ゼロの使い魔〜if〜 サイト・ラ・ヴァリエール 作:匿名サンタ
第十話 ファーストキス
抜けるような澄んだ青空。
今日は絶好の使い魔召喚日和だった。生徒たちは次々とサモン・サーヴァントを唱え、成功させていく。
バグベアやカエル。
一際、大きな歓声が上がったのは、タバサの風竜やキュルケのサラマンダーだ。
才人も無事成功させて、梟を召喚した。
そして、 未だ成功させていないのは、ルイズただ一人になった。
才人は不安そうにルイズを見つめる。
(過去の自分が来るのか。それとも別の人間なのか)
ルイズは何度杖を振るっただろうか。
それでも成功しない。
次第にルイズに向かってヤジが飛び始めた。
「ゼロのルイズ! サモン・サーヴァントとすら上手くできないのか?」
「来年からは俺らの後輩だな!」
才人はヤジを飛ばす連中を怒鳴ってやりたかったが、それをしない。
ルイズが使い魔召喚を成功させることをわかっているから。
ルイズはヤジを飛ばす連中をキッと睨むと大きく深呼吸をした。
今まで以上に通る、澄んだ声ではっきりとスペルを唱える。
呪文は「我が名は『ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール』。五つの力を司るペンタゴン。我の運命に従いし、"使い魔"を召喚せよ」
大きな大きな土煙を巻き上げる爆発が起こった。
皆視界を奪われ、煙たそうに下を向いて咳き込む。
また失敗かと誰もが思った。でも、成功だった。
才人には目の前にゲートが開いているのがはっきりと見えているからだ。
ゲートを見て懐かしいな、と才人は笑う。
これで使い魔召喚のゲートを潜るのは三回目で、前の召喚から16年以上が経つことになる。
「……流石に運命ってやつを信じてもいいのかな」
(なぁ、デルフ。また、俺は最高のご主人様の使い魔になるよ)
――才人はゲートに手を触れる。
煙が晴れ、生徒たちの目に映ったのは、ルイズの実兄である才人の姿だった。
「兄様!?」
「よぉ、ご主人様。俺がどうやらルイズの使い魔みたいだぜ」
皆、唖然としていた。だが、すぐにヤジが再開される。
「おい! サイト! てめぇ妹可愛さにズルなんかしてんじゃねぇぞ!」
「ゼロのルイズはいつもそうだ! 困ったらすぐに兄様兄様! 使い魔召喚でもか!」
「だいたい、人間の使い魔なんて聞いたことがないぞ!」
「皆さん静かに。ミスタ・ヴァリエールがミス・ヴァリエールのためにこういったことをしたのかどうかは、コントラクト・サーヴァントをしてみればわかります」
コルベールが生徒たちを諌めるように言った。
「なぜならコントラクト・サーヴァントはゲートをくぐらないと適用されないからね」
コルベールはルイズとサイトの目をじっと見ていた。生徒を疑いたくはないが、信じられない。そんな目だ。
「さぁ、ミス・ヴァリエール。コントラクト・サーヴァントを」
ルイズは不安そうに才人を見上げる。ルイズ自身も才人を疑っているのだ。
「本当にゲートを通ってきたんだぜ。俺を信じろ、ルイズ」
「……うん」
意を決して、ルイズは呪文を唱える。
「我が名は『ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール』。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ。……ねぇ兄様。今までほっぺにしかチューしたことなかったよね。わたし、初めてだよ」
「ああ、二度もお前のファーストキス貰っちまったな」
「……え?」
コントラクト・サーヴァントは無事成功し、才人の左手には見慣れた、しかし懐かしいガンダールヴのルーンが刻まれた。
これからは原作とそれを補完する幼少期のエピソードをたまに投稿していくという形でやっていきます。
誤字多くてごめんなさい。そして報告してくださった三名の方々ありがとうございます。