新将軍八雲紫の名はナイトレイドにも広まり、早速話し合いが行なわれる。
「……八雲紫。聞いたこともない名だが、おそらく強敵に違いない」
「将軍を名乗れる野郎だからな。俺たちも今後の動きに注意すべきだな」
正邪が前に立ち、アジトにバツの印をつけた。
「……あの女がいる時点でこのアジトはいずれバレる。ナジェンダは新しいアジトを作るのと同時に助っ人を用意するべきだ」
「正邪、八雲紫を知っているのか?」
正邪の狂気のような表情が八雲紫という人物の恐ろしさを物語っていた。
ナジェンダにはそれがかつてエスデスと戦った時の自身と同じだと思った。
「奴も私と同じ能力者だが、境界を操るっていうとんでも能力を持っていやがる」
境界を操る。
それが何を意味するのかを知る者はその強大な力に震えた。
そして、正邪の本当だと主張する表情に嘘ではないことも突きつけられる。
「……そんなの、将軍って器だけで収まるのかよ」
震えながらも言葉を発したのはラバックだった。
「それこそ、村雨で斬るしか勝てる方法なんてないぞ」
一斬必殺村雨はかすっただけでも即死だ。
それでしか勝つ方法はないと言い放つ。
「……いいや、スキマ女とは私が決着をつける」
それを正邪が許せるはずがなかった。
八雲紫との決着は決して避けるべきではないと分かっていたからだ。
「ナジェンダ、少し出掛ける」
「……どこに行くつもりだ」
「武器作りと結界作りの材料探しだ。あいつは自分から動こうとはしないだろうからその間にこちらの手札を増やす」
即座にその場から消えた。
その目は、焦っているようにも見えた。
「……あんな正邪は初めて見るな。エスデスの時でさえ余裕を見せていたというのに、それほど恐ろしいのか」
「つまり、八雲紫は正邪と同じ地方の出身てことになるのか。どんだけ恐ろしい場所に住んでんだ正邪は」
「それ以上に厄介な話が出来ちまった。つまり、正邪と同じ出身は全員能力者ってことになる」
ナイトレイドに緊張が走る。
つまり、八雲紫が仲間を連れてくれば帝具所持者だけでく普通そうな人間も能力者として襲ってくる可能性が高まるということだった。
「……だが、八雲紫は能力を使ってこちらに来ない。それを考えると奴は慢心しているのか、ブドー寄りの人間か……」
「可能性は低いけど決起の時に仲間として加勢してくれる……。でも、正邪を見る限り戦闘は避けられそうにないわね」
八雲紫一人の介入により、ナイトレイドに不穏な空気が漂うが、それは帝都でも同じだった。
ーーー
「大丈夫かしら? 私も正邪以外に興味はないけれど、大臣の悔しがる姿も見たいのよ」
「ぐっ……ば、バケモノ、め……」
辺りには新将軍八雲紫に感謝する人間と、傷を負い、地に這いつくばる二人の姿と八雲紫に首を絞められる男の姿があった。
「ブドーは何もする気がないから困っちゃうわ。それなら、私が動くしかないってことで……革命軍ならまだしも、帝国の人間殺すのはおいたがすぎるわよ?」
男を絞める力を弱め、降ろす。
紫はスキマを作り、中に入っていく。
「チョウリさんとスピアさんだったかしら? 貴方たちは新しい帝国の為に私の部屋に案内しますわ。そこなら絶対に殺されることはないでしょう」
「だ、だが他の兵は……」
八雲紫はお構いなしという風にチョウリとスピアをスキマの中に入れた。
「ご安心を。帝国に仕えていた兵は無事にそちらに連れていきますとも」
「ただし、数人ほど紛れ込んでる革命軍という賊は死んでもらいますけれどね」