ゼロの使い魔〜if〜 サイト・ラ・ヴァリエール 作:匿名サンタ
一話 才人とルイズが産まれた日
「遂に産まれたのか! しかも男女の双子とは! 私の愛しい家族が一気に二人も増えるとは! これほど素晴らしい日はない! よく頑張ったな! カリーヌ!」
「……はい。何しろ出産は三回目でも双子は初めてですから。今までの倍……いや、それ以上に疲れましたわ」
「そうだろうな。私は男故に子をうむことができない。だからこそ、大変な思いをして子を産んでくれる君や世の母親には頭が上がらないよ。せめて今日はゆっくり休むといい」
「そうさせて貰います。ですが、休む前にこの子たちの名前を聞きとうございますわ」
「そうだった。舞い上がってしまってすっかり忘れていた」
「あなたったら、いつも子どもの名前を内緒と言って教えて下さらないんだから。愛しい我が子の名前ですもの。早く知りたいわ」
「ふふっ。申し訳ないな。では、発表しよう。ずっと前から決めておったのだ女の子の名前はルイズ!」
「いい名前ですわね。では、ルイズのお兄ちゃんの名前は?」
「それこそずっと前から決めていたよ。うちは女の子ばかりだったからな。男の子の名前はギーシュにしようと思っていたのだ」
「……残念ながら先日グラモン家に生まれた末子と同じですわ」
「何!? ぐぬぬ、グラモン家め! 私のほうが絶対にずっと前から決めていたのに! では、マリコルヌ!」
「そちらも、最近何処かで聞いたような……」
「……では! サイト! この子はサイトだ!」
「サイト……でございますか? それはまた珍しい名前ですね」
「そうだろう。 これなら誰とも被るまい」
「何か由来はあるのですか?」
「いや、なんとなく頭に浮かんだのだ」
「ふふっ。なんですかそれ」
「恐らくこの子にはこの名が必然だったのだろう。きっとこの子たちは、エレオノールやカトレアに負けず劣らずいい子に育つ」
「だと、いいですわね」
「私たちの子だ。間違いないよ」
「ですね」
そう言って、二人は双子をベッドの上から覗き込んで優しい笑みを浮かべた。
ーーーー。
才人が目を覚ますと、目に最初に飛び込んできたのはルイズの父親の顔だった。
(どうなってんだ……俺は確かエルフに負けて……)
さらに声が聞こえてくる。
「遂に産まれたのか! しかも男女の双子とは! 私の愛しい家族が一気に二人も増えるとは! これほど素晴らしい日はない! よく頑張ったな! カリーヌ!」
(……産まれた? 何がだ?)
なんとか状況を確認しようと辺りを見回そうとするが首が思うように動かない。
だが、才人にはどこかこの場所に見覚えがあった。間違いなく以前訪れたルイズの実家。
先ほど目にはいったルイズの父親の顔や(才人の記憶している顔よりもかなり若いが)、先ほど聞こえてきた声のカリーヌといい、間違いなくここはルイズの実家だった。
(……とにかく、落ち着いて今の状況をルイズ父に伝えなければ)
才人はそう考えて声を出すしかし、才人のの口から出た言葉は、
「あー、うー、でー」
などの、言語になっていないものばかり。
「ずっと前から決めておったのだ女の子の名前はルイズ!」
再びルイズ父から聞こえてきたのは、ご主人様の名だった。
(ルイズだって! ルイズがいるのか!?)
なんとか目だけを動かしルイズを探す。しかし、見えたのは周りを囲む木の柵と赤ん坊だった。
ここで才人はあることを考え始めた。常識で考えればありえない。しかし、ここは地球ではなくハルケギニアで今まで自分は地球からハルケギニアに使い魔として召喚されるという、それこそ常識ではありえない体験をしてきたわけで……。ありえないはもはやありえないわけで。
(ルイズが生まれたきたときにタイムスリップしたっことかよ!)
だが、そうだったとしてもそれだけでは現状全てには説明がつかない。
自由が利かない身体。発せない声。つまり……。
「男の子の名前はギーシュにしようと思っていたのだ」
(俺も赤ん坊になってるってことかよ! つーかギーシュって俺の名前!?)
「……残念ながら先日グラモン家に生まれた末子と同じですわ」
「何!? ぐぬぬ、グラモン家め! 私のほうが絶対にずっと前から決めていたのに! では、マリコルヌ!」
(被ってるぞさっきから! 俺の名前は才人だ!)
「……では! サイト! この子はサイトだ!」
(そうだよ! ……よかった、ギーシュとかマリコルヌじゃなくて)
自身の名前が納得のいくものになったことにホッとしたのもつかの間。才人は自身の状況を思い出し、心の中で叫んだ。
(ああーもう! 一体何がどうなってるんだ!?)