曜日和   作:リヨ

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12話

「今日も暑いな…」

夏も終盤かと思いきや、今日はかなり気温が高い。

こんな暑い日は家にいるに限るが、そうもいられない。

俺の欲しい本の発売日なのだ。しかもかなり人気の作品で発表日に行っておかないと売り切れになっている時がある。

「帰りにアイスでも買うか。小町も暑いって言ってたし」

「あれ?はちくん?」

「ん?高海」

これはめんどくさそうな奴にあったな。適当に話して退散しよう。

「奇遇だね!こんな暑い日なのに、はちくん外出るなんてめずらしいね?あんなに普段インドア派を主張してたのに」

「欲しい本があるんだよ。高海こそ一人で何してんだ?」

「そうなの!おつかい頼まれちゃってさー。私ばっかりこき使うの!ひどいと思わなーい?」

「俺も小町によくこき使われるから一緒だな」

「そういえば小町ちゃん元気?今度また会いたいな!」

「おー、言っとくわ。それじゃ」

「ちょぉっと待ったー!」

「ぐえっ!…首を引っ張るな首を」

「こんな偶然会えたのにちょっと話して終わりなんてもったいないよ!」

「たまたまあっただけで勿体ないも何もないだろ」

「とにかく!遊ぼ!」

「お前それが目的だろ」

「えー?いいじゃん!本買うだけでしょ?本買ったあと暇でしょ!?暇だよね!」

「お前は一体俺のなにを知っとるんだ」

「ほらほらレッツゴー!」

「おーい、人の話聞け」

 

「わぁー…」

「…あったあった。あと3冊しかねぇ。危ない危ない」

「らいとのべる?…はちくん、これ小説なの?」

「あぁ。まぁ軽い感じの小説だな」

「へぇ……うわぁ!?」

「どうした?」

「……」

突然高海は顔を真っ赤にしてある本を指さす。

「…あー」

高海が指さしていたのは、まぁちょっと刺激の強いイラストがあるラノベだった。いきなりこれ見たら高海みたいなやつはびっくりするな。

「…まぁ気にするな」

「…はちくん家にもこういうのいっぱいあるの?」

「そんなにない」

「少しはあるんだ…」

「…」

…しまった。

「…変態」

「いや、イラストがあれなだけであって面白いから。よく言うだろ?外見じゃない、中身だって」

「でもイラストもいいんでしょ?」

「そりゃあもう…あ」

「…」

「…」

そして俺達は謎の空気のまま店をあとにした。

 

「よし!ゲームセンターに行こう!」

「と見せかけて帰」

「らないよ!ほら早く!」

「引っ張らないで」

 

「やったー!」

「高海なんかに負けるなんて…」

「ふっふーん!」

ドヤ顔うぜぇ。

「あ!はちくんプリクラ撮ろうよ!」

「さよなら」

「ほら早く!」

「襟を引っ張るな!」

なんでこいつ毎回提案してくるくせにこっちの意見無視するの?ねぇ?

「プリクラ男の子ととるの初めてだから緊張するね!」

「お前ほんとに緊張してんのか」

めっちゃ楽しそうにニコニコしてるぞ。緊張というものが欠片も感じられない。

「はいはちくんポーズ!」

 

「はい!」

「おう」

なんだこれ…俺の目が輝いてる。

「いやー!楽しかった!」

「そりゃ良かったですね」

「はちくんは楽しかった?」

「…まぁ悪くはなかったんじゃないか」

「…そっか!」

夕日も落ちてきたので高海と帰っていると、突然雨が降り出した。

「雨!?傘持ってきてないよー!」

「今日夕方から降るかもって言ってたな」

「あ!はちくん傘あるの!?入れて入れて!」

「お、おい」

「はちくん持っててくれて助かったよー!」

「…近い」

「えー?仕方ないじゃん。傘に2人入ってるんだもん。照れてるのー?」

「…そういうお前も顔赤いぞ」

「…あ、あはは、やっぱりちょっと恥ずかしい」

まさか女子と相合傘する日が来るとは…

この恥ずかしさをどう収めようか考えていると、雨はどんどんひどくなり、大きな雷が落ちた。

「今の結構大きかった…な」

「……」フルフル

その時俺には二つの驚きがあった。雷が落ちたのと…それと同時に高海が抱きついてきたのだ。

「お、おいいきなり何を」

「こ、怖いよ…」

「…雷苦手なのか?」

「う、うん…」

雷は収まる様子もなく、ゴロゴロとなっている。つまり俺はずっと高海に抱きつかれっぱなしなのだ。

「とりあえず進めないから離れろ」

「もうちょっとだけ…、お願い」

「はぁ…」

俺結構理性が削られていくんですよ。今も進行形で。

高海だって年頃の女の子。体だって成長してるわけで。

このままでは理性が持つかわからないので、俺はある行動に出る。

「……は、はちくん?」ナデナデ

「…小町も雷苦手でな。頭撫でてやると怖さが和らぐって言ってたからやってみたんだが…意味無いか?」

「…ううん。なんか落ち着く。お兄ちゃんパワーかな?」

「なんだそれ…」

「はちくんみたいなお兄ちゃんがいたら良かったな」

「俺はお前みたいな騒がしい妹ごめんだな。小町だけで十分だ」

「えー?」

「というかそろそろ離れ」

俺が離れろと言おうとした時、近くで物が落ちる音がした。

「……渡辺?」

「あ、曜ちゃん!」

「……」

近くにいたのは渡辺だった。しかし、様子がおかしい。動揺しているような顔だ。そしてその顔はどんどん悲しい顔に変わっていく。

俺はそれを見た瞬間、原因に気づいた。

「お、おい高海離れろ」

「え、あ、うん」

「渡辺、お前何か勘違い」

「か、勘違い?私なにも言ってないよ?ち、千歌ちゃんと比企谷くん、そ、そんなに仲良くなってたんだね。わ、私早く帰らなきゃ行けないから!ま、また学校でね!」

「お、おい渡辺!高海!傘は明日返してくれ!」

「あ、はちくん!?」

俺は走る渡辺を追いかけるが、距離はどんどん遠ざかっていく。

「あいつ走るの速すぎ…」

ついに渡辺の姿は見えなくなり、俺は土砂降りの中、立ち尽くすしかなかった。

 

 

 

 

 

 


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