何で私服に着替えてんだ??」
「私服とちゃうぞ。俺のヒーローコスチュームだぞ」
そう言う横島の目は遠い所を見ていた。
「いや…どうみても普通のシャツにGジャンとGパンじゃねーか!?」
「うるせーー!これがオレのコスチュームなんだよ!こんなんがコスチュームなんだよ!チクショウ!」
「なんで横島がキレてんの」
「本当にコスチュームなのか?」
「ちゃんとヒーロー関係の会社が造ってくれみたいだぞ…ほれ仕様書」
「うわ仕様書にその服が書かれてるな。本当にヒーローコスチュームなのか」
「うーん、それヒーローのコスチュームに見えねぇよ…」
「峰田のでもヒーロースーツに辛うじて見えるのに」
「おい、辛うじてってなんだ。ヒーローらしいだろ」
「まぁ、横島のに比べたら…」
「物凄い大昔のオタクがそんな格好かそれ。爺さんより前の世代の映画で見たことある」
「いや!!最初は要望で!こう!特撮ヒーローみたいに格好いい感じのにしようとしたんだよ!!けど師匠がさ。師匠全員がさ…ヒーローらしい格好はオレに…似合わないって……口を揃えて皆…コレが似合うって……ははは」
「「「「……」」」」
横島にヒーローらしい格好が似合わない。ヒーロー科なのに……哀れではあったが、全員が否定できないと思ってしまった事を口に出さなかったのはせめてもの優しさか。
何とも言えない空気、師匠が複数居るみたいな発言が気になったが聞けない
「はぁ…さっさとグラウンドに行こう」
切島が有ることに気付いて呼び止めた。
「あ…横島そのバンダナは外しとけよ」
「なんで?」
「なんでって、それコスチュームの仕様書に書いてないし普通のバンダナだろ。付けてたら戦闘訓練で破れるかもしれないぞ」
その言葉に横島は不敵に笑った。
「なんだその笑い」
「ふふふ、これは普通のバンダナじゃないぞ!俺の師匠が用意してくれた特別なヤツだからな!!……でへへ」
笑い顔がダラしない。
「よ、横島くん、その顔はなんなんだい」
「…特別なバンダナ用意できるって横島の師匠ってヒーロー関係者なのか?いやもしかして関係者どころかヒーロー?」
「用意した人間も気になるけどさ。なんでワザワザそのバンダナのデザインで造ったんだ?言っちゃ悪いけどダサいぞ。そのバンダナ」
『……ダサいとは失礼だな』
「ゴメンゴメン、ん?さっきの声だれだ。横島…?」
「オレなんも言ってないぞ!俺も声は聞こえた!?物凄い近くで……」
横島は怯えたような反応をした。
「横島の方から聞こえたけど横島の声じゃなかったな。横島には峰田が一番近いけど…」
「お、オイラじゃないぞ」
「うん、峰田の声でもなかった」
「じゃあ誰だ?横島も聞いたみたいだし気のせいじゃないよな」
「不気味だな。さっきの声は何処から聞こえたんだ」
『ここだ』
「ここだって…………どこだよ」
「よ、横島、頭の上!!上!!」
「うわ!横島の額!!」
「え!?なんだ!?何があるんだ!?」
横島以外は声がした方を見ている。横島は見れない。横島の額に巻かれた赤いバンダナ……バンダナに…
…目が出ていた。
「「「「きもちわる!」」」」
『失礼だな』
「なに!?俺の頭の上に目があるの!?」