衝動的なの   作:ソウクイ

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第90話

 

自身の初の授業でオールマイトは初っぱなから想定外の困った相談をされた。横島の額の『心眼』は戦闘訓練でセーフなのかどうか。

 

衣装を変えた1ーAの全員が集まるなか、オールマイトの前に私服にしか見えない横島が前につき出された。皆が憧れるオールマイトを前に横島は渋い顔だ。

 

(筋肉が!筋肉の圧力が!!)

 

横島のバンダナに付いた目。

師匠に用意されたバンダナで、横島本人も知らなかったらしく何処から声を出してるのか『心眼』と名乗った。

 

オールマイトは心眼を近くでみる。

必然横島にも近くなる。

 

(チカイ!チカイ!!筋肉の近くはイヤなんや!!ムワッとした熱が来る!!)

 

説明の間、当事者の横島は筋肉の圧力に苦しんだ。どうでもいいか。

 

「もう一度説明頼めるかな心眼くん」

 

『私は主、横島忠夫の師匠である創造者の手によってバンダナに宿された存在であり、主の力のコントロールとアドバイスが私の役目だ』

 

「つまり君は横島少年の師匠の個性で出来た横島少年の補助役という事かな…?」

 

『概ね認識としてそれであっているな。補助輪と言ってもいい』

 

「補助輪…ワイは小学生低学年か幼稚園児扱いなんか!」

 

大の高校生の横島がハンモックを着て補助輪付きのお子様自転車をキコキコしてるイメージが…吹き出した生徒が多数。

 

『それで戦闘訓練への参加は良いのだろうか』

 

「う…う~ん…………やれることがアドバイスと力の制御だけなら…良いのかな?力を増幅とかしないんだよね?」

 

『増幅などはできない。主の本来あるべき力の補助が役割だ。しかしなるべく手を出すつもりもない。主の成長の阻害になるからな』

 

「…成長についても考えているのか… なら、よし!今後の事は保証は出来ないけどこの戦闘訓練への参加は私が認めよう!」

 

『感謝する』

 

オールマイトはアッと何かに気付いた。

 

「どうかしたんですかマッスルティーチャー」

 

「私の事をそんな風に呼ぶのは君が初めてだよ。一つ聞きたいんだけど、横島くんの入試の時にも君はいたりした?」

 

試験で個人で道具などの持ち込みは自由だった様だが他人の個性が関わるのは… 不味いのかも?不正として一発アウトもあり得そうだ。

 

『いや、本来なら入試試験の時から主のアドバイスをする役目があったんだが……主が私を置いて別のバンダナを付けていってな』

 

不満ありげな声だ。

発言を信じてオールマイトはほっとした。

 

「そうか。横島少年は試験で誰かの個性の援護を受けるのを良しとしなかったんだね……違うのかい?」

 

目をそらす横島。

 

個性の援護とか気にする以前に、横島は心眼について知らなかったのでそんな高潔な精神を持ちようがない。因みに知ってたら平然と普通に迷いもなく心眼ありのバンダナを巻いていった。

 

バンダナの目がジトッとした感じになる。

 

『しょ…創造者が主のバンダナに私を宿す時に額に口づけをする必要があってな。それに主が興奮し記念にと私をガラスケースに…』

 

変態だ。もしくは思春期だ。

 

これをクラスメイト全員の前で話している。クラスメイトの横島へのエロ坊主という印象は、もう確固たるものと言っても言いかもしれない

 

「…そ…そうなのかい。…うん、まぁ理由はなんにして…入試に使われてないんならいいんだよ。うん…」

 

師匠の口づけのバンダナをケースに入れて保管。引くような話なのだが……オールマイトは自分に置き換えて考えてしまう。

 

オールマイトは自分の師匠を母みたいな人と思うほどに相当に慕っていた。もし横島と同じ様に試験の時に口づけされた物があったらと考えてみて………想い出の品としてガラスケースにでも入れて残すなんて事は絶対に無いとも言えない。下心ゼロでも同じ事をしてたかもと…ちょっとショックを受けた。

 

「さ、さて時間が少し押してるならサックリ説明するよ!今回の戦闘訓練では二人一組でヴィランとヒーローに別れて模擬戦闘を行ってもらう」

 

「ヒーローとヴィランに別れてですか」

 

「そう!ヒーロー、ヴィラン其々二人一組になってもらう。皆には二組の戦いをモニターで見てもらう。それで、戦いが終わった後に反省会もするよ!」

 

「タッグ戦ですか」

 

「そうとも言うね!」

 

「彼方の町で戦うんですか」

 

「そうだよ。設定としては核弾頭を持って潜伏してる凶悪ヴィラン二人の鎮圧にヒーロー二人が出陣!という感じだ」

 

「アメリカンな設定だぁ」

 

(核弾頭って……ヒーローやってたらそんな事態と遭遇したりすんの?てか、 核があるのに二人で突入……?)

