「囮作戦。これはお前じゃなきゃ成功は不可能だ」
―――――
「……んなこと言われてもよー」
現在、正邪の指示でフェイクマウンテン付近に来ている。
ここに小槌を使って凶暴化させた危険種がいると言っていたが……。
「はは、なんでもありだよな……」
思えば、初めから鬼人正邪という人間は何もかもが規格外だった。
打ち出の小槌という帝具を使って人を癒し、失敗したとはいえ帝具を創りかけ、今は危険種を凶暴化させて操っているという。
「………いや、正邪自身はそんなに強くなかったな」
小槌の魔力を使って身体強化をしているが、それがなければ正邪はひっくり返すといく能力を持つ以外は全体的な能力がナイトレイドの中で最も低い。
「……もしも」
もし小槌が大臣側に渡ってしまい、それを使いこなされてしまったら……。
「……はっ、なに考えてんだか」
やめよう。
元々俺はサヨのように賢くなけりゃタツミのように潜在能力が高いわけでもない。
でも、仲間を守りたい気持ちだけは……
「……帝具発動」
――誰にも負ける気はしない!
■ ■
「……む、なんだ?」
エスデスが足を止めた。
視線の先を周りも見ている。
「な、なんだありゃ……!?」
タツミ似の男が驚いた顔をしている。
無理もない。
そこには、炎系の柱がある。
そして、タツミの知っている顔がそこにはいた。
「………い、イエヤス………!!?」
どうしてあんなところに?
まさか、敵に捕まって……!
……なんて顔をしている。
「知り合いですか?」
「あ、あぁ。一緒に帝都に来た仲間だ」
「新たな拷問か? それとも……」
……さて、そろそろ頃合か。
「行かなきゃ!」
「待て、賊の可能性も………!!」
いけ、危険種共。
「グオォォォ!!!!」
「……あれは、土竜の群れか?」
「それにしては様子がおかしいですね」
全員が土竜に視線が向いたところで次の指示を出す。
一体をタツミの近くにワープ。
「「「…………!!」」」
タツミを吹き飛ばせ。
「ギイァァァ!!!」
「なっ……!?」
いくらエスデスでも、瞬間移動なら殺気も読み取れまい。
そして、小槌で強化したのはパンチの威力ではない。
「これは……風?」
む、あの金髪何かを察したか。
……だが遅い。
そう、タツミを吹き飛ばしてエスデスの元から離れさせれば問題はない。
「タツミ……!!」
「グルルル……」
「……ザコが!」
土竜が瞬時に氷漬けになり、破壊される。
……やはり、土竜を強化した程度じゃ足止めにもならないか。
……だが、全て狙い通り。
「……どうだ? 恋人が消えた気持ちは」
この作戦の目的は二つ。
一つはタツミの救出。
……そして、もう一つはイェーガーズの戦力を削ぐこと。
八雲紫の入れ知恵があればどんな強化をするか考えたくもない。
全面戦争前に戦力を削いでやる。
「強者様の怒り狂った顔を見ることは滅多にないが、恋人を失えばさすがに拝めるだろうよー」
イエヤスの炎でエスデスを除いた他のメンバーを囲む。
……そして、私はエスデスの前に姿を出した。
小槌を使い、火柱の中にいたイエヤスのカモフラージュを解く。
狙いは一番弱そうなスタイリッシュとかいう男。
私はエスデスや他にも炎の中から私に向かってくる奴等の囮。
「やっぱ強者様のそんな顔を見るのは最っ高の気分だぜ!! エスデス!」
「鬼人……」
土竜とイエヤスに変装してた分魔力がかなり減っている。
早めに作戦終了してくれよ。
「正邪ァ!!!」
……囮作戦、開始だ。