 

「勝ち負けはどう決めるのですか」

 

「ヒーローの勝利条件は、核設定のハリボテがあるからヒーローはこれを確保する!今回は核のハリボテをタッチしただけで確保した扱いになるよ。それか捕獲テープをヴィラン役の二人の体の何処かに巻く!逆にヴィラン側の勝利条件はヒーロー二人を同じようにテープか制限時間が過ぎる事だ!」

 

(聞くだけやとヒーロー側が少し有利な気がする……)

 

「組み合わせはどうするのですか」

 

「組み合わせはクジで適当に振り分けるよ」

 

「適当なのですか!?」

 

「実際の現場では即席で誰とでも組まないといけない事もあるからね」

 

「なるほど!将来を見据えた事なんですね!失礼しました!!」

 

「いいよ。他にナニか質問あるかな?」

 

幾つか質問はとびオールマイトはなるべく平気な顔をして、新人なので内心は四苦八苦しながら答える。質問はもう終わりという空気になる。それに対して横島は疑問を感じていた。

 

(なんであのこと誰も聞かないんや?あれ、もしかして聞き逃した?)

 

『主よ。聞き逃しては無いぞ』

 

心眼は横島の内心がわかるのかそう言った。

横島は少し前に現れた心眼に既に馴れたのか普通に返事をした。

 

(いやいや、だったら何で誰も質問しないんだ?俺だけ気付くとかないやろ!?)

 

「質問はもうないね!じゃあ!クジを…横島少年どうかした?」

 

オールマイトは何か聞きたげな横島に目敏く気付く。横島としてはありがたくない。

 

「え゛…いえね…クラスが21人だし…21人で二人一組なら1人余るんじゃないかなぁって」

 

初歩的な話なので、聞き逃したと可能性が高いと思ってるので声が自信無さげだ。

 

「「「「あ」」」」

 

オールマイトもクラスメイトも今更ながら気付いた模様。遠くを見すぎて近くを見ていなかったと言う感じか。

 

「…いやーー!言うのを忘れてたよ!…うん!…一組だけ三人一組になってもらうよ!!言い忘れてたんだよ?ホントだよ?」

 

本当に忘れてたのぉ?という視線にオールマイトは晒される。正直に言えば忘れていた。新人教師なんだから仕方ない。

決して途中まで20人の予定だったとかそう言う事ではない(メタ発言)

 

「さ!皆クジを引いて!何も書いてないのを引いたら三人目になってもらうよ!」

 

まるで想定通りという言い方してるが、追加で一枚箱に何か入れたのを皆が生温い目で見なかった事にしてあげていた。

 

順番にクジを引いていく。

 

「………」

 

横島は他の生徒のコスチュームを観察している。コスチュームから情報を少しでも得ようとしてるのか。横島は一見したら模擬戦闘について真面目に考えて…な訳がない

 

(ぐふふふふ…女子のコスチューム!水着みたいにピッチリしてなんてスケベなんや!!殆んど全員がボディラインが出てる!特に八百万さんのあの衣装は素晴らしい!犯罪やろ!!八百万さんみたいなお嬢様系で大胆に見せるって!!コスチューム会社の皆さんありがとう!!ホントありがとう!!感動した!)

 

女子のコスチュームを熱心に見ている。そんな煩悩の塊に頭を痛める存在が額にいた。”プラスにはなるのだが"肝心の戦闘訓練に欠片も意識が向いてないのもダメだと

 

『…主としてはこの戦闘訓練で誰と組みたい』

 

心眼は真面目に訓練について考えさせる様に誘導。

 

「誰とって…それは勿論!!可愛い女の子と!って言いたいけどなぁ…戦いはコンビの相方に押し付けたいからなぁ…女の子に押し付けるのは流石にいややし。(盾として)頼れそうなのがいいよな……う~ん…切島とか?」

 

『…選んだ理由はともかく悪くなさそうな相手ではあるな』

 

心眼は横島の切島に対しての認識も知ってるので少し同情した声になっている。

 

だれか忘れてたのに切島の個性を覚えていた。テストの時に個性を使ってる所は見てないが、硬化という個性がテストにまるで使えないと愚痴ってるのを聞いている。盾に使えそうだと思っていた。ヒドイ。

 

そんな事を思われてるとは知らない切島は近くにいた。横島の会話はちゃんと聞こえていた。

 

「頼りになるって思ってくれるのは良いけど戦いを押し付ける気満々なのか!?」

 

横島はギクッ!として近くに居たの忘れてたという顔をした。

 

「誰と組むとしても三人と戦う組には成りたくないな。切島も嫌だよな!」

 

横島は話を逸らすと切島は勢いに流される。

 

「え、あ、おう?それはそうだな。相手の数が1人増えるのはキツいよな」

 

『戦うのが嫌な相手は誰になる』

 

「嫌な相手?…そりゃ…う~ん………八百万さんかなぁ。昨日のテスト見てると……(あのエロいコスチュームを)間近で見たいけどなぁ…」

 

「八百万か。昨日のテストで大砲とか造ってたよな。確かに戦うとなるとあれか…俺なら轟かな。凍らされたらどうにも出来ないし」

 

「凍らされる……氷、テストの時に氷を使ってたのは…あぁ轟ってあのイケメンの事か!テストで上位やったな、ケッ!」

 

轟を見る横島の目付きが悪い。

単なるフツメンのイケメンへの妬みである。

 

「八百万が一位で轟は二位だった。二人とも推薦入学者なんだよな。やっぱ推薦されるだけある」

 

「推薦……つまり…イケメンなだけやなくて…エリートのイケメン!天はイケメンに幾つのモノを与えるんや!!…グギギギ」

 

「よ、横島そんな血走った目をするなよ怖いぞ。と、横島、ほら!!お前がクジを引く番だ!」

 

「あー呼ばれてるな。じゃあ切島お先に行ってくる」

 

オールマイトの前のクジの箱

 

「さぁ横島少年どうぞ」

 

横島はガサゴソとクジを引く。

 

「どうか!弱い安全な相手と当たります様に!神様おねがいします!…あ、神様に祈ったらダメそうな気が」

 

 

 

クジを引いた後の試合表。

片方が三人になる試合。

 

[八百万・轟・峰田VS横島・切島]

 

ヒーロー側が左で右がヴィラン側。

 

「「ウッソだろ!?」」

 

「ふざけんな!?こんなんあれや!不正や!イジメや!」

 

「ど、どうなってんだ!?あの会話の後にこれって…こんな偶然あるのか!?どんだけ俺たち運が悪いんだ!?も、もしかして雄英入学で運を使い果たしたなんてことなのか!?」

 

『ふむ、見事にフラグを撃ち抜いたな。流石は主か』

 

切島、横島コンビの対戦相手が推薦入学者二人。更にオマケに1人。1人が大した事がないと認識できても……ラスボスと裏ボスタッグとの対決か?

 

「横島さんが相手ですか!」

 

八百万は相手にとって不足なし!という気合いのこもった視線で横島を見ている。昨日の事でライバル的な意識があるようだ。轟は特に反応はない。横島や切島に興味がないと言うよりも周りに意識をあまり向けてない?

 

「むぎあぁぁあ!!やっぱ神様に祈ったらダメやったぁぁ!!」

 

「しゃあ!!勝ち確!」

 

味方が最上位二人で峰田は喜んだ。

 

推薦二人が当たるなんて奇跡的な運の悪さ。切島はクラスメイトから同情の視線を向けられていた。横島が相方な事も含めてか?

 

くじにしたオールマイトとしても此処まで片寄った結果が出るとは予想外。このまま進行しても良いのか迷っている。

 

「ふぅ…安心しろよ切島」

 

先程まで叫んでいたのが嘘のように落ち着いた様子で横島は真剣な目で切島を見ていた。

 

さっきまで狼狽えていたのに…今のその目には迷いも恐怖もないようにみえる。その目に…希望を感じてしまう切島。

 

(横島…!!そ、そうだ。…こうみえても横島は一般入試トップ!推薦者相手でも対抗できるのかもしれない。相手が推薦者二人だからって諦めるのはまだ早いよな!)

 

「もう白旗の準備はしてある!」

 

何処から取り出したのか白い布と棒があった。

 

「おおい!?初手降伏でもするのか!?お前もう諦めてるのかよ!!」

 

「そんなん諦めるに決まってるやろ!!勝ち目が一切無いやないか!!無いやないか!!」

 

涙を流して横島は主張した。

 

「い、いやな。横島、ヒーロー目指してるのにがそんな簡単に諦めたらダメだろ」

 

自分も諦めていたとはいえこうも横島がアレだとそうも言いたくもなる。

 

「今回俺たちはヴィラン役だ!ヒーローやない!諦めても問題ない!」

 

「そ、そういう話か?」

 

「考えてみれば…向こうがヒーロー役なのに戦力過多なの可笑しいよな!アカンやろ!反則やろ!普通ヴィラン側が有利で数が多いのが普通やないか!?」

 

「そう…か?」

 

「理不尽を乗り越えるのはヒーローって言うてたやん!ならヒーロー側を不利にするべきやんか!!」

 

難癖だったが確かにそうかと少しは思わせる話でもある。横島はこのタイミングでオールマイトに要求した。

 

「マッスルティーチャー!!此方が不利すぎるんでハンデを下さい!」

 

「え」

 

心眼を入れて3対3なんてのも可愛そうに思う。ハンデも必要かな…と思っていてもまさか本人から言われて驚いた。こんな要求をするヒーロー候補なんて普通は居ない。ヒーローになろうという高いプライドと自負と羞恥心があるからだ。ある意味ですごい。ちょっとした爆弾発言。

 

で、その発言が爆竹になるような爆弾発言が追加される。火に油…味方と思った相手からの後ろからの銃撃か

 

『何を言っている。主の記憶にあの"程度"の相手なら…別にハンデなど主には必要ないのではないか?』

 

全員バッチリ聞こえる大きさの声だった。

 

 

 

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